選定療養費とは?いくらかかる?救急車・紹介状なしの場合を解説
「救急車で運ばれたのに、7,000円以上も追加で請求された…」
「紹介状なしで大きな病院に行ったら、想定外の料金がかかった」
——こうした経験をした方や、ニュースを見て不安に感じている方は少なくありません。
この追加料金の正体は「選定療養費」という制度です。
この手続きガイドでは、選定療養費の仕組み・いくらかかるのか・どんな場合に対象になるのか・避ける方法まで、わかりやすく解説します。
選定療養費とは?制度の仕組みをわかりやすく解説
選定療養費とは、紹介状を持たずに大きな病院(200床以上)を受診した場合に、通常の診療費とは別に患者が負担する追加料金のことです。
なぜこの制度があるの?
日本の医療は、症状に応じて適切な医療機関を受診する「機能分担」が推進されています。
- 診療所・クリニック(かかりつけ医)
→ 日常的な診療、初期対応 - 大病院(200床以上)
→ 専門的な検査・治療、入院が必要な重症患者
しかし「とりあえず大きな病院のほうが安心」と考える患者が多く、大病院に外来患者が集中してしまう問題がありました。
その結果、本当に大病院での治療が必要な重症患者の待ち時間が長くなったり、勤務医の過重労働が深刻化したりしていたのです。
この問題を解消するために、2016年(平成28年)から、紹介状なしで大病院を受診する場合の選定療養費の徴収が義務化されました。
対象となる医療機関
選定療養費の徴収が義務付けられている病院は、以下の3種類です。
- 特定機能病院
大学病院の本院など、高度な医療を提供する病院 - 一般病床200床以上の地域医療支援病院
地域の医療機関を支援する中核的な病院 - 一般病床200床以上の紹介受診重点医療機関
紹介患者への外来を基本とする医療機関(2022年の制度改正で追加)
受診予定の病院が選定療養費の対象かどうかは、病院のホームページや電話で事前に確認できます。
「紹介状をお持ちでない場合、選定療養費がかかります」といった案内が掲載されていることが多いです。
選定療養費はいくら?初診・再診の金額
選定療養費の金額は病院ごとに独自に設定されますが、国が定めた最低金額があります。
選定療養費の最低金額(2022年10月改定)
| 区分 | 初診 | 再診 |
|---|---|---|
| 医科 | 7,000円以上 | 3,000円以上 |
| 歯科 | 5,000円以上 | 1,900円以上 |
※上記は税抜き金額です。
実際にかかる金額の目安
多くの病院では7,700円(税込)を設定していますが、大学病院などでは1万円以上になることもあります。
| 病院の例 | 初診時の選定療養費(税込) |
|---|---|
| 一般的な200床以上の病院 | 7,700円 |
| 地域の中核病院 | 7,700円〜11,000円 |
| 大学病院(特定機能病院) | 11,000円〜13,200円 |
選定療養費は健康保険の対象外のため、全額自己負担です。
3割負担などの保険の仕組みは適用されません。
通常の診療費(初診料など)に上乗せされる形で請求されます。
再診でも選定療養費がかかるケース
初診時に紹介状なしで大病院を受診した後、病院から「次回以降はかかりつけ医へ」と紹介状を渡されたにもかかわらず、再び同じ大病院を受診した場合は、再診時の選定療養費(3,000円以上)がかかります。
救急車で運ばれた場合の選定療養費
「救急車で大きな病院に運ばれたら選定療養費を請求された」というケースが話題になっています。
原則: 救急搬送は選定療養費の対象外
通常、救急車で搬送された患者は選定療養費の対象外です。
紹介状なしで大病院を受診する形にはなりますが、救急搬送は患者自身が病院を選んで受診するわけではないため、選定療養費を徴収しないのが原則です。
例外: 一部の自治体で救急搬送時にも徴収する動き
近年、救急車の出動件数の増加と軽症者の搬送が問題となり、一部の自治体では救急搬送された患者にも選定療養費を徴収する取り組みが始まっています。
茨城県の事例(2024年12月〜)
茨城県では、県内23の対象病院で、救急車搬送時の選定療養費を徴収しています。
- 対象
一般病床200床以上の23病院 - 条件
救急車要請時の緊急性が認められない場合 - 金額
7,700円〜13,200円(病院により異なる)
三重県松阪市の事例(2024年6月〜)
松阪市の3基幹病院では、救急車で搬送されたが入院に至らなかった軽症者に対して、選定療養費を徴収しています。
これらの制度は「救急車の利用料」ではありません。
救急車による搬送自体は引き続き無料です。
あくまで搬送先の病院で発生する選定療養費であり、緊急性が認められる場合は従来どおり徴収されません。
徴収の判断基準
茨城県の事例では、徴収するかどうかの判断基準は「軽症かどうか」ではなく「救急車要請時の緊急性」です。
- 緊急性あり → 徴収しない例
