未支給年金の受取人が死亡したら?口座凍結時の請求
年金を受け取っていた親などが亡くなると、「未支給年金があります」と年金事務所で案内されることがあります。
「未支給年金って何?請求しないともらえないの?」
「相続放棄したけれど、受け取っても大丈夫?」
「未支給年金を請求した本人(受取人)まで亡くなり、口座が凍結されて振り込めないと通知が来た」
年金は後払いのしくみのため、受給者が亡くなると受け取り残しの年金(未支給年金)がほぼ必ず発生します。
未支給年金は相続財産ではなく、生計を同じくしていた遺族が自分の権利として請求できるお金です。
この手続きガイドでは、未支給年金の基本から、請求できる人・必要書類、そして「口座凍結」や「請求した受取人自身が亡くなったケース」への対処までを、公的機関の情報にもとづいてわかりやすく解説します。
未支給年金とは?年金受給者が亡くなると必ず発生する
未支給年金とは、年金を受けていた方が亡くなったときに、まだ受け取っていない年金や、亡くなった日より後に振り込まれた年金のうち、亡くなった月分までの年金のことです。
その方と生計を同じくしていた遺族が受け取れます(日本年金機構「年金を受けている方が亡くなったとき」)。
年金は、偶数月(2・4・6・8・10・12月)の15日に、その前月・前々月の2か月分がまとめて後払いされます。
たとえば9月に亡くなった場合、9月分の年金は10月15日に振り込まれる予定ですが、本人はすでに亡くなっているため受け取れません。
この「本人が受け取れなかった年金」が未支給年金として、遺族の請求によって支払われます。
年金が後払いである以上、受給者が亡くなると未支給年金はほぼ必ず発生します。
「年金はきちんと振り込まれていたから関係ない」と思っていても、受け取り残しが残っているケースが大半です。
未支給年金は何か月分もらえる?
未支給年金の月数は、亡くなった時期によって変わります。
一般的な整理は次のとおりです(実際の支給額は個別に年金事務所へご確認ください)。
- 偶数月の前半に死亡
3か月分が発生することがあります。 - 偶数月の後半に死亡
1か月分が発生することがあります。 - 奇数月に死亡
前半・後半いずれでも2か月分が発生することがあります。
未支給年金は相続財産ではない〜相続放棄・相続税との関係
未支給年金について、もっとも誤解が多いのが「相続財産かどうか」です。
結論から言うと、未支給年金は相続財産ではありません。
亡くなった方と生計を同じくしていた遺族が、自分自身の固有の権利として受け取るお金です(国民年金法第19条)。
この点は最高裁判所の判決(最高裁 平成7年11月7日判決)でも、未支給年金を受ける権利は相続の対象にはならない(遺族固有の権利である)と示されています。
相続放棄をしても未支給年金は受け取れる
未支給年金は相続財産ではないため、相続放棄をした方でも受け取ることができます。
亡くなった方に借金が多く相続放棄を選んだ場合でも、生計同一などの条件を満たせば、未支給年金は請求可能です。
相続放棄を予定している場合、亡くなった方の口座に振り込まれた年金を勝手に引き出して使うと、相続を承認したとみなされ相続放棄ができなくなるおそれがあります。
未支給年金は正規の請求手続きで受け取り、故人の口座から直接引き出さないようにしましょう。
遺産分割協議書に記載する必要はない
未支給年金は相続財産ではないので、遺産分割協議の対象にもなりません。
遺産分割協議書に金額を記載する必要はなく、受け取った遺族が他の相続人と分け合う義務もありません。
相続税はかからない
未支給年金は相続財産ではないため、相続税の対象にもなりません。
ただし、受け取った遺族の「一時所得」として所得税の対象になる場合があります。
税金の扱いは「未支給年金にかかる税金と確定申告」で詳しく解説します。
死亡後の相続や届出全体の流れは、次の手続きガイドもあわせてご覧ください。
未支給年金を請求できる人と受給順位
未支給年金を請求できるのは、亡くなった方が亡くなった当時、その方と生計を同じくしていた次の遺族です。
受け取れる順位も次のとおり決まっています。
- 配偶者
- 子
- 父母
- 孫
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- 上記以外の3親等内の親族
先順位の方がいる場合、後順位の方は受け取れません。
たとえば配偶者がいれば、子は請求できません。
3親等内の親族には、甥・姪、子の配偶者、いわゆる継子(配偶者の連れ子)なども含まれます(平成26年4月の年金機能強化法により対象が拡大されました)。
なお、JR・JT・NTT・農林共済が支給する共済年金を受け取っていた場合は、上記の順位ではなく法定相続人が請求します。
未支給年金を請求できるのは、あくまで「亡くなった当時、生計を同じくしていた」遺族に限られます。
生計を同じくする遺族がいない場合は、未支給年金を請求できません。
