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葬儀費用は誰が払う?相続財産からの支払い方法と相続税控除

葬儀費用は誰が払う?相続財産からの支払い方法と相続税控除
最終更新:2026年5月20日

「親が亡くなったけど、葬儀費用は誰が出すもの?」
「故人の預金は凍結されて引き出せないの?」
「葬儀費用は相続税から引けるって本当?」
——身近な人が亡くなった直後、悲しみの中で費用の問題に直面する方は少なくありません。

実は葬儀費用の負担者は法律で決まっておらず、喪主が立て替えるケースが一般的です。

しかし、2019年に始まった「預貯金の仮払い制度」を使えば、口座凍結後でも故人の預金から最大150万円を引き出せます。

さらに、一定の葬式費用は相続税の計算で遺産総額から差し引くことも可能です。

この手続きガイドでは、葬儀費用の負担ルール、故人の預貯金からの支払い方法、相続税控除の対象範囲、相続放棄との関係まで、知っておきたいポイントを整理します。

葬儀費用は誰が払う?法的な決まりはない

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葬儀費用の負担者について、民法に明確な規定はありません。

そのため、実務上は以下のようなパターンで処理されています。

  • 喪主が全額負担する
    最も一般的なパターンです。喪主が葬儀社と契約し、費用を一括で支払います。
  • 兄弟・相続人で分担する
    喪主が立て替えたうえで、後日きょうだいで折半・按分するケースです。
  • 相続財産(故人の預貯金)から精算する
    遺産分割の際に葬儀費用を差し引いてから分割する方法です。
ポイント

葬儀費用の負担について明確な法律がないため、親族間で揉めやすいポイントです。
できれば生前に「誰がどの程度負担するか」を話し合っておくと、いざという時にスムーズです。

葬儀費用の相場はいくら?

葬儀形式によって費用は大きく異なります。

葬儀形式費用の目安
一般葬150〜200万円
家族葬60〜130万円
一日葬40〜80万円
直葬・火葬式15〜40万円

上記に加えて、お布施(読経料・戒名料)が15〜50万円程度かかるのが一般的です。

故人の預貯金から葬儀費用を支払う方法

故人名義の銀行口座は、金融機関が死亡を把握した時点で凍結されます。

しかし、葬儀費用のような緊急の支出に対応するため、いくつかの方法で故人の預貯金を引き出すことが可能です。

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預貯金の仮払い制度を利用する(最大150万円)

2019年7月1日に施行された民法909条の2により、遺産分割協議が完了する前でも、各相続人が単独で金融機関から預貯金の一部を引き出せるようになりました。

引き出せる金額の計算式

各相続人が単独で払い戻しを受けられる金額は、次の計算式で求めます。

相続開始時の預貯金残高 × 1/3 × その相続人の法定相続分

ただし、1つの金融機関あたりの上限は150万円です。

計算の具体例

  • 故人の預金残高: 900万円(A銀行)
  • 相続人: 配偶者と子2人
  • 子の法定相続分: 1/4

子1人が引き出せる金額: 900万円 × 1/3 × 1/4 = 75万円

重要

複数の金融機関に口座がある場合、各金融機関ごとに上限150万円まで引き出せます。
A銀行で150万円、B銀行で150万円、合計300万円の引き出しも可能です。

仮払い制度に必要な書類

  • 被相続人(故人)の除籍謄本・戸籍謄本(出生から死亡まで)
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 払い戻しを希望する相続人の印鑑証明書
  • 払い戻しを希望する相続人の本人確認書類

金融機関によって必要書類が異なる場合があるため、事前に問い合わせてください。

家庭裁判所の仮処分を利用する(150万円超の場合)

仮払い制度の上限(150万円)を超える資金が急ぎ必要な場合は、家庭裁判所に「預貯金債権の仮分割の仮処分」(家事事件手続法200条3項)を申し立てる方法があります。

  • 家庭裁判所が「相続財産に属する債務の弁済、相続人の生活費の支弁その他の事情により遺産に属する預貯金債権を行使する必要がある」と認めた場合に利用可能
  • 遺産分割の調停・審判が申し立てられていることが前提
注意

