手続きプランナー

介護保険負担限度額認定とは?条件・段階・申請方法をわかりやすく解説

介護保険負担限度額認定とは?条件・段階・申請方法をわかりやすく解説
最終更新:2026年5月4日

「施設に入ったら、食費と居住費だけで月10万円以上もかかるの?」
「もう少し費用を抑える方法はないの?」
「申請すれば安くなる制度があるって聞いたけど、うちは対象になる?」

介護保険施設の食費や居住費は、介護保険の給付対象外のため原則として全額自己負担です。

しかし、所得や預貯金が一定以下の方は「介護保険負担限度額認定」を受けることで、食費・居住費の自己負担が大幅に軽減されます。

この制度は自分から申請しなければ適用されず、知らないまま月に数万円多く支払い続けているケースも少なくありません。

この手続きガイドでは、制度のしくみから認定の条件、利用者負担段階ごとの金額、申請方法・必要書類まで、初めての方にもわかりやすく解説します。

2026年8月から負担限度額が一部引き上げられる改正についても最新情報をお伝えします。

1. 介護保険負担限度額認定とは

メディアを読み込み中...

介護保険施設(特別養護老人ホーム・介護老人保健施設など)に入所したり、ショートステイを利用したりする場合、介護サービスの自己負担(1〜3割)とは別に、食費と居住費(滞在費)がかかります。

この食費・居住費は介護保険の給付対象に含まれないため、原則として利用者の全額自己負担です。

しかし、所得が低い方にとってこの負担は非常に大きなものになります。

そこで、所得や預貯金が一定以下の方に対して、食費・居住費の自己負担額に上限(負担限度額)を設け、超えた分を介護保険から給付する制度があります。

これが「介護保険負担限度額認定」です。

制度の正式名称と通称

正式には「特定入所者介護(予防)サービス費」、通称「補足給付」と呼ばれます。
負担限度額の認定を受けるために申請し、交付されるのが「介護保険負担限度額認定証」です。

メディアを読み込み中...

どのくらい軽減されるのか

たとえば、特別養護老人ホーム(多床室)に入所している第2段階の方の場合を見てみましょう。

  • 食費
    基準費用額 1日1,545円 → 負担限度額 1日390円(月約3.5万円の軽減)
  • 居住費
    基準費用額 1日915円 → 負担限度額 1日430円(月約1.5万円の軽減)

合わせて月5万円近くの負担が軽くなる計算です。

この差額分が介護保険から給付されるしくみです。

申請しなければ適用されません

この制度は、要件を満たしていても自動的に適用されるわけではありません。
必ず市区町村の窓口に申請し、「介護保険負担限度額認定証」の交付を受ける必要があります。

2. 対象となる施設・サービス

負担限度額認定が適用されるのは、以下の施設・サービスです。

  • 特別養護老人ホーム(特養)
  • 介護老人保健施設(老健)
  • 介護医療院
  • 短期入所生活介護(ショートステイ)
  • 短期入所療養介護
  • 地域密着型介護老人福祉施設(地域密着型特養)

※かつて対象だった「介護療養型医療施設」は2024年3月末で制度廃止となり、介護医療院等に転換されています。

対象外の施設に注意

有料老人ホーム(介護付き・住宅型)やグループホーム(認知症対応型共同生活介護)は対象外です。
これらの施設では負担限度額認定を受けても食費・居住費の軽減はありません。

3. 認定の条件 - 所得と預貯金の2つの基準

メディアを読み込み中...

介護保険負担限度額認定を受けるには、「所得の要件」と「預貯金の要件」の両方を満たす必要があります。

3-1. 所得の要件

所得の基本条件は以下の2つです。

  1. 本人を含む世帯全員が住民税非課税であること
  2. 配偶者が住民税非課税であること(世帯分離している場合や事実婚の相手も含む)
世帯分離しても配偶者は合算されます

世帯を分離していても、配偶者(事実婚を含む)の住民税課税状況は必ず確認されます。
配偶者が住民税課税の場合、本人が非課税でも認定の対象外です。

さらに、年金収入と合計所得金額の合計によって、第1段階〜第3段階②の4区分に分かれます。

利用者負担段階所得の目安
第1段階生活保護受給者、または老齢福祉年金受給者
第2段階年金収入額+合計所得金額が年間80万円程度以下(※)
第3段階①年金収入額+合計所得金額が年間80万円程度超〜120万円以下(※)
第3段階②年金収入額+合計所得金額が年間120万円超

※年金収入には、老齢年金だけでなく遺族年金・障害年金(非課税年金)も含まれます。

※第2段階と第3段階①の境界額は、年金額の改定に連動して毎年見直されます。 2025年8月以降は80万9,000円に引き上げられました(従来は80万円)。 今後も年金額の改定に応じて変動するため、最新の基準額はお住まいの市区町村にご確認ください。