同順位者が2人以上いる場合
子が2人いるなど、同じ順位の方が複数いる場合は、そのうち1人が代表して請求します。
1人がした請求は、全員のためにその全額について請求したものとみなされます。
早く請求した方に支給されるため、誰が請求するかは事前に家族で話し合っておくと安心です。
別居していた場合は「生計同一関係の証明」が必要
「生計を同じくしていた」とは、必ずしも同居を意味しません。
別居していても、仕送りをしていた・定期的に連絡や介護をしていたなど、生活の結びつきがあれば生計同一と認められることがあります。
ただし、亡くなった方と請求する方が別住所(別世帯)の場合は、生計を同じくしていたことを示すため「生計同一関係に関する申立書(様式3または様式4)」の提出が必要です。
- 別居していた理由(就職、施設入所、本人の希望など)
- 亡くなるまでの連絡手段(訪問・電話など)
- 生計を同じくしていた内容(生活費の援助、家賃や公共料金・医療費の負担など)
親が施設に入所していた、遠方で暮らしていたといったケースでは、この生計同一の証明でつまずきやすいため、早めに年金事務所へ相談しましょう。
未支給年金とあわせて、遺族年金を受け取れる場合もあります。
未支給年金(亡くなった月分までの受け取り残し)と遺族年金(残された家族の生活保障)は別の制度です。
遺族年金の条件や金額については、次の手続きガイドで詳しく解説しています。
未支給年金の請求手続きと必要書類
未支給年金は、次の請求書を年金事務所に提出して請求します。
- 提出する書類
年金受給権者死亡届(報告書)兼 未支給年金・未支払給付金請求書
この請求書は、日本年金機構「亡くなった方の未支給年金を受け取れるとき」からダウンロードできるほか、年金事務所の窓口でも受け取れます。
未支給年金請求の必要書類
主な添付書類は次のとおりです。
| 書類 | 内容・例 |
|---|---|
| 亡くなった方の年金証書 | 手元にない場合はその旨を年金事務所に相談 |
| 請求者のマイナンバー確認書類 | マイナンバーカードなど |
| 続柄が確認できる書類 | 戸籍謄(抄)本、または法定相続情報一覧図の写し |
| 生計同一がわかる書類 | 亡くなった方の住民票除票、請求者の世帯全員の住民票の写し |
| 別住所の場合に追加 | 生計同一関係に関する申立書(様式3または様式4) |
| 受取口座が確認できる書類 | 通帳等の写し(口座名義・口座番号がわかるページ) |
戸籍謄本や住民票は、亡くなった日より後に交付されたものが必要です。
マイナンバーを記入することで、続柄確認の戸籍謄本(配偶者や遺族年金を請求する子の場合)や、世帯全員の住民票の写しの添付を省略できる場合があります。
事実婚(内縁)の配偶者が請求する場合は、「事実婚関係及び生計同一関係に関する申立書(様式7)」など追加の書類が必要になります。
相続手続きで戸籍を何通も集める場合は、法務局で「法定相続情報一覧図の写し」を作っておくと、戸籍謄本の代わりに使えて複数の手続きで再利用でき、写しの交付は無料です。
戸籍の集め方については、次の手続きガイドも参考になります。
提出先・提出方法
未支給年金の請求書は、次の方法で提出します。
- 郵送
年金事務所へ郵送します。 - 窓口
予約のうえ、年金事務所または街角の年金相談センターへ持参します。 - 電子申請
e-Govの電子申請サイトからも提出できます。
お近くの年金事務所は、次の検索から確認できます。
請求期限は5年〜受給停止の届出は早めに
未支給年金の請求期限(時効)は、年金の支払日の翌月初日から5年以内です。
5年を過ぎると時効により受け取れなくなるため、早めに手続きしましょう。
また、年金の受給を止める「年金受給権者死亡届」の提出期限は、厚生年金が亡くなった日から10日以内、国民年金が14日以内とされています。
受給停止の届出が遅れると、亡くなった後の分まで年金が振り込まれ、後から返還を求められることがあります。
ただし、日本年金機構にマイナンバーが収録されている場合は、死亡届(報告書)を省略できることがあります。
支給までの期間の目安
未支給年金は、請求してすぐに振り込まれるわけではありません。
一般的には、請求から約3〜4か月で「未支給決定通知書」または「不該当通知書」が届き、支給決定後おおむね2か月ほどで振り込まれます。
全体では、請求から振込まで約5〜6か月が目安とされています(あくまで目安で、個別の事情により前後します)。
受取人が死亡した場合の手続き〜口座凍結・振込不能への対処
ここからは、この手続きガイドの本題である「口座凍結」や「未支給年金を請求した受取人自身が亡くなったケース」への対処を解説します。
年金と口座凍結の関係は誤解が多く、手続きが止まってしまいやすいポイントです。
年金機構と銀行は死亡情報を共有しない
