停職処分の給与・賞与・退職金〜公務員・自衛官・民間
「停職処分になったら、給料はもらえるの?」
「ボーナスや退職金にも響くの?」
——突然の懲戒処分に、本人だけでなく家族も大きな不安を抱えます。
結論から言うと、停職期間中の給与は公務員・自衛官・民間企業のいずれも「無給」が原則です。
さらに賞与や退職金、その後の昇給にまで影響が及びます。
この手続きガイドでは、停職処分がお金にどう影響するのかを、属性ごとの違いとあわせてわかりやすく整理します。
停職処分とは?懲戒処分の中での位置づけ
停職処分は、職員が規律違反などをしたときに科される「懲戒処分」の一種です。
懲戒処分には軽いものから重いものまで段階があり、一般的に次の順で重くなります。
- 戒告・譴責(けんせき)
口頭や文書での注意。
給与への直接の影響は小さい。 - 減給
一定期間、給与の一部が差し引かれる。 - 停職(出勤停止)
一定期間、仕事を休まされる。
その間は無給になる。 - 免職・懲戒解雇
職を失う最も重い処分。
停職は、上から2番目に重い処分です。
身分や雇用契約は残したまま、一定期間だけ就労を禁止される点が特徴です。
民間企業では「停職」を「出勤停止」「懲戒休職」と呼ぶことが多く、内容はほぼ同じです。
停職の期間はどのくらい?
停職にできる期間の上限は、属性によって法律や条例で定められています。
- 国家公務員
1日以上1年以下(国家公務員法83条・人事院規則12―0)。 - 地方公務員
多くの自治体で1日以上6か月以下(地方公務員法29条にもとづく各自治体の条例)。 - 自衛官
1年以内(自衛隊法47条)。
防衛省の達では、5日以内を「軽処分」、6日以上を「重処分」と区分しています。 - 民間企業
法律上の上限はなく、就業規則の定めによる。
実務では数日〜2週間程度が多く、長くても1〜2か月程度です。
あまりに長期だと、処分が無効と判断されることもあります。
停職処分でまず押さえるべき大原則は「停職期間中は給与(基本給)が支払われない」ことです。
公務員・自衛官・民間企業のいずれも、働いていない期間に賃金は発生しないという考え方(ノーワーク・ノーペイの原則)が基本になります。
【早見表】停職処分が給与・賞与・退職金に与える影響
属性別に、停職処分がお金の各項目にどう影響するかをまとめると次のとおりです。
| 項目 | 民間企業(出勤停止) | 公務員(国家・地方) | 自衛官 |
|---|---|---|---|
| 停職中の給与 | 無給 | 無給 | 無給 |
| 賞与(ボーナス) | 就業規則次第。期間除外・査定減が多い | 期末・勤勉手当が減額。基準日にかかると不支給も | 公務員に準じて減額 |
| 退職金・退職手当 | 勤続年数に通算されないことが多い | 停職期間を勤続期間から除算し減少 | 公務員に準じて減少 |
| 昇給・昇進 | 査定・昇格に影響しうる | 昇給延伸・昇進ストップ | 昇給延伸・昇進ストップ |
| 根拠 | 就業規則・労働契約 | 国公法・地公法+条例 | 自衛隊法 |
停職処分の金銭的なダメージは「停職中の無給」だけではありません。
むしろ賞与の減額・退職金の減少・昇給の遅れといった波及のほうが、生涯で見ると大きくなることもあります。
民間企業の場合〜出勤停止と給与・賞与・退職金
民間企業では、停職にあたる懲戒処分を「出勤停止」と呼ぶのが一般的です。
給与は無給が原則
出勤停止期間中の給与は、支払われないのが原則です。
これは「ノーワーク・ノーペイの原則」にもとづくもので、労働者が働かなければ、その対価である賃金も発生しないという考え方です。
ここで混同しやすいのが「減給」との違いです。
労働基準法91条は、懲戒としての「減給」について、1回の額は平均賃金1日分の半額まで、総額は一賃金支払期(1か月など)の賃金総額の10分の1までという上限を定めています。
一方、出勤停止による無給は「働いていないから賃金が出ない」もので、減給の制裁とは別物です。
そのため、この10分の1の上限とは関係なく、出勤停止の日数分がまるごと無給になります。
出勤停止期間中は、年次有給休暇を使って給与を確保することはできません。
有給休暇はもともと労働義務がある日に取得するものなので、就労が禁止されている出勤停止期間には使えないためです。
賞与(ボーナス)は就業規則次第
賞与が減るかどうかは、会社の就業規則や賃金規程の定めによります。
賞与には勤務評価・功労の性格があるため、出勤停止で働かなかった期間を査定の対象から外したり、評価を下げて賞与を減額したりすることは認められています。
ただし、注意点もあります。
「賞与支給日に在籍していること」を支給条件にしている場合でも、出勤停止を理由に賞与を全額不支給とする扱いは、裁判で無効と判断された例があります。
