副業の確定申告は事業所得?雑所得?判断基準と届出の手続き
「副業で収入を得たけど、事業所得と雑所得のどちらで申告すればいいの?」
「フリマアプリの売上は確定申告が必要?」
「事業所得にすると節税できるって本当?」
——副業やフリマアプリで収入を得る人が増えるなか、確定申告時の所得区分に悩む声が後を絶ちません。
事業所得と雑所得では、損益通算や青色申告特別控除など税制上の扱いが大きく異なり、選択を誤ると数万円〜数十万円の損になることもあります。
この手続きガイドでは、令和4年の通達改正を踏まえた最新の判断基準をもとに、あなたの副業収入がどちらに該当するかをケース別に解説します。
事業所得と雑所得の基本的な違い
まず、事業所得と雑所得がそれぞれどのような所得なのか、基本的な定義と税務上の違いを確認しましょう。
事業所得とは
事業所得とは、農業・漁業・製造業・小売業・サービス業など「事業」を通じて得た所得です。
個人事業主やフリーランスが本業として行う活動の収入が該当します。
会社員であっても、副業が「社会通念上、事業と認められる程度」で行われていれば事業所得として申告できます。
雑所得とは
雑所得とは、給与所得・事業所得・不動産所得など他の9種類の所得区分のいずれにも当てはまらない所得です。
国税庁「No.1500 雑所得」では、副業に係る所得(原稿料やシェアリングエコノミーに係る所得など)が雑所得の例として挙げられています。
税務上の違い比較
| 項目 | 事業所得 | 雑所得 |
|---|---|---|
| 青色申告特別控除(最大65万円) | ○ | × |
| 損益通算(赤字を給与所得と相殺) | ○ | × |
| 赤字の3年間繰越控除 | ○ | × |
| 経費の計上 | ○ | ○ |
| 専従者給与の計上 | ○ | × |
| 少額減価償却資産の特例 | ○ | × |
| 帳簿の作成義務 | あり | 前々年の収入300万円超で書類保存義務 |
事業所得のほうが税制上の優遇が多いため「何とか事業所得にしたい」と考える人が多い一方、要件を満たさないまま事業所得で申告すると税務署から修正を求められるリスクがあります。
事業所得か雑所得かの判断基準
「自分の副業収入はどちらで申告すべきか」を判断するための基準を解説します。
令和4年10月7日に国税庁が改正した所得税基本通達(通達35-2)によって、判断基準がより明確化されました。
原則: 社会通念による判定
最も基本的な判定基準は「その所得を得るための活動が、社会通念に照らして事業と呼べる程度で行われているか」です。
具体的には、以下の要素を総合的に考慮します。
- 営利性・有償性
利益を目的として対価を得ているか - 継続性・反復性
一時的ではなく、繰り返し行っているか - 自己の計算と危険における企業遂行性
自分の判断と責任でリスクを負って行っているか - 精神的・肉体的労力の程度
相応の時間と労力を費やしているか - 人的・物的設備の有無
事業用の設備や人員を確保しているか - 社会的地位・生活状況
職業として認識されうるか
帳簿保存の有無が重要(令和4年通達改正)
令和4年の通達改正では、当初「収入300万円以下の副業は一律雑所得」とする案がパブリックコメントで批判を受け、最終的に帳簿書類の保存の有無が判断基準の中心に据えられました。
帳簿書類を作成・保存している場合は概ね事業所得として認められます。
帳簿書類の保存がない場合は、原則として業務に係る雑所得として扱われます。
ただし、収入金額が300万円を超えており事業と認められる事実がある場合は除きます。
保存すべき帳簿の種類
事業所得として認められるために保存すべき帳簿は、記帳方法によって異なります。
- 複式簿記の場合
仕訳帳、総勘定元帳 - 簡易簿記の場合
現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳
帳簿の保存期間は7年間です。
freeeやマネーフォワードなどのクラウド会計ソフトを利用すれば、自動で複式簿記の帳簿が作成されるため、簿記の知識がなくても対応できます。
収入300万円基準と例外
帳簿を保存していても、以下の場合は事業所得と認められるか個別に判断されます。
- 収入金額が僅少と認められる場合
3年程度の期間、収入が300万円以下で、かつ本業(主たる収入)に対する割合が10%未満の場合 - 営利性が認められない場合
3年程度連続して赤字であり、赤字解消に向けた取り組みを行っていない場合
判定フローチャート
以下の順番で確認してください。
- 帳簿書類を作成・保存しているか?
- いいえ → 収入300万円超かつ事業性あり? → いいえ → 雑所得
- はい → 次へ
- 収入金額が僅少(300万円以下かつ本業の10%未満)か?
- はい → 個別判断(雑所得の可能性あり)
- いいえ → 次へ
- 3年以上連続赤字で改善の取り組みなし?