まず押さえておきたいのは、日本年金機構と金融機関(銀行)は、名義人の死亡情報を互いに共有していないという点です。
年金機構がマイナンバー等で死亡を把握して年金の支給を止めても、その情報が銀行に伝わるわけではありません。
一方、銀行は口座名義人の死亡を独自に把握すると、その口座を凍結します(口座凍結)。
つまり、「年金の受給停止」と「銀行口座の凍結」は別々のタイミングで進みます。
故人の口座に年金が振り込まれてしまったら
死亡のタイミングによっては、亡くなった後に故人の口座へ年金が振り込まれることがあります。
年金の振込手続きは振込日の前月初旬ごろに完了しているため、直前に亡くなると振込が止まらないことがあるためです。
このうち亡くなった月分までの年金は、正規の未支給年金の手続きによって遺族が受け取れます。
故人の口座に振り込まれた年金でも、死亡月より後の分は本来受け取れないお金で、後日返還が必要になることがあります。
また、凍結前に相続人が引き出して使うと、相続放棄ができなくなるなどのトラブルにつながります。
自己判断で引き出さず、年金事務所や金融機関に相談しましょう。
なお、未支給年金を請求しても、亡くなった方の口座を解約・凍結していないと、そのまま故人の口座に入金されてしまう場合があります。
口座の解約や凍結解除の手続きは金融機関ごとに異なるため、取引先の金融機関に直接確認してください。
口座凍結後に葬儀費用などで資金が必要な場合は、「仮払い制度」を利用できることがあります。
未支給年金を請求した受取人(相続人)自身が亡くなったケース
たとえば、次のような連鎖したケースがあります。
- 母(年金受給者)が亡くなり、同居していた息子が未支給年金を請求した
- ところが、未支給年金が振り込まれる前に、その息子も亡くなってしまった
- 息子の口座が凍結され、「振込できない」という通知が年金機構から届いた
この場合、息子に支払われるはずだった給付は「未支払給付金」として扱われます。
未支給年金の請求書が「未支給年金・未支払給付金請求書」という名称になっているのは、このように給付を受ける権利のある人が受け取る前に亡くなったケースにも対応するためです。
この未支払給付金は、亡くなった息子と生計を同じくしていた遺族(配偶者など)が、同じ請求書で請求するのが基本ですが、該当するかどうかは個別の事情によるため、年金事務所での確認が必要です。
未支給年金を請求した受取人自身が亡くなったケースは、誰が請求できるか・どの書類が必要かが個別の事情によって変わります。
自己判断で進めず、まずは年金事務所(ねんきんダイヤル)に状況を伝えて、必要な手続きと書類を確認してください。
振込不能通知(振込できない旨の通知)が届いたら
口座凍結などで年金を振り込めない場合、年金機構から「振込できない」旨の通知(振込不能に関する通知)が届くことがあります。
この通知が届いたら、記載された連絡先や最寄りの年金事務所に問い合わせ、次の点を確認しましょう。
- 誰が受け取れるのか(次順位の遺族・未支払給付金の請求者)
- どの請求書・添付書類が必要か
- 受取口座をどう指定すればよいか
あわてて故人の口座を操作せず、通知の内容に沿って年金事務所の案内を受けることが、遠回りに見えて最も確実です。
未支給年金にかかる税金と確定申告
未支給年金は相続財産ではないため、相続税はかかりません。
ただし、受け取った遺族の「一時所得」として、所得税・住民税の対象になる場合があります(国税庁「未支給の国民年金に係る相続税の課税関係」)。
一時所得には50万円の特別控除がある
一時所得には、年間50万円の特別控除があります。
その年に受け取った未支給年金と、その他の一時所得(生命保険の一時金など)を合計して50万円以下であれば、所得税はかからず、確定申告も不要です。
合計が50万円を超える場合は、超えた分をもとに確定申告が必要になります。
- 申告する年
実際に振り込まれた年の所得として申告します。 - 課税のしくみ
一時所得は「(受け取った額 − 特別控除50万円)」を求め、さらにその2分の1が課税対象になります。
未支給年金だけで50万円を超えるのは、月額の年金が高額なケースなど限られます。
ただし、同じ年に満期保険金や解約返戻金などの一時所得があると合算されるため、他の一時所得もあわせて確認しましょう。
税額の詳しい判断は、最寄りの税務署や税理士に相談してください。
亡くなった方の所得税は、相続人が「準確定申告」で申告する必要がある場合もあります。
死亡後の年金・関連手続きスケジュール
年金受給者が亡くなった後は、受給停止や未支給年金の請求など、期限のある手続きが複数あります。
亡くなった日を入力すると、主な手続きの期限の目安を確認できます。
準確定申告や遺族年金の期限は、正確には相続開始日や受給権発生日を基準に計算します。
上記はおおよその目安のため、正確な期限は年金事務所や税務署で確認してください。
よくある質問(FAQ)
