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老人ホームの入所手続きガイド - 種類・費用・条件・選び方

老人ホームの入所手続きガイド - 種類・費用・条件・選び方
最終更新:2026年2月11日

「親の介護が必要になってきたけれど、老人ホームはどう選べばいい?」
「費用はどのくらいかかる?」
「何から手続きを始めればいいの?」

老人ホームへの入所は、施設の種類選びから費用の見積もり、書類の準備、各種制度の申請まで、やるべきことが多岐にわたります。

施設の種類だけでも8種類あり、費用や入所条件が大きく異なるため、まず全体像を把握することが大切です。

この手続きガイドでは、老人ホーム・介護施設の種類と特徴、費用相場、入所までの手続きの流れ、必要書類、費用を抑える公的制度まで、ステップごとにわかりやすく解説します。

1. まず知っておきたい老人ホーム・介護施設の種類

老人ホームや介護施設は、運営主体によって「民間施設」と「公的施設」の2つに大きく分かれます。

さらに、入所する方の介護度や経済状況、認知症の有無などに応じて、全8種類に分類されます。

それぞれの特徴を理解し、本人の状態や家庭の事情に合った施設を選ぶことが、入所手続きの第一歩です。

ポイント

以下の説明に出てくる「要介護1〜5」とは、市区町村に申請して受ける「要介護認定」の区分のことです。
多くの施設では入所の前提として要介護認定が必要になります。
認定の仕組みや申請方法については、4-1. 要介護認定を受ける(まだの場合)で詳しく解説しています。

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1-1. 民間施設(4種類)

民間施設は、介護の必要がない方から要介護の方まで幅広く対応しています。

費用やサービス内容は施設ごとに大きく異なるのが特徴です。

  • 介護付き有料老人ホーム

    • 24時間介護職員が常駐し、身の回りのお世話から医療的ケアまで幅広いサービスを提供します。
    • 介護保険サービスが定額のため、月々の予算が立てやすいのがメリットです。
    • 介護専用型(要介護の方のみ)と混合型(介護の必要がない方も入居可)があります。
  • 住宅型有料老人ホーム

    • 食事の提供や生活相談などの日常支援がメインです。
    • 介護が必要になった場合は、外部の介護サービスを自分で選んで組み合わせることができます。
    • イベントやレクリエーションが充実している施設も多くあります。
  • サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)

    • バリアフリー設計の賃貸住宅で、安否確認と生活相談のサービスが付いています。
    • あくまでも「住まい」の位置付けのため、外出や外泊の自由度が高いのが特徴です。
    • 介護が必要になった場合は、外部の在宅介護サービスを利用します。
  • グループホーム

    • 認知症の方を対象に、5〜9人の少人数ユニットで共同生活を送る施設です。
    • 料理や洗濯などの役割分担を通じて、認知症の進行を穏やかにすることを目指します。
    • 地域密着型のサービスのため、施設がある市町村に住民票があることが入所条件です。

1-2. 公的施設(4種類)

公的施設は、国や地方自治体が管轄する施設で、民間施設よりも月額費用が安い傾向にあります。

ただし、入所条件が厳しく、待機者が多いケースもあります。

  • 特別養護老人ホーム(特養)

    • 「要介護3以上」の方が対象で、24時間体制の介護を受けられます。
    • 費用が安く、看取りまで対応可能なため人気が高く、地域によっては数ヶ月〜数年の待機期間が発生しています。
    • 入所の順番は申し込み順ではなく、本人の介護度や家庭環境から判断される緊急性の点数で決まります。
    • 要介護1〜2の方でも、以下のようなやむを得ない事情がある場合は「特例入所」が認められるケースがあります。
      • 認知症が進行し、日常生活に支障をきたす症状や行動が頻繁にある
      • 知的障害・精神障害により、在宅での生活が困難
      • 家族等による虐待があり、心身の安全を確保できない
      • 単身世帯で家族の支援が見込めず、地域の介護サービスだけでは不十分
  • 介護老人保健施設(老健)

    • 病院を退院した後、自宅に戻ることを目指してリハビリテーションを集中的に受ける施設です。
    • 理学療法士や作業療法士などの専門職が常駐しています。
    • 在宅復帰が目的のため、入所期間は原則3ヶ月〜6ヶ月程度です。
  • 介護医療院

