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死亡後の銀行口座凍結と仮払い制度 - 葬儀費用を引き出す方法

死亡後の銀行口座凍結と仮払い制度 - 葬儀費用を引き出す方法
最終更新:2026年5月8日

「父が亡くなったのに、銀行口座が凍結されて葬儀費用が払えない…」
「凍結される前に引き出しておくべき?それって違法じゃないの?」
「口座のお金を使いたいのに、相続手続きが終わるまで待てない…」

身近な方が亡くなった直後、真っ先に直面する問題の一つが「銀行口座の凍結」です。

葬儀費用や当面の生活費など、急を要するお金が必要なのに口座が使えない——そんな事態に備えて、2019年7月に「預貯金の仮払い制度」が創設されました。

この手続きガイドでは、口座凍結の仕組みから仮払い制度の活用方法、正式な凍結解除の手続きまでを分かりやすく解説します。

銀行口座はいつ凍結される?仕組みと注意点

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まず最初に知っておいていただきたいのは、死亡届を役所に提出しただけでは銀行口座は凍結されないということです。

「死亡届を出したら自動的に銀行に連絡が行く」と誤解されている方が多いですが、実際には役所から銀行へ通知されることはありません。

口座凍結のタイミング

銀行口座が凍結されるのは、金融機関が口座名義人の死亡を知ったときです。

具体的には、以下のいずれかのタイミングで凍結されます。

  • 遺族が銀行に死亡を届け出たとき
    最も一般的なケースです。
    遺族自身が銀行に連絡して凍結が行われます。
  • 新聞のお悔やみ欄を銀行が確認したとき
    地方紙などに掲載されたお悔やみ欄を銀行がチェックし、凍結されることがあります。
    ただし、よほどの著名人でない限り稀なケースです。
  • 銀行員が個人的に死亡を知ったとき
    例外的なケースですが、担当者が別ルートで把握した場合など。
ポイント

「死亡届を出したらすぐ凍結される」は誤解です。
銀行への届出は遺族が行うのが基本です。
ただし、相続手続きをスムーズに進めるためにも、適切なタイミングで届け出ることが重要です。

凍結されるとどうなるか

口座が凍結されると、以下の取引がすべて停止します。

  • ATMでの入出金
  • 窓口での入出金
  • クレジットカードや公共料金の自動引き落とし
  • 他口座からの振込の受取(入金は可能だが引き出せない)
注意

公共料金やクレジットカードの引き落としが止まるため、凍結後は速やかに支払い方法の変更手続きが必要です。
特に家族カードを利用している場合は、利用停止になる点にも注意してください。

口座凍結前に引き出すのは合法?リスクと注意点

「凍結される前に引き出しておけばいい」というアドバイスを聞いたことがある方も多いでしょう。

結論から言えば、口座凍結前の引き出し自体は法律違反ではありません。

ただし、いくつかの重要なリスクと注意点があります。

引き出しが認められるケース

以下のような場合、故人の口座から事前に引き出すことは社会通念上も問題ないとされています。

  • 葬儀費用の支払い
  • 入院費・医療費の精算
  • 当面の生活費(遺族の生計維持)

注意すべきリスク

  • 相続トラブルの原因になる
    他の相続人の同意を得ずに多額を引き出すと、遺産分割協議で揉める原因になります。
  • 相続放棄ができなくなる可能性
    引き出したお金を自分のために使うと、「単純承認」(相続を受け入れたこと)とみなされ、相続放棄ができなくなる場合があります。
  • 税務調査で問題になる可能性
    相続税の申告時に、死亡前後の引き出しについて税務署から確認されることがあります。
重要

口座凍結前に引き出す場合は、以下の点を必ず守ってください。

  • 引き出した金額と日付を記録する
  • 使途(葬儀費用の領収書など)を保管する
  • 可能な限り他の相続人に事前連絡する
  • 必要最低限の金額にとどめる

凍結前の引き出しと「遺産の使い込み」の違い

葬儀費用や医療費など、故人のために使うお金は「使い込み」にはあたりません。

しかし、私的な目的で高額を引き出した場合は、他の相続人から「遺産の使い込み」として損害賠償請求される可能性があります。

時間的余裕がある場合は、後述する「仮払い制度」を活用する方が安全です。

葬儀が差し迫っている場合は、引き出し金額と使途を必ず記録してください。

仮払い制度とは?凍結後でも引き出せる仕組み

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2019年7月1日に施行された改正民法(民法909条の2)により、遺産分割前でも一定額の預貯金を単独で引き出せる「仮払い制度」が創設されました。

