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特別支給の老齢厚生年金とは?手続き・対象者・繰上げとの違いを解説

特別支給の老齢厚生年金とは?手続き・対象者・繰上げとの違いを解説
最終更新:2026年5月1日

「年金事務所から届いた書類、よくわからないから放置している…」
「年金は65歳からでしょ?」
「繰上げ受給とは何が違うの?」

特別支給の老齢厚生年金は、申請しないと1円も受け取れない制度です。

対象者であるにもかかわらず手続きをしなかったために、数百万円を受け取り損ねるケースも報告されています。

しかも、繰上げ受給とは異なり年金額は減額されません

この手続きガイドでは、特別支給の老齢厚生年金の対象者・受給条件・手続き方法・必要書類から、繰上げ受給との違い、在職中の受給、注意点まで詳しく解説します。

1. 特別支給の老齢厚生年金とは?制度の基本

特別支給の老齢厚生年金は、65歳になる前に受け取れる年金です。

かつて老齢厚生年金は60歳から支給されていましたが、昭和60年の法改正で支給開始年齢が65歳に引き上げられました。

この引き上げに伴い、急に受給開始が5年も遅くなることを緩和するために設けられた経過措置が、特別支給の老齢厚生年金です。

繰上げ受給とはまったく別の制度です

特別支給の老齢厚生年金は、繰上げ受給と混同されがちですが根本的に異なる制度です。
繰上げ受給は65歳からの年金を前倒しで受け取る代わりに減額されますが、特別支給の老齢厚生年金は減額なしで受け取れます。
受給しても将来の年金額に影響はありません。

特別支給の老齢厚生年金の特徴

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  • 減額されない — 繰上げ受給のように年金額が下がることはない
  • 申請が必要 — 届いた年金請求書を提出しないと支給されない
  • 65歳で終了 — 65歳以降は通常の老齢基礎年金・老齢厚生年金に切り替わる
  • 繰下げ不可 — 受け取りを遅らせても増額されない

2. 対象者と受給条件 - あなたはもらえる?

特別支給の老齢厚生年金を受け取るには、以下の3つの条件すべてを満たす必要があります。

  • 生年月日の条件
    男性: 昭和36年(1961年)4月1日以前生まれ
    女性: 昭和41年(1966年)4月1日以前生まれ
  • 厚生年金保険の加入期間
    1年以上あること
  • 老齢基礎年金の受給資格期間
    保険料納付済期間+免除期間+合算対象期間が10年以上あること
パートや短時間勤務でも対象になる場合があります

正社員でなくても、厚生年金保険に加入していた期間が合計1年以上あれば条件を満たします。
複数の会社での加入期間は合算されます。

生年月日・性別ごとの支給開始年齢

生年月日によって、支給が始まる年齢が異なります。

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女性は男性より5年遅れで対象世代が終了します

2026年現在、男性はすでに最終対象世代(昭和34〜36年生まれ)が64歳に達しています。
一方、女性は昭和39〜41年生まれ(2026年時点で60〜62歳)がこれから対象になります。
「女性で1966年4月1日以前生まれ」の方は、もらい忘れにご注意ください。

3. 受け取れる金額 - いくらもらえる?

特別支給の老齢厚生年金の金額は、報酬比例部分として計算されます。

現在の対象世代は「定額部分」の支給がないため、報酬比例部分のみの受給となります。

報酬比例部分の計算式

年金額は、厚生年金に加入していた期間の給与(標準報酬月額)と加入月数で決まります。

平成15年4月以降の加入分:

年金額 = 平均標準報酬額 × 5.481/1000 × 加入月数

平成15年3月以前の加入分:

年金額 = 平均標準報酬月額 × 7.125/1000 × 加入月数

計算例

平均年収420万円(平均標準報酬額35万円)で30年間(360月)加入した場合:

35万円 × 5.481/1000 × 360月 ≒ 年額約69万円(月額約5.7万円)

