開業届の出し方を解説!個人事業主の届出手順・青色申告・必要書類
「フリーランスになったけど、開業届ってどうやって出すの?」
「副業を始めたけど、開業届は必要?」
と疑問に思っていませんか?
開業届(正式名称: 個人事業の開業・廃業等届出書)は、個人事業を始めたことを税務署に届け出る書類です。
提出方法はe-Tax(オンライン)・税務署の窓口・郵送の3パターンがあり、費用は無料、手続き自体も数分で完了します。
また、2026年1月からの法改正により、提出期限が従来の「開業から1か月以内」から「その年の確定申告期限まで」に延長されました。
この手続きガイドでは、開業届の書き方・出し方・必要書類から、節税効果の大きい青色申告承認申請書の同時提出まで、個人事業主のスタートに必要な届出を一つずつ解説します。
1. 開業届とは
開業届とは、個人事業を新たに始めたことを税務署に届け出るための書類です。
正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」といいます。
フリーランス、自営業、副業で事業を営む場合など、新たに事業所得・不動産所得・山林所得を生じる事業を始めた人は、この届出を提出する義務があります(所得税法第229条)。
1-1. 提出期限は「確定申告期限まで」に変わった
2026年(令和8年)1月1日以降に開始した事業については、開業届の提出期限が変更されました。
- 改正前:
事業開始から1か月以内 - 改正後:
事業の開始等の日が属する年分の確定申告期限まで(翌年3月15日)
たとえば2026年4月に開業した場合、2027年3月15日(令和8年分の確定申告期限)までに提出すればOKです。
この改正は、副業やフリーランスなど「開業日が明確に定めにくい」ケースが増えたことを踏まえたものです。
開業届はあくまで「事業開始を税務署に届け出る」管理用の届出であり、提出が遅れても税額が変わったり、罰則が科されたりすることはありません。
ただし、後述する青色申告承認申請書の提出期限は従来どおりですので、開業届だけに注目して安心しないよう注意してください。
1-2. 提出にかかる費用
開業届の提出は無料です。
届出書のダウンロードにも費用はかかりません。
2. 開業届を出すメリット
開業届を提出しなくても事業自体は行えますが、提出することで以下のメリットがあります。
2-1. 青色申告で最大65万円の所得控除を受けられる
開業届を提出し、あわせて「青色申告承認申請書」を出すことで、確定申告時に青色申告特別控除(最大65万円)を受けられます。
たとえば、年間の事業所得が400万円の場合、65万円の控除を受けると課税所得は335万円に。
所得税率20%で計算すると、約13万円の節税効果になります。
開業届を出さない(または青色申告承認申請書を出さない)場合は、自動的に白色申告になります。
白色申告にも基礎控除はありますが、青色申告特別控除(65万円)は受けられません。
2-2. 屋号入りの銀行口座を開設できる
開業届に屋号を記載して提出すると、その屋号名義の銀行口座を開設できるようになります。
事業用とプライベート用の口座を分けることで、経理作業が楽になります。
2-3. 小規模企業共済に加入できる
小規模企業共済は、個人事業主のための退職金積立制度です。
開業届の控え(またはリーフレット)が加入手続きに必要になります。
掛金は月額1,000円〜70,000円の範囲で設定でき、全額が所得控除の対象です。
2-4. 融資や補助金の申請がしやすくなる
開業届は「事業を営んでいること」の証明になります。
日本政策金融公庫の融資申請や、小規模事業者持続化補助金の申請時にも、開業届の提出が必要です。
3. 開業届を出す前に知っておきたい注意点
メリットが多い開業届ですが、提出前に確認しておくべき点もあります。
3-1. 失業手当(雇用保険)の受給に影響する
失業手当は「就職活動中の人」に支給されるため、開業届を提出すると受給できなくなる場合があります。
ただし、「事業開始等による受給期間の特例」を利用すれば、廃業後に改めて失業手当を受け取れる可能性があります。
退職後に開業を考えている方は、11-2. 失業手当の受給期間の特例を確認してください。
3-2. 扶養から外れる場合がある
配偶者や親の扶養に入っている方は、開業届を出して事業所得が一定額を超えると、扶養から外れる可能性があります。