    • 日常的な医療管理が必要な要介護者が、長期療養生活を送るための施設です。
    • 医師や看護師が配置されており、点滴やたん吸引などの医療的ケアにも対応できます。
    • 看取りやターミナルケアも行っており、終の棲家としても検討できます。
  • ケアハウス(軽費老人ホーム)

    • 60歳以上で、家族の支援を受けられない方や自宅での一人暮らしに不安がある方が対象です。
    • 国や自治体から運営補助を受けているため、所得に応じた費用で入所できます。
    • 一般型(生活支援のみ)と介護型(介護サービスも利用可能)の2種類があります。

1-3. 施設の種類と入所条件の比較表

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施設の種類運営対象介護度認知症看取り入居のしやすさ
介護付き有料老人ホーム民間自立(介護なし)〜要介護5比較的入りやすい
住宅型有料老人ホーム民間自立(介護なし)〜要介護5比較的入りやすい
サ高住民間自立(介護なし)〜軽度比較的入りやすい
グループホーム民間要介護2〜やや入りにくい
特養公的要介護3〜5待機者が多い
老健公的要介護1〜5×比較的入りやすい
介護医療院公的要介護1〜5やや入りにくい
ケアハウス公的60歳以上やや入りにくい

※「○」は多くの施設で対応、「△」は施設によって異なる、「×」は原則非対応

2. 老人ホームの費用相場と内訳

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老人ホームの費用は、「入居一時金(初期費用)」と「月額利用料」の2つで構成されています。

施設の種類や立地、サービス内容によって金額は大きく異なります。

2-1. 費用の仕組み

  • 入居一時金(初期費用)
    入居時にまとめて支払う初期費用です。
    0円の施設も多くある一方、高級志向の施設では数千万円になることもあります。
    入居一時金は施設が定めた期間(たとえば5年など)をかけて少しずつ消化されていく仕組みです。
    その期間が終わる前に退去した場合は、まだ使われていない分が返金されます。

  • 月額利用料
    毎月かかる費用の合計で、以下の内訳で構成されます。

    • 家賃(居住費)
    • 管理費(共用部分の維持管理)
    • 食費
    • 介護保険サービスの自己負担分(1〜3割)
    • 日用品費、医療費、レクリエーション費など

2-2. 施設種類別の費用相場

施設の種類入居一時金の目安月額利用料の目安
介護付き有料老人ホーム0〜数千万円15〜30万円程度
住宅型有料老人ホーム0〜数百万円9〜19万円程度
サ高住0〜数十万円(敷金)12〜20万円程度
グループホーム0〜数百万円15〜20万円程度
特養なし5〜15万円
老健なし8〜15万円程度
介護医療院なし8〜15万円程度
ケアハウス0〜数十万円7〜15万円程度

※費用は施設の立地、居室タイプ、介護度などによって大きく変動します

2-3. 月額利用料に含まれるもの

月額利用料の内訳を把握しておくと、施設間の比較がしやすくなります。

費目内容備考
家賃(居住費)居室の利用料個室/多床室で大きく異なる
管理費共用部分の維持管理、事務費施設により差が大きい
食費朝・昼・夕の食事代1日3食で1,500〜2,000円程度
介護保険の自己負担分介護サービス費の1〜3割所得により負担割合が異なる
その他日用品、医療費、理美容代など施設により含まれる範囲が異なる

3. 状況別・おすすめ施設の選び方

施設は8種類もあるため、「結局どれを選べばよいのか分からない」という方も多いのではないでしょうか。

ここでは、ご本人の介護度や生活の状況ごとに、おすすめの施設と入居のしやすさを踏まえた現実的な候補を紹介します。

3-1. ケース別おすすめ施設の早見表

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ご本人の状況おすすめ施設代わりの候補
介護の必要がない〜軽度で将来に備えたいサ高住 / 住宅型有料老人ホームケアハウス(一般型)
要介護3以上でしっかり介護を受けたい特養介護付き有料老人ホーム
認知症があり安心できる環境がほしいグループホーム介護付き有料老人ホーム
医療的ケアが日常的に必要介護医療院介護付き有料老人ホーム
費用をできるだけ抑えたい特養 / ケアハウス老健(一時的な入所)
リハビリで在宅復帰を目指したい老健

