退職後に扶養に入る手続きガイド — 条件・必要書類・届出の流れ
「退職後の健康保険、どうすればいいんだろう…」と不安を感じていませんか?
退職すると、会社で加入していた社会保険(健康保険・厚生年金)の資格を失います。
その後の健康保険の選択肢は3つありますが、配偶者や親が会社員であれば社会保険の扶養に入るのが最もお得です。
扶養に入ると、健康保険料も国民年金保険料も自己負担がゼロになります。
この手続きガイドでは、退職後に配偶者や親の社会保険の扶養に入るための条件、必要書類、届出の流れ、そして失業保険(雇用保険の基本手当)との関係までわかりやすく解説します。
1. 退職後の健康保険は3つの選択肢がある
退職すると、翌日から会社の健康保険が使えなくなります。
次の健康保険を自分で選んで加入する必要があります。
| 選択肢 | 保険料 | 手続き先 | 届出期限 |
|---|---|---|---|
| 家族の社会保険の扶養に入る | なし(0円) | 扶養する家族の勤務先 | 退職日翌日から5日以内 |
| 国民健康保険に加入する | 前年所得等で算出(全額自己負担) | 市区町村の国保担当窓口 | 退職日翌日から14日以内 |
| 任意継続する | 退職前の保険料の約2倍(全額自己負担・上限あり) | 協会けんぽ(都道府県支部)または健保組合 | 退職日翌日から20日以内 |
扶養に入ると保険料の自己負担がゼロです。
さらに配偶者の扶養に入る場合は、国民年金の保険料(月額17,920円・2026年度)も不要になります。
条件を満たすなら、まず扶養に入ることを検討しましょう。
扶養に入れない場合の手続きは、以下の手続きガイドで詳しく解説しています。
2. 社会保険の扶養に入る条件
社会保険(健康保険)の扶養に入るには、親族の範囲と収入の条件の両方を満たす必要があります。
「扶養」には社会保険上の扶養と税制上の扶養(配偶者控除・扶養控除)の2種類があります。
この手続きガイドで解説しているのは社会保険上の扶養(健康保険・年金)です。
税制上の扶養控除は年末調整や確定申告で手続きします。
2-1. 対象となる親族の範囲
被保険者(扶養する側)から見て、以下の親族が対象です。
同居していなくても扶養に入れる人
- 配偶者(内縁関係を含む)
- 子、孫
- 兄弟姉妹
- 父母、祖父母などの直系尊属
同居が条件の人
- 上記以外の三親等内の親族(おじ・おば、甥・姪など)
- 内縁の配偶者の父母・子
配偶者や子、父母などの直系の親族は、別居でも扶養に入ることが可能です。
ただし、別居の場合は被保険者からの仕送りで生計を維持していることが条件になります。
2-2. 収入の条件(年間収入の基準)
扶養に入るには、年間収入が以下の基準額未満であることが必要です。
| 対象者 | 年間収入の基準 |
|---|---|
| 60歳未満の人(一般) | 130万円未満 |
| 60歳以上の人 | 180万円未満 |
| 障害厚生年金を受けられる程度の障害がある人 | 180万円未満 |
| 19歳以上23歳未満の人(配偶者を除く) | 150万円未満(2025年10月〜) |
さらに、被保険者(扶養する側)との収入の関係も確認されます。
- 同居の場合
被扶養者の年間収入が、被保険者の年間収入の2分の1未満 - 別居の場合
被扶養者の年間収入が、被保険者からの仕送り額より少ない
2-3. 退職時に年収130万円を超えていても大丈夫?
