年金の繰り上げ・繰り下げ受給ガイド - 損益分岐点と手続きを解説
「年金はいつからもらうのが得なのか…」
「繰り上げると減額されるって聞いたけど、どれくらい減るの?」
「繰り下げれば増えるらしいけど、長生きしないと損?」
——受給開始時期をめぐる悩みは、定年前後の方にとって最大の関心事のひとつです。
2022年の制度改正で繰り下げの上限年齢が75歳まで拡大し、繰り上げの減額率も引き下げられました。
選択肢が60歳〜75歳と大幅に広がった今こそ、正確な知識をもって判断したいところです。
この手続きガイドでは、繰り上げ・繰り下げ受給の仕組みから減額率・増額率、損益分岐点の計算例、メリット・デメリット、そして具体的な申請手続きまで網羅的に解説します。
1. 年金の繰り上げ・繰り下げ受給とは
老齢基礎年金と老齢厚生年金は、原則として65歳から受け取ることができます。
しかし、希望すれば受給開始時期を自分で選ぶことが可能です。
- 繰り上げ受給
65歳より前の60歳〜64歳の間に、年金の受給を早めること。
ただし、年金額は減額されます。 - 繰り下げ受給
65歳で受け取らず、66歳〜75歳の間まで受給を遅らせること。
遅らせた分だけ年金額が増額されます。
いずれも1ヶ月単位で受給開始時期を選択できるため、「60歳ちょうど」や「70歳ちょうど」に限らず、たとえば「63歳4ヶ月」「68歳8ヶ月」といった細かい調整も可能です。
繰り上げ・繰り下げどちらを選んでも、一度決まった減額率・増額率は一生変わりません。
慎重に検討してから手続きを行ってください。
2. 繰り上げ受給の仕組み - 減額率と計算例
2-1. 減額率のルール
繰り上げ受給の減額率は、以下の計算式で求めます。
減額率 = 0.4% × 繰り上げた月数(65歳になる月の前月まで)
1ヶ月繰り上げるごとに0.4%ずつ年金が減り、最大で24%(60歳0ヶ月で請求した場合)の減額となります。
昭和37年(1962年)4月1日以前に生まれた方は、減額率が1ヶ月あたり0.5%(最大30%)です。
該当する方は年金事務所で個別に確認してください。
2-2. 減額率早見表
以下は昭和37年4月2日以降生まれの方の減額率です(0ヶ月時点での年齢)。
| 請求時の年齢 | 繰り上げ月数 | 減額率 |
|---|---|---|
| 60歳0ヶ月 | 60ヶ月 | 24.0% |
| 61歳0ヶ月 | 48ヶ月 | 19.2% |
| 62歳0ヶ月 | 36ヶ月 | 14.4% |
| 63歳0ヶ月 | 24ヶ月 | 9.6% |
| 64歳0ヶ月 | 12ヶ月 | 4.8% |
2-3. 計算例
65歳時の年金額が月額15万円(年額180万円)の方が、60歳0ヶ月で繰り上げ受給した場合を計算します。
- 減額率: 0.4% × 60ヶ月 = 24.0%
- 月額: 15万円 × (1 - 0.24) = 11万4,000円
- 年額: 180万円 × (1 - 0.24) = 136万8,000円
65歳から受給する場合と比べて、月額で3万6,000円、年額で43万2,000円少なくなります。
この減額は一生続くため、長生きするほど累計の受給額の差が広がっていきます。
繰り上げ受給では、老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方が同時に減額されます。
原則として片方だけを繰り上げることはできません。
3. 繰り下げ受給の仕組み - 増額率と計算例
3-1. 増額率のルール
繰り下げ受給の増額率は、以下の計算式で求めます。
増額率 = 0.7% × 繰り下げた月数(65歳になった月から繰下げ申出月の前月まで)
1ヶ月繰り下げるごとに0.7%ずつ年金が増え、最大で84%(75歳0ヶ月で申出た場合)の増額となります。
3-2. 増額率早見表
| 請求時の年齢 | 繰り下げ月数 | 増額率 |
|---|---|---|
| 66歳0ヶ月 | 12ヶ月 | 8.4% |
| 67歳0ヶ月 | 24ヶ月 | 16.8% |
| 68歳0ヶ月 | 36ヶ月 | 25.2% |
| 69歳0ヶ月 | 48ヶ月 | 33.6% |
| 70歳0ヶ月 | 60ヶ月 | 42.0% |
| 71歳0ヶ月 | 72ヶ月 | 50.4% |
| 72歳0ヶ月 | 84ヶ月 | 58.8% |
| 73歳0ヶ月 | 96ヶ月 | 67.2% |
| 74歳0ヶ月 | 108ヶ月 | 75.6% |
| 75歳0ヶ月 | 120ヶ月 | 84.0% |
3-3. 計算例
65歳時の年金額が月額15万円(年額180万円)の方が、70歳0ヶ月で繰り下げ受給した場合を計算します。
- 増額率: 0.7% × 60ヶ月 = 42.0%
- 月額: 15万円 × 1.42 = 21万3,000円
- 年額: 180万円 × 1.42 = 255万6,000円
65歳から受給する場合と比べて、月額で6万3,000円、年額で75万6,000円多くなります。
ただし、65歳〜69歳の5年間(60ヶ月)は年金を受け取れないため、その間の生活費を別の方法で確保する必要があります。
繰り下げ受給は、老齢基礎年金と老齢厚生年金を別々に繰り下げることが可能です。
たとえば「老齢厚生年金は65歳から受け取り、老齢基礎年金だけ70歳まで繰り下げる」という選択もできます。
65歳以降も厚生年金に加入して働いている場合、在職老齢年金制度により支給停止される部分は増額の対象になりません。
繰り下げても実際の増額幅が想定より小さくなるケースがあるため、注意が必要です。
4. 損益分岐点 - いつからもらうのが得?
