エンディングノートの書き方ガイド〜項目・入手方法・遺言書との違い
もしものとき、スマホのパスワードや銀行口座、保険の情報を家族は把握していますか?
エンディングノートは、こうした情報や医療・葬儀に関する希望を書き留めて家族に伝えるためのノートです。
この手続きガイドでは、エンディングノートで書くべき項目や入手方法、遺言書との違い、挫折しない書き方のコツまでわかりやすく解説します。
1. エンディングノート(終活ノート)とは
エンディングノートとは、自分に「もしものこと」があったときに備えて、家族や大切な人に伝えたい情報・希望を書き留めておくためのノートです。
「終活ノート」と呼ばれることもあり、特に決まった書式や形式はありません。
市販のノート、自治体が配布する無料のテンプレート、スマートフォンのアプリなど、好きな方法で作ることができます。
エンディングノートと遺言書の違い
エンディングノートと遺言書は混同されがちですが、目的や法的効力がまったく異なります。
| 項目 | エンディングノート | 遺言書 |
|---|---|---|
| 法的効力 | なし | あり |
| 書式 | 自由(決まりなし) | 法律で定められた形式が必要 |
| 主な内容 | 希望・想い全般(医療、介護、葬儀、メッセージなど) | 主に財産の相続・分配 |
| 費用 | 無料〜数千円 | 公正証書の場合は数万円〜 |
| 心理的ハードル | 低い | 高い |
| 変更のしやすさ | いつでも自由に修正可能 | 新たに作成し直す必要あり |
エンディングノートに書いた「財産をこう分けてほしい」という希望は、あくまで希望にとどまり、法的な拘束力はありません。
財産の分配について確実に希望を通したい場合は、エンディングノートとは別に遺言書を作成する必要があります。
理想的なのは、エンディングノートと遺言書を併用することです。
エンディングノートで想いや希望を幅広く伝え、財産の分配については遺言書で法的に有効な形で残す。
この2つを組み合わせることで、より確実に自分の意思を伝えられます。
エンディングノートを書くメリット
家族の負担を大幅に減らせる
家族が亡くなった直後は、悲しみの中でも多くの手続きをこなさなければなりません。
エンディングノートがあれば、
「誰に連絡するか」
「どの銀行に口座があるか」
「保険はどこに入っているか」
などをすぐに確認でき、家族の負担を大幅に軽減できます。
口では伝えにくいことを文章で残せる
日頃なかなか言えない感謝の気持ちや、葬儀の希望など、面と向かっては伝えにくいことも、文章なら素直に書き残せます。
自分自身の「今」を整理できる
エンディングノートを書く過程で、資産の棚卸しや不要なサービスの解約など、生活の見直しにもつながります。
「整理のきっかけになった」「不要なクレジットカードを解約できた」という声も多く聞かれます。
2. エンディングノートに書くべき項目
エンディングノートに書く内容に決まりはありませんが、以下の項目を押さえておくと家族にとって役立つ内容になります。
すべてを一度に書く必要はなく、書ける項目から少しずつ始めてみてください。
2-1. 自分の基本情報
家族でも意外と把握していない情報は多いものです。
まずは基本的な情報を整理しておきましょう。
- 氏名、生年月日、血液型
- 現住所、本籍地
- 電話番号(固定・携帯)
- マイナンバー
- 学歴、職歴
- 資格、免許
- かかりつけ医の名前と連絡先
- 持病、既往歴、常用薬、アレルギー
2-2. 医療・介護の希望
判断力が衰える前に、医療や介護に関する希望を明確にしておくことが大切です。
- 病名や余命を告知してほしいか
- 延命治療を希望するか
- 臓器提供の意思はあるか
- 認知症になった場合の介護の希望(在宅か施設か)
- 介護を誰にお願いしたいか
特に延命治療については、本人の意思が確認できない状態では家族が判断に苦しむケースが多くあります。
元気なうちに家族と話し合い、その結論をエンディングノートに書き留めておきましょう。
介護保険の申請方法や要介護認定の流れについては、以下の手続きガイドで詳しく解説しています。
2-3. 財産に関する情報
遺族が最も困るのが、財産の全容がわからないケースです。
以下の情報を整理してエンディングノートに記録しておきましょう。
