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相続放棄の手続き完全ガイド - 期限・費用・自分でやる方法まで徹底解説

相続放棄の手続き完全ガイド - 期限・費用・自分でやる方法まで徹底解説
最終更新:2026年4月17日

「故人に借金があることがわかった…」
「疎遠だった親族の相続人になってしまった…」

そんなとき、借金などのマイナスの財産を引き継がないための手続きが「相続放棄」です。

ただし、3ヶ月という厳しい期限があり、プラスの財産もすべて放棄することになるため、慎重な判断が必要です。

この手続きガイドでは、自分で手続きする方法から専門家に依頼する場合の費用まで、相続放棄のすべてをわかりやすく解説します。

身近な方が亡くなった直後の手続き全体については以下の手続きガイドもあわせてご確認ください。

1. 相続放棄とは?まず知っておくべき基本

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手続きを始める前に、必ず知っておくべき大切なルールがあります。

これを知らないまま進めてしまうと、取り返しのつかないことになる可能性もあるため、しっかり確認しましょう。

1.1. プラスの財産もマイナスの財産も「すべて」放棄すること

相続放棄は、「借金だけを放棄して、実家や預金は相続する」といった、都合の良い部分だけを選ぶことはできません。

相続放棄が認められると、その方は初めから相続人ではなかったとみなされ、プラスの財産もマイナスの財産も、一切の相続権を失います。

1.2. 期限は原則「3ヶ月」(いつから数える?)

相続放棄ができる期間は、「ご自身のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」と法律で厳しく定められています。

この「知った時」というのがポイントで、多くは「故人が亡くなった日」ですが、後から自分が相続人だと知った場合は、その知った日からカウントが始まります。

具体的にいつから数える?

  • 一般的なケース:
    • 故人の配偶者や子: 死亡を知った日から
    • 疎遠だった親族: 自分が相続人になったことを知った日から
  • 例えば:
    • 疎遠だった叔父が3月に死亡
    • その後、第一順位・第二順位の相続人が全員放棄
    • 7月にあなたに「相続人になった」と連絡が来た
    • この場合、7月から3ヶ月がカウント開始

この3ヶ月という期間は非常に短いため、迅速な判断と行動が求められます。

1.3. 一度行うと「撤回はできない」

一度、家庭裁判所で相続放棄の手続きが受理されると、後から「やはり価値のある財産が見つかったから相続したい」と思っても、原則として撤回することはできません。

そのため、手続きは慎重に進める必要があります。

1.4. よくある誤解を解消しておこう

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相続放棄について、以下のような誤解をしている方が多くいらっしゃいます。

誤解1: 配偶者は相続放棄できない

⭕正しい情報

配偶者も相続放棄できます。

配偶者は常に相続人となりますが、相続放棄の手続きをすれば、他の相続人と同様に放棄が可能です。

誤解2: 相続放棄すると死亡保険金も受け取れない

⭕正しい情報

死亡保険金の受取人として指定されていれば、相続放棄をしても保険金を受け取れます。

ただし、相続人としての非課税枠(500万円×法定相続人の数)は使えません。

故人がどの保険会社と契約していたか分からない場合は、生命保険契約照会制度を利用して調べることもできます。

誤解3: 葬儀費用を払うと相続放棄できない

⭕正しい情報

社会通念上相当な範囲の葬儀費用を支払っても、相続放棄は可能です。

ただし、高額すぎる葬儀は「単純承認」とみなされる可能性があるため注意が必要です。

「単純承認」とは?
相続財産を使ったり処分したりすることで、「相続を承認した」とみなされることです。 単純承認とみなされると、その後に相続放棄をすることができなくなります。

例えば以下のような行為は単純承認とみなされる可能性があります:

  • 故人の預金を引き出して自分のために使う
  • 故人の不動産を売却する
  • 故人の借金の一部を支払う
  • 遺産分割協議に参加する

誤解4: 相続放棄すれば一切の義務から解放される

注意

相続放棄をしても、相続財産を「現に占有」している場合は、次の管理者に引き渡すまで保存義務が残ります。

2023年4月の民法改正により、この義務の範囲が明確になりました。

改正前は、相続放棄をした全員に管理義務が及ぶ可能性がありましたが、改正後は相続放棄の時点で財産を「現に占有」している方のみが対象です。

例えば、故人と別居していて実家の鍵も持っていなければ、相続放棄後に管理義務を負う可能性は低くなります。

詳しくは「5. 相続放棄後の管理義務(保存義務)」で解説しています。

誤解5: 生前に相続放棄の手続きができる

⭕正しい情報

相続放棄は、被相続人(故人)が亡くなった後にしかできません。

「親が多額の借金を抱えている。今のうちに相続放棄しておきたい」と考える方は少なくありませんが、法律上、生前に相続放棄を行うことはできません。

生前に「相続しません」と書いた念書や契約書を作成しても、法的な効力はありません。

生前にできる対策としては、以下のような方法があります:

