企業年金のもらい忘れに注意!確認方法と請求手続きを解説
「ねんきん定期便を毎年チェックしているから安心」
「退職時に特に説明がなかったし、企業年金なんてないはず」
——そう思っていませんか?
実は、企業年金はねんきん定期便には記載されません。
企業年金連合会の公表データによると、令和7年3月末時点で請求手続きをしていない方は約106万人にのぼります。
うち約68万人は住所変更や改姓によって請求書すら届いていない状態です。
この手続きガイドでは、自分が企業年金をもらえるかどうかの確認方法と、請求手続きの具体的な流れをわかりやすく解説します。
1. 企業年金とは?公的年金との違いをわかりやすく解説
日本の年金制度は「3階建て」にたとえられます。
- 1階: 国民年金(基礎年金)
20歳以上60歳未満のすべての国民が加入する公的年金 - 2階: 厚生年金
会社員や公務員が加入する公的年金 - 3階: 企業年金(私的年金)
企業が従業員のために上乗せで用意する年金制度
企業年金は3階部分にあたり、会社が独自に設けている年金制度です。
勤務先に企業年金制度がある場合、知らないうちに加入しているケースも珍しくありません。
企業年金の主な種類
企業年金には、大きく分けて以下の3種類があります。
| 種類 | 特徴 | 現在の状況 |
|---|---|---|
| 厚生年金基金 | 国の厚生年金の一部を代行し、さらに上乗せして給付する | ほとんどが解散済み。年金原資は企業年金連合会に移管 |
| 確定給付企業年金(DB) | あらかじめ給付額が決まっている企業年金 | 現在も多くの企業で運営 |
| 確定拠出年金(DC) | 掛金を拠出し、運用結果に応じて受取額が変わる | 企業型DCやiDeCoが該当 |
この手続きガイドでは、特にもらい忘れが多い厚生年金基金の企業年金連合会への請求手続きを中心に解説します。
厚生年金基金が解散するとどうなる?
かつて多くの企業が設けていた厚生年金基金は、平成25年の法改正により、解散または確定給付企業年金への移行が促されました。
基金が解散した場合、加入者の年金原資は以下のルートで引き継がれます。
- 平成26年3月31日以前に解散した基金
代行部分の年金原資は企業年金連合会に移管され、老齢厚生年金の受給権取得時に連合会から支給されます。 - 平成26年4月1日以降に解散した基金
代行部分は国に納付されます。
残余財産の分配金は、本人の選択により企業年金連合会に移換できます。
また、転職などで10〜15年未満の短期間で基金を脱退した「中途脱退者」の年金原資も、企業年金連合会に引き継がれています。
企業年金連合会に移管された年金は終身年金です。
金額は月数千円程度のケースもありますが、一生受け取ることができます。
請求しなければ1円も受け取れないため、確認する価値は十分にあります。
2. 106万人が未請求 - 企業年金がもらい忘れられる3つの原因
企業年金連合会の公表データによると、令和7年3月末時点の未請求者の状況は以下のとおりです。
| 項目 | 人数 |
|---|---|
| 裁定請求書の未提出者 | 106.1万人 |
| うち請求書が届いていない方(不達) | 68.5万人 |
| うち請求を保留している方 | 37.6万人 |
なぜこれほど多くの方が未請求のままなのでしょうか。
主に3つの原因が考えられます。
2-1. ねんきん定期便に企業年金の情報が載らない
毎年届く「ねんきん定期便」には、国民年金と厚生年金の情報しか記載されません。
企業年金連合会が管理している年金(旧厚生年金基金の上乗せ部分など)は、ねんきん定期便の対象外です。
そのため「ねんきん定期便に載っていないから、自分には企業年金がない」と誤解してしまう方が非常に多いのです。
2-2. 住所変更・改姓で請求書が届かない
企業年金連合会は、支給開始年齢に達した方に「裁定請求書」を郵送しています。
しかし、転居や結婚・離婚による改姓があると、登録住所に届かなくなります。
未請求者106.1万人のうち約68.5万人は請求書が届いていない状態です。
企業年金連合会への住所変更届を出していなければ、いつまでも請求書は届きません。
2-3. 厚生年金基金の解散で請求先がわからなくなった
勤務先の厚生年金基金がすでに解散している場合、「基金がなくなったから年金ももらえない」と思い込む方がいます。
しかし実際には、基金が解散しても年金原資は企業年金連合会に引き継がれていることがあります。
解散した基金の名称では検索できないため、請求先が分からず放置してしまうケースが少なくありません。
3. 自分が企業年金をもらえるか確認する方法
まず、以下のチェックリストで該当するか確認してみてください。
- 過去に厚生年金基金のある会社に勤務していた