熱中症、小児の熱性けいれん、てんかん発作など(病院到着時に改善していても、呼んだ時点の緊急性で判断) - 緊急性なし → 徴収する可能性がある例
軽い切り傷のみ、軽い擦り傷のみなど
選定療養費がかからないケース一覧
以下のいずれかに該当する場合、選定療養費は徴収されません。
- 紹介状(診療情報提供書)を持参している
かかりつけ医から紹介状をもらって受診すれば、選定療養費はかかりません - 救急搬送された場合(原則)
緊急性が認められる場合は対象外です(一部自治体の例外を除く) - 国・地方の公費負担医療制度の受給者
生活保護、自立支援医療、特定疾患の公費受給者など - 災害により被害を受けた方
被災証明書などの提示が必要です - 労働災害・公務災害・交通事故
労災保険・自動車保険で対応する場合 - 再診で、他の医療機関への紹介を受けていない場合
病院から紹介状を渡されていなければ、引き続き受診しても再診の選定療養費はかかりません - 医師の判断による免除
医師が緊急性や必要性を認めた場合に免除されることがあります
選定療養費を避けるためにできること
かかりつけ医で紹介状をもらう
選定療養費を避ける最も確実な方法は、かかりつけ医(診療所・クリニック)を経由して紹介状をもらうことです。
紹介状(診療情報提供書)の作成費用は、保険適用で自己負担750円程度(3割負担の場合)です。
選定療養費が7,700円以上かかることを考えると、紹介状をもらうほうが経済的に圧倒的に有利です。
紹介状があると、これまでの検査結果や治療経緯が大病院の医師に伝わります。
不要な検査の重複を避けられるため、身体的な負担も軽減されます。
救急車を呼ぶか迷ったら相談する
「救急車を呼ぶべきかどうか」の判断に迷ったときは、以下の電話相談が利用できます。
| 相談先 | 電話番号 | 対象 | 対応時間 |
|---|---|---|---|
| 救急安心センター事業 | #7119 | おとな全般 | 24時間365日 |
| 小児救急電話相談 | #8000 | 子ども | 都道府県により異なる(主に夜間・休日) |
医師や看護師、トレーニングを受けた相談員が、緊急性の判断やアドバイスをしてくれます。
緊急性が高いと判断された場合は救急車の出動要請が行われ、緊急性が低いと判断された場合は受診可能な医療機関や受診のタイミングを案内してもらえます。
選定療養費を気にして、本当に必要なときに救急車を呼ぶのをためらう必要はありません。
意識がない、呼吸困難、大量出血、胸の激痛など、明らかに緊急の場合はすぐに119番通報してください。
選定療養費は医療費控除の対象?
選定療養費は医療費控除の対象になります。
医療費控除では「診療又は治療等の対価のうち通常必要であると認められるもの」が対象となり、選定療養費はこの要件を満たします。
確定申告の際に、選定療養費の領収書を保管しておきましょう。
よくある質問(FAQ)
Q. 選定療養費は拒否できますか?
A. 原則として拒否できません。
選定療養費は法令に基づいて対象病院が徴収を義務付けられている費用です。
「知らなかった」「聞いていない」という理由では免除されません。
ただし、選定療養費がかからないケースに該当する場合(紹介状持参、救急搬送で緊急性ありなど)は、受付で申し出ることで徴収されません。
Q. 選定療養費は健康保険の対象ですか?
A. 対象外です。全額自己負担となります。
健康保険の3割負担などは適用されず、選定療養費は別途全額支払う必要があります。
高額療養費制度の計算対象にも含まれません。
Q. 子どもの医療費助成は選定療養費に使えますか?
A. 原則として使えません。
多くの自治体の子ども医療費助成制度(マル乳・マル子など)は、保険適用の自己負担分を助成する制度です。
選定療養費は保険適用外のため、助成の対象外となるのが一般的です。
ただし、自治体によっては独自に対応しているケースもあるため、お住まいの自治体に確認してみてください。
Q. 選定療養費はいつ支払うのですか?
A. 受診当日に、診療費と一緒に窓口で支払います。
初診受付の際に紹介状の有無を確認され、紹介状がなければ選定療養費がかかる旨を説明されます。
会計時に通常の診療費に加算されて請求されます。
まとめ
選定療養費の要点を整理します。
- 選定療養費は、紹介状なしで大病院(200床以上)を受診するときに発生する追加料金
- 初診は医科7,000円以上(実際は7,700円〜13,200円程度)、再診は3,000円以上
- 救急搬送は原則対象外だが、一部自治体で緊急性のない軽症者に徴収する動きあり
- 紹介状があれば選定療養費はかからない(紹介状の自己負担は約750円)
- 医療費控除の対象になるので確定申告時に忘れずに申告を
大病院への受診が必要な場合は、まずかかりつけ医に相談して紹介状をもらうことが、費用面でも医療の質の面でもベストな選択です。