手続きプランナー

相続で故人の銀行口座を探す方法 - 口座照会制度の使い方

相続で故人の銀行口座を探す方法 - 口座照会制度の使い方
最終更新:2026年5月8日

「親が亡くなったけど、どの銀行に口座があるかわからない…」
「通帳が見当たらない。ネット銀行も使っていたかもしれないけど、調べようがない…」
「銀行を1件ずつ回って確認するしかないの?」

相続手続きで多くの方がつまずくのが、故人名義の預貯金口座の所在調査です。

2025年4月から、故人の銀行口座をまとめて探せる「相続時口座照会制度」が始まりました。

この手続きガイドでは、制度の仕組みや申請手順、手数料・必要書類、そして見落としやすい注意点まで、わかりやすく解説します。

相続で故人の銀行口座を探すのが大変な理由

従来、故人の銀行口座を探すには、通帳・キャッシュカード・郵便物などの手がかりから金融機関を推測し、1件ずつ窓口で照会するしかありませんでした。

しかし近年は、以下のような理由で手がかり自体が少なくなっています。

  • ネット銀行の普及
    通帳やキャッシュカードが存在しないケースが増加
  • 通帳レス口座の増加
    紙の通帳を発行しない口座が主流に
  • 複数の金融機関に分散
    メインバンク以外にも証券口座や定期預金を持っているケース

口座の調査が不十分なまま遺産分割を進めてしまうと、あとから別の口座が見つかり、協議をやり直す必要が出てくることもあります。

また、相続税の申告が必要なケースでは、申告漏れが追徴課税につながるリスクもあります。

こうした問題を解決する手段のひとつとして、2025年4月に「相続時口座照会制度」がスタートしました。

相続時口座照会制度とは

相続時口座照会制度とは、故人名義の預貯金口座の所在を、複数の金融機関にまたがって一括で照会できる制度です。

2025年4月1日に施行された口座管理法(正式名称: 預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律)に基づいて運用されています。

メディアを読み込み中...

制度の仕組み

この制度のポイントを整理すると、次のとおりです。

  • 生前に
    本人がマイナンバーと銀行口座を紐づけ(付番)しておく(任意)
  • 相続発生後に
    相続人が金融機関の窓口で照会を申請
  • 照会結果
    預金保険機構が付番済み口座の情報をもとに照会し、結果を郵送で通知

照会でわかること・わからないこと

項目わかる?
どの金融機関・支店に口座があるか✅ わかる
預貯金の種類(普通預金・定期預金など)✅ わかる
口座番号✅ わかる
口座の残高❌ わからない
取引履歴❌ わからない

残高や取引履歴を確認するには、照会結果をもとに各金融機関で個別に残高証明書を請求する必要があります。

口座照会制度の手数料・期限・条件

手数料

1回の申請につき5,060円(税込)です。

金融機関一律の料金で、申し込み時に窓口で支払います。

口座が見つからなくても返金されません

照会の結果、該当する口座がなかった場合でも、手数料は返却されません。
他の調査手段と組み合わせたうえで、申請するかどうかを判断しましょう。

申請期限

被相続人が亡くなってから10年以内に申請する必要があります。

相続が長期化しやすい案件(相続人間の合意が難航しているなど)では、口座の所在把握だけでも先行して進めておくと安心です。

申請できる人

  • 相続人(包括受遺者を含む)
  • 遺言執行者
  • 相続財産清算人
  • 上記の代理人(司法書士、弁護士等)

結果通知までの期間

申請から照会結果の通知まで、約1ヶ月かかります。

相続時口座照会の申請手順

口座照会の申請は、以下のステップで進めます。

メディアを読み込み中...

ステップ1: 必要書類を準備する

申請に必要な書類は次のとおりです。

  • 故人の死亡が確認できる書類
    戸籍謄本(除籍謄本)など
  • 相続人であることを確認できる書類
    戸籍謄本一式(故人との続柄を証明するもの)
  • 申請者の本人確認書類
    運転免許証、マイナンバーカードなど(顔写真付き)
  • 金融機関所定の申込書
    窓口で受け取るか、金融機関のWebサイトからダウンロード
法定相続情報一覧図があると便利

法務局で発行される「法定相続情報一覧図」を取得しておくと、戸籍謄本一式の代わりに提出できます。
口座照会だけでなく、その後の金融機関での相続手続きや相続登記でも使えるため、早めに取得しておくのがおすすめです。