- 短期間(基金の規約により異なる)で退職・転職した経験がある
- 勤務先の厚生年金基金が解散した
- 確定給付企業年金のある会社を中途退職した
- 退職時に「脱退一時金」を受け取らなかった
1つでも当てはまる場合は、企業年金連合会に年金記録が残っている可能性があります。
以下の方法で確認しましょう。
3-1. 企業年金連合会のWebサイトで記録を確認する
企業年金連合会「年金記録の確認」ページから、オンラインで記録の有無を確認できます。
確認に必要な情報は以下の3つです。
- 基礎年金番号
- カナ氏名
- 生年月日
3項目が完全一致した記録が連合会に存在するかどうかを即座に確認できます。
結婚や離婚で姓が変わった方は、旧姓でも検索してみてください。
旧姓のまま登録されている可能性があります。
3-2. 電話で問い合わせる
企業年金コールセンターに電話で確認することもできます。
- 電話番号
0570-02-2666(IP電話の場合: 03-5777-2666) - 受付時間
平日(月〜金)の9時〜17時
問い合わせの際に必要な情報は以下のとおりです。
- 氏名(旧姓がある場合はそちらも)
- 生年月日
- 住所
- 基礎年金番号
- 厚生年金基金の名称や加入員番号(分かる場合)
3-3. ねんきんネットで厚生年金基金の加入期間を確認する
日本年金機構の「ねんきんネット」で取得できる「被保険者記録照会回答票」には、厚生年金基金の加入期間が記載されています。
この書類に厚生年金基金の加入期間が記載されているにもかかわらず、年金を受け取っていない場合は、企業年金連合会に確認しましょう。
3-4. 年金事務所に相談する
お近くの年金事務所に相談すると、基礎年金番号に紐づいた厚生年金基金の加入記録も確認してもらえます。
企業年金連合会への請求が必要かどうかも含めて、総合的にアドバイスを受けられます。
基礎年金番号がわからない場合は、マイナンバーカードがあれば「ねんきんネット」にログインして確認できます。
年金手帳をお持ちの方は、手帳に記載されている番号を確認してください。
基礎年金番号の確認方法について、詳しくは以下の手続きガイドも参考にしてください。
4. 企業年金の請求手続き - 裁定請求書の入手から提出まで
企業年金をもらえることが確認できたら、以下の手順で請求手続きを進めます。
4-1. 裁定請求書を入手する
企業年金連合会の年金は、原則として65歳から受け取れます(国の老齢厚生年金と同様、生年月日により60歳から65歳に段階的に引き上げ中)。
企業年金連合会は、支給開始年齢に達した月の初めに「企業年金連合会老齢年金裁定請求書」を登録住所に郵送しています。
裁定請求書が届いていない場合は、以下のいずれかの方法で送付を依頼できます。
- 電話
0570-02-2666(IP電話: 03-5777-2666) - インターネット
企業年金連合会の「年金裁定請求書送付依頼」ページから依頼 - 文書
裁定請求書送付依頼書をダウンロードし、郵送で依頼 - 来訪
企業年金連合会(港区芝公園2-4-1 芝パークビルB館10階)の窓口で依頼
依頼後、おおむね1週間程度で裁定請求書が届きます。
4-2. 必要書類を準備する
裁定請求書の提出には、以下の書類が必要です。
| 書類 | 備考 |
|---|---|
| 裁定請求書(記入済み) | 企業年金連合会から届く書類に記入。押印は不要 |
| 基礎年金番号が確認できる書類(以下のいずれか1点) | 年金手帳のコピー / 基礎年金番号通知書のコピー / 国の年金証書のコピー / 厚生年金基金加入員証のコピー |
| 住民票(住所が異なる場合) | 住民票の住所と現住所が異なる場合のみ。発行から6ヶ月以内の原本(マイナンバー記載なし) |
| 金融機関の通帳コピー | 裁定請求書に金融機関の証明を受けない場合のみ |
解散した厚生年金基金の代行部分の年金を受け取るには、国の老齢厚生年金の受給権が発生していることが条件です。
国の年金証書が交付されてから、企業年金連合会に連絡してください。
4-3. 裁定請求書を記入・提出する
裁定請求書の記入方法は、企業年金連合会「裁定請求書の書き方」ページで確認できます。
記入のポイントは以下のとおりです。
- 押印は不要です
- 受取口座の金融機関名・支店名・口座番号を正確に記入
- 書類は機械処理されるため、切り貼りはせずそのまま添付
提出先は以下のとおりです。
〒105-8772 東京都港区芝公園2-4-1 芝パークビルB館10階 企業年金連合会 年金サービスセンター 年金相談室 宛
4-4. オンライン手続きサービスを利用する
マイナンバーカードをお持ちの方は、企業年金連合会オンライン手続きサービスからオンラインで請求手続きを行うことも可能です。
