高年齢求職者給付金とは?受給条件・計算方法・申請手続きを解説
「失業手当は65歳までしかもらえない」
「定年後に退職しても何ももらえないのでは?」
——そんなふうに思い込んでいませんか?
実は65歳以上で退職した場合でも、雇用保険から「高年齢求職者給付金」として一時金を受け取ることができます。
しかも老齢年金との同時受給が可能で、70歳以上でも年齢の上限なく申請できます。
この手続きガイドでは、高年齢求職者給付金の受給条件・金額の計算方法・ハローワークでの申請手続きまで、知っておきたいポイントをわかりやすく解説します。
高年齢求職者給付金とは?65歳以上の失業給付
高年齢求職者給付金とは、65歳以上の雇用保険被保険者が離職したときに受け取れる失業給付です。
雇用保険法第37条の2に基づく制度で、通常の失業保険(基本手当)が65歳未満を対象としているのに対し、65歳以上の方のために設けられた給付金です。
通常の失業保険(基本手当)との大きな違い
通常の失業保険(基本手当)と高年齢求職者給付金には、以下のような違いがあります。
| 項目 | 失業保険(基本手当) | 高年齢求職者給付金 |
|---|---|---|
| 対象年齢 | 65歳未満 | 65歳以上 |
| 支給方法 | 4週間ごとに分割支給 | 一時金として一括支給 |
| 支給日数 | 90日〜330日 | 30日 or 50日 |
| 年金との併給 | 不可(特別支給の老齢厚生年金) | 可能 |
| 認定回数 | 4週間ごとに失業認定 | 原則1回のみ |
一時金として一括で受け取れる
高年齢求職者給付金は、まとまった金額が一括で支給されます。
通常の失業保険のように何度もハローワークに通って失業認定を受ける必要がなく、原則として1回の認定で全額が振り込まれるため、手続きの負担が少ないのが特徴です。
年齢の上限なし — 70歳・80歳でも受給できる
高年齢求職者給付金には年齢の上限がありません。
65歳以上であれば、70歳でも80歳でも、雇用保険に加入して働いていた方が退職すれば受給の対象になります。
高年齢求職者給付金の受給条件
高年齢求職者給付金を受け取るには、以下の3つの条件をすべて満たす必要があります。
- 離職時に雇用保険に加入しており、65歳以上であること
雇用保険の「高年齢被保険者」として加入していた方が対象です。 - 離職日以前1年間に、被保険者期間が通算して6か月以上あること
雇用保険に加入していた期間のうち、賃金支払基礎日数が11日以上(または労働時間80時間以上)の月が6か月以上必要です。 - 失業の状態にあること
就職したいという積極的な意思と、いつでも就職できる能力があり、積極的に求職活動を行っているにもかかわらず就職できない状態のことです。
被保険者期間の数え方
被保険者期間は、離職日から1か月ごとに区切った期間のうち、以下の条件を満たす月を「1か月」としてカウントします。
- 賃金支払基礎日数が11日以上ある月
- 上記を満たす月が6か月ない場合、賃金支払の基礎となった時間が80時間以上の月
パートタイムで働いていた方でも、週20時間以上の勤務で雇用保険に加入していれば対象になる可能性があります。
受給できないケース
以下に該当する方は、条件を満たしていても高年齢求職者給付金を受給できません。
- 家事に専念する方
- 学業に専念する方
- 自営を開始した方、または自営準備に専念する方
- 次の就職がすでに決まっている方
- 週20時間未満の短時間就労のみを希望する方
- 会社の役員に就任している方(名義だけの場合も含む)
- 就職・就労中の方(試用期間を含む)
- 同一事業所で再雇用の予定がある方
高年齢求職者給付金は、求職活動を行う方を支援する制度です。
退職後に「もう働くつもりはない」という場合は受給の対象外になります。
ただし、フルタイムでなくても週20時間以上の仕事を探していれば問題ありません。
高年齢求職者給付金の計算方法
高年齢求職者給付金の支給額は、以下の計算式で求められます。
給付金額 = 基本手当日額 × 支給日数(30日 or 50日)
支給日数
被保険者であった期間(雇用保険の加入期間)に応じて決まります。
| 被保険者期間 | 支給日数 |
|---|---|
| 1年未満 | 30日分 |
| 1年以上 | 50日分 |
賃金日額の算出
まず「賃金日額」を計算します。
賃金日額 = 退職前6か月の賃金合計 ÷ 180
「賃金」には基本給のほか、通勤手当・残業手当・役職手当などの毎月支払われる手当を含みます。
ただし、賞与(ボーナス)や退職金など臨時に支払われた賃金は含みません。
基本手当日額の給付率
基本手当日額は、賃金日額に給付率(50%〜80%)を掛けて算出されます。
賃金日額が低い方ほど高い給付率が適用される仕組みです(令和7年8月1日以降の基準)。
| 賃金日額 | 給付率 | 基本手当日額 |
|---|---|---|
