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パワハラを受けたら?相談先・証拠集め・労働局への手続きガイド

パワハラを受けたら?相談先・証拠集め・労働局への手続きガイド
最終更新:2026年5月16日

「上司の言動がつらいけど、これってパワハラ?」
「証拠がないと相手にしてもらえないの?」
「どこに相談すればいいかわからない…」
——こうした悩みを抱えながら、一人で我慢し続けている方は少なくありません。

パワハラは2022年4月から全企業で防止措置が義務化されており、泣き寝入りする必要はありません。

この手続きガイドでは、パワハラの定義の確認から、証拠の残し方、相談窓口の選び方、労働局への申告手続き、退職時に知っておくべきことまで、具体的なステップを順番に解説します。

1. まずは確認 - その言動はパワハラに該当する?

「パワハラかもしれない」と感じたら、まずは法律上の定義に照らして確認しましょう。

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1-1. パワハラの法律上の3要件

パワハラ防止法(労働施策総合推進法)では、以下の3つの要件すべてを満たす言動を「パワーハラスメント」と定義しています。

  1. 優越的な関係を背景とした言動であること
    上司から部下だけでなく、先輩から後輩、集団から個人など、抵抗や拒否が難しい関係も含みます。
  2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであること
    適正な業務指示や指導はパワハラに該当しません。
  3. 労働者の就業環境が害されること
    身体的・精神的な苦痛を受け、仕事に支障が出ている状態を指します。
判断に迷ったら

3要件に当てはまるかどうか自分で判断できなくても大丈夫です。
まずは「3. パワハラの相談先一覧」で紹介する相談窓口に相談してみましょう。

1-2. パワハラの6類型

厚生労働省は、パワハラに該当しうる言動を6つのタイプに分類しています。

類型具体例
身体的な攻撃殴る、蹴る、物を投げつける
精神的な攻撃人前での侮辱、長時間の叱責、「辞めてしまえ」などの暴言
人間関係からの切り離し一人だけ別室に隔離、会議や飲み会に呼ばない、無視する
過大な要求明らかに達成不可能なノルマ、業務と関係ない雑用の強制
過小な要求管理職に対して単純作業だけを命じる、仕事を与えない
個の侵害プライベートの詮索、交際相手やSNSについてしつこく聞く

これらは「典型例」であり、上記に当てはまらなくてもパワハラに該当するケースはあります。

1-3. パワハラに該当しないケース

すべての厳しい指導がパワハラになるわけではありません。

  • 遅刻や業務ミスに対する適切な注意・指導
  • 業務上の必要性に基づく配置転換や業務変更
  • 能力に応じた適正な目標設定

ただし、指導の「方法」が問題になることがあります。

内容が正当でも、大声で怒鳴る・人格を否定するなどの手段を取れば、パワハラに該当する可能性があります。

2. パワハラの証拠を残す方法

パワハラに対処するには、証拠が非常に重要です。

社内の相談窓口に報告するときも、労働局に申告するときも、弁護士に相談するときも、「何が起きたか」を裏づける証拠があるかどうかで結果が大きく変わります。

証拠は「合わせ技」が有効

録音・メモ・メールなど、複数の種類の証拠を組み合わせることで証拠としての信頼性が高まります。
1つだけでは弱くても、複数あれば十分な証拠になることがあります。

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2-1. 録音

最も強力な証拠のひとつが音声録音です。

スマートフォンのボイスメモ機能やICレコーダーを使って、パワハラが行われている場面を記録しましょう。

秘密録音は違法ではない

「相手に無断で録音しても大丈夫?」と心配する方は多いですが、自己防衛のための秘密録音は原則として違法ではありません

裁判でも証拠として採用された事例が多数あります。

録音のコツ

  • 出勤時にボイスメモを起動し、日常的に録音しておく
  • 相手を挑発するような発言は避ける(録音の信頼性が下がるため)
  • 録音データはクラウドストレージにバックアップし、削除されないようにする

