マイナ保険証がなくて10割負担…医療費の返金手続き(療養費支給申請)
病院の窓口で
「マイナ保険証の登録がまだ済んでなくて、病院で10割払うことになってしまった…」
「資格確認書を持っていくのを忘れて、全額請求されてしまった…」
こんな経験はありませんか?
ご安心ください。
療養費支給申請という制度を使えば、本来の自己負担分を超えて支払った医療費を還付してもらえます。
2025年12月2日から従来の健康保険証は使用できなくなり、現在はマイナ保険証または資格確認書が必要です。
これらを持っていなかった場合や、マイナ保険証がうまく読み取れなかった場合に10割負担となりますが、後から申請すれば払いすぎた分を取り戻せます。
この手続ガイドでは、10割負担した医療費を取り戻すための手続きを、国民健康保険・社会保険・後期高齢者医療制度それぞれのケース別にわかりやすく解説します。
1. 10割負担した医療費は取り戻せる!「療養費支給申請」とは
まずは、10割負担した医療費を取り戻せる制度について理解しましょう。
1-1. 療養費支給申請とは
療養費支給申請とは、やむを得ない事情で保険資格を確認できずに医療費の全額(10割)を立て替え払いした場合に、本来の自己負担分を超えた金額を健康保険から払い戻してもらう制度です。
通常、病院を受診する際はマイナ保険証や資格確認書を提示することで、医療費の一部(年齢や所得に応じて1〜3割)だけを窓口で支払います。
しかし、これらを持っていない状態で受診すると、いったん医療費の全額(10割)を支払う必要があります。
この場合、後から健康保険に申請することで、払いすぎた分(通常は7〜9割)を還付してもらえるのが療養費支給申請です。
1-2. どんな場合に療養費支給申請が使えるか
療養費支給申請が使える主なケースは以下のとおりです。
マイナ保険証・資格確認書がない場合
-
マイナ保険証を忘れて受診した
マイナ保険証(マイナンバーカード)を持参せずに病院を受診した場合 -
マイナ保険証の利用登録が完了していない
マイナンバーカードは持っているが、健康保険証として利用するための登録手続きがまだ済んでいなかった場合 -
マイナ保険証が読み取れなかった
機械の不具合や電子証明書の有効期限切れなどで認証できなかった場合 -
資格確認書を忘れて受診した
マイナ保険証を利用しない方で、資格確認書を持参せずに受診した場合 -
資格確認書がまだ届いていない
マイナ保険証を利用しない方で、資格確認書の交付前に受診した場合 -
転職・就職で保険資格情報が反映されていない
新しい勤務先での保険加入手続き中で、まだ資格情報が更新されていない場合
その他のケース
-
海外で医療を受けた
海外旅行中に病気やケガで現地の医療機関を受診した場合(海外療養費) -
治療用装具を作成した
医師の指示でコルセット、義肢、治療用眼鏡(弱視)などを作成した場合 -
柔道整復師(整骨院・接骨院)で施術を受けた
急性の外傷(骨折、脱臼、捻挫、打撲など)で施術を受けた場合
1-3. 還付される金額の目安
還付される金額は、年齢や所得によって異なる自己負担割合に基づいて計算されます。
| 年齢・区分 | 自己負担割合 | 還付される割合 |
|---|---|---|
| 義務教育就学前 | 2割 | 8割 |
| 義務教育就学後〜69歳 | 3割 | 7割 |
| 70〜74歳(一般・低所得) | 2割 | 8割 |
| 70〜74歳(現役並み所得) | 3割 | 7割 |
| 75歳以上(一般) | 1割 | 9割 |
| 75歳以上(一定以上所得) | 2割 | 8割 |
| 75歳以上(現役並み所得) | 3割 | 7割 |
計算例
70歳未満で3割負担の方が、窓口で30,000円(10割)を支払った場合:
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 窓口で支払った金額(10割) | 30,000円 |
| 本来の自己負担分(3割) | 9,000円 |
| 還付される金額(7割) | 21,000円 |
自分の場合にいくら還付されるか、以下のシミュレーターで確認できます。
1-4. 申請期限は2年
療養費の申請には時効があります。
医療費を支払った日の翌日から2年以内に申請しなければ、還付を受ける権利が消滅します。
領収書を大切に保管し、早めに手続きを行いましょう。
2. まずは病院に確認!同月内なら返金してもらえる場合も
療養費支給申請の前に、まずは受診した病院に確認してみましょう。
同月内であれば、病院の窓口で返金してもらえることが多いからです。
2-1. 病院での返金が可能なケース
以下の条件を満たす場合、病院で直接返金を受けられる可能性があります。
- 10割負担した日と同じ月内に対応できる
- マイナ保険証または資格確認書を持参できる
- 支払い時の領収書がある
病院に電話して、返金対応が可能か確認してみてください。
2-2. 月をまたぐと病院での返金は難しい
一方、月をまたいでしまうと、病院での返金は難しくなります。
これは、病院が毎月末に診療報酬明細書(レセプト)を健康保険に提出する仕組みになっているためです。