| 3,014円〜5,340円未満 | 80% | 2,411円〜4,271円 |
| 5,340円〜13,140円 | 80%〜50% | 4,272円〜6,570円 |
| 13,140円超〜14,510円 | 50% | 6,570円〜7,255円 |
| 14,510円超(上限) | — | 7,255円(上限) |
少しわかりにくい点ですが、65歳以上の方が高年齢求職者給付金を受給する場合、基本手当日額の計算には「29歳以下」の算定表が適用されます(厚生労働省の規定)。
60〜64歳の区分よりも給付率が有利になる場合があります。
具体的な計算例
例1: 月給15万円・被保険者期間1年以上の場合
- 賃金日額: 150,000円 × 6 ÷ 180 = 5,000円
- 給付率: 80%(賃金日額5,340円未満のため)
- 基本手当日額: 5,000円 × 80% = 4,000円
- 支給日数: 50日(被保険者期間1年以上)
- 給付金額: 4,000円 × 50日 = 200,000円
例2: 月給30万円・被保険者期間1年以上の場合
- 賃金日額: 300,000円 × 6 ÷ 180 = 10,000円
- 給付率: 約59%(計算式により算出)
- 基本手当日額: 約5,900円
- 支給日数: 50日(被保険者期間1年以上)
- 給付金額: 約5,900円 × 50日 = 約295,000円
例3: 月給40万円・被保険者期間1年未満の場合
- 賃金日額: 400,000円 × 6 ÷ 180 = 約13,333円
- 給付率: 50%(賃金日額13,140円超のため)
- 基本手当日額: 約6,667円
- 支給日数: 30日(被保険者期間1年未満)
- 給付金額: 約6,667円 × 30日 = 約200,000円
給付金額のかんたん計算ツール
高年齢求職者給付金と年金は同時にもらえる
高年齢求職者給付金の大きなメリットは、老齢年金と同時に受給できる点です。
通常の失業保険(基本手当)を受給すると、特別支給の老齢厚生年金が全額停止されてしまいます。
しかし高年齢求職者給付金は年金との併給調整の対象外のため、年金を受け取りながら給付金も一括で受け取ることができます。
具体的な収入イメージ
たとえば、月額15万円の老齢年金を受給している方が高年齢求職者給付金20万円を受け取った場合、給付金の支給月は年金と合わせて35万円の収入が得られることになります。
高年齢求職者給付金の申請手続きと必要書類
手続きの全体の流れ
- 退職する(離職票を受け取る)
- 住所地を管轄するハローワークで求職の申し込みをする
- 離職票を提出し、受給資格の決定を受ける
- 7日間の待期期間を経過する
- 失業認定日にハローワークへ行き、失業の認定を受ける
- 給付金が口座に振り込まれる(認定後約1〜2週間)
必要書類
ハローワークでの手続きに必要なものは以下のとおりです。
- 離職票-1、離職票-2
退職後に会社から届きます。
届くまで通常1〜2週間かかります。
- マイナンバーカード
持っていない場合は、「個人番号確認書類(通知カードなど)」と「身元確認書類(運転免許証など)」の2点が必要です。 - 証明写真1枚(タテ3.0cm × ヨコ2.4cm)
マイナンバーカードを提示する場合は省略できます。 - 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード
給付金の振込先として使用します。
離職票が届かなくても、ハローワークで仮受理してもらえる場合があります。
受給期限(離職日翌日から1年)があるため、届くのを待ち続けるより早めに相談しましょう。
申請場所
手続きは、住所地を管轄するハローワークで行います。
求職の申し込み自体はどのハローワークでも可能ですが、雇用保険の受給手続きは住所管轄のハローワークでしか行えません。
管轄のハローワークは厚生労働省「全国ハローワークの所在案内」で確認できます。
受給期限に注意
高年齢求職者給付金の受給期限は、離職日の翌日から1年間です。
手続きが遅れると、支給日数分の全額を受け取れなくなる場合があります。
退職後はできるだけ早めにハローワークで手続きを行いましょう。
自己都合退職と会社都合退職の違い
退職理由によって、給付金を受け取れるタイミングが異なります。
会社都合退職・定年退職の場合
7日間の待期期間を過ぎれば、失業認定日に認定を受けることで給付金が支給されます。
給付制限はありません。
自己都合退職の場合(2025年4月1日以降に離職)
7日間の待期期間に加え、原則1か月の給付制限があります。
この期間中は給付金を受け取ることができません。
| 退職理由 | 待期期間 | 給付制限 |
|---|---|---|
| 会社都合・定年退職 | 7日間 | なし |
| 自己都合(5年間で2回まで) | 7日間 | 1か月 |
| 自己都合(5年間で3回目以降) | 7日間 | 3か月 |
