公務員の傷病手当金ガイド - 共済組合の申請・金額・退職後
「公務員でも傷病手当金はもらえるの?」
「共済組合に申請するって聞いたけど、手続きがよくわからない…」
「休職中の給料が減ったら、生活はどうなる?」
——こうした不安を抱える方は少なくありません。
公務員が病気やケガで長期間働けなくなった場合、共済組合から傷病手当金が支給されます。
民間の健康保険とは申請先や手続きが異なるため、公務員ならではの制度を正しく理解しておくことが大切です。
この手続きガイドでは、公務員の傷病手当金の支給条件・金額の計算方法・申請手続きから退職後の継続受給まで、わかりやすく解説します。
公務員の傷病手当金とは?共済組合の制度をわかりやすく解説
傷病手当金とは、病気やケガで働けなくなった場合に、一定期間にわたって給与の一部に相当する金額が支給される制度です。
民間の会社員は「協会けんぽ」や「健康保険組合」から支給されますが、公務員の場合は加入している共済組合が支給元になります。
公務員が加入する共済組合の種類
公務員の傷病手当金は、加入している共済組合に申請します。
主な共済組合は以下のとおりです。
- 国家公務員共済組合
各省庁ごとに組合が設置されています(例: 文部科学省共済組合、防衛省共済組合など)。 - 地方職員共済組合
都道府県の職員が加入する共済組合です。
各都道府県に支部があります。 - 市町村職員共済組合
市区町村の職員が加入する共済組合です。 - 公立学校共済組合
公立学校の教職員が加入する共済組合です。 - 警察共済組合
警察職員が加入する共済組合です。
傷病手当金の基本的な支給額や期間は法律で定められていますが、組合独自の上乗せ給付(附加金)の有無は共済組合ごとに異なります。
詳しくはご自身が加入している共済組合に確認してください。
民間の傷病手当金とのちがい(概要)
公務員には民間にはない病気休暇や有給の休職期間があるため、傷病手当金の支給が始まるタイミングが異なります。
民間では休業4日目から傷病手当金が支給されますが、公務員は病気休暇や有給休職で給与が出ている間は基本的に傷病手当金の支給対象になりません。
詳しい違いは「民間の傷病手当金との違い」のセクションで解説します。
公務員が休職したときの給付の流れ
公務員が病気やケガで長期間休む場合、給与や手当の支給は段階的に変わっていきます。
「いつから傷病手当金が出るのか」を理解するために、全体の流れを把握しておきましょう。
以下は一般的な地方公務員の例です。
自治体や省庁によって病気休暇の日数や休職中の給与割合が異なる場合があるため、所属先の規定を確認してください。
1. 病気休暇(最大90日〜180日)
まず、医師の診断書をもとに病気休暇を取得します。
病気休暇中の給与は以下のとおりです。
- 最初の90日間
給料は満額支給(通勤手当を除く)されます。 - 91日目以降(最大180日まで)
給料が半額に減額される自治体が多いです。
病気休暇中でも、傷病手当金の支給額が給与を上回る場合はその差額が支給されるケースがあります。
2. 休職(自治体により最長1年〜2年)
病気休暇の期間内に復帰できない場合、休職の発令を受けます。
- 休職中の給与
多くの自治体では給料の8割が支給されます。 ただし、自治体や省庁によって支給率や期間は異なります。 - 期間
一般的に最長1年〜2年程度です。
休職中も、傷病手当金の給付日額が報酬日額を上回れば、その差額が傷病手当金として支給されます。
3. 無給期間 — 傷病手当金の本格支給
有給の休職期間が終了すると無給になります。
この時点で、共済組合からの傷病手当金が生活を支える主な収入源となります。
傷病手当金は、有給休職中でも差額支給が始まった時点から支給期間のカウントが始まる場合があります。