住所表記の揺れでマイナンバーが取得できないケースに注意

預金保険機構は住基ネットから被相続人のマイナンバーを取得しますが、提出書類の住所表記と住民基本台帳の住所表記が一致しない場合、マイナンバーを取得できず「該当口座なし」の結果が通知されることがあります。
たとえば「一丁目一番地一号」と「1-1-1」のような表記揺れが原因になり得ます。
申請書には、住民票の除票に記載された住所をそのまま正確に書き写してください。

ステップ2: 金融機関の窓口で申請する

必要書類を持って、いずれかの金融機関の窓口を訪れます。

申請先は特定の金融機関に限定されず、預金保険機構が事務を委託している金融機関であれば、どこの窓口でも受け付けてもらえます。

普段利用している銀行の窓口で申請するのが便利です。

申請受付後の取消し・訂正はできません

申し込み受付後は、申請の取消し・訂正・変更等ができません。
申請内容(被相続人の情報など)に誤りがないか、窓口で提出する前に十分確認してください。

ステップ3: 預金保険機構が照会を実施

申請を受けた金融機関が、預金保険機構に照会依頼を取り次ぎます。

預金保険機構は、故人のマイナンバーに紐づけられた口座の情報をもとに、対象となる金融機関へ照会を行います。

なお、故人のマイナンバーは預金保険機構が取得するため、申請者がマイナンバーを提示する必要はありません。

ステップ4: 照会結果を受け取る(約1ヶ月後)

照会結果は郵送で届きます。

通知には、故人名義の口座がある金融機関名、支店名、預貯金の種類、口座番号等が記載されています。

ステップ5: 各金融機関で個別の相続手続きへ

照会結果で口座の所在がわかったら、それぞれの金融機関で以下の手続きを進めます。

  1. 残高証明書の請求(死亡日時点の残高確認)
  2. 口座凍結の解除(遺産分割協議書等の提出)
  3. 預金の払い戻し
データを読み込み中...

口座照会制度の注意点

制度を利用する前に、以下の注意点を必ず押さえておきましょう。

注意点1: マイナンバーと紐づけた口座のみが対象

この制度で照会できるのは、故人が生前にマイナンバーと紐づけ(付番)を行っていた口座だけです。

紐づけていない口座は、照会しても「該当なし」と表示されます。

制度が始まったのは2025年4月で、現時点ではすべての口座を紐づけている方はまだ少数です。

そのため、「口座照会をすれば故人のすべての口座がわかる」と過信せず、従来の調査方法と組み合わせて使うことが大切です。

注意点2: 一部の金融機関は対象外

デジタル庁が指定する特定金融機関など、照会の対象外となる金融機関があります。

対象となる金融機関の最新リストは、預金保険機構の公式サイトで確認してください。

注意点3: 残高・取引履歴はわからない

照会結果で通知されるのは口座の所在情報(金融機関名・支店名・預貯金の種類・口座番号等)です。

残高や取引履歴は含まれないため、詳細は各金融機関で別途手続きが必要です。

注意点4: 申請により口座が凍結される可能性がある

口座照会の申請を行うと、被相続人が亡くなったことが照会対象の金融機関に通知されます。

これにより、金融機関が故人名義の口座を凍結(取引停止)する場合があります。

口座が凍結されると、預金の引き出しや自動引き落としがすべて停止されるため、葬儀費用や生活費の引き出しが必要な場合は、照会を申し込む前に対応を済ませておきましょう。

注意点5: 海外転出者は対象外

被相続人が海外に転出し住民票がない場合は、口座照会の対象外です。

海外在住の家族が亡くなったケースでは、各金融機関への個別照会で口座を調査する必要があります。

口座照会で見つからないときの調べ方

口座照会制度でカバーできない口座もあるため、以下の方法を併用しましょう。

メディアを読み込み中...

