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失業保険と年金は同時にもらえない?60歳からの受給ルールと手続き

失業保険と年金は同時にもらえない?60歳からの受給ルールと手続き
最終更新:2026年5月27日

「定年退職したら、失業保険と年金の両方がもらえると思っていた」
「ハローワークに行ったら年金が止まるなんて知らなかった」
「失業保険と年金、どっちを選べば得なの?」
——こうした声は、60代で退職を迎える方に非常に多い悩みです。

60〜64歳で退職すると、雇用保険の失業給付(基本手当)特別支給の老齢厚生年金の両方を受け取る権利が発生します。

しかし、この2つは同時に受給できません

ハローワークで求職の申込みをした時点で年金が全額ストップするため、知らずに手続きを進めると「年金が止まった」と想定外の収入減に陥ることがあります。

この手続きガイドでは、60〜64歳退職時の失業保険と年金の併給調整ルール、年金停止の手続き、「どちらが得か」の判断基準、そして65歳以降の別ルールまで、わかりやすく解説します。

1. 失業保険と年金は同時にもらえない(60〜64歳のルール)

1-1. 併給調整の原則

60〜64歳で退職した方が、特別支給の老齢厚生年金を受給できる場合、雇用保険の基本手当(失業保険)と年金は同時に受け取ることができません。

これは日本年金機構「年金と雇用保険の失業給付との調整」で明記されているルールです。

ハローワークで求職の申込みをした日の属する月の翌月から、年金が全額支給停止になります。

「求職の申込み」だけで年金が止まる

実際に失業保険を受け取ったかどうかに関係なく、ハローワークで求職の申込みをした時点で年金は停止されます。
「とりあえず登録だけ」のつもりでも、年金には影響が出ます。

1-2. 対象となる方

この併給調整が適用されるのは、以下の両方に該当する方です。

  • 特別支給の老齢厚生年金の受給権がある(受給開始年齢に達している)
  • 雇用保険の被保険者期間が受給資格を満たしている

特別支給の老齢厚生年金の対象者は、生年月日と性別によって受給開始年齢が異なります。

対象者は年々縮小しています

男性は2025年度に特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢引上げが完了し、1961年(昭和36年)4月2日以降生まれの方は対象外です。
女性は2030年度に完了予定で、1966年(昭和41年)4月2日以降生まれの方は対象外となります。
この併給調整ルールも、対象となる方は今後減少していきます。

詳しくは以下の手続きガイドをご覧ください。

1-3. 年金が停止される期間

年金が停止される期間は、次のとおりです。

開始終了
求職の申込みをした月の翌月受給期間が経過した月、または所定給付日数を受け終わった月のいずれか早い方
求職申込み月は年金がもらえる

求職の申込みをした当月分の年金は支給されます。
停止が始まるのは翌月からです。

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2. 年金停止の手続き

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2-1. ハローワークでの手続き

退職後、まずハローワークで求職の申込みを行います。

  • 持参するもの
    • 雇用保険被保険者離職票(退職後2週間程度で届く)
    • 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
    • 写真2枚(タテ3cm×ヨコ2.4cm)
    • 払渡希望金融機関指定届(離職票に付属)

失業保険の手続きの詳細は、以下の手続きガイドで解説しています。

2-2. 年金事務所への届出

ハローワークで求職の申込みをしたあと、年金事務所への届出が必要です。

  • 届出書類
    「老齢厚生・退職共済年金受給権者 支給停止事由該当届」
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  • 持参するもの
    • 雇用保険受給資格者証
    • 年金証書
    • 本人確認書類
届出を忘れずに

年金請求書に「雇用保険被保険者番号」を記入していれば、年金機構側で自動的に停止処理が行われる場合もあります。
ただし、届出が遅れると支給停止の処理が遅れ、後日返還を求められる可能性があるため、早めの届出が安心です。

2-3. 事後精算の仕組み

失業保険を受け取っていない月があっても、求職申込み中は年金が月単位で全額停止されます。

そのため、失業保険の受給が終了した後に事後精算が行われます。

事後精算の計算式は次のとおりです。

支給停止解除月数 = 年金停止月数 − 失業給付の実際の支給対象月数

支給停止解除月数が1以上であれば、その月数分の年金が遡って支給されます。

たとえば年金が8ヶ月停止されたのに、実際に失業給付を受けたのが5ヶ月分だけであれば、3ヶ月分の年金が後から支払われます。

事後精算の支給時期

事後精算による年金の支給は、失業給付の受給終了後3ヶ月程度かかります。
すぐには振り込まれない点にご注意ください。

3. 失業保険と年金、どちらが得か?