無給になってから1年6か月ではなく、差額支給開始日から通算1年6か月です。
詳しくは加入している共済組合に確認してください。
傷病手当金の支給条件
傷病手当金を受給するには、以下の4つの条件をすべて満たす必要があります。
条件1. 公務外の傷病であること
業務中や通勤中の病気・ケガ(公務災害)は対象外です。
傷病手当金は、あくまでプライベートでの病気やケガ(私傷病)が対象です。
公務中のケガや業務に起因する病気は「公務災害補償」の対象となり、別の制度で補償されます。
条件2. 療養のため勤務できないこと
医師の診断に基づき、療養のために勤務ができない状態であることが必要です。
入院に限らず、自宅療養でも対象になります。
うつ病や適応障害などのメンタルヘルスの問題も、医師が「勤務不能」と診断すれば対象です。
条件3. 3日連続の待期期間を満たすこと
傷病手当金は、連続して3日間勤務できなかった日(待期期間)を経過した後、4日目から支給されます。
待期期間の3日間には、土日・祝日・有給休暇も含まれます。
たとえば「月曜休み→火曜出勤→水曜休み」のように間に出勤日が入ると、待期期間は完成しません。
3日間は途切れずに連続している必要があります。
条件4. 報酬が支給されない(または傷病手当金より少ない)こと
傷病手当金は、勤務に対する報酬が支給されない期間に支給されます。
病気休暇中や有給の休職期間中で給与が出ている場合は、原則として傷病手当金は支給されません。
ただし、傷病手当金の日額が報酬の日額を上回る場合は、その差額が支給されます。
傷病手当金はいくら?計算方法と具体例
計算式
傷病手当金の1日あたりの支給額は、以下の計算式で求めます。
給付日額 = 標準報酬月額(直近12か月の平均) × 1/22 × 2/3
- 標準報酬月額
支給開始日の属する月以前の直近の継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均した金額です。 - 1/22
1か月の勤務日数(22日)で割って日額を算出します(10円未満四捨五入)。 - 2/3
日額の3分の2が支給額です(円位未満四捨五入)。
共済組合への加入期間が12か月に満たない場合は、①その期間の標準報酬月額の平均額 ②全共済組合員の平均標準報酬月額のいずれか少ない方で計算されます。
民間の傷病手当金は「標準報酬月額 ÷ 30 × 2/3」で計算します。
共済組合では「÷ 22」のため、1日あたりの支給額は共済組合の方が高くなる傾向があります。
ただし共済組合の傷病手当金は週休日(土曜・日曜)は支給対象外のため、月額ベースではおおむね同程度になります。
具体的な計算例
標準報酬月額ごとの傷病手当金の目安は以下のとおりです。
| 標準報酬月額 | 日額(1/22) | 給付日額(2/3) | 月額の目安(22日分) |
|---|---|---|---|
| 30万円 | 13,640円 | 9,093円 | 約20万円 |
| 38万円 | 17,270円 | 11,513円 | 約25.3万円 |
| 50万円 | 22,730円 | 15,153円 | 約33.3万円 |
支給額をシミュレーションしてみよう
以下のシミュレーターに標準報酬月額を入力して、傷病手当金のおおよその支給額を確認してみましょう。
報酬との調整(有給休職中のケース)
有給の休職期間中(給料の8割支給)は、傷病手当金の給付日額と報酬日額を比較して、以下のように調整されます。
- 給付日額 > 報酬日額の場合
差額が傷病手当金として支給されます。 - 給付日額 ≦ 報酬日額の場合
傷病手当金は支給されません。
支給期間はいつからいつまで?