税法上の扶養は年間所得48万円以下(給与のみなら103万円以下)、社会保険上の扶養は年間収入130万円未満が目安です。
健康保険組合によっては「開業届を出した時点で扶養から外す」というルールを設けている場合もあるため、事前に確認しましょう。
3-3. 副業の場合は就業規則を確認
会社員が副業で開業届を出す場合は、勤務先の就業規則を確認してください。
副業を禁止・制限している企業もあります。
なお、開業届を出したこと自体が勤務先に直接通知されることはありません。
4. 開業届の提出に必要なもの
開業届の提出に必要なものは、提出方法によって異なります。
4-1. 共通で必要なもの
-
個人事業の開業・廃業等届出書
国税庁のサイトからPDFをダウンロードするか、税務署の窓口で入手できます。 e-Taxの場合はソフト上で作成します。 -
マイナンバー(個人番号)が確認できるもの
マイナンバーカード、通知カード、マイナンバー記載の住民票のいずれか
4-2. 提出方法別の必要物
| 提出方法 | 追加で必要なもの |
|---|---|
| e-Tax(オンライン) | マイナンバーカード + ICカードリーダー(またはスマホ) |
| 税務署の窓口 | 本人確認書類(運転免許証、パスポート等)、印鑑(任意) |
| 郵送 | 本人確認書類のコピー、返信用封筒+切手(リーフレット希望時) |
マイナンバーカード1枚で「マイナンバーの確認」と「本人確認」の両方が完了します。
e-Taxでの提出にも必要なので、まだ持っていない方は取得を検討してください。
5. 開業届の書き方
開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)の主な記入項目を解説します。
5-1. 主な記入項目
| 項目 | 記入内容 |
|---|---|
| 提出先 | 納税地を管轄する税務署名 |
| 納税地 | 自宅住所(原則)。事業所が別にある場合は事業所の住所も記入 |
| 氏名・生年月日 | 本人の情報 |
| 個人番号 | マイナンバー(12桁) |
| 職業 | 事業内容に合った職業名(例: デザイナー、ライター、飲食業) |
| 屋号 | 事業の名前(空欄でもOK) |
| 届出の区分 | 「開業」にチェック |
| 所得の種類 | 「事業(農業)所得」「不動産所得」「山林所得」から選択 |
| 開業日 | 事業を開始した日 |
| 事業所等を新増設、移転、廃止した場合 | 新規開業の場合は空欄 |
| 廃業の事由が法人の設立に伴うものである場合 | 新規開業の場合は空欄 |
| 届出書の提出の有無 | 青色申告承認申請書を同時提出する場合は「有」 |
| 事業の概要 | 具体的な事業内容(例: Webサイトの制作・運営) |
| 給与等の支払の状況 | 従業員を雇う場合のみ記入 |
以下、つまずきやすい項目を補足します。
納税地
「住所地」「居所地」「事業所等」の3つから選択し、該当する住所を記入します。
- 住所地
生活の本拠となる場所(=住民票がある自宅の住所)です。
大半の方はこちらを選択します。 - 居所地
住所(住民票)は日本にないが、日本国内に活動拠点がある場合に選択します。
海外在住で日本国内に仕事場がある人などが該当します。 - 事業所等
自宅とは別に店舗や事務所があり、そちらを納税地にしたい場合に選択します。
自宅とは別に事業所がある場合は、下段の「上記以外の住所地・事業所等」欄にもう一方の住所を記入してください。
自宅兼事務所の場合は「住所地」を選び、下段は空欄で問題ありません。
所得の種類
「事業(農業)所得」「不動産所得」「山林所得」の3つから、該当するものにチェックを入れます。
- 事業(農業)所得
フリーランス・自営業など、不動産と山林以外の事業所得が該当します。
大半の個人事業主はこちらにチェックします。
農業を営む場合も同じ欄です。 - 不動産所得
アパート・マンションの賃貸など、不動産の貸付による所得がある場合に選択します。 - 山林所得
山林の伐採や譲渡による所得がある場合に選択します。
複数の所得がある場合は、該当するすべてにチェックを入れてください。
事業所等を新増設、移転、廃止した場合 / 廃業の事由が法人の設立に伴うものである場合
どちらも新規開業の場合は空欄(記入不要)です。
「事業所等を新増設〜」の欄は、すでに事業を営んでいる人が事業所を追加・移転・廃止するときに使用します。