3-1. 比較の考え方

失業保険を受け取ると年金が止まるため、「どちらが得か」を事前に比較しておくことが重要です。

判断の基本式は以下のとおりです。

失業保険の総額 = 基本手当日額 × 所定給付日数

停止される年金の総額 = 年金の月額 × 年金停止月数

失業保険の総額が停止される年金の総額を上回れば、失業保険を選んだ方が有利になります。

3-2. 具体的な計算例

Aさんの例(63歳・定年退職・勤続30年)

項目金額
退職前の平均月給30万円
賃金日額10,000円(30万円×6ヶ月÷180日)
基本手当日額約5,220円(給付率の計算による)
所定給付日数150日(定年退職・被保険者期間20年以上)
失業保険の総額約783,000円
項目金額
特別支給の老齢厚生年金(年額)120万円
年金の月額10万円
年金停止期間(目安)約7ヶ月
停止される年金の総額約70万円

この例では、失業保険(約78万円) > 停止される年金(約70万円)のため、失業保険を受け取った方が約8万円有利です。

Bさんの例(62歳・自己都合退職・勤続15年)

項目金額
退職前の平均月給25万円
基本手当日額約4,690円
所定給付日数120日(自己都合・被保険者期間10年以上20年未満)
失業保険の総額約562,800円
項目金額
特別支給の老齢厚生年金(月額)12万円
年金停止期間(目安)約5ヶ月(給付制限1ヶ月+受給期間含む)
停止される年金の総額約60万円

この例では、停止される年金(約60万円) > 失業保険(約56万円)のため、年金を受け続けた方がやや有利です。

ただし差額は小さいため、再就職の意思が強い方は失業保険を選ぶメリットもあります。

失業保険は「再就職の意思」が前提

失業保険は、再就職の意思と能力があり、積極的に求職活動を行う方に支給されるものです。
「年金より得だから」という理由だけで申請することはできません。
4週間に1回の失業認定日にハローワークへ出向き、求職活動実績を報告する必要があります。

3-3. 判断のポイントまとめ

以下のチェックリストで「どちらが得か」を判断できます。

  • 自分の基本手当日額を計算する(退職前6ヶ月の賃金÷180日×給付率)
  • 所定給付日数を確認する(退職理由・被保険者期間による)
  • 特別支給の老齢厚生年金の月額を確認する(ねんきん定期便で確認可能)
  • 「失業保険総額」と「停止される年金総額」を比較する
  • 再就職活動を実際に行う意思があるか確認する

4. 60〜64歳の基本手当の給付額と日数

4-1. 基本手当日額の計算方法(60〜64歳)

60歳以上65歳未満の方の基本手当日額は、以下のように計算します。

賃金日額 = 退職前6ヶ月の賃金合計(賞与を除く) ÷ 180日

賃金日額(w)給付率基本手当日額(y)
3,014円以上〜5,340円未満80%2,411円〜4,271円
5,340円以上〜11,800円以下80〜45%4,272円〜5,310円
11,800円超〜16,940円以下45%5,310円〜7,623円
16,940円超(上限額)7,623円(上限)

※2025年(令和7年)8月1日以降の基準額です。

4-2. 所定給付日数(60〜64歳)

退職理由1年以上5年未満5年以上10年未満10年以上20年未満20年以上
定年退職・自己都合90日90日120日150日
倒産・解雇等150日180日210日240日

倒産・解雇等による離職の場合は、給付日数が大幅に多くなります。

5. 65歳以降は別ルール - 高年齢求職者給付金なら年金と同時にもらえる

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5-1. 65歳以降は「併給OK」

65歳以降に退職した場合、雇用保険から支給されるのは「基本手当」ではなく高年齢求職者給付金です。

高年齢求職者給付金は一時金として支給され、老齢年金との併給が可能です。

つまり、65歳以降なら年金をもらいながら失業手当も受け取れます。

5-2. 高年齢求職者給付金の金額

被保険者であった期間給付日数
1年未満30日分
1年以上50日分

基本手当(最大150〜240日)と比べると日数は少ないですが、年金が止まらないのが大きなメリットです。

5-3. 64歳と65歳で退職した場合の比較

項目64歳で退職65歳で退職
受け取る給付基本手当(最大150日)高年齢求職者給付金(最大50日)
年金との併給不可(年金停止)可能(年金継続)
給付の形4週間ごとに支給一時金で一括支給
65歳前の退職を検討している方へ