Q. 相続放棄をしても未支給年金は受け取れますか?
A. 受け取れます。
未支給年金は相続財産ではなく、生計を同じくしていた遺族が固有の権利として受け取るお金です。
そのため、相続放棄をした方でも、生計同一などの条件を満たせば請求できます。
ただし、故人の口座に振り込まれた年金を勝手に引き出して使うと、相続放棄ができなくなるおそれがあるため注意してください。
Q. 亡くなった方の口座を凍結すると、未支給年金は受け取れなくなりますか?
A. 受け取れなくなるわけではありません。
未支給年金は、故人の口座ではなく、請求する遺族自身の口座を指定して受け取ります。
そのため、故人の口座が凍結されていても、正規の未支給年金の請求手続きをすれば、遺族の口座に振り込まれます。
Q. 未支給年金を請求した本人が、受け取る前に亡くなりました。どうすればよいですか?
A. 「未支払給付金」として、その方の遺族が請求できる場合があります。
未支給年金の請求書は「未支給年金・未支払給付金請求書」という名称で、給付を受ける前に亡くなったケースにも対応しています。
ただし、誰が請求できるかや必要書類は個別の事情で変わります。
振込できない旨の通知が届いた場合も含め、まずは年金事務所(ねんきんダイヤル)に確認してください。
Q. 未支給年金に確定申告は必要ですか?
A. 金額によっては必要です。
未支給年金は一時所得にあたり、50万円の特別控除があります。
その年の他の一時所得と合計して50万円以下なら申告不要ですが、超える場合は確定申告が必要です。
Q. 別々に暮らしていた親の未支給年金は請求できますか?
A. 生計を同じくしていたと認められれば請求できます。
別居していても、仕送りや定期的な連絡・介護など生活の結びつきがあれば、生計同一と認められることがあります。
その場合は「生計同一関係に関する申立書」の提出が必要です。
判断に迷う場合は、事前に年金事務所へ相談しましょう。
まとめ
未支給年金は、年金受給者が亡くなったときにほぼ必ず発生する「受け取り残しの年金」です。
最後に、重要なポイントを整理します。
- 相続財産ではない
生計を同じくしていた遺族の固有の権利で、相続放棄しても受け取れ、相続税もかかりません。 - 請求できる人には順位がある
配偶者→子→父母→孫→祖父母→兄弟姉妹→3親等内親族の順で、生計同一が条件です。 - 請求書と必要書類
「年金受給権者死亡届(報告書)兼 未支給年金・未支払給付金請求書」に、戸籍・住民票・受取口座の書類などを添えて提出します。 - 口座凍結との関係
年金機構と銀行は死亡情報を共有しません。
未支給年金は遺族自身の口座で受け取るため、故人の口座が凍結されても手続きは可能です。 - 受取人自身が亡くなったケース
未支払給付金として次の遺族が請求できる場合があります。
振込不能通知が届いたら、自己判断せず年金事務所に確認しましょう。 - 税金は一時所得
50万円の特別控除を超える場合のみ確定申告が必要です。
なお、未支給年金のほかにも、条件を満たせば遺族年金・寡婦年金・死亡一時金といった遺族給付を受け取れる場合があります。
期限は5年ですが、受給停止の届出や口座の扱いは早めの対応が肝心です。
不明点は、ねんきんダイヤルや最寄りの年金事務所に相談しながら、落ち着いて進めていきましょう。