  • 遺言書の作成
    被相続人が遺言書を作成し、特定の相続人に財産を渡さない旨を記載する
  • 生前贈与
    生前に財産を整理し、必要な方に贈与しておく
  • 債務整理
    借金がある場合、生前に債務整理を検討する

誤解6: 家族間で「放棄する」と口頭で伝えれば有効

⭕正しい情報

口頭での宣言や、家族間での合意だけでは相続放棄は成立しません。

相続放棄は、必ず家庭裁判所に申述書を提出して受理される必要があります。

「兄弟で話し合って、自分は相続しないことにした」だけでは、法的には相続人のままです。

債権者(お金を貸した側)から見れば、裁判所での手続きを経ていない「放棄」は無効であり、借金の返済を求められる可能性があります。

2. 相続放棄の手続きの流れ【自分でやる場合】

ご自身で手続きを行う場合の、基本的な5つのステップをご紹介します。

2.1. 必要書類の収集(ここが一番大変!)

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相続放棄の手続きで、多くの方が最も苦労するのがこの書類収集です。

特に、出生から死亡までの連続した戸籍謄本の取得は、想像以上に時間と手間がかかります。

なぜ「出生から死亡まで」の戸籍が必要なのか?

相続人を確定するため、故人が生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍を確認する必要があります。

これにより、知られていない子供がいないか、養子縁組の記録がないかなどを確認します。

戸籍謄本の種類と取得の流れ

戸籍には以下の種類があります:

  • 戸籍謄本
    現在の戸籍
  • 除籍謄本
    戸籍から全員が除かれた(死亡・転籍など)戸籍
  • 改製原戸籍
    法改正で様式が変わる前の戸籍

故人が生まれてから亡くなるまでの間に、結婚・転籍・法改正などで戸籍が複数に分かれているため、すべてを集める必要があります。

戸籍謄本の取得方法

1. 最新の戸籍から遡っていく

まず、故人の死亡時の本籍地の役所で「死亡の記載のある戸籍謄本」を取得します。

その戸籍に「従前の本籍」が記載されていれば、その役所で次の戸籍を取得...と繰り返します。

2. 遠方の役所への請求方法

本籍地が遠方の場合、郵送で請求できます。

必要なもの:

  • 戸籍交付申請書(役所のウェブサイトからダウンロード可)
  • 本人確認書類のコピー(運転免許証など)
  • 定額小為替(手数料分。郵便局で購入)
  • 返信用封筒(切手を貼付)
3. 取得にかかる期間
  • 窓口請求: 即日
  • 郵送請求: 往復で1〜2週間

本籍地が複数ある場合、すべての戸籍を集めるのに1ヶ月以上かかることもあります。

取得費用の目安

  • 戸籍謄本:
    450円
  • 除籍謄本・改製原戸籍:
    750円
  • 住民票除票:
    300円〜400円

※自治体によって異なります

故人の戸籍が3〜5通必要なケースが多く、合計で3,000円〜5,000円程度かかります。

注意点
  • 3ヶ月の期限があるため、早めに取り掛かることが重要
  • 戸籍が読みにくい(旧字体・手書き)場合があり、解読に時間がかかることも
  • 本籍地が海外にあった場合など、特殊なケースは専門家に相談を

あなたが相続放棄する立場によって必要な戸籍の範囲が異なります

用語の説明:

  • 被相続人
    亡くなった方(故人)のこと
  • 申述人
    相続放棄の手続きをする方(あなた)のこと
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2.2. 「相続放棄の申述書」の作成

裁判所のウェブサイトから書式(フォーマット)をダウンロードし、必要事項を記入します。

メディアを読み込み中...