- はい → 個別判断(雑所得の可能性あり)
- いいえ → 事業所得
ケース別の所得区分判定
実際によくある副業のケースごとに、事業所得と雑所得のどちらに該当しやすいかを解説します。
副業(ライティング・コンサル・プログラミング等)
- 事業所得になりやすいケース
継続的に取引先があり、年間収入が一定以上で、帳簿を作成・保存している場合 - 雑所得になりやすいケース
単発・不定期の依頼で、年間収入が少額(目安:本業の10%未満かつ300万円以下)の場合
会社員が副業でライティングやプログラミングを行い、帳簿を付けていれば事業所得として認められる可能性があります。
ただし、赤字を意図的に作って給与所得と損益通算する目的だけの場合、税務署に否認されるリスクがあります。
フリマアプリ(メルカリ・ラクマ等)
フリマアプリでの売却は、何を売っているかで課税関係が大きく異なります。
- 不用品(生活用動産)の売却
着なくなった服、使わなくなった家電などの不用品は「生活に通常必要な動産」に該当し、非課税(所得税がかからない)です。
金額の大小にかかわらず確定申告は不要です。 - 1点30万円超の貴金属・美術品
30万円を超える貴金属、宝石、美術品などの売却益は譲渡所得として課税対象になります。 - 仕入れて販売(転売・せどり)
商品を仕入れて利益を上乗せして販売する場合は、事業所得または雑所得に該当します。
帳簿をつけて継続的に行っていれば事業所得、そうでなければ雑所得です。
クラウドソーシング(クラウドワークス・ランサーズ等)
クラウドソーシングで得た収入は、基本的に雑所得として申告するケースが多いです。
ただし、以下の条件を満たす場合は事業所得として認められる可能性があります。
- 継続的に案件を受注し、安定した収入がある
- 帳簿を作成・保存している
- 開業届を提出している
- 作業に相応の時間と設備を投じている
SNS・YouTube・アフィリエイト収入
- 雑所得になりやすいケース
趣味の延長で行い、収入が少額で不安定な場合 - 事業所得になりやすいケース
専業または本格的に活動し、広告収入が安定して得られ、帳簿を作成している場合
事業所得で申告するメリットと条件
副業収入を事業所得として申告すると、以下のような税制上のメリットがあります。
メリット1: 青色申告特別控除(最大65万円)
青色申告を選択すると、所得金額から最大65万円を控除できます。
たとえば副業の所得が100万円あった場合、青色申告特別控除を適用すれば課税対象は35万円に減ります。
控除額は記帳方法によって異なります。
- 65万円控除
複式簿記で記帳し、e-Taxで申告(または電子帳簿保存)する場合 - 55万円控除
複式簿記で記帳し、紙で申告する場合 - 10万円控除
簡易簿記で記帳する場合
メリット2: 損益通算
事業所得が赤字の場合、その赤字を給与所得など他の所得と相殺(損益通算)できます。
たとえば副業で50万円の赤字が出た場合、本業の給与所得から50万円を差し引いて税額を計算できるため、所得税が還付される可能性があります。
赤字を意図的に作って節税する目的で副業を事業所得として申告すると、税務調査で否認されるリスクがあります。
国税庁の通達では「3年以上連続赤字で改善の取り組みがない場合」は事業性を否定される可能性があるとされています。
メリット3: 赤字の3年間繰越控除
青色申告をしている場合、事業所得の赤字を翌年以降3年間にわたって繰り越し、将来の黒字と相殺できます。
事業を始めたばかりで初年度に赤字が出ても、翌年以降の利益から差し引けるため長期的な節税が可能です。
事業所得にするための届出
事業所得として申告するために必要な届出は以下のとおりです。
- 開業届(個人事業の開業届出書)
事業開始日から1か月以内に所轄の税務署に提出(※令和9年(2027年)1月以降の開業は翌年の確定申告期限(3月15日)までに延長予定) - 青色申告承認申請書
青色申告をしようとする年の3月15日まで(その年の1月16日以後に新たに開業した場合は開業日から2か月以内)に提出
開業届と青色申告承認申請書は同時に提出するのが効率的です。
e-Taxまたは国税庁の確定申告特集ページからオンラインで提出できます。
雑所得で申告する場合の注意点
事業所得の要件を満たさない副業収入は、雑所得として申告します。
雑所得でも経費の計上は可能ですが、事業所得と比べて不利な点があります。
雑所得のデメリット
- 損益通算ができない
雑所得が赤字でも、給与所得など他の所得と相殺できません - 赤字の繰越控除ができない
翌年以降に赤字を繰り越すことができません - 青色申告特別控除が使えない
最大65万円の控除が受けられません - 専従者給与が使えない
家族への給与を経費として計上できません
雑所得でも経費は計上できる
雑所得であっても、収入を得るために直接かかった費用は必要経費として控除できます。
- パソコン・スマートフォン(業務使用分を按分)
- 通信費(インターネット・携帯電話の業務使用分)
- 書籍・教材費
- 交通費