2-2. メモ・日記

録音ができない状況でも、メモや日記は有効な証拠になります。

ただし、証拠として認められるためにはいくつかのポイントがあります。

  • 毎日その日のうちに記録する(まとめ書きは証拠力が大きく下がる)
  • 以下の5つの項目を記録する
記録項目
日時2026年5月15日 14:30ごろ
場所3階の会議室B
発言・行為の内容「お前なんか辞めてしまえ」と大声で怒鳴られた
加害者営業部 〇〇課長
目撃者同席していた△△さん、□□さん

手書きのノートでもスマートフォンのメモアプリでも構いません。

大切なのは「リアルタイムで記録している」ことが伝わる形式にすることです。

2-3. メール・LINE・チャット

上司からのメールやLINEメッセージ、業務チャットの内容もパワハラの証拠になります。

  • スクリーンショットを撮って保存する
  • 日付・送信者が確認できる状態にしておく
  • 退職前に必ずバックアップを取る(退職後はアクセスできなくなるため)

2-4. 医師の診断書

パワハラが原因で心身に不調が出ている場合は、心療内科や精神科を受診し、診断書を取得しましょう。

診察時に「職場での上司の言動がストレスの原因です」と具体的に伝えることで、診断書に「職場環境に起因するストレス反応」などと記載してもらえます。

この診断書は、労災申請やあっせん、訴訟の際に重要な証拠となります。

3. パワハラの相談先一覧 - どこに相談すべき?

証拠を集めたら(または集めながら)、相談窓口に連絡しましょう。

「どこに相談すればいいの?」と迷う方が多いですが、段階に応じた相談先があります。

3-1. まずは社内の相談窓口

2022年4月の法改正により、すべての企業にハラスメント相談窓口の設置が義務づけられています

まずは社内の相談窓口を確認してみましょう。

  • ハラスメント相談窓口
    会社の就業規則やイントラネットに記載されていることが多いです。
  • 人事部・総務部
    相談窓口がわからない場合は、人事部門に問い合わせましょう。
  • コンプライアンス窓口(内部通報窓口)
    外部の弁護士事務所が対応する窓口を設けている企業もあります。
  • 産業医
    会社に産業医がいる場合、パワハラによるストレスを相談できます。
    産業医の勧告は会社側に対する拘束力が強く、加害者の異動や処分につながったケースもあります。
社内窓口が機能しない場合

社長や経営幹部が加害者の場合、社内窓口に相談しても解決が期待できないことがあります。
相談しても対応してもらえなかった場合や、報復が心配な場合は、次に紹介する外部の相談窓口を利用しましょう。

3-2. 外部の無料相談窓口

社内で解決できない場合や、社内に相談しにくい場合は、外部の公的な相談窓口を活用しましょう。

すべて無料で利用できます。

相談先内容連絡方法
総合労働相談コーナー労働問題全般のワンストップ相談。助言・指導やあっせんの案内も電話・対面(各都道府県の労働局・労基署内)
法テラス(日本司法支援センター)法的トラブルの総合案内。無料で弁護士に相談できる制度あり電話(0570-078374)・対面
みんなの人権110番ハラスメントを含む人権問題全般の相談電話(0570-003-110)
こころの耳メンタルヘルスに特化した相談電話・メール・SNS
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公務員・教員の方の相談先

一般職の国家公務員は人事院の相談窓口、地方公務員は各自治体の人事委員会(公平委員会)、公立学校の教員は教育委員会が相談先になります。
総合労働相談コーナーでは公務員の相談は原則として取り扱っていないため注意してください。

3-3. 弁護士に相談する

パワハラの加害者や会社に対して損害賠償を請求したい場合は、弁護士への相談を検討しましょう。

無料相談の活用

  • 法テラス
    収入・資産が一定以下の場合、弁護士への無料相談(1回30分、最大3回)を利用できます。
  • 弁護士会の法律相談
    各地の弁護士会が有料(30分5,500円程度)の相談窓口を設けています。
    初回無料の事務所もあります。