「おすすめ施設」に空きがない場合や入所条件に合わない場合は、「代わりの候補」を並行して検討しましょう。

以下で、それぞれのケースについて詳しく解説します。

3-2. 介護の必要がない〜軽度で、将来に備えて安心な住まいを探したい場合

まだ介護の必要がない方や、要支援〜要介護1程度のお元気な方が対象です。

一人暮らしに不安を感じ始めた方や、元気なうちに住み替えておきたいご夫婦にも向いています。

おすすめ施設

  • サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
    自分のペースで生活を続けたい方に最も向いています。
    入居一時金が不要(敷金のみ)の物件が多く、比較的空きも見つかりやすいのがメリットです。

  • 住宅型有料老人ホーム
    毎日の暮らしに安心感がほしい方に向いています。
    空きのある施設が比較的多い傾向です。

  • ケアハウス(一般型)(代わりの候補)
    費用面で不安がある方の選択肢になります。
    ただし人気が高く、地域によっては待機が発生することがあります。

将来の住み替えも視野に入れましょう

サ高住や住宅型有料老人ホームは、介護度が上がると十分なケアを受けられなくなる場合があります。
「元気なうちはサ高住で暮らし、介護が重くなったら介護付き有料老人ホームや特養に住み替える」という段階的なプランも検討しておくと安心です。

3-3. 要介護度が中〜重度で、しっかり介護を受けたい場合

要介護3以上で、24時間体制の介護を必要とする方が主な対象です。

おすすめ施設

  • 特別養護老人ホーム(特養)
    月額6〜15万円程度と費用が安く、看取りまで対応できるため、長期入所の第一候補です。
    ただし待機者が多く、地域によっては数ヶ月〜数年待ちになることがあります。

  • 介護付き有料老人ホーム(代わりの候補)
    特養の空きを待つ間にもすぐに入居できるのが最大のメリットです。
    月額15〜30万円程度と費用は高めですが、待機期間なく入居できます。

特養と介護付き有料老人ホームの「同時申し込み」がおすすめです

特養の入所申し込みをしながら、介護付き有料老人ホームにも並行して申し込んでおく方法が現実的です。
介護付き有料老人ホームに入居した後、特養に空きが出たタイミングで住み替えることもできます。
特養は複数施設に同時申し込みできるため、3〜5施設に申し込んでおきましょう。

3-4. 認知症があり、安心できる環境で暮らしたい場合

認知症の診断を受けている方や、もの忘れが進んで一人での生活が難しくなってきた方が対象です。

おすすめ施設

  • グループホーム
    認知症ケアに特化しており、少人数の家庭的な環境で穏やかに暮らせるのが最大の強みです。
    ただし住民票の条件があり、地域によっては空きが少なくやや入りにくい傾向があります。

  • 介護付き有料老人ホーム(代わりの候補)
    認知症対応のフロアや専門スタッフを配置している施設もあります。
    グループホームの空きが見つからない場合や、認知症に加えて身体介護も必要な場合に検討しましょう。

認知症の進行度合いによって施設を見直しましょう

軽度の認知症であればグループホームが適していますが、重度になり身体的な介護も必要になった場合には、特養や介護付き有料老人ホームへの住み替えが必要になることもあります。

3-5. 医療的ケアが日常的に必要な場合

胃ろう、たん吸引、インスリン注射、人工透析など、日常的に医療管理が必要な方が対象です。

おすすめ施設

  • 介護医療院
    医療と介護の両方を長期的に受けられ、終の棲家として検討できるのが強みです。
    ただし施設の数自体が少なく、地域によっては空きが限られています。

  • 介護付き有料老人ホーム(代わりの候補)
    医療体制が充実した施設であれば、一定の医療的ケアに対応可能です。
    ただし対応できる医療行為は施設により異なるため、見学時に必ず確認しましょう。

入居前の医療ケアの確認は必須です

対応できない医療行為がある場合、入居を断られるケースがあります。
入居後に医療ニーズが変わる可能性もあるため、「将来的にどこまで対応できるか」も確認しておくと安心です。