法定の支給期間
傷病手当金の支給期間は、支給を開始した日から通算して1年6か月です。
結核性の傷病については、最長3年に延長されます。
2022年(令和4年)の法改正により、支給期間は「通算」でカウントされるようになりました。
途中で復帰して出勤した期間は支給期間に算入されず、再び休業した場合はカウントが再開されます。
ただし、報酬が傷病手当金の額以上で不支給となった日も、一度カウントが始まった後は支給期間に算入される点に注意してください。
傷病手当金附加金(共済組合独自の上乗せ)
法定の傷病手当金の支給期間が終了した後も、同一の傷病で引き続き勤務できない場合、共済組合独自の傷病手当金附加金が支給される場合があります。
- 支給期間
支給を始めた日から6か月間 - 支給額
傷病手当金と同額(給付日額の2/3)
防衛省共済組合、林野庁共済組合、一部の地方公務員共済組合では、傷病手当金附加金が設けられていない場合があります。
ご自身の共済組合に制度の有無を確認してください。
支給期間終了後の選択肢
傷病手当金(および附加金)の支給期間が終了しても復帰が難しい場合は、障害年金の申請を検討しましょう。
障害年金は、病気やケガで日常生活や仕事に支障がある場合に、年金として長期間にわたって支給される制度です。
傷病手当金の申請手続きと必要書類
初回の申請に必要な書類
傷病手当金を申請するには、以下の書類を共済組合に提出します。
- 傷病手当金・傷病手当金附加金請求書
共済組合所定の様式です。 組合員本人が記入します。 - 医師の診断書(または請求書の医師記入欄)
療養の開始日から現在までの勤務不能期間を医師に証明してもらいます。 - 出勤簿(休暇簿)の写し
休み始めた日がわかる書類です(初回のみ)。 - 同意書
個人情報の取り扱いに関する同意書です(共済組合による)。
2回目以降の申請
2回目以降は、以下の書類を毎月提出します。
- 傷病手当金・傷病手当金附加金請求書
- 医師の診断書(当該月分)
傷病手当金の請求は月単位で行うのが一般的です。
毎月の請求書に医師の証明を受けて、所属先の共済事務担当課を通じて共済組合に提出します。
申請の流れ
- 所属先の共済事務担当課から請求書の様式を入手する
- 請求書の組合員記入欄を記入する
- 主治医に診断書の記入(または請求書の医師記入欄の記入)を依頼する
- 必要書類をそろえて所属先の共済事務担当課に提出する
- 共済組合で審査が行われる
- 審査が完了したら、指定口座に傷病手当金が振り込まれる
共済組合での審査には通常2〜4週間程度かかります。
初回は書類の不備確認などで時間がかかる場合もあるため、早めの申請を心がけましょう。
所属先の共済組合の窓口を調べる
共済組合の窓口は自治体や所属によって異なります。
以下のウィジェットで、お住まいの地域の共済組合について調べることができます。
退職後も傷病手当金を受け取れる?継続受給の条件
退職後も傷病手当金を継続して受給するには、以下の3つの条件をすべて満たす必要があります。
条件1. 退職日までに1年以上継続して組合員であること
退職日の時点で、共済組合に1年以上継続して加入していることが必要です。
途中で別の共済組合や健康保険に加入していた期間は通算されません。
条件2. 退職時に傷病手当金を受給している(または受給要件を満たしている)こと
退職日の時点で、すでに傷病手当金を受給しているか、または待期期間(3日間)を完成させて労務不能の状態であることが必要です。
報酬との調整により実際の支給がされていなくても、受給要件を満たしていれば対象になります。
退職日に出勤してしまうと、「退職時に労務不能」という条件を満たさなくなり、退職後の傷病手当金を受け取れなくなります。
退職日は必ず休業してください。
条件3. 退職後も同一の傷病で引き続き就労不能であること
退職後も、在職中と同じ病気やケガで引き続き働けない状態が続いている必要があります。
別の病気やケガが原因の場合は、退職後の傷病手当金の対象にはなりません。
退職後の注意点
- 傷病手当金附加金は退職後は支給されません。
法定の傷病手当金(通算1年6か月)の残余期間のみが対象です。 - 退職後に他の健康保険(協会けんぽなど)に加入した場合は不支給になります。
国民健康保険に加入しても傷病手当金には影響しませんが、他の被用者保険に加入すると共済組合からの傷病手当金は停止されます。 - 障害年金や老齢年金との調整があります。
障害共済年金や退職共済年金を受給している場合、年金額との差額のみが支給されるか、不支給になります。
退職後の健康保険の選び方については、以下の手続きガイドも参考にしてください。
民間の傷病手当金との違い
公務員(共済組合)と民間(健康保険)の傷病手当金には、以下のような違いがあります。
| 比較項目 | 公務員(共済組合) | 民間(健康保険) |
|---|---|---|
| 保険者 | 各共済組合 | 協会けんぽ・健康保険組合 |
| 支給額の計算 | 標準報酬月額 × 1/22 × 2/3 | 標準報酬日額(÷30) × 2/3 |
| 支給期間 | 通算1年6か月 | 通算1年6か月 |
| 附加金(上乗せ給付) | あり(組合による。最大+6か月) | 原則なし(一部の健保組合を除く) |
| 病気休暇制度 | あり(最大90〜180日・満額〜半額) | なし(有給休暇のみ) |
| 有給休職制度 | あり(最長1〜2年・8割支給) | なし |
| 退職後の継続受給 | 1年以上加入で可 | 1年以上加入で可 |
| 申請先 | 所属先の共済事務担当課 | 勤務先の健康保険担当部署 |
公務員の大きな特徴は、傷病手当金の支給開始前に病気休暇(満額支給)と有給休職(8割支給)の期間があることです。
民間の傷病手当金について詳しく知りたい方は、以下の手続きガイドをご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q. うつ病や適応障害でも傷病手当金は受給できますか?