退職時点ですでに年収が130万円を超えていても、扶養に入れる可能性があります。
社会保険の扶養認定では、過去の収入ではなく「今後の見込み年収」で判定するのが原則です。
退職して今後の収入がなくなる(またはごくわずかになる)のであれば、退職時点の年収が130万円を超えていても認定される場合がほとんどです。
退職金は一時的な収入であり、通常は年間収入には含みません。
ただし、健康保険組合によって判定基準が異なるため、念のため扶養する側の勤務先に確認してください。
2-4. 2026年4月からの「130万円の壁」判定変更
2026年4月から、社会保険の扶養認定のルールが一部変更されました。
これまでは実際の収入実績や見込みで判定されていましたが、労働契約書(労働条件通知書)に記載された年収で判定する方式に変わりました。
- 契約上の年収が130万円未満であれば、一時的な残業で超えても原則として扶養にとどまれる
- 残業代(時間外手当)は、契約で明示されていない限り年間収入に含めなくてよい
- ただし、通勤手当は全額が年間収入に含まれる(所得税の非課税扱いとは異なる)
この改正は主にパートやアルバイトで働き続ける方向けのルール変更です。
退職して無収入になる方が扶養に入る場合は、従来どおり「収入なし」として認定されます。
3. 退職後に扶養に入る手続きの流れ
3-1. 退職前にやっておくこと
退職後にスムーズに扶養の手続きを進めるために、在職中に以下を準備しておきましょう。
- 退職後は家族の扶養に入ることを、扶養する側の勤務先に事前に伝えておく
- 退職する会社に以下の書類の発行を依頼する
- 雇用保険被保険者離職票(離職票)
- 健康保険資格喪失証明書(退職証明書でも可)
- 退職日に健康保険証を会社に返却する
離職票は退職後にハローワークを経由して発行されるため、届くまでに2〜3週間かかることがあります。
事前に会社に「なるべく早く発行してほしい」と伝えておきましょう。
3-2. 退職後の手続きステップ
- 扶養する側(配偶者や親)の勤務先に「家族を扶養に入れたい」と申し出る
- 勤務先から届出用紙を受け取り、必要事項を記入する
- 添付書類をそろえて勤務先に提出する
- 勤務先が「健康保険被扶養者(異動)届 兼 国民年金第3号被保険者関係届」を年金事務所(日本年金機構)に届け出る
- 審査・認定後、新しい保険証(またはマイナ保険証の資格情報)が届く
届出の期限は、扶養の事実が発生した日(退職日の翌日)から5日以内です。
5日以内というのは被保険者の勤務先(事業主)が届け出る期限ですが、書類の準備は早めに進めましょう。
退職日が決まっている方は、以下で各手続きの期限日を自動計算できます。
3-3. 必要書類チェックリスト
扶養に入る手続きで必要な書類は以下のとおりです。
- 健康保険被扶養者(異動)届 兼 国民年金第3号被保険者関係届
扶養する側の勤務先から用紙を受け取るか、日本年金機構のサイトからダウンロードできます
- 退職証明書 または 雇用保険被保険者離職票のコピー
退職して収入がなくなったことの証明に使います - 戸籍謄本(抄本)または住民票
被保険者との続柄を確認するために必要です(発行から90日以内のもの) - 被扶養者のマイナンバーが確認できるもの
届出書にマイナンバーの記載欄があります - 収入を証明する書類(必要に応じて)
非課税証明書、年金の受取額がわかる書類など
離職票や資格喪失証明書が届かない場合は、以下の方法で代替できます。
- 退職証明書
退職した会社に発行を依頼(離職票より早く取得できる場合が多い) - 健康保険資格喪失証明書
年金事務所でも発行してもらえます - 書類の到着前でも、扶養する側の勤務先に事情を伝えて手続きを進められる場合があります
4. 健康保険と年金の手続きは同時にできる
退職後に配偶者の扶養に入る場合、健康保険だけでなく国民年金の手続きも同時に完了します。
4-1. 1枚の届出で2つの手続きが完了
「健康保険被扶養者(異動)届」と「国民年金第3号被保険者関係届」は、一体化した1枚の様式になっています。
つまり、配偶者の勤務先に届出を提出するだけで、以下の2つの手続きが同時に完了します。
- 健康保険
配偶者の被扶養者として健康保険に加入 - 国民年金
国民年金第3号被保険者として届出
4-2. 第3号被保険者とは?