4-1. 損益分岐点とは
損益分岐点とは、受給開始時期の違いによって「どちらが得か」が入れ替わる年齢のことです。
繰り上げ受給は早くもらい始められますが1回あたりの年金額は少なく、65歳から受け取る場合と比べて、ある年齢を超えると累計受給額で逆転されます。
反対に、繰り下げ受給は受給開始が遅い分、それまで年金がもらえませんが、長生きすれば累計受給額が65歳開始を上回ります。
4-2. 繰り上げ受給の損益分岐点
65歳時の年金額が月額15万円の方が、60歳から繰り上げ受給した場合と65歳から受給した場合の累計受給額を比較します。
| 年齢 | 60歳開始(月11.4万円)の累計 | 65歳開始(月15万円)の累計 |
|---|---|---|
| 65歳 | 684万円 | 0円 |
| 70歳 | 1,368万円 | 900万円 |
| 75歳 | 2,052万円 | 1,800万円 |
| 80歳 | 2,736万円 | 2,700万円 |
| 81歳 | 2,873万円 | 2,880万円 ← 逆転 |
| 85歳 | 3,420万円 | 3,600万円 |
| 90歳 | 4,104万円 | 4,500万円 |
60歳開始の損益分岐点は約80〜81歳です。
この年齢以上まで生きた場合、65歳から受給した方が累計受給額で有利になります。
4-3. 繰り下げ受給の損益分岐点
同様に、70歳から繰り下げ受給した場合と65歳から受給した場合を比較します。
| 年齢 | 65歳開始(月15万円)の累計 | 70歳開始(月21.3万円)の累計 |
|---|---|---|
| 70歳 | 900万円 | 0円 |
| 75歳 | 1,800万円 | 1,278万円 |
| 80歳 | 2,700万円 | 2,556万円 |
| 82歳 | 3,060万円 | 3,067万円 ← 逆転 |
| 85歳 | 3,600万円 | 3,834万円 |
| 90歳 | 4,500万円 | 5,112万円 |
70歳開始の損益分岐点は約81〜82歳です。
4-4. 損益分岐点の早見表
| 受給開始年齢 | 65歳受給との損益分岐点(おおよその目安) |
|---|---|
| 60歳(繰り上げ) | 約80〜81歳 |
| 62歳(繰り上げ) | 約78〜79歳 |
| 64歳(繰り上げ) | 約76〜77歳 |
| 66歳(繰り下げ) | 約78歳 |
| 68歳(繰り下げ) | 約79〜80歳 |
| 70歳(繰り下げ) | 約81〜82歳 |
| 75歳(繰り下げ) | 約86〜87歳 |
上記は額面(税・社会保険料を引く前)での計算です。
実際には年金額が増えると所得税・住民税・社会保険料の負担も増えるため、手取りベースの損益分岐点はさらに後ろにずれる傾向があります。
詳しくは「7. 税金・社会保険料への影響」をご確認ください。
5. 繰り上げ受給のメリット・デメリット
5-1. メリット
- 早くから年金を受け取れる
定年後に収入がなくなった場合、60歳から年金を受け取ることで生活費を確保できます。 - 万が一早くに亡くなった場合は受給総額が多い
損益分岐点(約80〜81歳)より前に亡くなった場合、65歳開始より多くの年金を受け取れた計算になります。 - すぐに受給を開始できる安心感
将来の制度変更リスクを避け、確実に受け取れるうちに受給する考え方もあります。
5-2. デメリット
繰り上げ受給には、減額以外にも注意すべきデメリットが複数あります。
- 減額は一生続き、取消しは不可
繰り上げ請求を一度行うと、撤回できません。
減額された年金額がその後ずっと続きます。 - 障害基礎(厚生)年金が請求できなくなる
繰り上げ請求後に病気やケガで障害状態になっても、事後重症などによる障害年金を請求できません。
治療中の病気や持病がある方は特に注意が必要です。 - 65歳まで遺族年金と併給できない
繰り上げた老齢年金と遺族厚生年金は、65歳になるまで併せて受給できず、いずれかを選択する必要があります。 - 寡婦年金が支給されなくなる
寡婦年金を受給中の方は、繰り上げ請求した時点で寡婦年金の受給権がなくなります。 - 国民年金の任意加入・保険料の追納ができなくなる