この制度を使えば、口座が凍結された後でも、家庭裁判所の判断を経ずに金融機関の窓口で直接払い戻しを受けることができます。

仮払い制度の2つの方法

仮払い制度には、以下の2つの方法があります。

方法概要上限額必要な手続き
金融機関での直接請求(民法909条の2)相続人が単独で銀行窓口に請求1金融機関あたり150万円金融機関への書類提出
家庭裁判所の仮処分(家事事件手続法200条3項)裁判所の判断で仮払いを認める制限なし(裁判所の判断)家庭裁判所への申立て

この手続きガイドでは、多くの方が利用する「金融機関での直接請求」を中心に解説します。

引き出せる金額の計算式

金融機関での直接請求で引き出せる金額は、以下の計算式で算出されます。

計算式:

相続開始時の預金額(口座ごと) × 1/3 × 払い戻しを求める相続人の法定相続分

ただし、1つの金融機関(全支店合計)あたり150万円が上限です。

計算例

【例1】配偶者が払い戻しを求める場合

  • 普通預金: 600万円
  • 法定相続分: 1/2(配偶者)

計算: 600万円 × 1/3 × 1/2 = 100万円

【例2】子が1人で払い戻しを求める場合(相続人は配偶者と子1人)

  • 普通預金: 600万円
  • 法定相続分: 1/2(子)

計算: 600万円 × 1/3 × 1/2 = 100万円

【例3】複数口座がある場合(配偶者が請求)

  • 普通預金: 600万円 → 600万円 × 1/3 × 1/2 = 100万円
  • 定期預金: 900万円 → 900万円 × 1/3 × 1/2 = 150万円
  • 合計: 250万円 → 上限150万円が適用
ポイント

計算上は150万円を超えていても、1金融機関あたりの上限は150万円です。
ただし、複数の金融機関に口座がある場合は、それぞれの金融機関で最大150万円まで引き出せます。
例えばA銀行とB銀行に口座があれば、合計で最大300万円の仮払いが可能です。

仮払い可能額を計算してみよう

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法的根拠

仮払い制度の法的根拠は、2019年7月1日に施行された改正民法(民法第909条の2)です。

重要

仮払い制度で引き出したお金は、遺産の一部分割により取得したものとみなされます。
つまり、最終的な遺産分割の際に、仮払い分が差し引かれて計算されます。
「余分にもらえる」わけではない点に注意してください。

仮払い制度の必要書類と手続きの流れ

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必要書類

仮払い制度を利用する際に必要な書類は以下のとおりです。

  • 故人(被相続人)の出生から死亡までの連続した戸籍謄本(原本)
  • すべての相続人の戸籍抄本または戸籍謄本(原本)
  • 払い戻しを希望する相続人の印鑑登録証明書(原本)
  • 払い戻しを希望する相続人の実印
  • 払い戻しを希望する相続人の本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
ポイント

戸籍謄本は「法定相続情報一覧図の写し」で代替できる場合があります。
事前に金融機関に確認しましょう。
また、金融機関によって必要書類が若干異なるため、来店前に電話で確認しておくとスムーズです。

手続きの流れ

  1. 金融機関に連絡する
    口座名義人が亡くなったことを伝え、仮払い制度を利用したい旨を申し出ます。
    必要書類を確認します。
  2. 必要書類を収集する
    戸籍謄本の収集が最も手間がかかる作業です。
    2024年3月から始まった「広域交付制度」を活用すれば、最寄りの市区町村役場で他の本籍地の戸籍もまとめて取得できます。
  3. 金融機関の窓口に書類を提出する
    所定の払戻請求書に記入し、必要書類と一緒に提出します。
  4. 審査・払い戻し
    書類の確認後、払い戻しが実行されます。
    即日対応ではなく、通常1〜2週間程度かかります。
注意

仮払い制度は窓口での手続きが必要です。
ATMやインターネットバンキングでは利用できません。
また、金融機関によっては事前予約が必要な場合もあるため、必ず事前に電話確認してください。

所要期間の目安

手続き目安期間
戸籍謄本の収集1〜4週間(本籍地の数による)
金融機関での審査1〜2週間
合計2〜6週間程度

葬儀費用など緊急を要する場合は、できるだけ早く手続きを開始することが重要です。

口座凍結の解除方法(正式な相続手続き)

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仮払い制度はあくまで「一時的な措置」です。

口座に残っている預貯金全額を引き出す(凍結を解除する)には、正式な相続手続きが必要です。

凍結解除に必要な手続き

口座の凍結を解除して全額の払い戻しを受けるには、以下のいずれかが必要です。

  • 遺産分割協議書
    相続人全員で話し合い、誰がどの預貯金を相続するか決めた書面
  • 遺言書
    故人が遺言書を遺している場合は、遺言の内容に従って手続きが進められます
  • 家庭裁判所の審判書
    協議がまとまらず、裁判所で遺産分割の審判を受けた場合