3-6. 費用をできるだけ抑えたい場合

年金収入の範囲内で入所したい方や、経済的な余裕が少ない方が対象です。

おすすめ施設

  • 特別養護老人ホーム(特養)
    月額6〜15万円程度と最も費用を抑えやすく、負担限度額認定を利用すればさらに軽減できます。
    ただし要介護3以上が入所条件で、待機期間も長い傾向です。

  • ケアハウス(軽費老人ホーム)
    月額6〜17万円程度と比較的安く、特養の入所条件に満たない方の選択肢としても適しています。

  • 介護老人保健施設(老健)(一時的な利用)
    月額8〜14万円程度と費用が安めです。
    特養の空きを待つ間の一時的な入所先として利用する方もいます。

公的施設は費用が抑えられる反面、入所条件が厳しかったり待機期間が長かったりします。
費用の軽減制度については、本手続きガイドの後半で詳しく紹介していますので、併せて確認してください。

3-7. リハビリで在宅復帰を目指したい場合

骨折や脳卒中などで入院し、退院後もリハビリを続けて自宅に戻ることを目指す方が対象です。

おすすめ施設

  • 介護老人保健施設(老健)
    リハビリ専門職のもとで集中的にリハビリに取り組める唯一の施設です。
    比較的空きが見つかりやすく、入所しやすいのもメリットです。
老健はあくまでも在宅復帰が目的のため、長期の入所には適していません

リハビリの結果、自宅での生活が難しいと判断された場合は、ほかの介護施設への住み替えを検討しましょう。
退院前に病院のソーシャルワーカーやケアマネージャーと相談し、退院後のプランを立てておくとスムーズです。

3-8. 施設選びに迷ったときの相談先

どの施設が合うか判断できないときは、一人で悩まず専門家に相談しましょう。

担当ケアマネージャーや地域包括支援センターに相談すれば、本人の状況に合った施設を提案してもらえます。

具体的な相談先や探し方は、4-2. 施設を探す・情報を集めるで詳しく紹介しています。

4. 入所までの手続きの流れ

老人ホームへの入所は、一般的に施設探しから入居まで1〜3ヶ月程度かかります。

以下のステップで進めていきましょう。

4-1. 要介護認定を受ける(まだの場合)

多くの老人ホームでは、入所の前提として「要介護認定」を受けていることが求められます。

まだ認定を受けていない場合は、まず市区町村の介護保険担当窓口で申請しましょう。

要介護認定の流れは以下のとおりです。

  1. 市区町村の窓口に「要介護(要支援)認定申請書」を提出
  2. 認定調査員による訪問調査(心身の状態を74項目で確認)
  3. 主治医意見書の作成(市区町村が主治医に依頼、本人の費用負担なし)
  4. コンピューターによる一次判定
  5. 介護認定審査会による二次判定
  6. 結果通知(申請から原則30日以内)

認定結果は「要支援1〜2」「要介護1〜5」「非該当」のいずれかです。

申請はご本人やご家族のほか、ケアマネージャーが代行することもできます。

要介護認定の詳しい手続きは、以下の手続きガイドで解説しています。

4-2. 施設を探す・情報を集める

要介護認定を受けたら(または申請中に並行して)、施設探しを始めます。

以下の相談先を活用しましょう。

  • 担当ケアマネージャー
    本人の生活環境や性格を把握しているため、相性のよい施設を提案してもらえます。

  • 地域包括支援センター
    市町村に設置されている高齢者の総合相談窓口です。
    地元の施設情報に詳しく、施設選び以外の介護に関する相談にも対応しています。

  • 民間の入居相談センター
    全国の施設に対応しており、扱っている施設数が多いため、条件に合う施設を見つけやすいのが特徴です。
    オンラインで相談できるところもあります。

お住まいの地域の地域包括支援センターは、以下から調べることができます。

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4-3. 施設を見学する

気になる施設が見つかったら、必ず見学を行いましょう。

できれば3施設以上を見学して比較するのがおすすめです。

見学時のチェックポイント

  • 施設全体の清潔感、においはどうか
  • 入居者の表情は穏やかか、活気はあるか
  • 職員の対応は丁寧か、入居者への言葉づかいはどうか
  • 食事の内容(試食できる施設もある)
  • 居室の広さ、設備、日当たりはどうか
  • 医療体制(協力医療機関、看護師の配置)
  • レクリエーションやイベントの内容
  • 入居者同士の雰囲気
  • 面会のルール(頻度、時間帯)
  • 緊急時の対応体制

