医療費が払えない!そんな時の一部負担金減免制度〜条件・金額など
「失業して収入がなくなったのに、持病の通院費が払えない…」
「突然の入院で高額な請求が来たけど、貯金もない…」
「高額療養費制度を使っても、自己負担限度額すら払えない…」
こんな状況に追い込まれている方はいませんか?
実は、医療費の窓口負担(1〜3割の自己負担)そのものを減額・免除してもらえる「一部負担金減免制度」という仕組みがあります。
高額療養費制度とは別の制度で、失業や災害で収入が激減した方を対象に、病院で支払う自己負担を軽くしてくれます。
この手続きガイドでは、一部負担金減免制度の対象条件・申請方法・必要書類を、加入している健康保険の種類ごとにわかりやすく解説します。
1. こんなとき、医療費の窓口負担が重くのしかかる
「医療費が払えない」という状況は、決して珍しいことではありません。
たとえば以下のようなケースです。
- 失業・倒産で収入が途絶えた
会社の倒産やリストラで突然収入がなくなり、国保に切り替えたものの、持病の通院費が重い。 - 急な入院で高額な請求が来た
突然の病気やケガで入院し、退院時に数十万円の請求書。
高額療養費制度を使っても数万円の自己負担が払えない。 - 災害で生活基盤が崩れた
地震や火災で自宅が損壊。生活の立て直しに精一杯で、医療費まで手が回らない。 - 世帯主が重い病気になった
一家の稼ぎ手が長期入院し、収入が大幅に減少。
家族の医療費も払えなくなった。
こうした状況で「お金がないから病院に行けない」と我慢してしまう方がいますが、治療を先延ばしにすると症状が悪化し、結果的にさらに高額な医療費がかかるリスクがあります。
まずは、使える制度がないか確認してみましょう。
2. 一部負担金減免制度とは
2-1. 窓口で払う医療費を減らす制度
「一部負担金減免制度」とは、経済的に困窮している方が、病院の窓口で支払う医療費(一部負担金)の「減額」「免除」「徴収猶予」を受けられる制度です。
健康保険で受診すると、通常は医療費の1〜3割を窓口で支払います。
この窓口負担を「一部負担金」と呼びます。
一部負担金減免制度を利用すると、この窓口負担が以下のように軽減されます。
| 措置の種類 | 内容 |
|---|---|
| 免除 | 窓口負担が全額免除(0円)になる |
| 減額 | 窓口負担が2割〜8割軽減される |
| 徴収猶予 | 窓口負担の支払いを一定期間猶予(後払い)できる |
2-2. 制度を使える主な条件
一部負担金減免制度は、災害や失業など「特別の理由」で収入が著しく減少し、医療費の支払いが困難な方が対象です。
主な対象条件は以下のとおりです。
- 災害(震災・風水害・火災等)で住宅や財産に著しい損害を受けた
- 失業・事業の休廃止で収入が著しく減少した
- 世帯主の死亡・長期入院・障害で世帯の収入が著しく減少した
- 干ばつ・冷害等で農作物の収入が著しく減少した
具体的な基準は加入している健康保険の種類や自治体によって異なりますが、生活保護基準額に近い収入水準の方が対象となるケースが多いです。
2-3. 高額療養費制度との違い
「医療費の負担を軽くする制度」として高額療養費制度がよく知られていますが、一部負担金減免制度とは目的も対象も異なります。
| 項目 | 高額療養費制度 | 一部負担金減免制度 |
|---|---|---|
| 目的 | 月の自己負担に上限を設ける | 経済的困窮で窓口負担自体を軽減 |
| 対象者 | すべての被保険者 | 災害・失業等で特に困窮している方 |
| 条件 | 自己負担限度額を超える医療費 | 特別の理由による収入の著しい減少 |
| 軽減内容 | 限度額を超えた分の払い戻し | 窓口負担の減額・免除・猶予 |
| 手続き | 限度額適用認定証の交付申請 | 自治体等へ減免申請 |
ポイント:
高額療養費制度で自己負担の上限が決まっていても、その上限額すら払えない場合に一部負担金減免制度を利用できる可能性があります。
2つの制度は併用可能です。
3. 国民健康保険(国保)加入者の場合
国民健康保険の一部負担金減免制度は、国民健康保険法 第44条に基づく制度です。
自営業、フリーランス、退職後に国保に加入した方などが対象となります。
3-1. 対象となる「特別の理由」
以下のいずれかに該当する場合、一部負担金の減免を申請できます。
- 災害
世帯主が震災・風水害・火災等で死亡、障害者になった、または住宅・財産に著しい損害を受けた - 失業・事業の休廃止