| 重大な理由による解雇 | 7日間 | 3か月 |
2025年3月31日以前に自己都合で退職した場合は給付制限が2か月でしたが、2025年4月1日以降に離職した場合は原則1か月に短縮されています。
以前より早く給付金を受け取れるようになりました。
高年齢求職者給付金を受給中のアルバイト
待期期間(7日間)のアルバイト
待期期間中は、アルバイトや就労を行うと待期期間が延長されます。
この期間中はアルバイトを控えましょう。
給付制限期間中のアルバイト
自己都合退職の給付制限期間中のアルバイトは可能です。
ただし、週20時間以上の就労は「就職」とみなされ、受給資格を失う可能性があります。
認定日以降のアルバイト
失業の認定を受けた後(給付金が支給された後)は、アルバイトについて制限はありません。
高年齢求職者給付金は一時金のため、通常の失業保険のように「就労日数分が減額される」仕組みではありません。
混同しやすい制度との違い
高年齢求職者給付金は名前が似た制度と混同されることがあります。
高年齢雇用継続給付金との違い
| 項目 | 高年齢求職者給付金 | 高年齢雇用継続給付金 |
|---|---|---|
| 対象年齢 | 65歳以上 | 60歳〜65歳未満 |
| 対象状況 | 退職して失業中 | 在職中(賃金が下がった場合) |
| 支給方法 | 一時金(一括) | 在職中に毎月支給 |
| 目的 | 再就職までの生活支援 | 賃金低下の補填 |
通常の失業保険(基本手当)との違い
通常の失業保険(基本手当)は65歳未満が対象で、支給日数が90日〜330日と長く、4週間ごとに分割で支給されます。
高年齢求職者給付金は支給日数が最大50日分と少ない一方、年金との併給が可能で手続きが簡単という特徴があります。
よくある質問(FAQ)
Q. 定年退職でも高年齢求職者給付金を受給できますか?
A. 受給できます。
定年退職は「会社都合」と同様の扱いとなるため、7日間の待期期間後に給付制限なく受給できます。
ただし、定年退職後に同じ会社で再雇用される場合は、失業状態にならないため受給できません。
再雇用期間を経て最終的に退職する場合は、その時点で受給資格を確認してください。
Q. 何歳まで受給できますか?
A. 年齢の上限はありません。
65歳以上であれば、70歳でも80歳でも、雇用保険に加入して働いていた方が退職すれば受給の対象です。
Q. パートやアルバイトで働いていた場合も対象になりますか?
A. 雇用保険に加入していれば対象です。
週20時間以上、31日以上の雇用見込みがある場合、パートやアルバイトでも雇用保険に加入します。
雇用保険に加入していたかどうかは、給与明細で「雇用保険料」が控除されているかで確認できます。
Q. 手続きはいつまでにすればいいですか?
A. 離職日の翌日から1年以内です。
これが受給期限となります。
手続きが遅れると、待期期間や給付制限期間を差し引いた結果、全額を受け取れなくなることがあります。
退職後、離職票が届いたらできるだけ早くハローワークで手続きしましょう。
Q. 受給中に再就職が決まったらどうなりますか?
A. すでに支給された給付金を返還する必要はありません。
高年齢求職者給付金は一時金として一括支給されるため、支給後に再就職が決まっても返還の必要はありません。
ただし、失業認定前に就職が決まった場合は、認定日前日までの失業日数分のみが支給されます。
Q. 複数の会社を掛け持ちしていた場合はどうなりますか?
A. メインの雇用先で雇用保険に加入していた場合が対象です。
雇用保険は原則として1つの事業所でのみ加入するため、その事業所を離職した場合に受給対象となります。
ただし、65歳以上の方には「雇用保険マルチジョブホルダー制度」(2022年1月〜)があります。
1社あたり週20時間未満でも、2社合計で週20時間以上(各社5時間以上20時間未満)であれば雇用保険に加入でき、いずれかの事業所を離職した場合に高年齢求職者給付金の受給対象になります。
詳しくは厚生労働省「雇用保険マルチジョブホルダー制度」をご確認ください。
まとめ
高年齢求職者給付金は、65歳以上で退職した方が受け取れる雇用保険の給付金です。
最後に、知っておきたいポイントを整理します。
- 65歳以上で雇用保険に加入していた方が退職すれば、年齢の上限なく受給できる
- 受給条件は「被保険者期間6か月以上」「失業の状態にある」こと
- 給付金額は30日分(被保険者期間1年未満)または50日分(1年以上)の一時金
- 老齢年金との同時受給が可能(通常の失業保険にはないメリット)
- 2025年4月以降、自己都合退職の給付制限が原則1か月に短縮
- 受給期限は離職日翌日から1年 — 早めの手続きが大切
「失業手当は65歳で終わり」と思い込んで申請しない方も多い制度ですが、知っていれば数十万円の給付を受けられる可能性があります。
退職後はぜひハローワークに相談してみてください。