「廃業の事由が法人の設立〜」の欄は、個人事業を廃業して法人化(法人成り)するときに記入する欄です。
新たに開業届を出す場面では、どちらも該当しないため空欄のまま提出してください。
開業・廃業に伴う届出書の提出の有無
開業届と同時に提出する関連届出書がある場合に「有」にチェックします。
チェック欄は2つあります。
- 「青色申告承認申請書」又は「青色申告の取りやめ届出書」
青色申告承認申請書を同時提出する場合は「有」にチェックします。
開業時に一緒に提出するのがおすすめです(→7. 青色申告承認申請書を一緒に出そう)。 - 消費税に関する「課税事業者選択届出書」又は「事業廃止届出書」
インボイス登録等で課税事業者を選択する場合は「有」にチェックします。
開業直後の免税事業者であれば「無」で問題ありません。
給与等の支払の状況
従業員(家族含む)を雇って給与を支払う予定がある場合に記入する欄です。
一人で事業を行う場合は空欄のままで構いません。
記入欄は以下の4項目です。
| 項目 | 記入内容 |
|---|---|
| 専従者(区分) | 家族従業員(青色事業専従者)の人数を記入 |
| 使用人(区分) | 家族以外の従業員(パート・アルバイト含む)の人数を記入 |
| 給与の定め方 | 「月給」「日給」「時給」など、給与の支給形態を記入 |
| 税額の有無 | 給与から源泉徴収をする場合は「有」にチェック |
「区分」の専従者と使用人の違い
- 専従者
生計を一にする配偶者や親族で、その事業に専ら従事する人のことです。
青色申告の場合、「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出すれば支払った給与を全額経費にできます。 - 使用人
専従者以外のすべての従業員(正社員・パート・アルバイト)です。
「税額の有無」の判断基準
給与を支払う場合は、原則として所得税の源泉徴収が必要なため「有」にチェックします。
ただし、常時2人以下の家事使用人のみに給与を支払う場合は源泉徴収義務がないため「無」にできます。
従業員を雇う予定がなければ、給与等の支払の状況は空欄のまま提出できます。
後から従業員を雇い始めた場合は、別途「給与支払事務所等の開設届出書」を提出します(→8-1. 従業員を雇う場合の届出)。
5-2. 開業日の決め方
開業日は「事業を開始した日」を記入します。
明確な日付がない場合は、以下のような日を目安にしてください。
- 初めて売上が発生した日
- 事業のための準備を本格的に始めた日
- 営業を開始した日
副業やフリーランスのように明確な開業日がない場合は、自分で妥当と考える日を設定して問題ありません。
なお、未来の日付(これから開業する日)を記入して事前に提出することも可能です。
5-3. 屋号について
屋号とは、事業の名前のことです。
「〇〇デザイン事務所」「△△商店」のような名前を自由に付けられます。
屋号は空欄のまま提出しても問題ありません。
後から屋号を付けたくなった場合は、確定申告書に屋号を記入すれば登録されます。
6. 開業届の出し方(提出方法)
開業届は、以下の3つの方法で提出できます。
7. 青色申告承認申請書を一緒に出そう
開業届と同時に必ず検討してほしいのが、「所得税の青色申告承認申請書」の提出です。
青色申告承認申請書を出さないと、自動的に白色申告になります。
白色申告では65万円の特別控除が受けられないため、開業届と同時に提出することを強くおすすめします。
7-1. 青色申告のメリット
| 項目 | 青色申告(65万円控除) | 白色申告 |
|---|---|---|
| 特別控除 | 最大65万円 | なし |
| 赤字の繰越し | 3年間可能 | 不可 |
| 家族への給与 | 全額経費にできる(届出必要) | 86万円/50万円まで |
| 帳簿の作成 | 複式簿記が必要 | 簡易簿記でOK |
| 少額減価償却 | 30万円未満は一括経費化 | 10万円未満のみ |
7-2. 青色申告承認申請書の提出期限
開業届の提出期限は2026年改正で「確定申告期限まで」に延長されましたが、青色申告承認申請書の期限は従来どおりです。
- 1月1日〜1月15日に開業した場合:
その年の3月15日まで - 1月16日以降に開業した場合:
開業日から2か月以内
この期限を過ぎると、その年は白色申告になり、青色申告ができるのは翌年からになります。
7-3. 青色申告承認申請書の書き方