申述書には、申述の理由として「債務超過のため」など、なぜ相続放棄をするのかを具体的に記載する欄があります。

2.3. 家庭裁判所への申し立て

故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に、集めた書類と申述書、所定の収入印紙と郵便切手を添えて提出します。

持参または郵送で提出できます。

管轄の家庭裁判所を調べる

相続放棄の申し立ては、故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に行います。

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2.4. 裁判所からの照会書に回答

申し立てから1〜2週間ほどで、裁判所からご自宅に「照会書(回答書)」という書類が届きます。

これは、
「本当にご自身の意思で放棄しますか?」
「故人の財産を使ったりしていませんか?」
といった内容の確認書です。

内容をよく読み、署名・捺印して返送します。

2.5. 「相続放棄申述受理通知書」の受け取り

照会書を返送して問題がなければ、裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が郵送されてきます。

この通知書が、相続放棄が正式に認められた公的な証明書となります。

債権者(お金を貸した側)から連絡があった際に提示を求められることがあるため、大切に保管してください。

2.6. 実際のタイムライン例

相続放棄の手続きには、実際にどれくらいの時間がかかるのでしょうか?

一般的なタイムラインをご紹介します。

ケース1: スムーズに進んだ場合(約1ヶ月半)

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ケース2: 本籍地が複数ある場合(約2ヶ月)

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⚠️ 3ヶ月の期限との兼ね合い

上記のように、手続きには最短でも1ヶ月、通常は1.5〜2ヶ月かかります。

3ヶ月の期限との兼ね合いを考えると、できるだけ早く着手することが重要です。

特に、以下のようなケースでは時間がかかりやすいため注意が必要です:

  • 故人の本籍地が複数ある
  • 故人が何度も転籍している
  • 海外に在住していた時期がある
  • 戸籍が戦災などで消失している

期限が心配な場合は、早めに専門家に相談することをおすすめします。

3. 3ヶ月の期限に間に合わない場合は?

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「3ヶ月の期限内に、相続するか放棄するか決められない...」

そんな場合でも、諦める必要はありません。

3.1. 期間伸長の申し立て

相続財産の調査に時間がかかるなど、3ヶ月以内に判断できない場合、家庭裁判所に「相続の承認又は放棄の期間の伸長」を申し立てることができます。

いつまでに申し立てる?

3ヶ月の期限が来る前に申し立てる必要があります。

期限ギリギリではなく、余裕を持って早めに申し立てることをおすすめします。

どれくらい延長できる?

通常、1〜3ヶ月程度の延長が認められます。

ケースによっては、さらに長期の延長や、再度の延長も可能な場合があります。

必要な書類

  • 申立書
  • 被相続人の住民票除票または戸籍附票
  • 伸長を求める相続人の戸籍謄本
  • 利害関係を証する資料(ある場合)

費用

  • 収入印紙: 800円(申述人1人につき)
  • 郵便切手: 裁判所による

3.2. 期限を過ぎてしまった場合の対処法

「すでに3ヶ月を過ぎてしまった...もう相続放棄はできないの?」

実は、期限を過ぎていても相続放棄が認められるケースがあります。

「相続の開始があったことを知った時」とは?

法律では、期限は「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月」と定められています。

この「知った時」の解釈によって、期限を過ぎていても放棄が認められる可能性があります。

認められる可能性があるケース:

  • 故人と疎遠で、死亡を知らなかった
  • 自分が相続人になることを知らなかった
  • 故人に借金があることを知らなかった(かつ、知らなかったことに相当な理由がある)

どうすればいい?

期限を過ぎてしまった場合は、速やかに弁護士に相談してください。

弁護士が状況を精査し、相続放棄が認められる可能性を判断します。

可能性がある場合は、事情を説明する上申書を添えて家庭裁判所に申し立てます。

注意

期限を過ぎた後の相続放棄は、必ず認められるわけではありません。
早めの行動が重要です。

4. 自分でやる?専門家に頼む?メリット・デメリットと費用

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相続放棄は自分でもできますが、専門家(弁護士や司法書士)に依頼することも可能です。

どちらが良いか、メリット・デメリットを比較してみましょう。

4.1. 自分でやる場合

  • メリット:
    • 費用を圧倒的に安く抑えられる
    • かかるのは実費のみ
  • デメリット:
    • 手間と時間がかかる(特に戸籍謄本の収集)
    • 書類の不備リスク
    • 精神的な負担(裁判所とのやり取り、債権者への対応)