国民年金の第3号被保険者とは、厚生年金に加入している配偶者(第2号被保険者)に扶養されている、20歳以上60歳未満の方のことです。
第3号被保険者のメリットは大きく2つあります。
- 保険料の自己負担がゼロ
国民年金保険料(月額17,920円・2026年度)を自分で払う必要がありません - 将来の年金を受け取れる
保険料を納めていなくても、国民年金の加入期間として計算され、老齢基礎年金を受け取れます
第3号被保険者になれるのは配偶者の扶養に入る場合のみです。
親の扶養に入る場合は第3号被保険者にはなれないため、国民年金は自分で加入(第1号被保険者)し、保険料を納める必要があります。
5. 失業保険(雇用保険の基本手当)と扶養の関係
退職後に失業保険(雇用保険の基本手当)を受給する予定がある方は、扶養との関係に注意が必要です。
5-1. 基本手当日額3,612円がボーダーライン
失業保険の基本手当日額が3,612円以上(60歳以上は5,000円以上)の場合、受給期間中は扶養に入ることができません。
これは、日額3,612円 × 360日 = 年間約130万円に相当し、収入の条件(年間130万円未満)を超えるためです。
基本手当日額は、ハローワークで発行される「雇用保険受給資格者証」に記載されています。
離職前6か月の賃金をもとに計算されるため、退職前の給与水準でおおよその目安がわかります。
5-2. 時期別の扶養の可否
失業保険の手続きには、受給開始前にいくつかの期間があります。
時期ごとの扶養の可否を整理すると以下のとおりです。
| 期間 | 扶養 | 説明 |
|---|---|---|
| 待機期間(7日間) | ○ | 受給開始前の待機のため、収入はゼロ |
| 給付制限期間(自己都合退職:原則1か月) | ○ | まだ基本手当は支給されていない |
| 受給期間(基本手当日額3,612円以上) | × | 受給中は年間130万円以上の収入と見なされる |
| 受給終了後 | ○ | 収入がなくなるため、再度扶養に入れる |
5-3. おすすめのパターン(自己都合退職の場合)
自己都合退職の場合は、給付制限期間が原則1か月あります。
その間は基本手当が支給されないため、以下のように手続きするのがお得です。
- 退職後すぐに扶養に入る(待機期間・給付制限期間中は扶養OK)
- 失業保険の受給が始まったら扶養を外れる(基本手当日額3,612円以上の場合)
- 受給期間中は国民健康保険・国民年金に加入する
- 受給が終了したら再度扶養に入る
失業保険の受給開始・終了のタイミングで、扶養の「追加」「削除」の届出がそれぞれ必要です。
届出を忘れると、後から保険料の未納や医療費の返還を求められることがあります。
5-4. 会社都合退職の場合
会社都合退職(倒産・解雇など)の場合は、給付制限期間がなく、待機期間7日間を経過するとすぐに受給が始まります。
基本手当日額が3,612円以上の場合、退職後すぐには扶養に入れない(入っても短期間で外れる)ことになります。
このため、会社都合退職で日額が3,612円以上の場合は、退職後すぐに国民健康保険・国民年金に加入し、受給終了後に扶養に入る方がスムーズです。
6. 手続き中に資格情報が使えない期間はどうする?
退職してから扶養の認定が完了するまでの間に、病院を受診する必要が出てくることがあります。
従来の健康保険証は2024年12月2日に新規発行が終了し、現在はマイナ保険証(マイナンバーカードの健康保険証利用)または資格確認書で医療機関を受診する仕組みに変わっています。
6-1. 扶養認定は退職日翌日に遡って適用
扶養の認定は、届出が受理されれば退職日の翌日に遡って適用されます。
そのため、資格情報が反映される前に医療機関を受診した場合でも、後から精算することが可能です。
6-2. マイナ保険証を利用している場合
マイナ保険証(マイナンバーカードに健康保険証の利用登録をしたもの)を利用している方は、扶養の届出が受理されると資格情報が自動的に更新されます。
ただし、届出から資格情報がオンラインシステムに反映されるまで10日前後かかることがあります。
資格情報が反映される前に受診が必要な場合は、以下の方法で対応してください。
- 健康保険被保険者資格証明書を扶養する側の勤務先に発行してもらう
マイナンバーカードとあわせて提示することで保険診療を受けられます - 資格情報のお知らせが届いている場合は、マイナンバーカードとあわせて医療機関に提示する
- 上記の書類がない場合は、いったん医療費の全額(10割)を支払い、資格情報が反映されてから保険者に申請して7割分の還付を受けます
6-3. 資格確認書を利用する場合
マイナンバーカードを持っていない方や、健康保険証の利用登録をしていない方には、扶養認定後に保険者から資格確認書が交付されます。
資格確認書は従来の保険証と同様に、医療機関の窓口に提示するだけで保険診療を受けられます。
資格確認書が届く前に受診が必要な場合は、以下の方法で対応してください。
- 健康保険被保険者資格証明書を扶養する側の勤務先に発行してもらう
資格確認書が届くまでの間、保険診療を受けるために使えます - 資格証明書がない場合は、いったん医療費の全額(10割)を支払い、資格確認書が届いてから医療機関や保険者に申請して7割分の還付を受けます
マイナ保険証の場合、資格情報の反映には10日前後かかります。
資格確認書の場合は、届くまでに1〜2週間程度です。
急ぎで受診が必要な場合は、勤務先に健康保険被保険者資格証明書の発行を依頼しましょう。
よくある質問(FAQ)
