事実婚はひとり親になれる?手当・非課税・控除の扱い
「子どもがいる状態で、パートナーと事実婚(同棲)を始めたら、児童扶養手当はどうなるの?」
「事実婚のまま、非課税世帯でいられるのはいくらまで?」
「住民票を別世帯にしておけば大丈夫って本当?」
——そんな不安や疑問を抱えていませんか。
事実婚は、制度によって「夫婦」として扱われたり「他人」として扱われたりと、その扱いが大きく変わります。
特に、児童扶養手当やひとり親控除といった「ひとり親」向けの支援は、事実婚状態だと受けられなくなるものが少なくありません。
この手続きガイドでは、事実婚で子どもを育てている人に向けて、児童扶養手当・ひとり親控除・住民税の非課税・配偶者控除・社会保険の扱いを制度ごとに整理し、所得制限や届出の注意点までわかりやすく解説します。
事実婚とは?制度ごとに扱いが正反対になる
事実婚(内縁)とは、婚姻届を出していないものの、お互いに夫婦となる意思を持って共同生活を送っている関係を指します。
法律婚(婚姻届を出した結婚)との大きな違いは、戸籍上の夫婦にならない点です。
ところが、社会保障や税の制度では、戸籍上の関係だけでなく「実際に夫婦同然の生活をしているか」という実態で判断する場面が多くあります。
そのため、事実婚は制度によって扱いが正反対になることがあります。
「もらう場面では他人、制限される場面では夫婦」
事実婚をしている人がよく感じる不公平感が、この扱いの非対称性です。
- 税金の控除(配偶者控除など)
事実婚のパートナーは「配偶者」として扱われず、控除の対象にならない(=他人扱い)。 - ひとり親向けの手当・控除(児童扶養手当・ひとり親控除)
事実婚状態だと「配偶者がいる」とみなされ、ひとり親としての支援を受けられない(=夫婦扱い)。 - 非課税世帯向けの給付金
住民票上の同じ世帯にパートナーがいて課税されていると、世帯として課税扱いになり対象外になることがある(=世帯まとめて判断)。
まずは、主な制度で事実婚がどう扱われるのかを一覧で確認しましょう。
| 制度 | 事実婚の扱い | 結果 |
|---|---|---|
| 児童扶養手当 | 配偶者あり(夫婦)とみなす | 受給できない |
| ひとり親控除(税) | 配偶者あり(夫婦)とみなす | 適用できない |
| 配偶者控除・扶養控除(税) | 配偶者として認めない | 適用できない |
| 住民税の課税・非課税 | 個人ごとに判断 | 本人の所得で決まる |
| 非課税世帯向け給付金 | 同一世帯なら合算 | 対象外になることがある |
| 健康保険・年金の扶養 | 内縁でも認める場合あり | 扶養に入れることがある |
「事実婚かどうか」は届出の有無ではなく、同居や生計の実態で判断されます。
制度ごとに判断基準が違うため、ひとつの制度の結論を別の制度にそのまま当てはめないよう注意しましょう。
児童扶養手当は事実婚だと受けられない
ひとり親家庭の生活を支える代表的な制度が、児童扶養手当(かつての母子手当)です。
しかし、この手当は事実婚状態にある人には支給されません。
ここで解説している「児童扶養手当」は、ひとり親世帯などを対象とする手当で、すべての子育て世帯に支給される「児童手当」とは別の制度です。
児童手当は、ひとり親かどうかや事実婚かどうかに関係なく、対象年齢の子どもを養育していれば受け取れます。
事実婚で支給対象外になるのは、あくまで児童扶養手当のほうです。
法律で事実婚は支給対象外と定められている
児童扶養手当法では、母(または父)が「婚姻(婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある場合を含む)」をしているときは、手当を支給しないと定められています。
つまり、戸籍上はシングルでも、事実婚のパートナーと暮らしていれば、ひとり親として手当を受け取ることはできません。
法律で「ひとり親世帯と同程度に収入を得る力が低下しているとはいえない」と考えられているためです。
なお、児童扶養手当そのものの所得制限限度額は、令和6年11月分から引き上げられました(子1人の全部支給の目安が収入190万円程度)。
詳しい申請方法や所得制限の仕組みは、別の手続きガイドで解説しています。
どこからが「事実婚」とみなされるのか
気になるのが「同棲」と「事実婚」の線引きです。
厚生労働省の通知では、事実婚(事実上の婚姻関係)を次のように判断するとされています。
- 原則は「同居していること」