- 銀行口座(銀行名、支店名、口座番号)
- ネットバンクのログイン情報
- 証券口座(証券会社名、口座番号)
- 生命保険、医療保険(保険会社名、証券番号)
- 年金の種類と基礎年金番号
- 不動産(所在地、登記情報)
- 借金やローン(残高、返済先)
- クレジットカード(カード会社名、番号の一部)
2-4. デジタル遺品の整理
現代の終活で特に重要なのが「デジタル遺品」の整理です。
スマートフォンやパソコンのパスワードがわからないと、遺族はネット口座やサブスクリプションの解約もできません。
- スマートフォンのロック解除方法(パスコード、指紋認証、顔認証)
- パソコンのログインパスワード
- メールアカウントのログイン情報
- SNSアカウント(LINE、Facebook、Instagram、Xなど)
- サブスクリプションサービスの一覧と解約方法
- クラウドストレージ(写真やデータの保管場所)
- 電子マネーやポイントの情報
SNSアカウントについては、FacebookやInstagramには「追悼アカウント」の仕組みがあり、生前に設定しておくことができます。
2-5. 葬儀・お墓の希望
近年は葬儀やお墓の形態が多様化しています。
自分の希望を書き残しておくことで、遺族が迷わずに済みます。
- 信仰する宗教・宗派
- 葬儀の形式(一般葬、家族葬、直葬など)
- 葬儀に呼んでほしい人のリスト
- 遺影に使ってほしい写真(保管場所も)
- 喪主をお願いしたい人
- 納骨の方法(一般墓、永代供養、散骨など)
- 菩提寺の情報
- 墓じまいの希望(がある場合)
葬儀の費用相場や形式ごとの違いについては、以下の手続きガイドで詳しく解説しています。
お墓の購入や選び方については以下をご覧ください。
2-6. ペットに関する情報
ペットを飼っている方は、自分にもしものことがあったときにペットが安心して暮らせるよう、以下の情報をまとめておきましょう。
- ペットの名前、種類、年齢、性別
- 性格や好きな食べ物、苦手なこと
- かかりつけ動物病院の名前と連絡先
- ペット保険の加入状況(保険会社名、証券番号)
- 引き取りをお願いしたい人の連絡先
- ワクチン接種歴、持病、常用薬
- マイクロチップの登録番号
引き取り先の候補には事前に相談しておくことが大切です。
家族や友人に頼めない場合は、ペットの里親探しを支援する団体や、老犬・老猫ホームといった選択肢もあります。
2-7. 死後の手続きについて
人が亡くなった後は、役所への届出だけでなく、さまざまな契約やサービスの解約・変更が必要です。
エンディングノートに契約中のサービスを一覧にしておくと、遺族が漏れなく手続きを進められます。
- 携帯電話の契約情報
- 会員登録しているサービス
- 光熱費の契約名義と引き落とし口座
- 賃貸住宅の契約情報
死亡届の提出から相続までの手続きの全体像は、以下の手続きガイドで時系列に沿って解説しています。
2-8. 家族・友人へのメッセージ
エンディングノートは実務的な情報だけでなく、大切な人への想いを伝える場でもあります。
普段なかなか口にできない感謝の気持ちや、子どもや孫への応援メッセージなど、率直な気持ちを書き残してみてください。
遺族にとって、故人の温かいメッセージは心の支えになります。
2-9. これからやりたいこと
エンディングノートを書く過程で、「まだやっていないこと」「もう一度やりたいこと」が見えてくることがあります。
行きたかった旅行先、会いたい人、挑戦してみたいことなど、これからの人生を前向きに考えるきっかけとしてもエンディングノートを活用してみましょう。
3. エンディングノートの入手方法
エンディングノートの入手方法は大きく4つあります。
まずは無料のものから試してみるのがおすすめです。
3-1. 自治体の無料配布を利用する
全国の多くの自治体が、住民向けにエンディングノートを無料で配布しています。
地域包括支援センターや市区町村の窓口で受け取れるほか、自治体の公式サイトからPDF版をダウンロードできる場合もあります。
自治体版のエンディングノートは、地域の相談窓口や公的機関の連絡先が掲載されている点がメリットです。
お住まいの自治体でエンディングノートが配布されているか、以下から調べてみましょう。
3-2. 市販のエンディングノートを購入する