弁護士費用の目安

項目費用の目安
相談料無料〜5,500円(30分)
着手金20万〜30万円
成功報酬獲得金額の10%〜20%程度

費用面が不安な場合は、法テラスの民事法律扶助制度(弁護士費用の立替制度)が利用できる可能性があります。

4. 労働局への相談・申告の手続き

パワハラの相談先として最も利用しやすいのが、都道府県労働局の制度です。

労働局では、3つの段階で紛争解決を支援してくれます。

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4-1. 総合労働相談コーナーへの相談

各都道府県の労働局や労働基準監督署の中に設置されている総合労働相談コーナーに、電話または対面で相談できます。

相談時に持参すると良い資料

厚生労働省「あかるい職場応援団」では、以下の情報を整理して持参することを推奨しています。

  1. パワハラが起きた日時
  2. どこで起こったか
  3. どのようなことを言われたか・強要されたか
  4. 誰に言われたか・強要されたか
  5. そのとき誰が見ていたか

相談員がこれらの情報をもとに、今後の対応方針(助言・指導やあっせんなど)を一緒に考えてくれます。

4-2. 助言・指導の申出

相談コーナーでの相談の結果、必要に応じて都道府県労働局長による助言・指導を申し出ることができます。

  • 労働局長が会社に対して、問題点を指摘し解決の方向を示す
  • 利用は無料
  • 会社の自主的な解決を促す制度のため、法的な強制力はない

助言・指導で解決しない場合は、次の「あっせん」に進むことができます。

なお、都道府県労働委員会でも個別労働紛争のあっせんを行っています。

労働局と労働委員会のどちらでもあっせんを申請できるため、最寄りの窓口に相談してみましょう。

4-3. あっせんの申請

あっせんとは、弁護士や社会保険労務士などの専門家(紛争調整委員)が労働者と会社の間に入り、話し合いによる解決を図る制度です。

あっせんの特徴

  • 無料で利用できる
  • 非公開のため、プライバシーが守られる
  • 裁判に比べて手続きが簡便で迅速
  • 原則1回(半日程度)で終了する
  • 通常約2か月で処理が完了する
  • 電子申請にも対応している

あっせんの流れ

  1. 労働局の総合労働相談コーナーにあっせん申請書を提出
  2. 労働局長が紛争調整委員会にあっせんを委任
  3. 相手方(会社)にあっせん開始通知と参加意思の確認
  4. 双方が参加 → あっせん期日で話し合い
  5. 合意に至れば和解成立 / 合意に至らなければ打切り
あっせんの注意点

あっせんへの参加は相手方(会社)の任意です。
会社が参加を拒否した場合、あっせんは打ち切りとなります。
その場合は、次のセクションで紹介する労働審判や民事訴訟を検討することになります。

5. それでも解決しない場合 - パワハラで訴える法的手段

あっせんで解決しなかった場合や、加害者・会社に対して損害賠償を請求したい場合は、法的手段を検討します。

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5-1. 労働審判

労働審判は、裁判所で行う簡易・迅速な紛争解決手続きです。

  • 原則3回以内の期日で終了する
  • 通常2〜3か月程度で解決する
  • 裁判官(労働審判官)1名と労使の専門家(労働審判員)2名が担当する
  • 審判に不服がある場合は通常の訴訟に移行できる

費用の目安

  • 裁判所への申立手数料は数千円〜数万円(請求金額による)
  • 弁護士に依頼する場合は着手金20万〜30万円程度

5-2. 民事訴訟(裁判)