正式な払い戻しに必要な書類

金融機関により多少異なりますが、一般的に以下の書類が必要です。

  • 金融機関所定の相続手続依頼書
  • 遺産分割協議書(相続人全員の実印押印)
  • 故人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の印鑑登録証明書
  • 預貯金を相続する方の本人確認書類
  • 故人の預金通帳・キャッシュカード(紛失の場合は届出)
ポイント

「法定相続情報一覧図の写し」を法務局で取得しておくと、戸籍謄本の束を何度も提出する手間が省けます。
複数の金融機関で手続きが必要な場合は特に便利です。

凍結解除までの期間

遺産分割協議がスムーズにまとまった場合でも、書類の準備から払い戻し完了まで1〜3ヶ月程度かかるのが一般的です。

相続人間で意見が対立している場合は、さらに長期化する可能性があります。

葬儀費用を確保するその他の方法

仮払い制度以外にも、葬儀費用や当面の生活費を確保する方法があります。

生命保険金の活用

故人が生命保険に加入していた場合、保険金は受取人固有の財産として口座凍結とは無関係に受け取ることができます。

  • 死亡保険金は遺産分割の対象外
  • 口座が凍結されていても受け取れる
  • 請求から通常5営業日〜2週間程度で支払われる

故人がどの生命保険に加入していたか分からない場合は、「生命保険契約照会制度」で調べることができます。

相続人による立て替え

相続人が自己資金で葬儀費用を立て替え、後で遺産分割の際に精算する方法です。

  • 領収書を必ず保管する
  • 遺産分割協議で「葬儀費用は遺産から差し引く」と合意する

葬儀社への後払い・分割払い

多くの葬儀社は後払いに対応しています。

  • 葬儀後1〜2週間以内の支払いが一般的
  • 分割払いやクレジットカード払いに対応している葬儀社もある

よくある質問 Q&A

Q. 死亡届を出すと銀行口座は自動的に凍結される?

A. いいえ、死亡届の提出だけでは口座は凍結されません。

役所から金融機関へ死亡の通知が行くことはありません。

遺族が銀行に届け出るか、銀行が独自に死亡を把握した場合に凍結されます。

Q. 仮払い制度で定期預金は引き出せる?

A. はい、定期預金も仮払い制度の対象です。

定期預金の場合は、「明細ごと」に計算します。

例えば、定期預金が複数の明細に分かれている場合は、各明細ごとに仮払い可能額を計算し、同一金融機関の合計が150万円を上限とします。

Q. 複数の銀行に口座がある場合、それぞれで仮払いできる?

A. はい、金融機関ごとにそれぞれ最大150万円まで仮払いが可能です。

例えば、A銀行・B銀行・C銀行に口座がある場合、それぞれの銀行で最大150万円、合計で最大450万円の仮払いを受けることができます。

Q. 仮払い制度を使った後、遺産分割ではどう扱われる?

A. 仮払いで引き出した金額は、遺産の一部分割で取得したものとみなされます。

最終的な遺産分割の際に、仮払い分が差し引かれた上で各相続人の取り分が計算されます。

つまり、仮払い分だけ多くもらえるわけではありません。

Q. 相続放棄を検討している場合でも仮払い制度は使える?

A. 仮払い制度の利用は「単純承認」とみなされる可能性があるため、注意が必要です。

相続放棄を検討している場合は、仮払い制度の利用は避け、弁護士に相談することをおすすめします。

相続放棄の手続きについては以下の手続きガイドで詳しく解説しています。

Q. 口座の存在が分からない場合はどうすればいい?

A. 「相続時口座照会制度」を利用して、故人の口座を一括で調べることができます。

詳しい手続き方法は以下の手続きガイドで解説しています。

まとめ:仮払い制度を活用し、必要な資金を確保しよう

身近な方が亡くなった後の銀行口座の凍結は、多くの遺族が直面する問題です。

しかし、仮払い制度を正しく活用すれば、遺産分割が完了する前でも葬儀費用や生活費として最大150万円(1金融機関あたり)を引き出すことができます。

この手続きガイドのポイントを振り返りましょう。

  • 死亡届を出しただけでは口座は凍結されない
  • 凍結前の引き出しは違法ではないが、記録の保管とトラブル防止が重要
  • 仮払い制度を使えば凍結後でも引き出せる(1金融機関あたり上限150万円)
  • 仮払いには戸籍謄本等の書類が必要で、1〜2週間かかる
  • 最終的には正式な相続手続きで口座凍結を解除する

手続きが複雑で不安な場合は、司法書士や弁護士などの専門家に相談することも検討してください。

相続手続き全体の流れについては、以下の手続きガイドで体系的にまとめています。

身近な方が亡くなった後の手続き全般については、以下の手続きガイドをご覧ください。

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