月が変わると、すでにその月の請求処理が完了してしまっているため、病院側で対応できないのです。
月をまたいでしまった場合の対応
月をまたいでしまった場合は、健康保険に療養費支給申請を行います。
病院で返金を断られても、健康保険への申請で還付を受けられるので安心してください。
2-3. 病院での返金に必要なもの
病院で返金を受ける場合は、以下を持参してください。
- マイナ保険証または資格確認書
- 支払い時の領収書
一部の病院では、同月内でも返金対応していない場合があります。
その場合は、次のセクションで解説する「健康保険への療養費支給申請」を行ってください。
3. 健康保険への療養費支給申請の手続き
病院で返金を受けられなかった場合は、加入している健康保険に療養費支給申請を行います。
申請先は、加入している健康保険の種類によって異なります。
4. 療養費支給申請書の書き方
療養費支給申請書の記入で迷いやすいポイントを解説します。
4-1. 主な記入項目
療養費支給申請書には、一般的に以下の項目を記入します。
| 記入項目 | 内容 |
|---|---|
| 被保険者情報 | 保険証の記号・番号、氏名、住所など |
| 受診者情報 | 実際に診療を受けた人の氏名、生年月日(被保険者と同じなら省略可) |
| 傷病名 | 診療を受けた病気やケガの名称 |
| 診療を受けた日 | 受診日 |
| 医療機関名・所在地 | 受診した病院・診療所の名称と住所 |
| 療養に要した費用 | 支払った金額 |
| 振込先口座 | 還付金を受け取る銀行口座 |
4-2. よくある記入の困りポイントと対処法
傷病名がわからない
領収書や診療明細書に記載されていることが多いです。
見当たらない場合は、病院に問い合わせてください。
発病・負傷の日がわからない
明確にわからない場合は、以下のいずれかで対応できます。
- 「不明」と記載する
- 初めて受診した日を記載する
医師の名前がわからない
多くの場合、医師名は空欄でも受理されます。
心配な場合は、申請先に確認してください。
子供の医療費を申請する場合
被保険者(親)の情報と、受診者(子供)の情報を分けて記入します。
- 被保険者欄:
親の情報 - 受診者欄:
子供の情報
5. 還付される金額と振込までの期間
5-1. 還付対象となる費用・ならない費用
療養費として還付されるのは、保険診療の対象となる医療費です。
還付対象となる費用
- 診察料
- 検査費用
- 処置費用
- 投薬費用(処方箋に基づく薬代)
- 入院費用(保険適用分)
還付対象とならない費用
- 差額ベッド代(個室料金など)
- 文書料(診断書作成費用など)
- 食事代(入院時の食事療養費の自己負担分)
- 保険適用外の治療費
- 予防接種費用
5-2. 振込までの期間の目安
申請から還付金が振り込まれるまでの期間は、申請先によって異なります。
| 申請先 | 振込までの期間 |
|---|---|
| 国民健康保険 | 約1〜3ヶ月 |
| 協会けんぽ | 約1〜3ヶ月 |
| 健康保険組合 | 約1〜2ヶ月 |
| 後期高齢者医療制度 | 約1〜3ヶ月 |
書類に不備があると、さらに時間がかかることがあります。
申請前に必要書類を確認し、記入漏れがないようにしましょう。
6. 申請時の注意点
療養費支給申請で失敗しないためのポイントをまとめます。
6-1. 申請期限は2年
療養費の請求権は、医療費を支払った日の翌日から2年で時効となります。
詳しくは「1-4. 申請期限は2年」を参照してください。
6-2. 領収書は必ず保管する
療養費支給申請には、領収書の原本が必要です。
領収書を紛失してしまうと、申請が難しくなります。
紛失した場合は、受診した医療機関に再発行を依頼してください。
再発行できない場合は、「支払証明書」の発行を依頼する方法もあります。
6-3. 無保険期間の医療費は対象外
療養費支給申請が使えるのは、医療を受けたときに健康保険に加入していた場合に限られます。
以下のようなケースは、残念ながら還付の対象になりません。
- 退職後、健康保険の切り替え手続きをしていなかった期間
- 国民健康保険への加入手続きをしていなかった期間
保険に加入していた状態で、たまたま保険証を持っていなかった場合は対象です。
保険に加入していなかった期間は対象外なので、注意してください。
6-4. 高額療養費・医療費控除との違い
療養費支給申請と混同しやすい制度があります。
| 制度 | 内容 |
|---|---|
| 療養費支給申請 | マイナ保険証・資格確認書なしで10割負担した場合に、払いすぎた分を健康保険から還付してもらう制度 |
| 高額療養費 | 1ヶ月の医療費が上限額を超えた場合に、超えた分を健康保険から還付してもらう制度 |
| 医療費控除 | 1年間の医療費が一定額を超えた場合に、確定申告で所得税の還付を受ける制度 |
この手続ガイドで解説しているのは「療養費支給申請」です。
7. よくある質問(Q&A)
Q1. 月をまたいでしまいました。病院で返金してもらえますか?