住民票が同じか別かにかかわらず、実際に一緒に暮らしていれば事実婚と判断される可能性が高くなります。 - 同居していなくても該当する場合がある
頻繁に定期的な訪問があり、かつ定期的に生活費の援助を受けているような関係は、同居していなくても事実婚とみなされます。
一方で、結婚できない近い親族(本当の叔母など、民法で婚姻が禁止される関係)との同居は、事実婚にはあたりません。
「住民票を別世帯にすれば手当をもらえる」と考える人がいますが、これは誤りです。
児童扶養手当の事実婚の判断は、住民票の記載ではなく、同居や生計をともにしている実態で行われます。
同居の事実があるのに受給を続けると、不正受給として手当の返還を求められることがあります。
児童扶養手当の金額(令和8年4月から)
参考までに、児童扶養手当の月額は次のとおりです(令和8年4月分から)。
| 区分 | 児童1人目 | 2人目以降(加算) |
|---|---|---|
| 全部支給 | 48,050円 | 11,350円 |
| 一部支給 | 48,040円〜11,340円 | 11,340円〜5,680円 |
一部支給の額は、受給者の所得に応じて10円きざみで決まります。
なお、令和7年度(令和7年4月分〜令和8年3月分)の全部支給は1人目46,690円、2人目以降の加算は11,030円でした。
これだけの支援が受けられなくなるため、事実婚を始める前に影響をしっかり確認しておくことが大切です。
ひとり親控除(税の優遇)も事実婚だと使えない
所得税や住民税を軽くする「ひとり親控除」も、事実婚状態だと適用できません。
ひとり親控除は、未婚やシングルで子どもを育てている人の税負担を軽くする所得控除で、適用されると所得税で35万円、住民税で30万円が所得から差し引かれます。
ひとり親控除の3つの要件
国税庁の定めるひとり親控除の要件は、次の3つをすべて満たすことです。
- 事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる人がいないこと
つまり、事実婚のパートナーがいると、この時点で対象外になります。 - 生計を一にする子がいること
その子の総所得金額等が一定額以下で、ほかの人の控除対象になっていないことが条件です。 - 本人の合計所得金額が500万円以下であること
給与収入だけなら、おおよそ年収678万円以下が目安です。
このように、ひとり親控除も「事実婚のパートナーがいないこと」が大前提になっています。
「事実上婚姻関係」は住民票の記載で確認される
税の世界では、事実婚かどうかを主に住民票の記載で確認します。
住民票に「夫(未届)」「妻(未届)」と記載されている場合などは、事実上婚姻関係にあると判断され、ひとり親控除は使えません。
ひとり親控除を年末調整や確定申告で申告するときは、事実婚の相手がいないことが前提です。
事実婚のパートナーがいるのにひとり親控除を申告すると、後から修正・追徴の対象になることがあります。
2025年からの改正で「子の所得要件」が緩和
令和7年度(2025年)の税制改正で、扶養や控除の所得要件が引き上げられました。
ひとり親控除に関係する主な変更点は次のとおりです。
- 生計を一にする子の所得要件
総所得金額等が「48万円以下」から「58万円以下」に引き上げられました。 - 給与所得控除の最低保障額
55万円から65万円に引き上げられ、給与収入だけなら子の収入が103万円から123万円までに広がりました。
子どもがアルバイトをしている場合でも、以前より控除を受けやすくなっています。
配偶者控除・扶養控除は法律婚だけの制度
「パートナーを扶養に入れて控除を受けたい」と考える人もいますが、税の配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除は、法律婚の夫婦や一定の親族だけが対象です。
事実婚のパートナーは、税法上は配偶者として認められず、扶養親族にもできません。
- 配偶者控除・配偶者特別控除
婚姻届を出した法律上の配偶者だけが対象。
事実婚のパートナーには適用できません。 - 扶養控除
対象は6親等内の血族や3親等内の姻族など。
事実婚のパートナーはここに含まれません。
これが「税金を取られるときは他人扱いなのに、給付の制限では夫婦扱いされる」という不公平感の正体です。
控除という形でメリットを受けることはできない一方で、ひとり親としての支援は制限される、という非対称な関係になっています。
住民税の非課税はどうなる?いくらまで働ける?