4-4. 申し込み・面談・審査

施設を絞り込んだら、入所の申し込みを行います。

申し込みから入所までの流れは、施設の種類によって異なります。

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4-5. 契約・入居準備

入所が決まったら、施設との契約手続きと入居準備を進めます。

契約時の確認ポイント

契約前に「重要事項説明書」を必ず確認しましょう。

特に以下の点は、後のトラブルを防ぐために重要です。

  • 月額利用料の内訳と、含まれないもの(追加費用が発生する項目)
  • 入居一時金が消化される期間とその計算方法
  • 退去時の返還金の計算方法
  • 退去要件(どのような場合に退去を求められるか)
  • 医療対応の範囲と協力医療機関
  • 介護保険の自己負担割合
  • 面会・外出・外泊のルール

入居までのスケジュール目安

時期やること
入居1ヶ月前健康診断書を主治医に依頼、施設担当者と面談
入居2〜3週間前住民票・印鑑証明書の取得、持ち物の買い出し
入居1週間前すべての持ち物に記名、荷造り
入居前日〜当日持ち物の最終確認、荷物搬入、施設スタッフへの挨拶

4-6. 住民票の取り扱い(住所地特例制度)

施設に入所する際、住民票を施設の所在地に移すかどうかは、施設の種類やルールによって異なります。

ここで知っておきたいのが「住所地特例制度」(入所後も元の市区町村の介護保険が適用される仕組み)です。

これは介護保険法第13条に基づく制度で、対象施設に入所して住所を移した場合でも、元の市区町村の介護保険が引き続き適用される仕組みです。

施設が所在する市区町村の介護保険財政に負担が集中することを防ぐために設けられています。

住所地特例の対象となる施設は以下のとおりです。

  • 特別養護老人ホーム(特養)
  • 介護老人保健施設(老健)
  • 介護医療院
  • 有料老人ホーム(介護付き・住宅型)
  • サービス付き高齢者向け住宅(有料老人ホームに該当するもの)
  • ケアハウス(特定施設の指定を受けているもの)
  • 養護老人ホーム

住民票を移すかどうかは施設によって対応が異なるため、契約時に確認しましょう。

5. 入所に必要な書類と持ち物

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入所にあたって準備すべき書類と持ち物を、チェックリスト形式でまとめました。

5-1. 契約時に必要な書類

取得に時間がかかるものもあるため、入所が決まったらすぐに準備を始めましょう。

  • 入居契約書・重要事項説明書(施設から受け取る)
  • 身元保証書・身元引受書(施設の書式に身元保証人が署名・捺印)
  • 住民票(発行から3ヶ月以内)
  • 健康診断書・診療情報提供書(主治医に依頼)
  • 印鑑(本人・身元保証人分、実印または認印は施設に確認)
  • 印鑑証明書(必要な場合)
  • マイナ保険証または資格確認書(後期高齢者医療の場合はその資格確認書)
  • 介護保険被保険者証
  • 介護保険負担割合証
  • 介護保険負担限度額認定証(交付を受けている場合)
  • 年金手帳または年金証書
  • 身体障害者手帳(お持ちの場合)
  • お薬手帳・処方箋

5-2. 入居時の持ち物

施設によって持ち込みのルールが異なるため、事前に確認してください。

衣類

  • 普段着(上下5〜7セット)
  • パジャマ(3〜4セット)
  • 下着・肌着・靴下(各7セット程度)
  • 上着・カーディガン(季節に合わせて2〜3枚)
  • 室内履き(滑りにくく、かかとが覆われているもの)
  • 外出用の靴

日用品・洗面用具

  • 歯ブラシ、歯磨き粉、コップ
  • 入れ歯ケース、入れ歯洗浄剤(必要な方)
  • バスタオル(3〜4枚)、フェイスタオル(4〜7枚)
  • ティッシュペーパー、ウェットティッシュ
  • 爪切り、電気シェーバー(必要な方)

居室で使うもの

  • テレビ(持ち込み可能か要確認)
  • 小型の収納ケース
  • 時計、カレンダー
  • 写真立て、趣味の品

5-3. 持ち物の注意点

  • 衣類やタオルにはフルネームで記名する
    施設では洗濯を一括で行うことが多く、名前がないと他の入居者のものと混ざってしまいます。
    下着・靴下・タオルなど細かいものも含め、洗濯に出すものにはすべて記名しましょう。
    タグへの記名やお名前シール(アイロンタイプ)を使うと便利です。