減額の程度が処分の重さに比べて過大だと、争いになる可能性があります。
退職金は勤続年数の扱いがカギ
退職金も、会社の退職金規程の定めによります。
多くの企業では、出勤停止期間を勤続年数に通算しない扱いをしています。
退職金は勤続年数をもとに計算されることが多いため、その分だけ退職金が目減りします。
なお、退職金規程で出勤停止期間を勤続年数に算入しないと定める場合、その扱いは退職金の計算に限って有効と考えられています。
民間企業の出勤停止・自宅待機と給与の関係は、次の手続きガイドでさらに詳しく解説しています。
公務員(国家・地方)の場合〜給与・賞与・退職手当
公務員の停職処分は、国家公務員は国家公務員法、地方公務員は地方公務員法にもとづきます。
給与は支給されない
国家公務員法83条は「停職者は…停職の期間中給与を受けることができない」と定めています。
地方公務員も、地方公務員法29条にもとづく各自治体の条例で「停職者は、停職期間中いかなる給与も支給されない」と定められているのが一般的です。
つまり、公務員も停職期間中は無給です。
賞与(期末手当・勤勉手当)への影響
公務員のボーナスは「期末手当」と「勤勉手当」の2つで構成されます。
支給の基準日は、毎年6月1日と12月1日です。
停職処分は、この賞与にも次のように影響します。
- 勤勉手当の成績率が下がる
勤務成績に応じて支給される勤勉手当は、停職処分を受けた職員の成績率が大きく引き下げられます。
国の運用では、停職の処分を受けた職員は100分の40以下とされています。
ただし成績率は俸給表の区分や管理職かどうかで変わるため、実際の率は各機関・自治体の規程で確認してください。 - 在職期間(勤務期間)から停職期間が除算される
期末手当・勤勉手当は、基準日前の一定期間にどれだけ在職・勤務したかで支給割合が決まります。
停職期間はその全期間が差し引かれるため、支給額が減ります。 - 基準日が停職期間中だと不支給になることも
基準日(6月1日・12月1日)に停職中の場合、その期の手当が支給されない、または大きく減ることがあります。
退職手当への影響
公務員の退職金にあたる「退職手当」は、勤続期間(在職期間)をもとに計算されます。
停職期間は、この退職手当の計算の基礎となる勤続期間から除算されます。
そのため、停職を受けた分だけ将来の退職手当が目減りします。
ただし、停職を受けただけで退職手当がゼロになるわけではありません。
退職手当が不支給・大幅制限になるのは、後で説明する懲戒免職などの場合です。
自衛官の場合〜自衛隊法による停職の効果
自衛官(隊員)の懲戒処分は、自衛隊法にもとづきます。
自衛隊法46条は、懲戒処分として免職・降任・停職・減給・戒告を定めています。
そして自衛隊法47条は、停職について次のように定めています。
- 停職の期間は1年以内
- 停職者は隊員の身分を保つが、特に命じられた場合を除き職務に従事できない
- 停職者には、法令で別段の定めがある場合を除き、給与を支給しない
つまり自衛官も、停職期間中は無給です。
防衛省の「懲戒処分等の基準に関する達」では、停職を期間で区分しており、5日以内の停職を「軽処分」、6日以上の停職を「重処分」としています。
賞与(期末手当・勤勉手当)、昇給、退職手当の扱いは、基本的に国家公務員に準じます。
停職期間が在職期間・勤続期間から除算され、賞与や退職手当が減る仕組みは公務員と同様です。
停職中のボーナスはもらえる?タイミングがカギ
「停職処分中にボーナスはもらえるのか」は、特に多い疑問です。
ポイントは、停職になった時期が「賞与の算定期間」や「支給日・基準日」にかかっているかどうかです。
- 算定期間に停職がかかる
賞与の評価対象となる期間に停職期間が含まれると、その分が査定や在職期間から差し引かれて減額されます。 - 基準日・支給日に停職中
公務員は基準日(6月1日・12月1日)に停職中だと手当が不支給になることがあります。
民間企業も「支給日在籍」を条件にしている場合、扱いが問題になります。 - 算定期間・基準日にかからない短期の停職
賞与の対象期間の外で数日の停職を終えた場合、賞与への影響は小さくなることがあります。
つまり、同じ「停職3日」でも、それがいつ行われたかによって賞与への響き方は変わります。
退職金と「依願退職」〜停職と懲戒免職の決定的な違い
退職金について、多くの人が誤解しているのが「停職処分を受けると退職金がもらえなくなる」という点です。
実際には、停職そのもので退職金がゼロになるわけではありません。
停職期間が勤続年数から除かれ、その分が減るのが基本です。