事業または業務の休廃止、失業等により、一時的に世帯の収入が著しく減少した - その他これに類する事由
世帯員の病気等による収入減少など
3-2. 減免の種類と基準
減免の種類は「免除」「減額」「猶予」の3つです。
| 措置 | 内容 | 適用期間の上限 |
|---|---|---|
| 免除(全額) | 窓口負担が0円になる | 3か月以内 |
| 減額(一部) | 窓口負担が2割〜8割軽減される | 3か月以内 |
| 猶予(後払い) | 窓口負担の支払いを一定期間先送りできる | 6か月以内 |
どの措置が適用されるかは、世帯の月収(手取り)と預貯金を「生活保護基準額」と比較して判定されます。
判定の仕組み
厚生労働省の通知(保発第21号)では、以下の条件を満たす世帯が減免の対象とされています。
- 収入基準:
世帯の月収(手取り)が、生活保護基準額の110%以下 - 預貯金基準:
世帯の預貯金が、生活保護基準額の3か月分以下
これはあくまで国が示した最低限の基準です。
実際には、多くの自治体がこの基準を拡大して運用しており、たとえば以下のように倍率や段階が異なります。
| 自治体 | 免除の収入基準(目安) | 特徴 |
|---|---|---|
| 大阪市 | 生活保護基準額 × 115.5%以下 | 全額免除のみ(段階的な減額なし) |
| 東京都 中野区の例 | 生活保護基準額 × 121%以下 | 生活困難度に応じて2割〜全額を減免 |
- 自治体によって基準の倍率・減免の段階・対象範囲が異なります。
- 減免期間は原則3か月ですが、必要が認められれば最大6か月まで延長できる自治体もあります。
- お住まいの自治体でどの基準が使われているかは、国保窓口でご確認ください。
「生活保護基準額」の目安
生活保護基準額は、世帯人数や住んでいる地域によって異なりますが、おおよその目安は以下のとおりです。
| 世帯の例 | 生活保護基準額の目安(月額) |
|---|---|
| 単身世帯(20〜40代) | 約7〜8万円 |
| 夫婦のみ世帯 | 約12〜13万円 |
| 夫婦+子ども1人 | 約15〜17万円 |
| 夫婦+子ども2人 | 約18〜21万円 |
※上記は生活扶助+教育扶助+住宅扶助の合算額の目安です。
正確な金額はお住まいの市区町村で確認してください。
3-3. 申請方法と必要書類
重要: 申請のタイミングに注意
減免の適用は原則として申請日以降の診療が対象です。
受診後に申請しても過去の医療費には適用されない可能性があります。
医療費の支払いが難しいと感じたら、受診前または受診直後に市区町村の国保窓口に相談してください。
(過去分の遡及適用が可能かどうかは自治体によります)
手続きの流れ
-
市区町村の国保窓口に相談する
まずはお住まいの市区町村役場の保険年金課(国民健康保険担当)に相談します。
制度の対象になるか、必要書類などの説明を受けます。 -
申請書類を受け取る
減免申請書や収入申出書などの様式を窓口で受け取ります。 -
医療機関で概算見積を受ける
申請書に「一部負担金所要額の概算」を記入する欄があるため、通院・入院先の医療機関で証明を受けます。 -
必要書類を添えて申請する
記入済みの申請書に下記の書類を添えて、市区町村の窓口に提出します。 -
減免証明書を受け取る
審査後、「一部負担金減免(徴収猶予)証明書」が交付されます。 -
医療機関に証明書を提出する
交付された証明書を医療機関の窓口に提出することで、減免が適用されます。
必要書類チェックリスト
- 一部負担金減免・徴収猶予申請書(窓口で配布)
- 収入状況がわかる書類(給与証明書、給与明細書、確定申告書の控えなど)
- 医師の意見書(入院中や継続的な通院が必要な場合。様式は窓口で配布)
- 預貯金通帳の写し(世帯全員分)
- 家賃の証明書(借家の場合)
- マイナンバーが確認できる書類+本人確認書類(マイナンバーカードがあれば1枚でOK。ない場合は通知カード等+運転免許証等の2点が必要)
- 災害の場合:罹災証明書
- 失業の場合:雇用保険受給資格者証、離職票など
- 自治体によって必要書類が異なります。事前に窓口で確認してください。
- 減免の適用は原則として申請日以降ですが、事情により遡及できる場合もあります。
お住まいの市区町村の窓口を調べる
3-4. 退職して国保に切り替えた方へ
会社を辞めて社会保険(健康保険)から国民健康保険に切り替えた方は、一部負担金減免制度の対象になる可能性があります。