  • 着脱しやすいものを選ぶ
    前開きでボタンが大きい服、マジックテープ式の靴など、本人が扱いやすいものを優先しましょう。

  • 高価なものや貴重品は必要最小限に
    紛失や破損のリスクがあるため、高額なアクセサリーや大量の現金の持ち込みは避けましょう。
    お金の管理方法は、入居前にご家族で話し合っておくことが大切です。

6. 費用を抑える4つの公的制度

老人ホームの費用負担は決して小さくありませんが、所得や資産の状況に応じて利用できる公的な軽減制度があります。

対象となる可能性がある方は、積極的に活用しましょう。

6-1. 特定入所者介護サービス費(負担限度額認定)

負担限度額認定とは、所得や預貯金が一定の基準を下回る方を対象に、施設利用時の食費と居住費の自己負担額の上限を下げる制度です。

主に特養、老健、介護医療院などの介護保険施設に入所している方が対象です。

対象となる方

世帯全員が市町村民税非課税で、かつ預貯金等が基準以下の方(下表参照)です。

「市町村民税非課税」の年収目安は、65歳以上で年金収入のみの場合、単身で年金155万円以下夫婦世帯で世帯主の年金211万円以下(扶養配偶者1人の場合)が一般的な目安です。

ただし、基準は自治体や年度によって異なる場合があるため、お住まいの市区町村の介護保険担当窓口や公式サイトで最新の基準を確認してください。

下表の「利用者負担段階」は、所得や預貯金の額に応じて決まる費用負担の区分です(要介護度の区分とは異なります)。

利用者負担段階対象者預貯金等の要件(単身)預貯金等の要件(夫婦)
第1段階生活保護受給者、老齢福祉年金受給者等1,000万円以下2,000万円以下
第2段階年金収入等が80万円以下650万円以下1,650万円以下
第3段階①年金収入等が80万円超〜120万円以下550万円以下1,550万円以下
第3段階②年金収入等が120万円超500万円以下1,500万円以下

※「配偶者」には世帯分離している配偶者や事実婚の方を含みます

どのくらい軽減される?

この制度で軽減されるのは食費と居住費です。

認定を受けていない場合(第4段階)、食費と居住費は施設との契約額がそのまま自己負担になりますが、認定を受けると以下の限度額まで負担が下がります。

特養ユニット型個室に入所した場合の月額目安(30日)

利用者負担段階居住費食費合計軽減額の目安
負担軽減なし(第4段階)約6.2万円約4.3万円約10.5万円
第1段階約2.6万円約0.9万円約3.5万円約7万円/月
第2段階約2.6万円約1.2万円約3.8万円約6.7万円/月
第3段階①約4.1万円約2.0万円約6.1万円約4.4万円/月
第3段階②約4.1万円約4.1万円約8.2万円約2.3万円/月

※居住費・食費の基準費用額(国が定めた平均額)をもとに算出した2024年8月改定時点の金額です。
基準費用額や負担限度額は定期的に見直されるため、最新の金額は市区町村の窓口で確認してください。
実際の金額は施設との契約内容によって異なります。
上記は食費と居住費のみの軽減額で、介護サービス費の自己負担分は含みません。

申請方法

  1. 市区町村の介護保険担当窓口で「介護保険負担限度額認定申請書」を入手・記入
  2. 必要書類を添えて申請
  3. 認定されると「介護保険負担限度額認定証」が交付される
  4. 入所する施設に認定証を提示する
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認定証の有効期間は、申請した月の1日から翌年7月31日までです。

自動更新されないため、毎年の更新手続きを忘れないようにしましょう。

6-2. 高額介護サービス費

1ヶ月間に支払った介護保険サービスの自己負担額が、所得に応じた上限額を超えた場合に、超過分が払い戻される制度です。

自己負担の上限額(月額)