退職金が不支給・大幅に制限されるのは、停職ではなく懲戒免職(民間では懲戒解雇)の場合です。
- 停職にとどまる場合
退職金は支給される。
ただし停職期間分は勤続年数から除かれ、減額される。 - 懲戒免職・懲戒解雇の場合
公務員は退職手当が原則不支給。
民間も退職金規程により、全部または一部が不支給になりうる。
ただし民間では、全額不支給は長年の勤続の功を否定するほど重大な行為があった場合に限られる傾向があります。
この違いがあるため、重い処分が見込まれる場面で、懲戒免職になる前に自分から「依願退職」を願い出るケースがあります。
依願退職であれば、原則として退職金が支払われるためです。
公務員や自衛官の不祥事で「処分と同じ日に依願退職」という形が見られるのは、この退職手当を確保するためという背景があります。
公務員には、退職後の雇用保険(失業手当)がありません。
ただし、勤続期間などの一定の要件を満たせば「失業者の退職手当」が支給される場合があります。
停職後に退職を選ぶ場合は、当面の生活資金の見通しを立てておくことが大切です。
退職を選んだ後にやるべき手続きは、次の手続きガイドにまとめています。
停職による給与の減少額をシミュレーション
停職期間中の無給によって、給与がどのくらい減るのかの目安を計算できます。
月給と停職日数を入力してください。
1か月を30日として、1日あたりの給与に停職日数をかけた概算を表示します。
復職後の影響〜昇給の遅れと昇進
停職の影響は、復職して給与の支払いが再開された後にも残ります。
- 昇給の遅れ(昇給延伸)
公務員では、毎年の昇給で上がる号俸の数が抑えられたり、昇給そのものが見送られたりします。
その後の給与水準が、ずっと低いままになることがあります。 - 昇進・昇格のストップ
停職を受けた時点で、事実上、昇進・昇格が止まることが少なくありません。 - 生涯年収への波及
昇給・昇進の遅れは、毎月の給与だけでなく、賞与や退職金の計算基礎にも影響します。
結果として、生涯で受け取る金額に差が出ます。
このように、停職は「停職期間中の無給」よりも、その後の給与・賞与・退職金への波及のほうが、長い目で見ると大きな意味を持つことがあります。
よくある質問(FAQ)
Q. 停職中も基本給はもらえますか?
A. もらえません。
停職(出勤停止)期間中は、公務員・自衛官・民間企業のいずれも無給が原則です。
働いていない期間には賃金が発生しないという考え方にもとづくため、基本給も支払われません。
Q. 停職3日でもボーナスは減りますか?
A. 減ることもあれば、ほとんど影響しないこともあります。
賞与の算定期間や基準日・支給日に停職がかかっているかどうかで変わります。
公務員の場合、基準日に停職中だと手当が不支給・減額になることがあります。
短い停職でも、時期によっては影響します。
Q. 停職処分を受けると退職金はゼロになりますか?
A. 停職だけならゼロにはなりません。
停職期間が勤続年数から除かれて減る、というのが基本です。
退職金が原則ゼロ・大幅制限になるのは、停職ではなく懲戒免職(懲戒解雇)の場合です。
Q. 停職期間は勤続年数に入りますか?
A. 入らないのが一般的です。
公務員は、退職手当や手当の計算の基礎となる在職期間から、停職期間が除算されます。
民間企業でも、退職金規程で停職(出勤停止)期間を勤続年数に通算しないと定めていることが多くあります。
Q. 停職などの処分歴は転職先に知られますか?
A. 会社が前職に問い合わせて勝手に伝わることは、原則ありません。
前職が本人の同意なく処分歴を第三者に伝えることは、個人情報保護の観点から制限されます。
ただし、公務員の懲戒処分は公表されることがあり、報道などで知られる場合があります。
まとめ
停職処分は、給与だけでなく賞与・退職金・昇給にまで影響する重い処分です。
最後に要点を整理します。
- 停職中の給与は無給が原則
公務員・自衛官・民間企業のいずれも、停職(出勤停止)期間中は給与が支払われません。 - 賞与はタイミングで変わる
算定期間や基準日・支給日に停職がかかると、減額・不支給になります。
公務員は勤勉手当の成績率も下がります。 - 退職金は停職だけならゼロにならない
停職期間が勤続年数から除かれて減るのが基本で、ゼロ・大幅制限は懲戒免職の場合です。 - 復職後も昇給の遅れ・昇進停止が残る
生涯年収への波及まで含めて考える必要があります。 - 属性で根拠と細部が違う
民間は就業規則、公務員は国公法・地公法と条例、自衛官は自衛隊法が根拠です。
具体的な減額幅や手当の扱いは、勤務先の就業規則・給与規程や、各自治体の条例によって異なります。
正確な金額は、勤務先の人事・給与の担当部署や、所属する自治体・組織の規程で確認してください。