自分好みのデザインや構成のエンディングノートを選びたい方は、市販品がおすすめです。
主な購入先と価格帯
| 購入先 | 価格帯 | 特徴 |
|---|---|---|
| 100円ショップ(ダイソー、セリアなど) | 100〜200円程度 | 手軽に始められる。導入に最適 |
| 文房具店・書店 | 500〜2,000円程度 | 項目が充実。解説付きのものもある |
| オンラインショップ | 500〜3,000円程度 | 種類が豊富。レビューを参考に選べる |
選び方のポイント
-
初めて書く方
項目に書き方の解説がついているものを選ぶと、迷わずに書き進められます -
デザインにこだわりたい方
ディズニーモチーフや和柄など、さまざまなデザインのものがあります。
見た目がエンディングノートに見えないものもあり、本棚に置いても違和感がありません -
実用性を重視する方
コクヨの「もしもの時に役立つノート」は、実務的な項目が網羅されていて人気です
3-3. アプリ・Webサービスを活用する
紙のノートに抵抗がある方や、スマートフォンで手軽に始めたい方には、エンディングノートアプリもあります。
主なアプリ・サービス
- SouSou
マイナンバーカードで本人確認できる仕組みを活用した無料のデジタル終活アプリです。
安否確認機能と連動し、万が一のときに自動で情報を家族に継承する仕組みが特徴です
- わが家ノート by MUFG
三菱UFJ銀行が提供する無料アプリです。
見守り機能や健康管理機能も搭載しており、家族との情報共有にも対応しています
- つなぐノート
大切な情報を整理し、家族に伝えたいことを記録できるライフノートアプリです。
資産やデジタル遺産の管理に加え、家族のノートにコメントを付けて質問や作成依頼ができる共有機能が特徴です
アプリのメリット・デメリット
| メリット | デメリット |
|---|---|
| いつでもどこでも編集できる | サービス終了のリスク |
| 情報の更新が簡単 | スマホの操作に慣れが必要 |
| 家族との共有機能がある | 紙と比べて一覧性がやや劣る |
| 写真や動画も添付可能 | 本人以外がアクセスしづらい場合も |
紙のエンディングノートとアプリを併用し、それぞれの長所を活かすのもおすすめです。
3-4. 自分で作る
エンディングノートには決まった形式がないため、普通の大学ノートやメモ帳に書いても問題ありません。
自分で作る場合は、この手続きガイドの「2. エンディングノートに書くべき項目」を参考に、必要な情報を書き出してみてください。
ExcelやWordで作成し、USB メモリに保存しておく方法もあります。
ただし、情報は紙に書き出した方が思考を整理しやすいため、できれば紙のノートとの併用をおすすめします。
4. 挫折しない書き方のコツ
エンディングノートを買ったものの、「何から書けばいいかわからない」「途中で止まってしまった」という方も少なくありません。
挫折せずに書き続けるためのコツを紹介します。
4-1. 書ける項目から始める
エンディングノートには多くの項目がありますが、最初からすべてを埋める必要はありません。
まずは「氏名」「生年月日」「電話番号」など、すぐに書ける基本情報から始めてみてください。
簡単な項目を埋めていくうちに、次に書くことが自然と見えてきます。
4-2. 鉛筆や消せるボールペンで書く
エンディングノートは一度書いたら終わりではなく、考えが変わるたびに書き直すものです。
修正しやすいように、鉛筆やフリクションペン(消せるボールペン)を使うのがおすすめです。
4-3. 完璧を目指さない
すべての項目を埋めなくても大丈夫です。
「葬儀の形式はまだ決められない」「財産の整理が追いつかない」といった項目は空欄にしておき、気持ちが固まったときに書き足しましょう。
4-4. 定期的に見直す
- 1〜3ヵ月に一度は内容をざっと確認
- 引っ越し、転職、結婚、出産などライフイベントがあったときに更新
- 契約しているサービスや口座に変更があったときに修正
情報が古くなると、いざというときに役立たなくなるため、定期的な見直しを習慣にしましょう。
4-5. 保管場所を家族と共有する
せっかく書いたエンディングノートも、家族が見つけられなければ意味がありません。
- 金庫や鍵のかかる引き出しなど、安全な場所に保管する