月をまたぐと、診療報酬明細書(レセプト)の処理がすでに完了しているため、病院での返金は難しくなります。
この場合は、加入している健康保険に療養費支給申請をしてください。
Q2. 領収書を紛失してしまいました。申請できますか?
まずは受診した医療機関に、領収書の再発行を依頼してください。
再発行ができない場合は、「支払証明書」を発行してもらえるか確認しましょう。
領収書または支払いを証明する書類がないと、申請が難しい場合があります。
Q3. 転職して保険が変わりました。どこに申請すればいいですか?
受診した時点で加入していた健康保険に申請してください。
すでに退職した会社の健康保険でも、2年以内であれば請求可能です。
協会けんぽの場合は、当時加入していた都道府県支部に連絡してください。
健康保険組合の場合は、その健保組合に直接問い合わせてください。
Q4. 無保険だった期間の医療費は還付されますか?
残念ながら、保険に加入していなかった期間の医療費は還付対象になりません。
療養費支給申請は、「保険に加入していたが、マイナ保険証や資格確認書を持っていなかった」場合に使える制度です。
Q5. 子供の医療費も同じ手続きですか?
はい、同じ手続きです。
被保険者(親)が申請者となり、療養費支給申請書の「受診者」欄に子供の情報を記入してください。
また、自治体によっては子ども医療費助成制度の対象となる場合があります。
療養費の還付後、自己負担分についても助成を受けられる可能性があるので、お住まいの自治体に確認してみてください。
Q6. 診療内容明細書はどうやって入手しますか?
受診した医療機関に「療養費支給申請に使う診療内容の明細書がほしい」と依頼してください。
会計時に無料でもらえる「診療明細書」とは異なる書類で、病院に作成を依頼する必要があります。
発行に時間がかかる場合があるため、早めに依頼することをおすすめします。
発行手数料がかかる場合もあります(通常は数百円〜千円程度)。
8. 10割負担を防ぐために
2025年12月2日から、従来の健康保険証は使用できなくなりました。
現在、医療機関で保険診療を受けるにはマイナ保険証または資格確認書が必要です。
10割負担を避けるため、以下の点に注意してください。
8-1. マイナ保険証を使う場合の注意点
電子証明書の有効期限を確認する
マイナ保険証として使うには、マイナンバーカードの「利用者証明用電子証明書」が有効である必要があります。
電子証明書の有効期限は発行から5年です。
有効期限が切れていると、マイナ保険証として使えず10割負担になる可能性があります。
更新手続きの詳細については「 マイナンバーカード電子証明書の更新手続き - マイナ保険証に必須 」で解説しています。
暗証番号のロックに注意
暗証番号を3回間違えるとロックがかかり、マイナ保険証が使えなくなります。
ロック解除は市区町村窓口やコンビニで可能です。
ロック解除手続きの詳細は「 マイナンバーカードの暗証番号を忘れた!ロック解除方法を解説 」で解説しています。
8-2. 資格確認書を使う場合
マイナンバーカードを持っていない方には、従来の保険証に代わる「資格確認書」が交付されています。
マイナ保険証を使わない場合は、この資格確認書を医療機関に提示してください。
資格確認書が届いていない場合は、加入している健康保険に問い合わせてください。
8-3. 関連する手続ガイド
マイナ保険証の詳しい使い方や登録方法については、以下の手続ガイドを参照してください。
保険証廃止後はどうなる?マイナ保険証と資格確認書の違いを解説
まとめ
マイナ保険証や資格確認書がなく10割負担してしまっても、療養費支給申請で払いすぎた分を取り戻せます。
ポイントのおさらい
-
同月内なら病院で返金してもらえる場合も
まずは受診した病院に確認してみましょう -
月をまたいだら健康保険に申請
療養費支給申請書と必要書類を提出します -
申請期限は2年
早めに手続きしましょう -
領収書は大切に保管
申請に必要です -
マイナ保険証の電子証明書更新を忘れずに
有効期限切れで10割負担になることを防ぎましょう
申請先まとめ
| 加入している保険 | 申請先 |
|---|---|
| 国民健康保険 | 市区町村の国保担当窓口 |
| 協会けんぽ | 都道府県の協会けんぽ支部 |
| 健康保険組合 | 加入している健保組合(会社に確認) |
| 後期高齢者医療制度 | 市区町村の後期高齢者医療担当窓口 |
手続きに不安がある場合は、申請先の窓口に電話で相談してみてください。