労働審判でも解決しない場合は、民事訴訟で損害賠償を請求することになります。

パワハラの慰謝料の目安

パワハラの程度慰謝料の相場
軽度(抑うつ傾向)30万〜100万円
中度(適応障害)100万〜200万円
重度(うつ病・PTSD)200万〜300万円

上記はあくまで目安であり、パワハラの悪質性、期間、被害者に生じた結果などによって金額は大きく変わります。

なお、精神疾患の診断がなく、暴言や嫌がらせのみのケースでは慰謝料が30万〜50万円程度にとどまることもあります。

訴訟は解決まで1年以上かかることもあるため、弁護士と相談のうえ、労働審判と訴訟のどちらが適切か判断しましょう。

6. パワハラで退職する場合に知っておくべきこと

パワハラが原因で退職を決意した場合、いくつか知っておくと有利になる制度があります。

6-1. 「会社都合退職」にできるケースがある

パワハラが原因で退職した場合、「特定受給資格者」に該当する可能性があります。

特定受給資格者とは、倒産や解雇と同等の理由で離職を余儀なくされた人のことで、自己都合退職よりも失業保険の条件が有利になります。

特定受給資格者に該当する主なケース

  • 上司や同僚からのパワハラが原因で退職した
  • 長時間労働や過重な業務で心身の健康を害した
  • 会社に相談したが改善されなかった

認定にはハローワークでの審査が必要です。

パワハラの証拠(録音・メモ・メール・診断書など)をハローワークに提出することで、認定される可能性が高まります。

6-2. 失業保険が有利になる

特定受給資格者に認定されると、失業保険(雇用保険の基本手当)の条件が大きく変わります。

項目自己都合退職特定受給資格者(パワハラ退職)
給付制限(待期期間後)1か月間は支給なしなし(7日間の待期期間後すぐに支給)
給付日数90〜150日90〜330日(勤続年数・年齢による)

6-3. 退職手続きの進め方

パワハラで退職する場合の具体的な手続きについては、以下の手続きガイドで詳しく解説しています。

退職後にやるべき手続き(健康保険・年金・住民税など)の全体像はこちらをご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q. パワハラの証拠がまったくない場合でも相談できますか?

A. はい、証拠がなくても相談はできます。

総合労働相談コーナーへの相談に証拠は必須ではありません。

相談員が状況を聞き取り、今後どのように証拠を集めるかのアドバイスもしてくれます。

「証拠がないから相談できない」とあきらめず、まずは電話で相談してみましょう。

Q. パワハラを労基署に相談したら会社にバレますか?

A. 相談した事実は原則として会社に通知されません。

総合労働相談コーナーでの相談は秘密厳守で行われます。

ただし、あっせんや助言・指導に進んだ場合は、手続きの性質上、会社に通知されます。

なお、労働者がこれらの制度を利用したことを理由に、会社が不利益な取扱いをすることは法律で禁止されています。

Q. パワハラで精神疾患になった場合、労災は認められますか?

A. パワハラによるうつ病や適応障害は、労災として認定される可能性があります。

認定の条件として、パワハラが「強い心理的負荷」に該当し、それが原因で精神障害を発症したと認められる必要があります。

2023年9月に精神障害の労災認定基準が改正され、パワハラに関する心理的負荷の評価がより明確化されました。

労災の申請は、勤務先を管轄する労働基準監督署に行います。

医師の診断書とパワハラの証拠を用意して、労基署の窓口に相談しましょう。

Q. 退職後でもパワハラの損害賠償を請求できますか?

A. はい、退職後でも請求できます。

パワハラの損害賠償請求には時効があり、不法行為の場合は「損害および加害者を知った時から3年」です。

退職前に証拠を確保しておくことが重要です。

退職後にメールやチャットのデータにアクセスできなくなる場合があるため、在職中にバックアップを取っておきましょう。

Q. 公務員の場合はどこに相談すればよいですか?

A. 公務員は一般の労働者とは相談先が異なります。

  • 一般職の国家公務員 → 人事院の相談窓口
  • 地方公務員 → 各自治体の人事委員会(公平委員会)
  • 公立学校の教員 → 教育委員会

総合労働相談コーナーや都道府県労働委員会では、原則として公務員の相談は取り扱っていません。

まとめ

パワハラを受けたときの対処法は、以下のステップで進めましょう。

  1. パワハラかどうか確認する
    法律上の3要件と6類型に照らして、自分の状況を整理する
  2. 証拠を残す
    録音・メモ・メール・診断書など、複数の種類を組み合わせる
  3. 相談窓口に連絡する
    まずは社内窓口、対応してもらえなければ外部の公的窓口へ
  4. 労働局への申告を検討する
    助言・指導やあっせんを通じて、会社との話し合いを図る
  5. 法的手段を検討する
    あっせんで解決しない場合は、労働審判や民事訴訟も選択肢に
  6. 退職する場合は「特定受給資格者」の認定を目指す
    証拠をハローワークに提出し、失業保険の条件を有利にする

一人で抱え込む必要はありません。

まずは総合労働相談コーナーに電話してみることから始めてみてください。

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