- 保管場所は必ず家族に伝える
- 個人情報が含まれるため、誰でも見つけられる場所は避ける
5. 親にエンディングノートを書いてもらうには
「親にエンディングノートを書いてもらいたい」という方は多いですが、切り出し方に悩むケースも少なくありません。
5-1. 「エンディングノート」という言葉を使わない
「エンディングノート」という言葉に抵抗を感じる世代もいます。
「もしものときに困らないように、連絡先だけでもメモしておいてくれない?」など、軽い言い方で始めるのがポイントです。
5-2. まずは自分が書いてみせる
「自分も書いてみたんだけど、お母さん(お父さん)も書いてみない?」と、自分が先に書いた姿を見せると、親も取り組みやすくなります。
5-3. 家族で一緒に取り組む
年末年始やお盆など、家族が集まるタイミングで「みんなで書いてみよう」と提案するのも効果的です。
ひとりで書くと構えてしまいますが、家族みんなで取り組めば楽しい雰囲気の中で進められます。
5-4. 少しずつ聞き出す
「通帳ってどこにあったっけ?」「かかりつけの病院はどこだっけ?」と、日常会話の中で少しずつ情報を聞き出す方法もあります。
聞いた内容を家族の側でメモしておけば、エンディングノートの代わりにもなります。
6. よくある質問
Q. エンディングノートは何歳から書き始めるべきですか?
A. 書き始める年齢に決まりはありません。
20代や30代から書く方もいますし、定年退職をきっかけに始める方もいます。
大切なのは「思い立ったときが最適なタイミング」ということです。
特に以下のようなライフイベントが、書き始めるよいきっかけになります。
- 親の介護を考え始めたとき
- 子育てが一段落したとき
- 定年退職したとき
- 大きな病気やケガをしたとき
- 結婚・出産を機に家族の将来を考えたとき
Q. エンディングノートだけで遺産分割はできますか?
A. できません。
エンディングノートに「財産はこう分けてほしい」と書いても、法的な効力はありません。
遺産の分配について確実に希望を通したい場合は、民法に定められた形式に従って遺言書を別途作成する必要があります。
エンディングノートには「遺言書がある」「保管場所はここ」という情報を記載し、詳細は遺言書に委ねるのが理想的です。
Q. エンディングノートはどこに保管すればいいですか?
A. 安全で、かつ家族がアクセスできる場所に保管してください。
金庫や鍵のかかる引き出し、家族だけが知っている収納スペースなどが適しています。
エンディングノートにはパスワードや口座情報など重要な個人情報が含まれるため、簡単に見つかる場所は避けましょう。
保管場所は必ず家族に伝えておいてください。
Q. 書いた内容は後から変更できますか?
A. いつでも自由に書き換えできます。
エンディングノートには法的な効力がないため、遺言書のように形式を気にする必要はありません。
考えが変わったら、何度でも修正しましょう。
鉛筆や消せるボールペンで書いておくと、修正がしやすくなります。
修正日を記録しておくと、いつ時点の情報かが明確になるのでおすすめです。
Q. エンディングノートのアプリと紙、どちらがいいですか?
A. それぞれにメリットがあるため、自分に合った方法を選ぶか、併用するのがおすすめです。
-
紙のノート
一覧性がよく、書くことで思考を整理しやすい。
スマホがなくても家族がすぐに確認できる -
アプリ
いつでも編集・更新ができ、写真や動画も添付可能。
家族への共有機能があるものも
パスワード類など更新頻度の高い情報はアプリで管理し、想いやメッセージは紙に書く、という使い分けもおすすめです。
まとめ
エンディングノートは、家族への情報伝達と想いの共有を一冊にまとめられる便利なツールです。
- 法的効力はないが、遺言書と併用することで万全の備えになる
- 基本情報、医療・介護の希望、財産、デジタル遺品、葬儀の希望などを書き留める
- 自治体の無料配布、市販品、アプリなど、自分に合った方法で始められる
- 一度にすべて書く必要はなく、書ける項目から少しずつ埋めていけばよい
- 定期的に見直し、保管場所は必ず家族に共有する
完璧に書き上げることよりも、まず1項目でも書き始めることが大切です。
この手続きガイドを参考に、エンディングノートの第一歩を踏み出してみてください。