未納期間がある方が将来の年金額を増やすための手段が使えなくなります。 - 雇用保険の給付との調整がある
雇用保険の基本手当や高年齢雇用継続給付を受ける場合、老齢厚生年金の一部または全部が支給停止されます。
繰り上げ受給の最大のリスクは「障害年金が請求できなくなる」点です。
持病のある方や、今後の健康に不安がある方は、繰り上げ請求の前に年金事務所で相談することを強くおすすめします。
6. 繰り下げ受給のメリット・デメリット
6-1. メリット
- 増額された年金が一生続く
70歳まで繰り下げれば42%増、75歳なら84%増の年金を終身で受け取れます。 - 老齢基礎年金と老齢厚生年金を別々に繰り下げ可能
「厚生年金は65歳から受け取り、基礎年金だけ70歳まで繰り下げる」といった柔軟な選択ができます。 - 特例的な繰下げみなし増額制度がある
繰り下げを希望して65歳時点で年金を請求しなかった場合でも、70歳以降に本来の年金をさかのぼって受け取ることが可能です。
この場合、請求の5年前の時点で繰り下げ申出があったとみなされ、増額された年金がまとめて支払われます。
6-2. デメリット
- 待機期間中は年金を受け取れない
繰り下げている間、年金収入はゼロになります。
その期間の生活費を別の方法で確保する必要があります。 - 加給年金と振替加算は増額の対象外
繰り下げ待機中は加給年金(配偶者に対する年額約42万円の上乗せ ※2026年度は特別加算込みで423,700円)を受け取ることもできません。
厚生年金を繰り下げると、その間の加給年金を丸ごと受け取れなくなるため注意が必要です。 - 在職老齢年金で停止される部分は増額対象外
65歳以降も厚生年金に加入して高い報酬を得ている場合、在職老齢年金で支給停止された部分は繰り下げても増額されません。 - 繰り下げ待機中に亡くなった場合のリスク
繰り下げ中に亡くなると、遺族が未支給年金として65歳時点の年金額で請求できますが、請求時点から5年以上前の分は時効により受け取れません。
70歳以降に亡くなった場合は一部が時効消滅する可能性があります。 - 社会保険料・税金の負担が増える
年金額が増えると、それに応じて所得税・住民税・社会保険料も上がるため、手取りの増額率は額面ほど大きくありません。
加給年金を受給できる方(厚生年金加入期間20年以上で、65歳未満の配偶者がいる方)が老齢厚生年金を繰り下げると、待機中の加給年金が受け取れなくなります。
加給年金の受給期間と繰り下げ増額のバランスを比較して判断してください。
現在、遺族厚生年金の受給権がある方は原則として老齢年金の繰り下げができませんが、令和10年(2028年)4月以降は一定条件のもとで繰り下げが可能になります。
老齢基礎年金は遺族厚生年金の請求の有無にかかわらず繰り下げ可能に、老齢厚生年金は遺族厚生年金の請求を行っていない場合に限り繰り下げ可能になります。
対象は昭和38年4月2日以降生まれの方です。
なお、遺族厚生年金には40歳以上65歳未満の妻に上乗せされる中高齢寡婦加算という制度があり、こちらも2028年の改正で段階的に廃止されます。
遺族厚生年金を受給中の方が繰り下げを検討する際は、あわせて確認しておきましょう。
7. 税金・社会保険料への影響
年金の繰り下げで額面の年金額が増えても、税金や社会保険料の負担も増えるため、手取りの増加率は額面ほど大きくなりません。
7-1. 年金にかかる主な負担
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 所得税 | 年金収入に応じた公的年金等控除を適用後、課税 |
| 住民税 | 年金収入が一定額以上で課税(非課税ラインあり) |
| 国民健康保険料(または後期高齢者医療保険料) | 所得に連動して保険料が上がる |
| 介護保険料 | 所得段階に応じて保険料が上がる |
7-2. 医療費の自己負担割合
75歳以上の後期高齢者医療制度では、年金収入によって窓口での自己負担割合が変わります。
| 区分 | 自己負担割合 | 年金収入の目安(単身の場合) |
|---|---|---|
| 一般 | 1割 | 年収200万円未満 |