3-2. 預貯金の要件

所得の条件を満たしていても、一定額以上の預貯金等がある場合は認定の対象外です。

段階ごとの預貯金基準額は以下のとおりです。

利用者負担段階単身の場合夫婦の場合
第1段階1,000万円以下2,000万円以下
第2段階650万円以下1,650万円以下
第3段階①550万円以下1,550万円以下
第3段階②500万円以下1,500万円以下
預貯金に含まれるもの

預貯金等には以下が含まれます。

  • 預貯金(普通預金・定期預金)
  • 有価証券(株式・国債・地方債・社債など)
  • 投資信託
  • 金・銀などの貴金属
  • 現金(タンス預金を含む)

なお、生命保険の解約返戻金や不動産は原則として含まれません。
また、借入金(住宅ローン等)があっても預貯金等から差し引くことはできず、あくまで預貯金等の残高で判定されます。

4. 利用者負担段階と負担限度額の一覧

4-1. 食費の負担限度額(2026年8月以降)

利用者負担段階施設入所(1日/月額)ショートステイ(1日)
第1段階300円 / 約0.9万円300円
第2段階390円 / 約1.2万円600円
第3段階①680円 / 約2.1万円1,030円
第3段階②1,420円 / 約4.3万円1,360円
(参考)基準費用額1,545円 / 約4.7万円1,545円

4-2. 居住費の負担限度額(2026年8月以降)

利用者負担段階多床室(特養等)従来型個室(特養等)ユニット型個室
第1段階0円380円880円
第2段階430円480円880円
第3段階①430円880円1,370円
第3段階②530円980円1,470円
(参考)基準費用額915円1,231円2,066円

※金額はすべて1日あたり。月額は30日計算の概算です。

4-3. 軽減額の具体例

特別養護老人ホームのユニット型個室に入所している場合の月額負担を比較してみましょう。

項目第4段階(認定なし)第2段階(認定あり)差額
食費約4.7万円約1.2万円▲約3.5万円
居住費約6.2万円約2.6万円▲約3.6万円
合計約10.8万円約3.8万円▲約7.0万円

認定を受けることで、月7万円前後の負担軽減になるケースもあります。

以下のシミュレーターで、段階ごとの食費の軽減額を確認してみましょう。

Loading...

5. 申請方法と必要書類

5-1. 申請先

申請先は、住民票のある市区町村の介護保険担当窓口です。

施設が所在する自治体ではなく、利用者本人が住民登録をしている自治体に申請してください。

窓口への持参のほか、郵送での申請を受け付けている自治体もあります。

家族やケアマネジャーによる代理申請も可能です。

データを読み込み中...
メディアを読み込み中...

5-2. 必要書類

申請に必要な書類は以下のとおりです。

  • 介護保険負担限度額認定申請書
    市区町村の窓口で入手するか、自治体のWebサイトからダウンロードできます。

  • 同意書
    金融機関への預貯金等の照会に同意する書面です。
    申請書とセットになっている場合がほとんどです。

  • 預貯金等の証明書類(通帳のコピー等)
    本人と配偶者の全口座の通帳の写し(最新の残高が確認できるページ)を提出します。
    有価証券がある場合は、証券会社の残高証明書等も必要です。

  • 介護保険被保険者証

  • 本人確認書類
    マイナンバーカードや運転免許証など。

通帳コピーの注意点

すべての金融機関の口座について通帳の写しが必要です。
一部の口座だけ提出した場合でも、同意書に基づき市区町村が金融機関に照会するため、申告漏れが発覚する可能性があります。
正確に申告してください。

5-3. 申請から認定までの流れ

  1. 市区町村の窓口に申請書・同意書・通帳コピー等を提出
  2. 市区町村が所得・預貯金を確認(金融機関への照会を含む)
  3. 利用者負担段階を判定し、「介護保険負担限度額認定証」を交付
  4. 認定証を施設に提示すると、負担限度額が適用される

審査期間は自治体により異なりますが、おおむね2週間〜1か月程度が目安です。

入所前に申請しましょう

認定証がないと、施設では基準費用額(第4段階)で請求されます。
入所が決まったら、できるだけ早く申請を済ませておくと安心です。

6. 有効期間と更新手続き

メディアを読み込み中...

6-1. 有効期間

介護保険負担限度額認定証の有効期間は毎年8月1日から翌年7月31日までの1年間です。

6-2. 更新手続き

認定証は自動更新されません

毎年、更新の申請が必要です。

多くの自治体では、6月〜7月頃に更新案内と申請書が送付されます。

届いたら速やかに手続きしましょう。

更新忘れに注意

更新申請を忘れると、8月以降は認定証が無効になり、基準費用額(第4段階)の全額負担に戻ります。
施設からの請求が急に増える原因になるため、毎年の更新を忘れないようにしましょう。

6-3. 段階が変わることもある

更新時に前年の所得状況が再確認されるため、前年と同じ段階になるとは限りません。

たとえば、預貯金が基準額を超えた場合や、年金収入の変動があった場合は、段階が変わったり対象外になったりすることがあります。

7. 2026年8月からの改正ポイント

2026年8月1日より、介護保険負担限度額の一部が改定されます。

この改正は、社会保障審議会介護保険部会の意見書(令和7年12月)を踏まえ、負担能力に応じた負担を図る観点から行われたものです。

メディアを読み込み中...