- 消耗品費(梱包材など)
収入300万円超の場合の書類保存義務
前々年の業務に係る雑所得の収入金額が300万円を超える場合は、現金預金取引等関係書類(請求書・領収書など)を保存する義務があります。
さらに、前々年の収入金額が1,000万円を超える場合は、確定申告時に収支内訳書の添付が必要です。
確定申告の具体的な手順
雑所得の確定申告は、確定申告書の「雑所得(業務)」欄に収入金額と必要経費を記入して行います。
具体的なe-Taxでの入力方法や会社にバレない住民税の設定方法は、以下の手続きガイドで詳しく解説しています。
確定申告が不要なケース
副業で収入を得ていても、以下の場合は確定申告が不要です。
副業所得20万円以下(所得税の申告不要)
会社員(給与所得者)で、副業の所得(収入-経費)が年間20万円以下の場合、所得税の確定申告は不要です。
所得税の確定申告が不要でも、住民税の申告は必要です。
住民税には「20万円以下で申告不要」という特例がありません。
お住まいの市区町村役場で住民税の申告を行ってください。
フリマアプリで不用品を売った場合
着なくなった服、読み終わった本、使わなくなった家電などの生活用動産(生活に通常必要な資産)を売却した利益は非課税です。
売却金額がいくらであっても確定申告は不要です。
ただし以下の場合は課税対象になります。
- 1点30万円を超える貴金属・宝石・美術品の売却
- 仕入れて利益を上乗せして販売する転売行為
確定申告が必要な場合のまとめ
| 状況 | 確定申告 |
|---|---|
| 副業所得が20万円超 | 必要 |
| 副業所得が20万円以下 | 不要(住民税申告は必要) |
| 不用品の売却のみ | 不要 |
| 転売で所得20万円超 | 必要 |
| 2か所以上から給与を受けている | 必要 |
| 医療費控除等の還付申告をする | 副業所得も含めて申告が必要 |
よくある質問(FAQ)
Q. 副業収入が20万円以下なら何もしなくていい?
A. 所得税の確定申告は不要ですが、住民税の申告は必要です。
所得税には「給与所得者で副業所得が20万円以下なら確定申告不要」という特例がありますが、住民税にはこの特例がありません。
住民税の申告をしないと、後日市区町村から問い合わせが来る場合があります。
お住まいの市区町村の窓口または郵送で住民税の申告を行ってください。
Q. メルカリで不用品を売ったら確定申告は必要?
A. 生活用品(不用品)の売却は非課税なので、確定申告は不要です。
洋服、本、家電など日常生活で使っていたものの売却益は「生活に通常必要な動産の譲渡」として所得税が非課税になります。
ただし、1点30万円を超える貴金属・美術品の売却や、商品を仕入れて販売する転売行為は課税対象です。
Q. 会社員が事業所得で申告すると会社にバレる?
A. 確定申告時に住民税の徴収方法を「自分で納付(普通徴収)」にすれば、バレるリスクを下げられます。
副業収入を事業所得として申告する場合、確定申告書の第二表で住民税の徴収方法を「自分で納付」(普通徴収)にチェックしてください。
これにより、副業分の住民税は会社の給与天引き(特別徴収)ではなく自宅に届く納付書で支払えるため、会社に通知されません。
ただし、自治体によっては普通徴収に対応していない場合もあるため、事前に市区町村に確認することをおすすめします。
Q. 開業届を出さなくても事業所得で申告できる?
A. 開業届の提出は事業所得の絶対条件ではありませんが、提出しておくことを強くおすすめします。
法律上、開業届を出していなくても事業所得として申告すること自体は可能です。
しかし、帳簿書類の保存が事業所得の判断基準として重視されるため、開業届を出して青色申告承認申請を行い、帳簿を整備しておくことで「事業として行っている」という客観的な証拠になります。
Q. 副業で赤字が出たら給与所得と相殺できる?
A. 事業所得として認められれば損益通算で相殺できます。雑所得では相殺できません。
事業所得の赤字は、給与所得などの他の所得から差し引く(損益通算する)ことが可能です。
ただし、意図的に赤字を作って節税する目的で事業所得として申告すると、税務調査で否認されるリスクがあります。
3年以上連続して赤字で、改善に向けた取り組みが見られない場合は「営利性なし」と判断され、雑所得に区分変更される可能性があります。
まとめ
事業所得と雑所得の判断は、令和4年の通達改正により帳簿書類の保存が大きなポイントになりました。
以下の3点を押さえておきましょう。
- 帳簿を作成・保存していれば概ね事業所得として認められる(ただし僅少・非営利の例外あり)
- 帳簿がなければ原則として雑所得に区分される
- 事業所得を選ぶなら開業届と青色申告承認申請を提出し、帳簿を整備しておくことが重要
副業収入がまだ少額で単発的な段階では雑所得で問題ありません。
収入が安定し、継続的に活動する意思がある場合は、開業届を出して事業所得として申告することで、青色申告特別控除(最大65万円)や損益通算などの税制メリットを活用できます。