特に「会社都合での退職」(倒産・解雇など)の場合は、国保の保険料軽減制度(非自発的失業者の軽減)も併せて利用できます。
退職後の保険の切り替え手続きについては、以下の手続きガイドで詳しく解説しています。
失業保険の手続きも忘れずに行いましょう。
4. 健康保険(社保・会社員)の場合
4-1. 災害時の一部負担金減免
会社員や公務員が加入する健康保険(社保)にも、一部負担金の減免制度があります。
健康保険法 第75条の2に基づき、災害その他の特別の事情がある被保険者に対して、保険者(協会けんぽや健康保険組合)が一部負担金の減額・免除・徴収猶予を行うことができます。
ただし、社保の一部負担金減免は、主に大規模災害の発生時に適用されるのが一般的です。
過去に適用された主な例
- 東日本大震災(2011年)
- 平成30年7月豪雨(2018年)
- 令和6年能登半島地震(2024年)
これらの災害では、被災地域の被保険者に対して一部負担金の免除が行われました。
4-2. 日常的な経済困窮では使いにくい
国保と異なり、社保の一部負担金減免制度は個人的な失業・収入減少に対しての適用は限定的です。
会社員の場合、失業時には退職により社保の資格を喪失するため、その後は国保に加入することになります。
つまり、失業・収入減少による一部負担金減免は、国保側の制度を利用するのが一般的です。
4-3. 健康保険組合の付加給付(一部負担還元金)
健康保険組合によっては、独自の「付加給付」制度として、自己負担が一定額(例:2万円や2万5千円)を超えた分を払い戻す仕組みがあります。
これは「一部負担還元金」や「一部負担金払戻金」と呼ばれますが、一部負担金減免制度とは別の制度です。
- 付加給付は健康保険組合ごとに内容が異なります。
- 協会けんぽには付加給付制度はありません。
自分の健康保険組合にどんな制度があるか、加入先の健保組合に問い合わせてみましょう。
5. 後期高齢者医療制度の場合
75歳以上の方(一定の障害がある65歳以上の方を含む)が加入する後期高齢者医療制度にも、一部負担金の減免制度があります。
5-1. 対象条件
以下のいずれかに該当する場合、一部負担金の減額・免除等を申請できます。
- 被保険者または世帯主が、震災・風水害・火災等の災害で住宅や財産に著しい損害を受けた
- 世帯主または主たる生計維持者が、干ばつ・冷害等で農作物の収入が著しく減少した
- 世帯主または主たる生計維持者が、事業の休廃止・失業等で収入が著しく減少した
- 世帯主または主たる生計維持者が、重篤な疾病等により死亡、障害を受け、または91日以上の入院をした(被保険者のみの世帯を除く)
5-2. 減免期間と申請方法
- 期間:
申請日から6か月以内 - 申請先:
お住まいの市区町村の後期高齢者医療担当窓口
減免期間は、一部負担金の支払いが困難な程度に応じて個別に決定されます。
必要書類は減免理由によって異なります(例:罹災証明書、収入や預貯金がわかる書類など)。
まずは市区町村の窓口に相談してください。
6. 医療費が払えないときの相談先と他の支援制度
一部負担金減免制度の対象にならない場合でも、医療費の支払いに困ったときに頼れる相談先や支援制度があります。
6-1. まず相談すべき窓口
-
市区町村の保険年金課(国保・後期高齢者)
一部負担金減免制度の申請だけでなく、保険料の減免や他の支援制度の案内も受けられます。 -
病院の医療ソーシャルワーカー(MSW)
病院の「医療相談室」「地域連携室」に配置されている専門職です。
支払いが難しいと伝えれば、分割払いの相談や利用できる公的制度の案内をしてもらえます。 -
加入している健康保険組合・協会けんぽ
社保の方は、保険証に記載されている保険者に問い合わせてみましょう。
6-2. 知っておきたい他の支援制度
無料低額診療事業
生活困窮者が無料または低額で診療を受けられる事業です。
社会福祉法に基づき、一部の病院や診療所が実施しています。
- 対象:
低所得者、ホームレス、DV被害者など - 実施医療機関は限られるため、お住まいの地域にあるか確認が必要
生活保護の医療扶助
生活保護を受給している場合、医療費は「医療扶助」として全額公費負担となります。
生活保護を受けていない方でも、医療費によって生活が困窮する場合、福祉事務所に相談することで支援を受けられる可能性があります。
医療費の分割払い
病院によって対応は異なりますが、事情を説明すれば医療費の分割払いに応じてもらえる場合があります。
退院時に全額を支払えない場合は、病院の会計窓口や医療相談室に相談してみてください。
ポイント:
まずは医療相談室やソーシャルワーカー(MSW)に早めに相談することが大切です。
分割払いや公的制度の活用など、解決策を一緒に考えてもらえます。
7. よくある質問
Q. 高額療養費制度と一部負担金減免制度は併用できる?
A. はい、併用できます。
高額療養費制度は、月の医療費が自己負担限度額を超えた場合に超過分が払い戻される制度です。
一部負担金減免制度は、窓口負担そのものを減額・免除する制度です。
まったく別の仕組みなので、両方の条件を満たしていれば同時に利用できます。
Q. 差額ベッド代や入院中の食事代も減免される?
A. いいえ、対象外です。
一部負担金減免制度で軽減されるのは、保険診療にかかる一部負担金のみです。
以下は対象外となります。
- 差額ベッド代(個室料金など)
- 入院中の食事負担額(食事療養標準負担額)
- 保険外の自費診療
Q. すでにかかった医療費(過去分)も対象になる?
A. 原則として、申請日以降の医療費が対象です。
一部負担金減免制度は、原則として申請日以降の診療が対象となります。
ただし、自治体によっては事情を考慮して遡及適用してくれる場合もあるため、窓口で相談してみてください。
Q. 会社員(社保加入者)でも使える?
A. 制度としては存在しますが、利用できる場面は限られます。
健康保険法第75条の2に基づき、社保でも一部負担金の減免は規定されています。
しかし、実際に適用されるのは主に大規模災害時です。
会社員が失業した場合は、退職により社保を喪失して国保に加入することになるため、国保の一部負担金減免制度を利用することになります。
Q. 国保の「保険料の減免」と「窓口負担の減免」は同じ制度?
A. いいえ、別の制度です。
| 項目 | 保険料の減免 | 窓口負担(一部負担金)の減免 |
|---|---|---|
| 対象 | 国保の保険料(毎月支払うもの) | 病院で支払う医療費の自己負担 |
| 根拠法 | 国民健康保険法 第77条 | 国民健康保険法 第44条 |
| 申請先 | 市区町村の国保窓口 | 市区町村の国保窓口 |
どちらも市区町村の国保窓口で申請できますので、医療費と保険料の両方に困っている場合は、まとめて相談することをおすすめします。
Q. 一部負担金減免は何か月間使える?
A. 国保の場合、原則3か月以内です。
減免の適用期間は原則3か月以内ですが、やむを得ない事情がある場合は延長(更新)が認められ、最大6か月まで利用できる自治体もあります。
後期高齢者医療制度では、申請日から6か月以内が上限です。
長期的に医療費の支払いが困難な場合は、生活保護の医療扶助など他の制度の利用を検討する必要があります。
まずは市区町村の窓口や病院のソーシャルワーカーに相談してください。
8. まとめ
一部負担金減免制度は、失業・災害・収入激減などで医療費の支払いが困難になったときに、窓口負担そのものを減額・免除してもらえる制度です。
この手続きガイドのポイントを整理します。
- 対象となるのは、一時的に生活が苦しくなった方
失業、倒産、災害、世帯主の長期入院などで収入が著しく減少した場合に利用できます。 - 加入している健康保険の種類によって窓口が異なる
国保は市区町村の国保窓口、後期高齢者医療制度は広域連合(市区町村経由)、社保は主に災害時のみ適用されます。 - 高額療養費制度とは別の仕組み
高額療養費で戻しきれない自己負担を、さらに軽くできる可能性があります。両制度の併用も可能です。 - 申請しないと使えない制度
自動的に適用されることはありません。まずは市区町村の国保窓口に相談することが大切です。 - 減免期間は原則3か月以内
恒久的な支援ではないため、長期的に困窮している場合は生活保護の医療扶助なども視野に入れましょう。
「お金がないから」と通院を諦めてしまうと、症状の悪化でさらに大きな負担につながりかねません。
まずはお住まいの市区町村の窓口に相談して、利用できる制度があるか確認してみてください。