以下のシミュレーターで、ご自身の条件に合わせた概算額を確認できます。

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上記は概算です

実際の年金額は、平成15年3月以前と4月以降で計算式が異なり、再評価率なども反映されます。
正確な金額はねんきんネットや年金事務所で確認できます。

4. 手続きの流れと必要書類

特別支給の老齢厚生年金は自動的に振り込まれるものではなく、ご自身で請求手続きを行う必要があります。

手続きの流れ

  1. 年金請求書が届く
    支給開始年齢に達する3カ月前に、日本年金機構から「年金請求書(事前送付用)」が届きます。 基礎年金番号・氏名・生年月日・年金加入記録があらかじめ印字されています。
  2. 必要書類を準備する
    届いた案内に従い、戸籍謄本や通帳のコピーなどを揃えます。
  3. 年金請求書を提出する
    支給開始年齢に到達した日(誕生日の前日)以降に、年金事務所または街角の年金相談センターへ提出します。
  4. 年金証書が届く
    審査後、年金証書・年金決定通知書が届きます。
  5. 年金の受給開始
    請求から1〜2カ月後に初回の年金が振り込まれます。
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支給開始年齢になる前に提出すると受け付けてもらえません

年金請求書は事前に届きますが、提出は支給開始年齢に達してからです。
届いたらすぐに書類を準備し、誕生日の前日以降に速やかに提出しましょう。

必要書類チェックリスト

すべての方に必要な書類

  • 年金請求書(届いたもの、または年金事務所で入手)
  • 戸籍謄本・住民票などの本人確認書類(マイナンバー登録済なら原則不要)
  • 受取先金融機関の通帳またはキャッシュカードのコピー(公金受取口座を利用する場合は不要)

該当する方のみ必要な書類

  • 雇用保険被保険者証(雇用保険に加入中、または過去7年以内に加入していた方)
  • 年金加入期間確認通知書(共済組合に加入していた期間がある方)
  • 戸籍謄本+世帯全員の住民票+配偶者の収入確認書類(厚生年金20年以上かつ配偶者・子がいる方)
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5. 在職中でも受け取れる?在職老齢年金との関係

在職中でも特別支給の老齢厚生年金は受け取れます。

ただし、給与と年金の合計額が一定の基準を超えると、年金の一部または全部が支給停止になります。

これを「在職老齢年金」制度と呼びます。

支給停止の計算方法

以下の2つの金額を合計して判定します。

  • 基本月額
    特別支給の老齢厚生年金の年額 ÷ 12
  • 総報酬月額相当額
    その月の標準報酬月額 +(直近1年間の賞与合計 ÷ 12)

基本月額 + 総報酬月額相当額 ≦ 65万円 → 全額支給

基本月額 + 総報酬月額相当額 > 65万円 → 超えた分の1/2が支給停止

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2026年4月の改正で基準額が引き上げられました

2026年4月の年金制度改正により、在職老齢年金の支給停止基準額が51万円から65万円に引き上げられました。
これにより、在職中でも年金が減額されにくくなっています。

計算例

年金の基本月額が6万円、給与(総報酬月額相当額)が40万円の場合:

合計 = 6万円 + 40万円 = 46万円 ≦ 65万円 → 全額支給

年金の基本月額が10万円、給与が60万円の場合:

合計 = 10万円 + 60万円 = 70万円 > 65万円

支給停止額 = (70万円 - 65万円) ÷ 2 = 2.5万円

受け取れる年金 = 10万円 - 2.5万円 = 月額7.5万円

6. 繰上げ受給との違い - 混同しやすいポイント

特別支給の老齢厚生年金と繰上げ受給は、「65歳前に年金を受け取る」という点で似ていますが、制度としてはまったく別物です。

比較項目特別支給の老齢厚生年金繰上げ受給
年金額の減額なしあり(1月あたり0.4〜0.5%減額)
対象者特定の生年月日の方のみ60歳以上なら誰でも可
請求方法届いた年金請求書を提出自分から繰上げの申請が必要
65歳以降の影響なし(本来の年金に切り替わる)減額が一生続く
繰下げ不可可(66〜75歳で増額)
制度の性質経過措置(対象世代限定)恒久的な選択制度
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注意: 特別支給を受けながら「繰上げ」を選ぶケース

特別支給の老齢厚生年金の受給中に、65歳からの老齢基礎年金を繰上げて受け取ることは可能です。

ただし、この場合は以下の点に注意が必要です。

  • 老齢基礎年金が0.4〜0.5% × 繰上げ月数分だけ減額される(生年月日により異なる)
  • 減額は一生続く(取り消し不可)
  • 繰上げは老齢基礎年金と老齢厚生年金(65歳以降分)を同時に行う必要がある
特別支給と繰上げは別判断です