64歳で退職すると基本手当(最大150日分)は多いものの年金が止まります。
65歳で退職すると高年齢求職者給付金(最大50日分)は少ないものの年金は止まりません。
どちらが有利かは、年金月額と基本手当日額のバランス次第です。

高年齢雇用継続給付の仕組みについては、以下の手続きガイドも参考にしてください。

6. 損しないための退職タイミングと戦略

6-1. 「64歳11ヶ月退職 → 65歳で申請」の戦略

一部では「64歳11ヶ月で退職し、65歳になってからハローワークに申請すれば、基本手当が年金と併給できる」という情報が見られます。

この点について整理します。

  • 離職日時点で64歳であれば、雇用保険上は「65歳未満」として基本手当の受給資格を得る
  • ただし、65歳の誕生日の前々日以前に離職していることが条件
  • 65歳になってから求職の申込みをしても、65歳以降の基本手当については年金との併給調整は行われない
受給期間に注意

失業保険の受給期間は、原則として退職日の翌日から1年間です。
65歳になるのを待ってから申請する場合、この1年の期限を超えないよう注意してください。
期限を過ぎると、残りの給付日数があっても受け取れなくなります。

6-2. 退職前にやるべきこと

退職前に以下を確認しておくと、最適な選択ができます。

  1. ねんきん定期便で年金額を確認する
    「ねんきんネット」や年金事務所で、特別支給の老齢厚生年金の見込額を確認
  2. ハローワークで基本手当日額の目安を把握する
    退職前6ヶ月の給与明細から賃金日額を試算
  3. 所定給付日数を確認する
    退職理由(定年 or 自己都合 or 会社都合)と被保険者期間で決まる
  4. 比較シミュレーションを行う
    「失業保険の総額」と「停止される年金の総額」を比較

よくある質問(FAQ)

Q. 求職の申込みをしただけで、まだ失業保険をもらっていなくても年金は止まりますか?

A. はい、求職の申込みをした月の翌月から年金は全額停止されます。

実際に基本手当を受け取ったかどうかに関係なく、ハローワークに求職の申込みをした時点で停止の対象になります。

ただし、給付制限期間など実際に基本手当を受けていない月については、失業給付の受給終了後に事後精算が行われ、年金が遡って支給されます。

Q. 自己都合退職の給付制限期間中も年金は停止されますか?

A. はい、停止されます。

自己都合退職の場合、原則1ヶ月の給付制限期間(2025年4月の雇用保険法改正で2ヶ月から短縮)の後に基本手当の支給が始まりますが、年金の停止は求職申込みの翌月から始まります。

ただし、この給付制限期間中は実際に基本手当を受けていないため、事後精算で年金が戻ってくる場合があります。

なお、5年間で3回以上の自己都合退職の場合は、給付制限期間が3ヶ月になります。

Q. 失業保険を全額もらい終わった後、年金はいつ再開しますか?

A. 基本手当の受給終了後、約3ヶ月程度で年金の支給が再開されます。

所定給付日数をすべて受け終わった月(または受給期間が経過した月)の翌月分から年金の支給停止が解除されます。

ただし、実際の振込みには事後精算の処理があるため、再開まで3ヶ月程度かかることがあります。

Q. 65歳前に繰上げ受給した老齢厚生年金も停止の対象ですか?

A. はい、対象です。

繰上げ受給した老齢厚生年金も、65歳前であれば失業給付との併給調整の対象になります。

繰上げ受給で年金が減額されたうえに停止もされるため、繰上げ受給を検討している方は特に慎重な判断が必要です。

まとめ

60〜64歳で退職する方にとって、失業保険と年金の併給調整は必ず知っておくべきルールです。

要点を整理します。

  • 特別支給の老齢厚生年金と失業保険(基本手当)は同時に受け取れない
  • ハローワークで求職の申込みをした月の翌月から年金が全額停止
  • 失業給付の受給終了後に事後精算で差額が戻る場合がある
  • 65歳以降に退職した場合は、高年齢求職者給付金と年金の併給が可能
  • 退職前に年金額と失業保険額を比較し、どちらが有利かをシミュレーションしておくことが大切

退職後の手続き全体の流れについては、以下の手続きガイドも参考にしてください。

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