所得区分上限額
生活保護受給者等15,000円(個人)
市町村民税非課税で年金収入等80万円以下15,000円(個人) / 24,600円(世帯)
市町村民税非課税世帯(上記以外)24,600円(世帯)
市町村民税課税〜課税所得380万円未満44,400円(世帯)
課税所得380万円以上〜690万円未満93,000円(世帯)
課税所得690万円以上140,100円(世帯)

※食費・居住費は対象外です

申請方法

  1. 支給対象となった場合、市区町村から申請書が届く
  2. 申請書に記入し、郵送または窓口で提出(初回のみ)
  3. 指定口座に超過分が振り込まれる
  4. 2回目以降は自動的に同じ口座へ振り込まれる(多くの自治体)

申請の時効は利用月の翌月1日から2年間です。

通知が届いたら、早めに手続きしましょう。

6-3. 高額医療・高額介護合算療養費制度

1年間(毎年8月1日〜翌年7月31日)に支払った医療費と介護費の合計が、所得に応じた年間上限額を超えた場合に、超過分が支給される制度です。

同一世帯に介護と医療の両方を利用している方がいる場合に、大きな負担軽減効果が期待できます。

対象となる方には市区町村から申請書が届きますので、届いたら忘れずに申請しましょう。

高額療養費制度の仕組みについては、以下の手続きガイドでも解説しています。

6-4. 社会福祉法人等による利用者負担軽減制度

生計が困難な低所得の方を対象に、社会福祉法人が運営する施設での利用者負担額を軽減する制度です。

介護サービス費の自己負担額、食費、居住費について、原則としてそれぞれ4分の1(老齢福祉年金受給者は2分の1)が軽減されます。

対象者の主な要件

  • 世帯全員が市町村民税非課税
  • 年間収入が単身世帯で150万円以下
  • 預貯金等が単身世帯で350万円以下
  • 介護保険料を滞納していないこと

なお、この制度は軽減措置の実施を申し出ている社会福祉法人が運営する施設でのみ利用できます。

利用中の施設や利用予定の施設が対象かどうかは、市区町村の介護保険担当窓口で確認しましょう。

対象となるサービス

  • 訪問介護
  • 通所介護(地域密着型通所介護を含む)
  • 短期入所生活介護(ショートステイ)
  • 認知症対応型通所介護
  • 小規模多機能型居宅介護
  • 特別養護老人ホーム(介護福祉施設サービス)

申請方法

  1. 市区町村の介護保険担当窓口で「社会福祉法人等利用者負担軽減確認申請書」を入手・記入
  2. 必要書類を添えて窓口に提出
  3. 市区町村が収入・資産等を審査
  4. 認定されると「社会福祉法人等利用者負担軽減確認証」が交付される
  5. サービスを受ける施設・事業所に確認証を提示する

申請に必要な書類

  • 社会福祉法人等利用者負担軽減確認申請書(窓口で入手)
  • 申請者および世帯員全員の預貯金通帳すべて(直近の残高と2ヶ月分の出入金が分かるもの)
  • 定期預金・有価証券等がある場合は、その証明書の写し
  • 非課税年金(遺族年金、障害年金等)がある場合は、年金支払通知書の写し

※生活保護受給者の方は申請書のみで申請できます

6-5. 世帯分離で費用を抑える方法

「世帯分離」とは、同じ住所に住んでいながら、住民票上の世帯を分ける手続きのことです。

たとえば、親と同居している子世代の所得が高い場合、世帯分離をすることで親が「市町村民税非課税世帯」に該当しやすくなり、上記の軽減制度を利用できる可能性が高まります。

メリット

  • 高額介護サービス費の自己負担上限額が下がる
  • 特定入所者介護サービス費の対象になりやすくなる
  • 国民健康保険料や後期高齢者医療保険料が減額される場合がある

デメリット・注意点

  • 高額医療・高額介護合算療養費制度で、世帯の費用を合算できなくなる
  • 子の健康保険の扶養から外れ、別途保険に加入が必要になる場合がある
  • 勤務先の家族手当の支給対象外になることがある