事実婚で多い悩みが「非課税のままでいられるのは、いくらまで稼いだときか」という所得制限の問題です。
ここを正しく理解するには、「住民税そのものの課税・非課税」と「非課税世帯向けの給付金」を分けて考える必要があります。
住民税は個人ごとにかかる
住民税は、世帯ではなく一人ひとりの所得に対してかかる税金です。
「非課税世帯」という課税の区分があるわけではなく、本人の前年の所得が一定額以下なら、その人個人が住民税非課税になります。
そのため、パートナーが課税されていても、自分の所得が低ければ、自分自身は住民税非課税のままでいられます。
非課税世帯向けの給付金は「世帯」で判断される
一方で、物価高対策の給付金など「住民税非課税世帯」を対象にした給付は、住民票上の同じ世帯で判断されることがほとんどです。
同じ世帯の中に住民税が課税されている人が1人でもいれば、世帯全体が課税世帯とみなされ、給付の対象外になります。
つまり、同居して住民票も同じ世帯にしていれば、パートナーが課税されている限り、自分が非課税でも世帯向け給付は受けにくくなります。
「同棲しているが住民票は別世帯」という形なら、世帯向け給付の判定では別々に扱われる可能性があります。
ただし、別世帯にしたまま「事実婚(夫婦)」として住民票に記載することはできません。
事実婚として「夫(未届)」「妻(未届)」と記載するには、同じ世帯に入る必要があります。
逆に、健康保険などで事実婚として相手の扶養に入ると、福祉の場面でも事実婚として扱われます。
事実婚だと「ひとり親の非課税優遇」が使えない
住民税には、所得が一定額以下の人を非課税にする「非課税限度額」という仕組みがあります。
このうち、本人が寡婦・ひとり親・障害者・未成年者にあてはまる場合は、前年の合計所得金額135万円以下(給与収入なら約204万円未満)まで非課税になる優遇があります。
しかし、事実婚はひとり親に該当しないため、この優遇は使えません。
事実婚の人は、扶養している親族の人数に応じた通常の非課税限度額で判断されることになります。
非課税の目安を試算してみる
扶養している親族の人数によって、住民税が非課税になる所得の上限はおおよそ次のように計算できます(自治体によって金額が異なります)。
以下のシミュレーターで、自分の世帯の非課税ラインの目安を確認してみましょう。
上の試算はあくまで目安です。
住民税の非課税限度額は市区町村(級地)によって基準額が異なり、税制改正でも変わります。
給付金の対象になるかどうかは、最終的にお住まいの自治体の判定によります。
健康保険・年金は事実婚でも扶養に入れることがある
ここまでは事実婚に不利な制度が続きましたが、社会保険(健康保険・公的年金)では事実婚が認められる場面もあります。
健康保険の被扶養者や、国民年金の第3号被保険者(扶養される配偶者)は、内縁関係(事実婚)でも認められる場合があります。
ただし、自動的に認められるわけではなく、続柄や同居・生計維持の関係を示す書類を添えて届け出る必要があります。
- 健康保険の被扶養者
パートナーの加入する健康保険組合などに、内縁関係を証明する書類を提出して認定を受けます。 - 国民年金の第3号被保険者
事実婚の相手が会社員・公務員(第2号被保険者)で、その扶養に入る場合に対象になり得ます。
社会保険の扶養に入ると保険料の負担は軽くなりますが、その時点で「事実婚」を公的に認めたことになります。
その結果、児童扶養手当やひとり親控除など、ひとり親向けの支援は受けられなくなります。
どちらが世帯全体で得になるかを、よく比べて判断しましょう。
事実婚から法律婚へ移行する場合の手続きと損得
事実婚を続けるか、婚姻届を出して法律婚にするか迷う人も多くいます。
それぞれで使える制度が変わるため、手続きと損得を整理しておきましょう。
婚姻届を出す手続き
法律婚にするには、市区町村の役所に婚姻届を提出します。
- 必要なもの
婚姻届、本人確認書類など。
本籍地以外で提出する場合は戸籍に関する書類が必要になることがあります。 - 届出先
どちらかの本籍地または所在地の市区町村役場。
婚姻届が受理されると、戸籍上の夫婦になり、住民票の続柄も「夫」「妻」に変わります。
法律婚にするとどう変わるか
事実婚から法律婚に移行すると、税や社会保険の扱いが変わります。
- 使えるようになるもの