実費の詳細な内訳

相続放棄を自分で行う場合、以下の実費がかかります。

項目金額備考
収入印紙800円申述人1人につき
郵便切手数百円裁判所による(300円〜500円程度)
戸籍謄本450円/通通常3〜5通必要
除籍謄本・改製原戸籍750円/通通常2〜4通必要
住民票除票300円〜400円自治体による
郵送料数百円遠方の役所への請求の場合
合計5,000円〜10,000円程度-

ポイント:

  • 相続人の順位が下位になるほど、必要な戸籍が増え、費用も高くなります
  • 遠方の役所への郵送請求が多い場合、郵送料がかさみます

4.2. 専門家に依頼する場合

  • メリット:
    • 手続きをすべて任せられる
    • 正確・迅速
    • 複雑なケースにも対応可能
    • 債権者への窓口になってもらえる(弁護士の場合)
  • デメリット:
    • 費用がかかる

専門家報酬の相場と内訳

司法書士に依頼する場合
項目金額
基本報酬3万円〜5万円
戸籍謄本等の取得代行1万円〜2万円
実費(収入印紙・切手・戸籍代)5,000円〜10,000円
合計5万円〜8万円程度
弁護士に依頼する場合
項目金額
基本報酬5万円〜10万円
戸籍謄本等の取得代行1万円〜2万円
実費(収入印紙・切手・戸籍代)5,000円〜10,000円
債権者対応(追加)3万円〜5万円
合計7万円〜15万円程度
追加費用が発生するケース
  • 相続人が複数いる場合:
    1人につき追加で1万円〜3万円
  • 債権者が多数いる場合:
    債権者対応の費用が追加
  • 期限が迫っている場合:
    緊急対応料が加算されることも
  • 財産調査が必要な場合:
    調査費用が追加

司法書士と弁護士、どちらに頼む?

  • 司法書士のメリット:
    • 費用が比較的安い
    • 書類作成のプロフェッショナル
  • 弁護士のメリット:
    • 債権者との交渉を任せられる
    • トラブルが発生した場合も対応可能
    • 法律相談を総合的にできる
  • 選び方の目安:
    • シンプルなケース(債権者からの連絡がない):
      → 司法書士
    • 債権者から連絡が来ている:
      → 弁護士
    • トラブルが予想される:
      → 弁護士
    • 他の相続人ともめている:
      → 弁護士

4.3. 専門家を探す

相続放棄の手続きを専門家に依頼する場合、どうやって探せばよいのでしょうか?

お住まいの地域で専門家を探す

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専門家を選ぶポイント

1. 相続問題の実績があるか

相続放棄は特殊な手続きです。

相続問題の経験が豊富な専門家を選びましょう。

2. 費用を明確に説明してくれるか

見積もりの段階で、費用の内訳を明確に説明してくれる専門家は信頼できます。

「後から追加費用がかかる可能性」についても、事前に確認しましょう。

3. 初回相談が無料か

多くの専門家は、初回相談を無料または低料金で受け付けています。

複数の専門家に相談して、対応や説明の分かりやすさを比較することをおすすめします。

4. 対応が迅速か

相続放棄には3ヶ月の期限があります。

問い合わせへの返信が早い専門家を選びましょう。

5. 債権者対応も任せられるか(弁護士の場合)

債権者からの連絡が心配な場合は、債権者対応も含めて任せられる弁護士を選びましょう。

法テラスの活用

経済的に余裕がない場合は、「法テラス」を利用できる可能性があります。

法テラスでは、資力基準を満たせば、弁護士費用の立替えを受けられます。

法テラスへの相談方法や利用条件、費用などの詳細については「 法テラスの無料相談と費用立替 - 条件・予約方法を解説 」の手続きガイドで詳細を解説しています。

5. 相続放棄後の管理義務(保存義務)

「相続放棄したら、故人の空き家はどうなるの?」

相続放棄をしても、場合によっては財産の管理義務が残ることがあります。

2023年4月の民法改正で大きくルールが変わりましたので、正しく理解しておきましょう。

5.1. 2023年民法改正で何が変わった?