世帯分離にはメリットとデメリットの両方があるため、家計全体でどちらが有利になるかをよく検討してから手続きしましょう。

判断が難しい場合は、ケアマネージャーや市区町村の窓口に相談することをおすすめします。

7. 施設選び・入所でよくある質問

Q. 老人ホームに入所できる年齢は何歳から?

A. 有料老人ホームやサ高住は、多くの施設で60歳以上(一部65歳以上)を入居条件としています。

特養は年齢制限ではなく「要介護3以上」が条件です。

40歳〜64歳の方でも、特定疾病(初老期認知症、脳血管疾患など16疾病)により要介護認定を受けている場合は入所できるケースがあります。

Q. 特養に早く入所するにはどうすればよい?

A. 特養の入所は申し込み順ではなく、緊急性の点数で優先順位が決まります。

「早く入る」ための方法としては、以下が一般的です。

  • 複数の特養に同時に申し込む(最も効果的)
  • 新設の特養に申し込む(オープン時は空きが多い)
  • 申込書に家庭の状況を詳しく記載する(介護の困難さを伝える)
  • ケアマネージャーに相談して適切な施設を紹介してもらう

Q. 身元保証人がいない場合はどうする?

A. 多くの施設では入所時に身元保証人(身元引受人)を求められます。

親族に頼める方がいない場合は、以下の方法があります。

  • 身元保証サービス(保証会社)を利用する
  • 成年後見制度を利用する(家庭裁判所に申立て)
  • 社会福祉協議会に相談する
  • 身元保証人不要の施設を探す(一部の施設は不要としている)

Q. 住民票は施設に移す必要がある?

A. 施設の種類やルールによって異なります。

特養などの「住所地特例制度」対象施設であれば、住民票を施設に移しても元の市区町村の介護保険が引き続き適用されます。

一方で、住民票の移動を入所条件としている施設もあるため、契約時に確認しましょう。

住所変更に伴う保険証の手続きについては、以下の手続きガイドも参考にしてください。

Q. 夫婦で同じ施設に入所できる?

A. 可能です。

有料老人ホームやサ高住では、夫婦で入居できる2人部屋を用意している施設もあります。

ただし、夫婦の要介護度が大きく異なる場合、同じ施設で対応できないケースもあるため、見学時に相談しましょう。

Q. 入居一時金は退去時に返還される?

A. 消化期間が終わる前に退去した場合は、まだ使われていない分が返金されるのが一般的です。

入居一時金には施設が定めた消化期間(たとえば5年など)が設定されています。

たとえば、消化期間5年で入居一時金300万円を支払い、2年で退去した場合、残り3年分にあたる180万円程度が返金されます(入居時に差し引かれる初期費用がある場合はその分を除く)。

契約前に、消化期間、初期費用の有無、返金の計算方法を必ず確認しましょう。

Q. 費用が払えなくなった場合はどうする?

A. まずは本手続きガイドの「6. 費用を抑える4つの公的制度」で紹介した軽減制度をすべて活用しているか確認しましょう。

それでも費用の支払いが困難な場合は、以下の選択肢があります。

  • 生活保護の申請を検討する(生活保護受給者も特養や一部の有料老人ホームへ入所可能)
  • より費用の安い施設への住み替えを検討する
  • 市区町村の福祉相談窓口やケアマネージャーに相談する

一人で抱え込まず、早めに専門家に相談することが大切です。

まとめ

老人ホームへの入所手続きは、施設選びから契約・入居まで多くのステップがありますが、全体の流れを把握しておけば、落ち着いて進めることができます。

最後に、手続きのポイントを振り返りましょう。

  • 施設は8種類あり、本人の介護度・経済状況・希望する生活スタイルに合わせて選ぶことが大切です。
  • 状況別のおすすめ施設を参考に、第一候補と代わりの候補を並行して検討しましょう。
  • 費用は施設の種類で大きく異なります。
    入居一時金と月額利用料の内訳を確認し、無理のない資金計画を立てましょう。
  • 手続きの流れは、要介護認定→施設探し→見学→申し込み・審査→契約・入居準備の順で進みます。
  • 必要書類は早めに準備しましょう。
    特に健康診断書や診療情報提供書は、主治医への依頼から取得まで時間がかかります。
  • 公的な費用軽減制度を活用することで、月数万円単位で負担を抑えられる可能性があります。
    対象になるかどうか、市区町村の窓口で確認しましょう。

施設選びや手続きに迷ったときは、担当ケアマネージャーや地域包括支援センターに相談するのが最も確実です。

ご本人にもご家族にも納得のいく施設が見つかるよう、この手続きガイドをぜひお役立てください。

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