7-1. 居住費の負担限度額引き上げ

第3段階②の方を対象に、居住費の負担限度額が1日あたり100円(月約3,000円)引き上げられます。

居室タイプ改正前(〜2026年7月)改正後(2026年8月〜)増額
多床室(特養等)430円/日530円/日+100円/日
従来型個室(特養等)880円/日980円/日+100円/日
ユニット型個室1,370円/日1,470円/日+100円/日
第1段階・第2段階・第3段階①は変更なし

居住費の引き上げは第3段階②のみが対象です。
第1段階・第2段階・第3段階①の方の居住費は据え置きとなっています。

7-2. 認定証の様式変更

これまで一括りだった「多床室」の表記が、以下の3区分に細分化されます。

  • 多床室(特養等)
  • 多床室(老健・医療院/室料を徴収する場合)
  • 多床室(老健・医療院等/室料を徴収しない場合)

すでに交付済みの旧様式の認定証は、引き続き有効です。

7-3. 改正の影響

月約3,000円の負担増となるのは、第3段階②に該当する方が多床室・従来型個室・ユニット型個室に入所している場合です。

年間にすると約36,000円の増額になります。

更新申請の際に、新しい負担限度額が記載された認定証が交付されます。

よくある質問(FAQ)

Q. 世帯分離すれば負担限度額認定を受けられますか?

A. 子との世帯分離は効果がある場合がありますが、配偶者には適用されません。

同居している子が住民税課税の場合、子と世帯分離をすれば「世帯全員が非課税」の条件を満たせる可能性があります。

ただし、配偶者(事実婚を含む)の住民税課税状況は、世帯が別であっても必ず確認されます。

配偶者が住民税課税の場合は、世帯分離をしても認定の対象にはなりません。

Q. 高額介護サービス費との違いは何ですか?

A. 対象となる費用が異なります。

負担限度額認定(補足給付)は、介護保険施設の食費と居住費の負担を軽減する制度です。

一方、高額介護サービス費は、介護サービスの自己負担額(1〜3割)が月の上限を超えた場合に、超過分が払い戻される制度です。

この2つの制度は併用できます。

両方に該当する方は、それぞれ別に申請してください。

Q. 預貯金はどこまで調べられますか?

A. 同意書に基づき、金融機関に照会が行われます。

申請時に提出する同意書により、市区町村は金融機関に対して預貯金の残高を照会できます。

すべての金融機関が対象になるため、一部の口座だけ申告しても照会で判明する可能性があります。

正確に申告してください。

Q. 有料老人ホームやグループホームでも使えますか?

A. いいえ、対象外です。

負担限度額認定が適用されるのは、特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院などの介護保険施設と、ショートステイに限られます。

有料老人ホーム(介護付き・住宅型)やグループホームは対象外です。

Q. 第4段階でも食費・居住費が軽減される特例はありますか?

A. 自治体によっては「特例減額措置」が設けられています。

世帯に住民税課税者がいる場合でも、以下のような条件をすべて満たせば、第3段階②の負担限度額が適用される場合があります。

  • 世帯の年間収入から施設利用料を除いた額が80万円以下
  • 世帯の預貯金等の合計が450万円以下
  • 日常生活に供する資産以外に活用できる資産がない

この特例は自治体により運用が異なるため、お住まいの市区町村にお問い合わせください。

まとめ

介護保険負担限度額認定は、介護保険施設の食費・居住費の自己負担を軽くする大切な制度です。

認定を受けるには、世帯全員と配偶者が住民税非課税であることと、預貯金が段階ごとの基準額以下であることの両方を満たす必要があります。

利用者負担段階は第1段階〜第3段階②の4区分に分かれ、段階に応じた負担限度額が適用されます。

認定を受けることで月に数万円の軽減になるケースも多く、介護施設を利用する方にとって非常に大きな支えとなります。

ただし、申請しなければ適用されない制度です。

入所やショートステイの利用が決まったら、早めに市区町村の窓口で申請しましょう。

有効期間は毎年8月1日〜翌年7月31日の1年間で、更新手続きも忘れずに行ってください。

2026年8月からは一部の負担限度額が引き上げられる改正もあります。

最新の情報は市区町村の窓口や厚生労働省のWebサイトで確認してください。

関連する手続きガイド

関連タグ

ローカルヒストリア - 街の数だけ、歴史がある。