特別支給の老齢厚生年金を受け取ることと、繰上げ受給を選ぶことは別の判断です。
特別支給は対象者なら速やかに請求すべきですが、繰上げは慎重な検討が必要です。

7. 注意点・デメリット

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繰下げ(受給を遅らせて増額)はできない

65歳からの通常の年金には、受給開始を66歳以降に遅らせることで年金額が増える「繰下げ受給」がありますが、特別支給の老齢厚生年金に繰下げ制度はありません

受け取らずに放置しても増額されないため、対象者は速やかに請求してください。

5年の時効に注意

年金の受給権には5年の消滅時効があります。

請求を5年以上放置すると、時効を過ぎた期間の年金は受け取れなくなります。

例えば、62歳から受給できるのに67歳で請求した場合、62〜63歳分(最大2年分)の年金が時効で消滅する可能性があります。

届いた年金請求書を放置しないでください

「働いているから」「面倒だから」と放置するメリットはありません。
年金額は増えず、時効で過去分を受け取れなくなるリスクだけがあります。

65歳になったら再度手続きが必要

65歳に達すると特別支給の老齢厚生年金の受給権は消滅し、65歳からの本来の「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」に切り替わります。

65歳になる誕生月の初め頃に、日本年金機構からハガキ形式の「年金請求書」が届きます。

必要事項を記入して返送することで、65歳以降の年金を受け取れます。

雇用保険の基本手当との併給不可

退職後にハローワークで求職の申し込みをして雇用保険の基本手当(失業手当)を受給する場合、その間は特別支給の老齢厚生年金が全額支給停止になります。

また、在職中に高年齢雇用継続給付を受けている場合も、年金の一部が追加で支給停止されることがあります。

退職を検討している方は、雇用保険と年金のどちらを優先するか、事前にハローワークや年金事務所で確認しておきましょう。

確定申告が必要になる場合

特別支給の老齢厚生年金を受給すると、年金は「雑所得」として課税対象になります。

以下の場合は確定申告が必要です。

  • 年金収入が年間400万円を超える場合
  • 年金以外の所得(給与所得を除く)が年間20万円を超える場合
  • 2カ所以上から給与を受け取っている場合

在職中の方は、年末調整で給与所得の精算が行われますが、年金分は別途確定申告が必要になるケースがあります。

よくある質問(FAQ)

Q. 手続きしないとどうなりますか?

A. 年金は支給されず、5年を超えた分は時効で消滅します。

特別支給の老齢厚生年金は申請しなければ受け取れません。

放置しても年金額が増えることはなく(繰下げ不可)、5年の消滅時効を過ぎた分の年金は受け取れなくなります。

届いた年金請求書は速やかに手続きしてください。

Q. 遺族年金を受けていますが特別支給も請求できますか?

A. 請求手続き自体は必要です。ただし、どちらか有利な方を選択して受給します。

遺族年金と特別支給の老齢厚生年金は併給できないため、「年金受給選択申出書」を提出してどちらを受け取るか選びます。

通常は金額の高い方を選択しますが、65歳以降は併給のルールが変わるため、年金事務所で相談されることをおすすめします。

Q. パートで短時間勤務でも対象になりますか?

A. 過去に厚生年金保険に1年以上加入していれば対象です。

現在の雇用形態は関係ありません。

過去の職歴を通じて厚生年金保険の加入期間が合計1年以上あり、受給資格期間(10年)を満たしていれば、特別支給の老齢厚生年金の対象となります。

「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」で加入期間を確認できます。

Q. 届くはずの年金請求書が届きません。どうすればいいですか?

A. 最寄りの年金事務所に問い合わせてください。

住所変更の届出をしていない場合、年金請求書が届かないことがあります。

日本年金機構の「ねんきんダイヤル」(0570-05-1165)に電話するか、最寄りの年金事務所の窓口で確認してください。

年金請求書が届かなくても、要件を満たしていれば窓口で直接手続きできます。

まとめ

特別支給の老齢厚生年金は、65歳前に減額なしで受け取れる年金です。

対象者であれば申請するだけで受給できますが、手続きをしなければ1円も支給されません

  • 対象者 — 男性は昭和36年4月1日以前生まれ、女性は昭和41年4月1日以前生まれで、厚生年金1年以上+受給資格期間10年以上
  • 手続き — 届いた年金請求書に記入し、必要書類とともに年金事務所へ提出
  • 金額 — 加入期間・報酬額に応じて計算(減額なし)
  • 繰上げ受給とは別物 — 繰上げは減額されるが、特別支給は減額なし
  • 注意 — 繰下げ不可・5年の時効あり

届いた年金請求書を放置するメリットはありません。

対象年齢に達したら、速やかに年金事務所で手続きを行いましょう。

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