A. はい、受給できます。
うつ病や適応障害などのメンタルヘルスの問題であっても、医師が「療養のため勤務不能」と診断すれば傷病手当金の対象になります。
実際に、公務員の傷病手当金の申請理由としてメンタルヘルス関連は多くを占めています。
Q. 国家公務員と地方公務員で制度は違いますか?
A. 基本的な仕組みは同じですが、細部が異なる場合があります。
傷病手当金の支給額(標準報酬月額×1/22×2/3)や支給期間(通算1年6か月)は、法律で定められており国家公務員・地方公務員を問わず共通です。
ただし、以下の点は所属する共済組合や自治体によって異なります。
- 傷病手当金附加金の有無と期間
- 病気休暇の日数(90日・180日など)
- 有給休職期間の長さと給与の支給率
Q. 傷病手当金の支給期間が終わったらどうなりますか?
A. 附加金(最大6か月)の受給や、障害年金への移行を検討しましょう。
傷病手当金の支給期間(通算1年6か月)が終了しても復帰が難しい場合は、以下の選択肢があります。
- 傷病手当金附加金
共済組合によっては、法定の支給期間終了後にさらに最大6か月の附加金が支給されます。 - 障害年金の申請
病気やケガにより日常生活や仕事に長期的な支障がある場合、障害年金を受給できる可能性があります。 - 生活保護や社会福祉制度の活用
他の収入源がなく生活が困難な場合は、自治体の福祉窓口に相談しましょう。
Q. 共済組合の傷病手当金に税金はかかりますか?
A. かかりません。
傷病手当金は非課税所得です。
所得税・住民税の対象にはなりません。
確定申告で申告する必要もありません。
Q. 非常勤職員(会計年度任用職員)も傷病手当金を受けられますか?
A. 共済組合に加入している非常勤職員は受給できます。
地方公務員共済組合法の規定により、共済組合の組合員であれば非常勤職員でも傷病手当金を受給できます。
支給額は、正規職員と同じく「標準報酬月額 × 1/22 × 2/3」の計算式で求められます。
ただし、共済組合に加入していない短時間勤務の非常勤職員は対象外となるため、ご自身の加入状況を確認してください。
まとめ
公務員の傷病手当金について、重要なポイントを整理します。
- 公務員の傷病手当金は共済組合に申請する
- 支給額は標準報酬月額 × 1/22 × 2/3(民間とは計算式が異なる)
- 支給期間は通算1年6か月(結核性は3年)
- 公務員には病気休暇(満額)→有給休職(8割)→傷病手当金(2/3)という段階的な給付の流れがある
- 退職後も3つの条件(1年以上加入・退職時に受給要件充足・同一傷病で就労不能)を満たせば継続受給できる
- 支給期間終了後は傷病手当金附加金(組合による)や障害年金の申請を検討する
病気やケガで長期間働けなくなることは、誰にでも起こりうることです。
制度を正しく理解して、いざというときに適切な手続きを進められるよう、この手続きガイドを参考にしてください。