Q. 退職からいつまでに手続きすればいい?
A. できるだけ早く、退職日翌日から5日以内が目安です。
被扶養者(異動)届は、事実発生日(退職日の翌日)から5日以内に届出するのが原則です。
ただし、5日を過ぎたからといって扶養に入れなくなるわけではありません。
届出が遅れると、認定日が届出日になる場合や、遅延理由の申立書を求められることがあります。
書類がそろわなくても、まず扶養する側の勤務先に相談しましょう。
Q. 離職票や資格喪失証明書が届かない場合はどうする?
A. 退職証明書で代替するか、年金事務所で資格喪失証明書を発行してもらえます。
離職票の発行はハローワーク経由のため、届くまでに2〜3週間かかることがあります。
急ぎの場合は以下の方法を検討してください。
- 退職した会社に退職証明書の発行を依頼する(離職票より早く取得できることが多い)
- 年金事務所で健康保険資格喪失証明書を発行してもらう(会社が資格喪失届を提出済みの場合)
- 書類が届き次第あとから提出することを扶養する側の勤務先に相談する
Q. 市役所での手続きは必要?
A. 扶養に入る場合は、原則として市役所での手続きは不要です。
扶養の手続きは、被保険者(扶養する側)の勤務先を通じて行います。
市区町村の窓口で手続きが必要なのは、国民健康保険に加入する場合です。
ただし、退職前に国民健康保険に加入していた方が扶養に入る場合は、国保の脱退届を市区町村の窓口に提出する必要があります。
Q. 親の扶養に入る場合も手続きは同じ?
A. 手続きの流れは基本的に同じです。
親が会社員で社会保険の被保険者であれば、親の勤務先に被扶養者(異動)届を提出します。
ただし、以下の点が配偶者の場合と異なります。
- 国民年金の第3号被保険者にはなれない(自分で国民年金に加入し保険料を払う必要がある)
- 年間収入の基準は同じ(130万円未満)
- 同居していない場合は、親からの仕送りで生計を維持していることの証明が必要
Q. 扶養に入った後に再就職したらどうなる?
A. 再就職先で社会保険に加入する場合は、扶養から外れる手続きが必要です。
再就職して自分自身が社会保険に加入する場合は、速やかに扶養削除(非該当)の届出を行ってください。
パートやアルバイトで社会保険に加入しない場合でも、年間収入が130万円以上になる見込みであれば、扶養から外れる手続きが必要です。
扶養から外れるときの手続きは、以下の手続きガイドで詳しく解説しています。
まとめ
退職後に家族の社会保険の扶養に入ると、健康保険料の自己負担がゼロになります。
配偶者の扶養であれば国民年金保険料も不要になるため、経済的なメリットが大きい選択肢です。
手続きのポイントをまとめます。
- 手続き先
扶養する側(配偶者・親)の勤務先に届出 - 届出書類
「健康保険被扶養者(異動)届 兼 国民年金第3号被保険者関係届」と添付書類 - 届出期限
退職日翌日から5日以内(早めの準備が大切) - 収入条件
年間収入130万円未満(見込み年収で判定。退職前の年収が超えていても可) - 失業保険との関係
基本手当日額3,612円以上なら受給中は扶養に入れない。待機期間・給付制限期間中は扶養OK
退職前に必要な書類(離職票・資格喪失証明書)を会社に依頼しておくと、手続きがスムーズに進みます。