改正前(2023年3月以前)は、相続放棄をした方は「次の相続人が管理を始めるまで」管理義務を負っていました。

遠方に住んでいて故人の財産に全く関わっていなくても、義務が及ぶ可能性がありました。

改正後(2023年4月以降)は、以下の2点が明確になりました:

  • 義務の名称が「管理義務」から「保存義務」に変更
  • 義務を負うのは、相続放棄の時点で財産を「現に占有」している方のみ

「保存義務」とは、財産の現状を維持し、滅失や毀損を防ぐ程度の行為を指します。

積極的な活用や改良までは求められません。

5.2. 保存義務が発生する/しないケース

保存義務が発生する可能性が高いケース

  • 故人と同居していた不動産にそのまま住み続けている
  • 故人の空き家の鍵を持ち、定期的に管理・訪問していた
  • 故人名義のマンションに居住している

保存義務が発生しない可能性が高いケース

  • 故人とは別居しており、実家の鍵も持っていない
  • 遠方の山林や農地で、普段全く立ち入っていない
  • 故人の財産に一切関わっていなかった
ポイント

「現に占有」とは、その財産を事実上支配・管理している状態を指します。 改正により、これまで財産に関わっていなかった相続人は、相続放棄によって管理責任からも解放される可能性が高くなりました。

5.3. 保存義務から解放されるには

保存義務を負っている場合でも、以下の方法で義務から解放されます。

次順位の相続人に財産を引き渡す

自分が相続放棄をすると、次の順位の方が新たな相続人となります。

相続の順位:

  • 第1順位: 子・孫
  • 第2順位: 父母・祖父母
  • 第3順位: 兄弟姉妹・甥姪

新たな相続人に財産を引き渡せば、保存義務は終了します。

注意

次順位の方が相続人になったことを知らないケースが多いため、自分が相続放棄をしたことを速やかに連絡してあげましょう。 連絡がないまま放置すると、次順位の方が3ヶ月の期限を過ぎてしまう恐れがあります。

相続財産清算人の選任を申し立てる

相続人全員が相続放棄をした場合、財産の引き渡し先がいなくなります。

この場合は、家庭裁判所に「相続財産清算人」の選任を申し立てます。

選任された清算人に財産を引き渡すことで、保存義務から解放されます。

相続財産清算人の選任に必要な費用:

  • 収入印紙: 800円
  • 郵便切手: 裁判所による
  • 予納金: 数十万円〜100万円程度

予納金は清算人の報酬や管理費用に充てられるもので、大きな負担になります。

費用面で困難な場合は、弁護士に相談して対応を検討しましょう。

5.4. 保存義務を怠るとどうなる?

保存義務を無視して放置した場合、以下のようなリスクがあります。

  • 損害賠償請求:
    管理不全の空き家が倒壊し、通行人にケガをさせた場合など
  • 近隣トラブル:
    害虫の発生、不法投棄、不審火のリスクなど
  • 行政からの指導:
    「特定空家」に指定されると、最終的に行政代執行で解体され、費用を請求される可能性も

相続放棄後の保存義務について不安がある場合は、早めに専門家に相談することをおすすめします。

6. こんなケースはどうする?

実際の相続放棄では、様々な特殊なケースに直面することがあります。

代表的なケースへの対処法をご紹介します。

6.1. 疎遠な親族が亡くなった場合

「20年以上会っていなかった叔父が亡くなったと連絡が...どうすればいい?」

やるべきこと

1. 自分が相続人になるか確認する

疎遠な親族の場合、自分が相続人になるかどうか、まず確認しましょう。

相続の順位:

  • 第1順位: 子・孫
  • 第2順位: 父母・祖父母
  • 第3順位: 兄弟姉妹・甥姪

故人に配偶者や子がいる場合、あなたに相続権はありません。

2. 財産状況を調べる

故人の財産状況が全く分からない場合、以下を調査します:

  • 銀行口座:
    各金融機関に照会
  • 不動産:
    故人の住所地の法務局で登記簿を確認
  • 借金:
    信用情報機関(CIC、JICC、全銀協)に照会
3. 早めに相続放棄を検討する

疎遠な親族の場合、財産より借金の方が多い可能性があります。

「どちらか分からない」という場合は、早めに相続放棄を検討した方が安全です。

注意点
  • 疎遠でも、相続権があれば借金も相続されます
  • 「知らなかった」では済まされません
  • 3ヶ月の期限は「相続の開始を知った時」からカウントされます

6.2. 債権者から連絡が来た場合

「突然、知らない弁護士から内容証明が届いた...どうすればいい?」

やるべきこと

1. 落ち着いて内容を確認する

債権者や回収業者からの連絡は、精神的に大きなプレッシャーになりますが、落ち着いて対応しましょう。

内容証明で確認すべきこと:

  • 誰が送ってきたか(債権者名)
  • 何の債務か
  • 金額はいくらか
  • いつまでに支払えと言っているか
2. 絶対に支払わない・承諾しない

「とりあえず一部だけでも...」と思っても、絶対に支払ってはいけません。

一部でも支払うと、「相続を承認した」とみなされ、相続放棄ができなくなる可能性があります。

3. 相続放棄の手続きを急ぐ

債権者からの連絡が来た時点で、まだ3ヶ月の期限内であれば、急いで相続放棄の手続きを行いましょう。

4. 弁護士を窓口にする

債権者からの連絡が心配な場合は、弁護士に依頼し、債権者への対応を一任することができます。

弁護士が窓口になることで、債権者からの直接の連絡がなくなり、精神的な負担が大幅に軽減されます。

相続放棄が完了したら

相続放棄申述受理通知書が届いたら、その写しを債権者に送付します。

これにより、あなたには支払い義務がないことを証明できます。

6.3. 財産状況が全く分からない場合

「故人の財産も借金も、何があるか全く分からない...」

財産調査の方法

銀行口座の調査

故人の住所地周辺の金融機関に、「残高証明書」の発行を依頼します。

必要なもの:

  • 相続人であることを証明する戸籍謄本
  • 本人確認書類
不動産の調査

故人の住所地の市区町村役場で「名寄帳」を取得します。

名寄帳には、その自治体内で故人が所有していた不動産の一覧が記載されています。

借金の調査

信用情報機関に照会することで、ローンやクレジットカードの借入状況を確認できます。

主な信用情報機関:

  • CIC(シーアイシー)
  • JICC(日本信用情報機構)
  • 全国銀行個人信用情報センター
それでも分からない場合

専門家(弁護士・司法書士)に財産調査を依頼することもできます。

費用はかかりますが、確実に調査できます。

判断に迷ったら「相続放棄」が安全

財産状況が不明確で、調査にも時間がかかりそうな場合は、相続放棄を選択する方が安全です。

「もしかしたらプラスの財産があるかも...」と期待して放棄しないでいると、後から多額の借金が判明するリスクがあります。

期間伸長の活用

財産調査に時間がかかる場合は、「相続の承認又は放棄の期間の伸長」を申し立てて、期限を延ばすこともできます。

詳しくは「3. 3ヶ月の期限に間に合わない場合は?」を参照してください。

6.4. 海外に住んでいる場合

「海外に住んでいるけど、日本の相続放棄はできるの? 帰国しないとダメ?」

海外在住の方でも、日本の家庭裁判所への相続放棄の手続きは可能です。

帰国しなくても手続きを進められます。

手続きの流れ

1. 在留証明書の取得

日本国内に住所がない場合、住民票の代わりに在留証明書が必要です。

在留証明書は、お住まいの国の日本大使館・領事館(在外公館)で取得できます。

手数料は1通1,200円程度です。

2. 必要書類の準備

通常の相続放棄と同じ書類に加え、以下が必要です:

  • 在留証明書
    住民票の代わりに提出
  • 申述人の戸籍謄本
    日本国内の本籍地から取り寄せ(郵送請求が可能)
3. 家庭裁判所への郵送申し立て

書類がすべて揃ったら、故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に郵送で申し立てます。

EMS(国際スピード郵便)を利用すれば、海外からでも確実に届けられます。

4. 照会書への回答

裁判所からの照会書も郵送で届きます。

回答して返送すれば、手続きは完了します。

弁護士への委任がおすすめ

海外在住の場合、書類のやり取りに時間がかかるため、3ヶ月の期限が非常にタイトになります。

日本の弁護士に委任すれば、戸籍謄本の収集から裁判所への申し立てまでを代行してもらえるため、安心です。

注意点
  • 3ヶ月の期限は海外在住でも同じ
  • 郵便の往復に時間がかかるため、早めの着手が重要
  • 在外公館の営業時間や予約方法は事前に確認を

7. 相続放棄と限定承認の違い

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「借金があるかもしれないけど、自宅だけは残したい...」