青色申告承認申請書は国税庁のサイトからダウンロードできます。
主な記入項目は以下のとおりです。
| 項目 | 記入内容 |
|---|---|
| 納税地・氏名・生年月日 | 開業届と同じ内容 |
| 青色申告の開始年度 | 青色申告を適用したい年(例: 令和8年分) |
| 事業所又は所得の基因となる資産の名称及びその所在地 | 複数の事業所がある場合に記入(1か所なら空欄でOK) |
| 所得の種類 | 事業所得・不動産所得・山林所得から選択 |
| 青色申告の取消し・取りやめの有無 | 初めての場合は「無」にチェック |
| 簿記方式 | 「複式簿記」を選択すると65万円控除の対象 |
| 備付帳簿名 | 仕訳帳・総勘定元帳など該当するものにチェック |
| 関与税理士 | 税理士に依頼していない場合は空欄 |
以下、迷いやすい項目を補足します。
事業所又は所得の基因となる資産の名称及びその所在地
複数の店舗や事務所がある場合に、それぞれの名称と所在地を記入する欄です。
- 名称
「〇〇カフェ 五反田店」「〇〇デザイン 品川営業所」のように、事業所の名前を記入します。
自宅で作業するフリーランスなど、事業所が1か所だけの場合は空欄で問題ありません。 - 所在地
名称を記入した場合に、その事業所の住所を記入します。
名称が空欄であれば、こちらも空欄です。
自宅兼事務所で、別に事業所を持たない場合は、名称・所在地ともに空欄のまま提出してください。
青色申告の取消し・取りやめの有無
過去に青色申告承認の取消しを受けたことや、自分から取りやめを届け出たことがあるかどうかを回答する欄です。
- 初めて青色申告をする場合は「無」にチェックします。
- 過去に取消し・取りやめの経験がある場合は「有」にチェックし、その年月日を記入します。
初めて開業届と一緒に提出する場合は「無」で問題ありません。
簿記方式
「複式簿記」「簡易簿記」「その他」の3つから選択します。
- 複式簿記
最大65万円(または55万円)の青色申告特別控除を受けるには、複式簿記を選択してください。
一般的に、ほとんどの個人事業主は複式簿記を選びます。 - 簡易簿記
記帳は簡単ですが、控除額は10万円になります。 - その他
現金式簡易帳簿など、特殊な記帳方式を使う場合に選択します。
申請時に簡易簿記を選んでいても、確定申告時に複式簿記の要件を満たしていれば65万円控除を受けられます。
青色申告承認申請書の再提出は不要です。
迷ったら「複式簿記」を選んでおきましょう。
備付帳簿名
青色申告のために備え付ける帳簿にチェックを入れる欄です。
全15種類の帳簿名が並んでいますが、すべてにチェックする必要はありません。
65万円控除を受ける場合に最低限必要な帳簿は以下の2つです。
- 仕訳帳
日々の取引を日付順に記録する帳簿 - 総勘定元帳
仕訳帳の内容を勘定科目ごとにまとめた帳簿
この2つは必ずチェックしてください。
加えて、事業の内容に応じて以下の補助簿にもチェックを入れておくと安心です。
- 現金出納帳
現金の入出金を記録する帳簿(現金取引がある場合) - 預金出納帳
銀行口座の入出金を記録する帳簿 - 固定資産台帳
10万円以上の資産(パソコン等)を記録する帳簿
freee、マネーフォワード、弥生などの会計ソフトを使えば、日々の取引入力から仕訳帳・総勘定元帳が自動で作成されます。
帳簿の選択に悩む場合は、まず「仕訳帳」「総勘定元帳」の2つにチェックを入れ、必要に応じて後から増やしましょう(変更時の届出は不要です)。
関与税理士
税理士に記帳や確定申告を依頼している場合に、その税理士の氏名と連絡先を記入する欄です。
自分で管理する場合は空欄のまま提出して問題ありません。
8. 開業時に検討すべきその他の届出
開業届と青色申告承認申請書以外にも、状況に応じて提出が必要な届出があります。
8-1. 従業員を雇う場合の届出(給与支払事務所等の開設届出書)
従業員やアルバイトを雇って給与を支払う場合は、「給与支払事務所等の開設届出書」を税務署に提出する必要があります。
家族に給与を支払う場合(青色事業専従者)も対象です。
届出書は国税庁のサイトからダウンロードできます。
主な記入項目は以下のとおりです。
| 項目 | 記入内容 |
|---|---|
| 届出の区分 | 「開設」に○ |
| 事務所開設者(氏名又は名称) | 屋号があれば屋号、なければ個人名 |
| 事務所開設者(代表者氏名) | 個人名(屋号を書いた場合も再度記入) |