配偶者控除・配偶者特別控除が使えるようになり、相手の社会保険の扶養にも入りやすくなります。
相続の場面でも、法律上の配偶者として扱われます。 - 変わらないもの(引き続き受けられないもの)
児童扶養手当やひとり親控除は、事実婚でも法律婚でも、配偶者がいる以上は受けられません。
つまり、児童扶養手当などのひとり親支援は、事実婚から法律婚にしても戻ってくるわけではありません。
控除や社会保険のメリットを取るなら法律婚、という整理になります。
状況が変わったら届出を - 不正受給を防ぐために
最後に、もっとも注意したいのが届出のタイミングです。
児童扶養手当やひとり親控除を受けている人が、事実婚を始めたり、パートナーと同居を始めたりした場合は、すみやかに状況を届け出る必要があります。
- 児童扶養手当を受けている場合
事実婚や同居の状態になったら、受給資格がなくなるため、市区町村の窓口へ届け出ます。 - ひとり親控除を申告している場合
事実婚のパートナーができたら、その年からひとり親控除は使えなくなります。
事実婚や同居の事実を申告せずに手当を受け続けると、不正受給とみなされ、さかのぼって全額の返還を求められることがあります。
近隣からの通報などをきっかけに、自治体が生活実態を確認するケースもあります。
「バレなければ大丈夫」という考えは大きなリスクをともないます。
制度を正しく理解し、状況が変わったら早めに手続きすることが、結果的に自分と子どもを守ることにつながります。
よくある質問(FAQ)
Q. 住民票を別世帯にすれば、児童扶養手当はもらえますか?
A. もらえません。
児童扶養手当の事実婚の判断は、住民票の世帯の分け方ではなく、同居や生計をともにしている実態で行われます。
住民票を分けても、実際に一緒に暮らしていれば事実婚と判断され、受給資格はなくなります。
Q. 「同棲」と「事実婚」は何が違うのですか?
A. 夫婦となる意思と生活の実態があるかどうかで変わります。
単に一緒に住んでいるだけでなく、夫婦同然に生計をともにしている関係は、事実婚(事実上の婚姻関係)とみなされます。
児童扶養手当の制度では、原則として同居していれば事実婚と判断されやすく、住民票の表記だけで線引きされるわけではありません。
Q. 事実婚の相手の子(連れ子)は、扶養に入れられますか?
A. 税の扶養に入れるには条件があります。
事実婚のパートナー本人は税の扶養に入れませんが、その連れ子については、養子縁組をするなど一定の関係があれば扶養親族にできる場合があります。
判断が難しいケースが多いため、税務署や市区町村の窓口で個別に確認することをおすすめします。
Q. 非課税のままでいられるのは、いくらまで働いたときですか?
A. 扶養している人数によって変わります。
扶養親族がいない場合は、合計所得金額45万円以下(給与収入なら約110万円以下)が一つの目安です。
扶養している親族が増えるほど非課税の上限も上がりますが、事実婚はひとり親の優遇(合計所得135万円以下)が使えない点に注意が必要です。
正確な基準額は市区町村によって異なるため、お住まいの自治体に確認してください。
まとめ
事実婚で子どもを育てている場合、手当や控除が受けられないという事実婚ならではのデメリットがあり、制度ごとに扱いも大きく変わります。
最後に要点を整理します。
- 児童扶養手当
事実婚は支給対象外。
住民票を分けても、同居などの実態があれば受給できません。 - ひとり親控除(税)
事実婚のパートナーがいると適用できません。
住民票の「未届の夫・妻」の記載などで確認されます。 - 配偶者控除・扶養控除(税)
事実婚のパートナーは対象外で、扶養にも入れられません。 - 住民税の非課税
住民税は個人ごとに判断されますが、非課税世帯向け給付は同一世帯で判断されます。
事実婚はひとり親の非課税優遇も使えません。 - 健康保険・年金の扶養
内縁でも認められる場合がありますが、扶養に入ると福祉でも事実婚扱いになります。
「もらえる場面では他人、制限される場面では夫婦」という非対称な扱いに戸惑うかもしれませんが、大切なのは制度を正しく理解し、状況が変わったら早めに届け出ることです。
判断に迷うときは、自己判断で受給を続けず、市区町村の窓口や税務署に相談しましょう。
それが、不要なトラブルを避け、自分と子どもの生活を守る一番の近道です。