| 一定以上所得 | 2割 | 年収200万円以上 |
| 現役並み所得 | 3割 | 年収383万円以上 |
※2割負担の判断基準は「年金収入+その他の合計所得金額」で、課税所得28万円以上という条件もあります。
繰り下げで年金額が増えることで、自己負担割合が1割から2割に上がるケースがあります。
7-3. 住民税非課税ラインとの関係
住民税が非課税になるかどうかは、さまざまな行政サービスの適用に影響します(高額療養費の上限額、介護保険の負担軽減など)。
繰り下げで年金額が増えて住民税非課税ラインを超えると、これらの優遇措置を受けられなくなる場合があります。
損益分岐点は額面ベースで語られることがほとんどですが、税金・社会保険料を考慮した手取りベースで考えると、繰り下げの実質的なメリットは小さくなる場合があります。
年金事務所や税理士に相談し、手取り額でのシミュレーションを行うことをおすすめします。
8. 繰り上げ・繰り下げ受給の申請手続き
8-1. 繰り上げ受給の手続き
手続きの流れ
- 日本年金機構「ねんきんネット」で年金見込額を試算し、繰り上げた場合の年金額を確認する
- 年金事務所に電話または窓口で事前相談する(予約制)
- 繰上げ請求書を記入し、必要書類とともに年金事務所または街角の年金相談センターに提出する
- 請求の翌月分から減額された年金の受給が開始される
提出書類
- 老齢基礎年金・老齢厚生年金 支給繰上げ請求書
- 年金手帳または基礎年金番号通知書
- 本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)
- 受取先の金融機関の通帳またはキャッシュカード(口座情報が確認できるもの)
- 戸籍謄本または住民票(加給年金の対象者がいる場合)
提出先
最寄りの年金事務所または街角の年金相談センター
繰り上げ請求は一度行うと取消しできません。
必ず事前に年金事務所で減額後の年金額を試算し、今後の生活設計とあわせて十分に検討してから手続きしてください。
8-2. 繰り下げ受給の手続き
繰り下げ受給の手続きは、繰り上げに比べてシンプルです。
65歳到達時の手続き(繰り下げを希望する場合)
65歳の誕生月に日本年金機構から年金請求書(ハガキ形式)が届きます。
繰り下げを希望する場合は、ハガキの「繰下げ希望欄」に○を記入して返送するだけです。
老齢基礎年金と老齢厚生年金のどちらか一方だけ、または両方を繰り下げるかを選択できます。
受給を開始するときの手続き
繰り下げ受給を開始したい時期が来たら、繰下げ請求書(支給繰下げ申出書)を年金事務所または街角の年金相談センターに提出します。
繰り下げをやめて65歳からの年金をさかのぼって受け取る場合
繰り下げを希望して65歳時点で年金を請求しなかったものの、途中で「やはり通常通り受け取りたい」と考えが変わった場合、繰り下げ申出をせずに65歳時点の年金額でさかのぼって受け取ることもできます。
ただし、請求時点から5年以上前の分は時効により受け取れません。
70歳以降に請求する場合は、「特例的な繰下げみなし増額制度」が適用され、請求の5年前時点で繰り下げ申出があったとみなされた増額率で年金を受け取れます。
日本年金機構「ねんきんネット」では、繰り上げ・繰り下げした場合の年金見込額を試算できます。
手続き前に必ずシミュレーションしてみましょう。
8-3. 手続き前にやっておくべきこと
- 「ねんきんネット」に登録し、年金見込額を確認する
- 繰り上げ・繰り下げした場合の年金額を試算する
- 年金事務所に事前相談の予約を取る(繰り上げの場合は特に重要)
- 配偶者の年金受給状況を確認する(加給年金・遺族年金への影響)
- 雇用保険の受給予定がないか確認する(繰り上げの場合)
9. こんな人は繰り上げ・こんな人は繰り下げが向いている
9-1. 繰り上げ受給が向いている人
- 定年後に収入源がなく、生活費が必要な方
貯蓄が少なく、65歳まで収入を確保する手段がない場合は、繰り上げ受給が生活を支える選択肢になります。 - 健康上の不安がある方
持病や家族の病歴などから、平均寿命まで健康でいられるか不安がある場合、早めに受給を始めるのも合理的な判断です。