| 開設年月日 | 基本的に開業日 |
| 給与支払を開始する年月日 | 初めて給与を支払う日(または支払予定日) |
| 届出の内容及び理由 | 「開業又は法人の設立」にチェック |
| 給与支払事務所等について | 個人事業主の場合は空欄 |
| 従業員数 | 給与を支払う従業員の人数(事業主本人は含めない) |
| 税理士署名 | 税理士に依頼していない場合は空欄 |
以下、迷いやすい項目を補足します。
事務所開設者欄(氏名又は名称 / 代表者氏名)
- 氏名又は名称
屋号がある場合は屋号(例: 〇〇デザイン事務所)を記入します。
屋号がない場合は、自分の個人名を記入します。 - 代表者氏名
自分の個人名を記入します。
屋号がない個人事業主の場合、「氏名又は名称」と「代表者氏名」の両方に同じ個人名を記入します。
屋号がある場合は「氏名又は名称」に屋号、「代表者氏名」に個人名を記入してください。
給与支払を開始する年月日
初めて従業員に給与を支払う日(または支払予定日)を記入します。
たとえば月給制で毎月25日払いの場合、初回の給与支払日(〇月25日)を記入してください。
開業と同時に従業員を雇い、その月から給与の支払いが始まる場合は空欄で問題ありません。
たとえば4月に開業したが、従業員を雇うのは8月からという場合、開設年月日は4月、給与支払を開始する年月日は8月の最初の支払日になります。
給与支払事務所等について欄
法人が移転した場合などに使用する欄です。
個人事業主が新規開業で提出する場合は空欄のままで問題ありません。
「氏名又は名称」「代表者氏名」の記入欄がありますが、新規開設の届出では記入不要です。
従業員数
給与を支払う従業員の人数を職種別に記入します。
記入の際、以下の点に注意してください。
- 事業主本人は含めません
個人事業主は自分に給与を払う概念がないため、自身をカウントしません。 - 役員欄は空欄
役員(取締役など)は法人の制度です。
個人事業主には役員がいないため、役員の欄は空欄にします。 - 専従者(家族従業員)は従業員数に含めます
青色事業専従者に給与を支払う場合は、その人数を従業員数に記入します。
税理士署名欄
届出書の作成を税理士に依頼した場合に、税理士が署名する欄です。
自分で作成して提出する場合は空欄のまま提出して問題ありません。
提出先は納税地を管轄する税務署で、開設日から1か月以内に提出します。
8-2. 都道府県税事務所への届出(事業開始等申告書)
税務署への開業届とは別に、都道府県税事務所にも「事業開始等申告書」を提出する必要があります。
これは個人事業税に関する届出で、開業届(国税)とは提出先が異なります。
届出書は各都道府県のウェブサイトからダウンロードするか、都道府県税事務所の窓口で入手できます。
主な記入項目は以下のとおりです。
- 届出の区分(「開始」にチェック)
- 事業の開始日
- 事業の種類・内容
- 事務所の所在地
自治体によって届出書の名称や提出期限が異なります(例: 東京都は「事業開始(廃止)等申告書」で事業開始から15日以内)。
お住まいの都道府県税事務所のウェブサイトで確認してください。
9. 副業で開業届を出す場合
会社員として働きながら副業を行う場合でも、開業届を提出できます。
9-1. 副業でも開業届は必要?
副業の収入が「事業所得」に該当する場合は、開業届の提出が必要です。
一方、収入が「雑所得」に該当する場合は、開業届の提出義務はありません。
事業所得と雑所得の区分は、事業の規模や継続性、独立性などから総合的に判断されます。
| 判断基準 | 事業所得(開業届が必要) | 雑所得(開業届は不要) |
|---|---|---|
| 規模 | 継続的・反復的に行っている | 一時的・小規模 |
| 独立性 | 自分で事業として営んでいる | 片手間で行っている |
| 記帳 | 帳簿を付けている | 帳簿なし |
| 社会通念 | 事業と認められる | 趣味や副収入程度 |
9-2. 副業の開業届は会社にバレる?
開業届を提出したこと自体が、勤務先に通知されることはありません。
ただし、確定申告後に副業分の住民税が勤務先の給与から天引き(特別徴収)されると、住民税額の増加で気づかれる可能性があります。
これを防ぐには、確定申告書の「住民税の徴収方法」で「自分で納付(普通徴収)」を選択してください。
10. 開業届を出し忘れた場合はどうなる?