そんな場合に検討できるのが「限定承認」という制度です。

相続放棄とは異なる選択肢として、違いを知っておきましょう。

7.1. 限定承認とは

限定承認とは、プラスの財産の範囲内でのみマイナスの財産(借金)を引き継ぐ方法です。

例えば、故人に自宅(3,000万円)と借金(5,000万円)があった場合:

  • 相続放棄:
    自宅も借金もすべて放棄
  • 限定承認:
    自宅(3,000万円)の範囲内で借金を返済。
    残りの2,000万円の借金は負担しない

7.2. 相続放棄と限定承認の比較

項目相続放棄限定承認
手続き先家庭裁判所家庭裁判所
期限3ヶ月以内3ヶ月以内
申述の方法相続人ごとに単独で可能相続人全員の合意が必要
プラスの財産すべて放棄引き継げる
マイナスの財産すべて放棄プラスの範囲内で引き継ぐ
手続きの難易度比較的簡単複雑(清算手続きが必要)
費用自分でやれば数千円専門家への依頼が一般的(数十万円)

7.3. 限定承認が向いているケース

  • 故人の自宅など、どうしても手放したくない財産がある
  • 借金の全額が不明だが、プラスの財産を超えない可能性がある
  • 故人が事業を営んでおり、事業用資産を引き継ぎたい

7.4. 限定承認の注意点

  • 相続人全員の合意が必要
    1人でも反対すると利用できません。一部の相続人が相続放棄をしている場合は、残りの相続人全員で申述します。
  • 手続きが複雑
    官報での公告や債権者への弁済手続きなど、専門的な作業が必要です。弁護士への依頼が一般的です。
  • みなし譲渡所得税がかかる場合がある
    限定承認をすると、故人から相続人への「みなし譲渡」として所得税が課される場合があります。

限定承認を検討する場合は、相続放棄よりも専門家への相談がより重要になります。

8. こんな時は専門家への相談を!

以下のようなケースでは、ご自身で抱え込まず、費用がかかったとしても、弁護士などの専門家へ早めに相談することを強くおすすめします。

  • 3ヶ月の期限が迫っている、または過ぎてしまった
  • 故人の財産や借金の全体像がわからず、調査が必要
  • 他の相続人との関係が複雑で、連絡が取りづらい
  • すでに金融機関などから借金の返済を求める連絡が来ている
  • 故人の財産を一部でも使ってしまったなど、判断に迷うことがある
  • 疎遠な親族で、何から手をつければいいか分からない
  • 海外に住んでいて、日本での手続きが難しい
  • 相続放棄後の不動産の管理義務が心配

まとめ

相続放棄は、借金などのマイナスの財産を引き継がないための重要な手続きです。

この手続きガイドのポイント

  • 期限は原則3ヶ月
    「相続の開始を知った時」から数えます
  • 戸籍謄本の収集が最大の難関
    早めに着手することが重要
  • 自分でもできるが、専門家に頼むと安心
    費用は5万〜15万円程度
  • 相続放棄後も「保存義務」が残る場合がある
    2023年改正で「現に占有」している場合のみに限定
  • 生前に相続放棄はできない
    口頭での宣言も法的効力なし
  • 借金額が不明なら「限定承認」も選択肢
    プラスの範囲内で借金を引き継ぐ方法
  • 海外在住でも手続き可能
    在留証明書の取得と郵送申し立てで対応
  • 債権者から連絡が来ても慌てない
    弁護士を窓口にすることで精神的負担を軽減

自分でやる?専門家に頼む?

自分でやる場合

  • 費用は5,000円〜10,000円程度で済む
  • ただし、戸籍謄本の収集や裁判所とのやり取りに時間と手間がかかる

専門家に依頼する場合

  • 費用は5万〜15万円程度
  • 煩雑な手続きをすべて任せられ、精神的な負担が軽減される
  • 債権者への対応も任せられる(弁護士の場合)

こんな時は専門家への相談を

  • 3ヶ月の期限が迫っている、または過ぎてしまった
  • 故人の財産や借金の全体像がわからず、調査が必要
  • 債権者から連絡が来ている
  • 他の相続人との関係が複雑
  • 海外に住んでいて手続きが難しい
  • 相続放棄後の管理義務が心配

相続放棄は、「3ヶ月」という厳しい期限が設けられた、失敗の許されない手続きです。

少しでも不安があれば、早めに法律の専門家に相談することをおすすめします。

多くの専門家は初回相談を無料で受け付けているので、まずは気軽に相談してみてはいかがでしょうか。

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