口座凍結前に故人の口座から預金を引き出す行為は、法的にはグレーゾーンです。
相続放棄を検討している場合は「単純承認」とみなされるリスクがあるため、慎重に判断してください。

相続税の計算で控除できる葬式費用

相続税を計算する際、相続人が負担した葬式費用を遺産総額から差し引くことができます(相続税法第13条)。

これを「債務控除」と呼びます。

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控除対象になる費用

国税庁No.4129および関連通達に基づき、以下の費用が控除対象です。

費目控除具体例
通夜・告別式の費用葬儀社への支払い、会場費
火葬・埋葬・納骨費用火葬料、埋葬料、納骨費用
遺体の搬送費用病院から自宅、自宅から斎場への搬送
お布施・読経料・戒名料寺院・僧侶への謝礼
通夜の飲食費通夜振る舞いの料理・飲み物
運転手・火葬場スタッフへの心付け寸志・チップ
香典返し会葬御礼を除く
墓石・墓地の購入費墓石代、永代使用料
初七日以降の法事費用四十九日法要、一周忌
遺体の解剖費用病理解剖
ポイント

初七日法要の費用は原則控除対象外ですが、告別式と同日に行った場合は葬式費用に含められるケースがあります。
葬儀社の請求書で「告別式費用」に含まれていれば控除対象です。

控除対象にならない費用

以下の費用は相続税の控除対象にならないため、注意が必要です。

  • 香典返し
    香典は受け取る側の非課税収入であり、そのお返しは控除対象外です。ただし「会葬御礼」(当日一律で渡す品)は、別途香典返しを行う場合に限り控除対象に含まれます。会葬御礼が香典返しの代わりである場合は控除対象外です。
  • 墓石・墓地の購入費
    生前に購入していれば相続税の非課税財産ですが、死後に購入した費用は控除できません。
  • 初七日以降の法事費用
    四十九日法要、一周忌などの法要費用は控除対象外です。

お布施は控除できる?証拠の残し方

お布施・読経料・戒名料は相続税の控除対象です。

しかし、寺院は通常領収書を発行しません。

領収書がない場合でも、以下の情報をメモに記録しておけば控除が認められます。

  • 支払先(寺院名・僧侶名)
  • 支払日
  • 支払金額
  • 支払いの目的(読経料、戒名料、お車代など)
重要

お布施の記録は相続税の申告書「第13表(債務及び葬式費用の明細書)」に記載して提出します。
相続税の申告期限は「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内」です。
期限内に書類を整えられるよう、メモや覚書は早めに作成し申告書と一緒に保管しておきましょう。

葬儀費用を控除できる人

葬式費用を控除できるのは、以下の人に限られます。

  • 相続人(法定相続人)
  • 包括受遺者(遺言で「財産の○割を遺贈する」とされた人)
注意

相続放棄した人は原則として債務控除を受けられません。
ただし、相続放棄した人が遺贈により財産を取得しており、かつ現実に葬式費用を負担した場合は、その負担額を遺贈財産の価額から控除できます(相続税法基本通達13-1)。

相続放棄しても葬儀費用は払う必要がある?

相続放棄を検討している場合、「葬儀費用を支払ったら相続放棄できなくなるのでは?」という不安を抱く方が多くいます。

社会通念上相当な範囲なら相続放棄に影響しない

判例(大阪高裁平成14年7月3日決定など)では、社会通念上相当な範囲の葬儀費用を相続財産から支出しても、民法921条1号の「相続財産の処分」には該当しないと判断されています。

つまり、常識的な金額の葬儀費用であれば、故人の預金から支払っても相続放棄は可能です。

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注意すべきポイント

  • 高額・不相当な葬儀
    故人の生活水準や社会的地位に見合わない豪華な葬儀を行った場合、相続財産の処分(単純承認)とみなされるリスクがあります。
  • 最高裁判例はまだない
    上記の判断はあくまで下級審の判例であり、最高裁での統一的な判断は出ていません。
  • 自腹で支払えば確実に安全
    相続放棄を確実に行いたい場合は、葬儀費用を自己資金で支払い、故人の財産には手をつけないのが最も安全です。
注意