10-1. 罰則はない
開業届を出し忘れたとしても、罰則はありません。
遅れて提出することは可能で、過去の日付を開業日として記載して提出できます。
2026年1月以降に開業した場合は、その年の確定申告期限(翌年3月15日)までに提出すれば、もともと期限内です。
10-2. 青色申告の期限を逃した場合
開業届の提出が遅れた場合でも、注意すべきは青色申告承認申請書の期限です。
青色申告承認申請書の提出期限(開業から2か月以内 or 3月15日)を過ぎてしまった場合、その年は白色申告で確定申告を行うことになります。
翌年から青色申告に切り替えたい場合は、その年の3月15日までに青色申告承認申請書を提出してください。
11. 退職後に開業する場合の手続き
会社を退職してから個人事業主として開業する場合は、開業届以外にもいくつかの手続きが必要です。
11-1. 社会保険の切り替え
退職すると会社の健康保険・厚生年金から外れるため、以下のいずれかに切り替える必要があります。
- 国民健康保険 + 国民年金
退職日の翌日から14日以内に市区町村の役所で手続き - 任意継続被保険者制度
退職日の翌日から20日以内に健康保険組合に申請(最長2年間) - 家族の扶養に入る
事業所得の見込みが130万円未満の場合
11-2. 失業手当の受給期間の特例
退職後に開業届を出すと、原則として失業手当は受給できません。
しかし、2022年7月1日に施行された「事業開始等による受給期間の特例」を利用すれば、事業を行っている期間(最大3年間)は受給期間に含めないことができます。
つまり、開業したものの事業がうまくいかずに廃業した場合、その後の再就職活動で失業手当を受け取れる可能性があります。
この特例を利用するには、事業を開始した日の翌日から2か月以内にハローワークで申請が必要です。
11-3. 開業時のやることチェックリスト
退職後に開業する場合に行うべき手続きをまとめました。
- 国民健康保険・国民年金への加入手続き(市区町村の役所)
退職日の翌日から14日以内 - 健康保険の任意継続を申請する場合(健康保険組合)
退職日の翌日から20日以内 - 開業届 + 青色申告承認申請書を税務署に提出
事業開始から2か月以内 - 失業手当の受給期間の特例を申請(ハローワーク)
事業開始の翌日から2か月以内 - 給与支払事務所等の開設届出書を提出(従業員を雇う場合)
開設から1か月以内 - 事業開始等申告書を提出(都道府県税事務所)
自治体により名称・期限が異なる(例: 東京都は事業開始から15日以内)
よくある質問(FAQ)
Q. 開業届を出さなくても確定申告はできますか?
A. はい、確定申告は可能です。
開業届を出していなくても、事業で得た所得については確定申告の義務があります。
ただし、青色申告承認申請書を提出していない場合は白色申告になります。
Q. 開業届に費用はかかりますか?
A. かかりません。
開業届の入手・作成・提出はすべて無料です。
郵送で提出する場合は、郵送料(84円〜)と返信用封筒の切手代が必要です。
Q. 開業届を出した後に廃業するにはどうすればいいですか?
A. 同じ届出書(個人事業の開業・廃業等届出書)で「廃業」を届け出ます。
開業届と同じ様式の届出書の「届出の区分」で「廃業」にチェックし、廃業日を記入して税務署に提出します。
青色申告をしていた方は「青色申告の取りやめ届出書」も提出してください。
Q. 引っ越したら開業届を出し直す必要がありますか?
A. 納税地が変わる場合は届出が必要です。
自宅を納税地としている場合、引っ越しで住所が変われば「所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書」を、移動前の税務署に提出します。
開業届自体を出し直す必要はありません。
Q. 開業届と一緒にインボイス登録もすべきですか?
A. 取引先が法人中心の場合は検討してください。
新規開業の個人事業主は、原則として開業から2年間は消費税の免税事業者です。
免税事業者のままでも事業は営めますが、取引先(法人等)から適格請求書(インボイス)の発行を求められる場合は、「適格請求書発行事業者の登録申請書」を税務署に提出する必要があります。
登録すると課税事業者となり、消費税の申告・納付義務が生じます。
売上規模や取引先の状況に応じて判断してください。
まとめ
開業届は、個人事業を始めたことを税務署に届け出る無料の手続きです。
2026年1月の法改正で提出期限が「確定申告期限まで」に延長され、以前より余裕を持って届出できるようになりました。
ただし、青色申告承認申請書の提出期限は従来どおり(開業から2か月以内 or 3月15日)です。
最大65万円の所得控除を受けるために、開業届と同時に提出することをおすすめします。
最後に、開業届提出までの流れを確認しましょう。
- 開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)を作成する
- 青色申告承認申請書を作成する
- 必要書類(マイナンバーカード等)を準備する
- 管轄の税務署にe-Tax・窓口・郵送のいずれかで提出する
- 受信通知やリーフレットを保管する
- (退職して開業する場合)社会保険・年金の切り替え手続きを行う