ただし、繰り上げ後は障害年金を請求できなくなる点に注意してください。 - 他の老後資金が限られている方
退職金や個人年金、貯蓄などが少なく、公的年金が主な収入源となる場合に検討できます。
9-2. 繰り下げ受給が向いている人
- 65歳以降も十分な収入がある方(働き続ける予定)
定年後も再雇用や自営業などで一定の収入があり、年金がなくても生活できる場合は、繰り下げて将来の年金額を増やすことが有効です。 - 家族に長寿の傾向がある方
ご両親や祖父母が長寿であった場合、損益分岐点を超える確率が高く、繰り下げのメリットを享受しやすいと言えます。 - 他の資産(退職金・貯蓄・投資等)で当面の生活が賄える方
繰り下げ待機中の生活費を年金以外で確保できるなら、繰り下げで増額された年金は将来の安心につながります。
9-3. 判断に迷ったら
年金の繰り上げ・繰り下げに「万人にとっての正解」はありません。
最終的にはご自身の健康状態、家計の状況、働き方を総合的に考慮して判断することが大切です。
- 日本年金機構「ねんきんネット」で繰り上げ・繰り下げの年金見込額をシミュレーション
- 最寄りの年金事務所で無料の年金相談を利用(電話予約制)
- ファイナンシャルプランナー(FP)や税理士への相談で、税金・社会保険料を含めた手取り額でのシミュレーションも有効
よくある質問(FAQ)
Q. 繰り上げ受給を申請した後に撤回できますか?
A. 撤回できません。
繰り上げ請求は一度行うと取消しや変更ができず、減額された年金額が一生続きます。
手続き前に年金事務所で十分に相談し、納得したうえで請求してください。
Q. 基礎年金だけ繰り上げて厚生年金は65歳からもらえますか?
A. 原則としてできません。
老齢基礎年金と老齢厚生年金は同時に繰り上げ請求する必要があります。
一方、繰り下げの場合は、基礎年金と厚生年金を別々に繰り下げることが可能です。
Q. 繰り下げ待機中に亡くなった場合、家族は年金を受け取れますか?
A. 遺族が未支給年金として請求できますが、時効に注意が必要です。
繰り下げ待機中に亡くなった場合、生計を同じくしていた遺族が未支給年金を請求できます。
この場合の年金額は65歳時点の本来の年金額(増額なし)で計算されます。
ただし、請求時点から5年以上前の分は時効により受け取れません。
たとえば73歳で亡くなった場合、遺族が速やかに請求すれば68歳〜73歳の5年分を受け取れますが、65歳〜68歳の3年分は時効消滅します。
Q. 繰り下げ受給と在職老齢年金の両方に該当する場合はどうなりますか?
A. 在職老齢年金で支給停止される部分は、繰り下げの増額対象になりません。
65歳以降も厚生年金に加入して高い給与を受けている場合、老齢厚生年金の一部が在職老齢年金の仕組みにより支給停止されます。
この支給停止される部分は繰り下げで増額されないため、繰り下げの実質的な増額幅は想定より小さくなります。
Q. ねんきんネットで繰り上げ・繰り下げのシミュレーションはできますか?
A. はい、できます。
日本年金機構「ねんきんネット」にログインすると、「年金見込額試算」機能で受給開始年齢を変更した場合の年金額を確認できます。
マイナンバーカードがあればマイナポータル経由でも利用可能です。
まとめ
年金の繰り上げ・繰り下げ受給は、受給開始時期を60歳〜75歳の間で自由に選択できる制度です。
- 繰り上げ受給(60〜64歳):
1ヶ月あたり0.4%減額(最大24%)。
早くもらえるが減額は一生続く - 繰り下げ受給(66〜75歳):
1ヶ月あたり0.7%増額(最大84%)。
増額は一生続くが待機中は無収入 - 損益分岐点:
おおよそ80〜82歳が目安。
ただし税金・社会保険料を考慮すると変わる - 手続き:
繰り上げは年金事務所に請求書を提出。
繰り下げは65歳時のハガキで希望を伝え、受給開始時に請求
「いつからもらうのが得か」に唯一の正解はありません。
ご自身の健康状態、家計の状況、働き方、家族構成を踏まえて判断してください。
迷ったら、まずは日本年金機構「ねんきんネット」で年金見込額を試算し、年金事務所の無料相談を活用しましょう。