相続放棄の期限は「相続の開始を知った日から3か月以内」です。
葬儀費用の処理に時間がかかり、期限を逃さないよう注意してください。

葬儀費用をめぐるトラブルと予防策

葬儀費用は親族間で揉めやすいテーマです。

よくあるトラブルと予防策を確認しておきましょう。

よくあるトラブル

  • 兄弟間の負担割合
    「喪主が全額負担すべき」「平等に折半すべき」と意見が分かれるケースが非常に多く見られます。
  • 遺産分割前の支出の説明責任
    相続人の1人が故人の預金から費用を立て替えた場合、他の相続人から「使途不明金」と追及されることがあります。
  • 香典の管理
    香典は一般的に喪主のものとされますが、葬儀費用に充てることが暗黙の前提になっている場合もあり、認識のずれがトラブルに発展します。

トラブル予防のチェックリスト

  • 葬儀費用の見積書・請求書・領収書をすべて保管する
  • お布施など領収書のない支出はメモで記録する
  • 葬儀費用の内訳と負担者を一覧にして相続人全員に共有する
  • 香典の総額と使途を記録する
  • 遺産分割協議で葬儀費用の精算方法を明確に取り決める
  • 可能であれば生前に葬儀費用の取り決めをしておく
ポイント

葬儀費用の負担に法的ルールがないからこそ、「記録」と「共有」がトラブル予防の鍵です。
支出の記録を残し、相続人全員に見える状態にしておくことが最も効果的です。

よくある質問(FAQ)

Q. 香典は相続財産に含まれますか?

A. 含まれません。

香典は喪主(または葬儀を主宰した人)に対する贈与と考えられており、相続財産ではありません。

そのため遺産分割の対象にもならず、相続税もかかりません。

一般的には葬儀費用に充当し、余りがあれば喪主が受け取るケースが多いです。

Q. 初七日の費用は相続税の控除対象になりますか?

A. 原則として控除対象外ですが、例外があります。

告別式と同日に繰り上げ初七日を行い、費用が葬儀社の請求書にまとめて含まれている場合は、葬式費用として控除できるケースがあります。

別日に行った初七日・四十九日法要などの費用は控除対象外です。

Q. 葬儀費用の領収書は誰の名前でもらうべきですか?

A. 実際に費用を負担する相続人の名前でもらうのが理想です。

相続税の申告で葬式費用を控除する際、誰がいくら負担したかを明記する必要があります。

領収書の宛名が実際の負担者と異なる場合でも、支払いの事実を証明できれば控除は認められますが、トラブル防止のため負担者名義にしておくのが無難です。

Q. 遺産分割協議の前に葬儀費用を精算してもよいですか?

A. 相続人全員の合意があれば可能です。

法律上、葬儀費用を遺産から精算する義務はありませんが、相続人全員が合意していれば遺産から差し引いて残りを分割することができます。

合意内容は遺産分割協議書に明記しておくとトラブルを防げます。

Q. 葬祭費・埋葬料の給付制度は利用できますか?

A. 健康保険の加入状況に応じて給付を受けられます。

国民健康保険の加入者が亡くなった場合は「葬祭費」(3〜7万円、自治体により異なる)、健康保険(社会保険)の加入者・被扶養者が亡くなった場合は「埋葬料」(一律5万円)が支給されます。

いずれも申請しないと受け取れないため、忘れずに手続きしましょう。

まとめ

葬儀費用の負担と相続の関係について、要点を整理します。

  • 負担者に法的な決まりはない — 喪主負担が一般的だが、兄弟間で分担したり、相続財産から精算したりすることも可能
  • 口座凍結後も仮払い制度で引き出せる — 1金融機関あたり最大150万円まで、家庭裁判所不要で引き出し可能(民法909条の2)
  • 相続税の控除対象は「葬式に必要な費用」 — 通夜・告別式・火葬・お布施は控除可能、香典返し・墓石・法事費用は控除不可
  • 相続放棄への影響 — 社会通念上相当な範囲なら故人の預金から支払っても相続放棄に影響しない(判例)
  • トラブル予防は「記録」と「共有」 — 領収書・メモの保管と、相続人全員への情報共有が鍵

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