自宅の郵便物・書類から手がかりを探す

最も確度が高い手がかりは郵便物です。

  • 金融機関からの取引報告書・残高通知
  • 配当金の計算書や各種控除証明書
  • 満期案内や定期預金の通知
  • キャッシュカード、通帳
  • カレンダーやタオルなどに印字された金融機関名

未開封の郵便物も含めて、一定期間分をまとめて確認しましょう。

各金融機関の「全店照会」を利用する

各銀行では、同一銀行内のすべての支店を対象にした照会(全店照会)に対応しています。

相続人であることを証明する書類(戸籍謄本等)を持参して窓口で依頼すると、その銀行内の故人名義の口座を一括で確認できます。

ただし、銀行ごとに個別に依頼する必要があるため、候補が多いと手間がかかります。

株式は証券保管振替機構(ほふり)で調べる

預貯金ではなく株式・投資信託の調査には、証券保管振替機構(ほふり)への照会を利用します。

手数料は1件あたり6,050円(税込)(法定相続情報一覧図を提出すると4,950円)です。

生命保険は契約照会制度を利用する

故人が加入していた生命保険を調べるには、生命保険協会の「生命保険契約照会制度」を利用できます。

マイナンバーと口座の紐づけ - 生前にやっておくべき準備

口座照会制度のメリットを最大限に活かすには、生前の準備がカギになります。

マイナンバーと口座の紐づけ(付番)方法

口座の付番は任意で、以下の2つの方法で手続きできます。

方法1: 金融機関の窓口で手続き

普段使っている銀行の窓口で、マイナンバーの届出(付番)を申請します。

マイナンバーカードまたは通知カードと本人確認書類を持参してください。

オンラインに不慣れな方でも取りやすい方法です。

方法2: マイナポータルでオンライン申請

マイナポータルにログインし、「さがす」機能で「金融機関へのマイナンバーの届出申請」を検索して手続きできます。

自宅にいながらオンラインで完了するため、複数の金融機関への届出をまとめて行いたい場合に便利です。

紐づけても残高は国に知られません

「マイナンバーと口座を紐づけると、残高が国に筒抜けになるのでは?」と心配される方もいますが、その心配は不要です。
この制度は口座の「所在」を把握するためのもので、残高や取引明細が国や自治体に自動的に共有される仕組みではありません。
デジタル庁も明確にその点を説明しています。

口座情報をエンディングノートに記録する

マイナンバーの付番に加えて、エンディングノートに口座情報(金融機関名・支店名・口座番号)を記録しておくと、相続人の負担をさらに軽減できます。

よくある質問(FAQ)

Q. マイナンバーを口座に紐づけると残高が国に知られますか?

A. 知られません。

この制度はあくまで口座の「所在」を把握するためのもので、残高や取引履歴が自動的に国や自治体に通知される仕組みではありません。

デジタル庁もその点を明示しています。

Q. 口座照会をすれば故人のすべての口座がわかりますか?

A. すべてがわかるとは限りません。

照会できるのは、故人が生前にマイナンバーと紐づけた口座のみです。

紐づけていない口座は対象外となるため、従来の調査方法(郵便物の確認、各銀行への個別照会など)と併用する必要があります。

Q. 手数料5,060円は口座が見つからなくても必要ですか?

A. はい、必要です。

照会の結果、該当口座がなかった場合でも手数料は返金されません。

他の手段で調査してから、口座照会を利用するかどうかを判断するとよいでしょう。

Q. 証券口座(株式・投資信託)もこの制度で調べられますか?

A. 調べられません。

この制度が対象とするのは預貯金口座のみです。

株式や投資信託は、証券保管振替機構(ほふり)への照会を利用してください。

Q. 相続人全員で申請する必要がありますか?

A. いいえ、相続人のうち1人が申請すれば大丈夫です。

相続人、遺言執行者、またはその代理人(司法書士・弁護士等)が単独で申請できます。

まとめ

相続時口座照会制度は、故人のマイナンバーに紐づけられた銀行口座をまとめて調べられる新しい仕組みです。

ポイントを整理すると、次のとおりです。

  • 手数料
    1回5,060円(税込)、口座が見つからなくても返金不可
  • 期限
    死亡から10年以内
  • 結果通知
    約1ヶ月後に郵送
  • 対象
    マイナンバーと紐づけ(付番)された口座のみ
  • 残高は通知されない
    口座の所在情報(金融機関名・支店名・預貯金の種類・口座番号等)のみ

制度は万能ではなく、紐づけされていない口座は見つけられません。

郵便物の確認や各銀行への個別照会など、従来の方法と組み合わせて使うことが重要です。

そして、制度の恩恵を最大限に受けるためには、生前にマイナンバーと口座を紐づけておくことが何より大切です。

ご家族にも、口座の付番やエンディングノートへの記録をすすめてみてください。

関連する手続きガイド

関連タグ