ただし、条件によってはオンラインで手続きできない場合があります。
詳細は企業年金連合会のWebサイトでご確認ください。
5. 住所変更・改姓したら企業年金連合会にも届出を
転居や結婚・離婚で住所や氏名が変わった場合は、企業年金連合会にも届出が必要です。
届出を忘れると、裁定請求書や各種通知が届かなくなり、年金のもらい忘れにつながります。
実際に、未請求者106.1万人のうち68.5万人は「請求書が届いていない」状態です。
届出方法は以下のとおりです。
- オンライン手続き
企業年金連合会オンライン手続きサービスから届出(マイナンバーカードが必要) - 電話
0570-02-2666(IP電話: 03-5777-2666) - 文書
届出書類を郵送
住所や氏名の変更があった方は、今すぐ企業年金連合会に届出をしてください。
届出をしないまま支給開始年齢を迎えると、裁定請求書が届かず、年金を受け取れない可能性があります。
6. 企業年金の時効に注意 - 5年を過ぎると受け取れない
企業年金にも時効があります。
年金を受ける権利そのもの(基本権)は、厚生年金保険法第170条第1項の規定により5年で時効消滅します。
また、毎回の支払い分を受け取る権利(支分権)も5年で時効消滅するため、5年以上請求を放置すると、過去の分は受け取れなくなります。
たとえば、65歳から受給権が発生していたのに74歳で気づいた場合、最大でも過去5年分(69歳以降の分)しか受け取れません。
「いずれ届くだろう」と放置していると、時効で受け取れる金額がどんどん減っていきます。
心当たりがある方は、すぐに確認・請求の手続きを始めてください。
よくある質問(FAQ)
Q. 企業年金はいつからもらえますか?
A. 原則として65歳からです。
企業年金連合会の年金は、国の老齢厚生年金と同じ支給開始年齢から受け取れます。
生年月日によっては60歳から段階的に引き上げられている途中のため、65歳より前に受給できる場合もあります。
また、60歳以降であれば繰上げ請求も可能ですが、年金額が減額されます。
Q. 企業年金連合会の年金はいくらもらえますか?
A. 加入期間や基金の制度によって大きく異なりますが、月額数千円〜数万円程度のケースが多いです。
厚生年金基金の加入期間が短い(数年程度)場合は月額数千円ということもあります。
ただし、終身年金のため一生受け取ることができます。
仮に月5,000円でも、65歳から85歳までの20年間で合計120万円になります。
Q. 会社を何年以上勤めていれば企業年金がもらえますか?
A. 勤続年数に関わらず、企業年金の原資が企業年金連合会に移管されていれば受給できます。
厚生年金基金や確定給付企業年金のある会社を中途退職した場合、たとえ数年の在籍でも、脱退一時金を受け取っていなければ年金原資が企業年金連合会に移管されている可能性があります。
短期間の勤務でも念のため確認してみましょう。
Q. 亡くなった家族の企業年金は請求できますか?
A. はい、未支給の企業年金がある場合は遺族が請求できます。
企業年金を受け取っていた方、または受給資格がありながら請求していなかった方が亡くなった場合、未支給分の年金を遺族が請求できます。
企業年金連合会に死亡届と未支給年金の請求を行ってください。
Q. 確定拠出年金(企業型DC)も企業年金連合会に請求するのですか?
A. いいえ、確定拠出年金の請求先は企業年金連合会ではありません。
確定拠出年金(企業型DC)の年金資産は、運営管理機関(証券会社や銀行)が管理しています。
退職後に手続きをしなかった場合は、国民年金基金連合会に自動移換されている可能性があります。
企業年金連合会が管理しているのは、厚生年金基金や確定給付企業年金の年金原資です。
Q. 企業年金連合会の年金に税金はかかりますか?
A. はい、雑所得として所得税の課税対象になります。
企業年金連合会から受け取る年金は「公的年金等に係る雑所得」として扱われます。
企業年金連合会が所得税を源泉徴収した上で支給するため、確定申告が必要かどうかは他の所得と合わせて判断してください。
毎年1月下旬に「公的年金等の源泉徴収票」が届きます。
まとめ
企業年金のもらい忘れを防ぐために、以下の3ステップを確認してください。
- 記録を確認する
企業年金連合会のWebサイトまたは電話(0570-02-2666)で、自分の年金記録があるか確認する - 請求手続きを行う
記録が見つかったら、裁定請求書を取り寄せて必要書類とともに提出する - 住所・氏名の変更を届け出る
転居や改姓があった場合は、企業年金連合会にも届出をする
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5年の時効で受け取れなくなる前に、今すぐ確認してみましょう。
