高齢者の賃貸探しに使える!セーフティネット住宅の手続きガイド
「高齢の親が引っ越し先を探しているけど、年齢を理由に断られてしまう」
「一人暮らしの高齢者でも安心して住める賃貸はないの?」
——こうした悩みを抱える方は少なくありません。
実は、高齢者や低所得者など住まい探しに困っている方を支援する「住宅セーフティネット制度」があり、2025年10月の法改正で入居中のサポートまでカバーする「居住サポート住宅」が新たに創設されました。
この手続きガイドでは、セーフティネット住宅の仕組みや探し方、居住サポート住宅の入居までの流れ、居住支援法人への相談方法まで、高齢者やそのご家族が知っておくべきポイントをわかりやすく解説します。
高齢者が賃貸入居を断られる3つの理由
高齢者、特に単身の高齢者が賃貸物件への入居を断られるケースが増えています。
大家さんが入居に不安を感じる主な理由は、以下の3つです。
- 孤独死のリスク
入居者が室内で亡くなり、発見が遅れると物件の資産価値が下がるおそれがあります。 - 家賃滞納のリスク
年金収入のみの場合、収入が不安定とみなされ、家賃の支払い能力を懸念されます。 - 残置物の処理問題
入居者が亡くなった後、室内に残された家財の処理や賃貸借契約の相続人探しに手間がかかります。
国土交通省の調査によると、大家さんの約7割が高齢者の入居に何らかの拒否感を持っているとされています。
しかし、こうした不安を解消する仕組みが法改正で整備されました。
住宅セーフティネット法とは?2025年改正の4つのポイント
住宅セーフティネット法の概要
「住宅セーフティネット法」は、正式名称を「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律」といい、2007年(平成19年)に制定されました。
高齢者や低額所得者、障害者など、住宅の確保が困難な方々(住宅確保要配慮者)が安心して賃貸住宅に入居できるようにするための法律です。
住宅確保要配慮者とは
法律で定められている対象者は以下のとおりです。
- 高齢者
- 低額所得者(月収15.8万円以下が目安)
- 障害者
- 被災者
- 子育て世帯(18歳未満の子がいる世帯)
- 外国人
- その他、地方公共団体が定める方(DV被害者、刑余者、児童養護施設退所者など)
2025年10月改正の4つのポイント
2025年(令和7年)10月1日に施行された改正法のポイントを解説します。
ポイント1: 居住サポート住宅の創設
居住支援法人などが大家さんと連携し、入居者に対して以下のサポートを提供する「居住サポート住宅」が新設されました。
- ICT(センサー・スマートメーター・IoT家電など)を活用した1日1回以上の安否確認
- 月1回以上の訪問などによる見守り
- 困りごとが生じた際の福祉サービスへのつなぎ
ポイント2: 認定家賃債務保証業者制度の創設
要配慮者が利用しやすい家賃債務保証業者を国土交通大臣が認定する制度が創設されました。
- 居住サポート住宅に入居する要配慮者の家賃保証を原則断らない
- 緊急連絡先に親族以外の法人も可
- 住宅金融支援機構の家賃債務保証保険を利用できる
ポイント3: 残置物処理の仕組みづくり
入居者が亡くなった後の家財(残置物)の処理を円滑に行えるよう、居住支援法人の業務に「残置物処理」が追加されました。
生前に入居者と居住支援法人の間で残置物処理に関する契約を締結しておくことで、死亡後に居住支援法人が相続人に代わって処理を行います。
ポイント4: 終身建物賃貸借の推進
入居者の死亡時に賃貸借契約が終了する「終身建物賃貸借」の手続きが簡素化されました。
通常の賃貸借では入居者の死亡後に借家権が相続人に引き継がれますが、終身建物賃貸借では相続されないため、大家さんの負担が軽減されます。
これらの改正により、大家さんにとっても入居者にとっても安心できる環境が整備されました。
生活保護受給者が居住サポート住宅に入居する場合、家賃が自治体から大家さんに直接振り込まれる「代理納付」が原則となります。
セーフティネット住宅(登録住宅)の探し方と申し込み手続き
セーフティネット住宅とは
セーフティネット住宅(正式には「セーフティネット登録住宅」)は、住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅として都道府県等に登録された物件です。
一般の民間賃貸住宅と同じ物件ですが、高齢者や障害者であることを理由に入居を断られることがありません。
対象者
前述の「住宅確保要配慮者」に該当する方が対象です。
具体的には、以下のいずれかに当てはまる方です。
- 65歳以上の高齢者
- 障害者手帳をお持ちの方
- 月収15.8万円以下の低額所得者
- 18歳未満の子がいる世帯
- 被災者
- 外国人
- 各自治体が定める方
セーフティネット住宅情報提供システムでの探し方
セーフティネット住宅は、国土交通省「セーフティネット住宅情報提供システム」で検索できます。
探し方の手順は以下のとおりです。
- 上記サイトにアクセスする
- 「住宅を探す」を選択する
- 都道府県・市区町村を選択する
- 間取りや家賃などの条件を設定する
- 検索結果から物件の詳細を確認する
申し込みの流れ
- 情報提供システムで希望の物件を見つける
- 物件を管理する不動産会社に連絡する
- 通常の賃貸契約と同様に内見・申し込みを行う
- 家賃債務保証会社の審査を受ける(認定保証業者を利用可)
- 賃貸借契約を締結する
セーフティネット住宅は「入居を拒まない」住宅ですが、家賃の支払い能力等の一般的な審査はあります。
審査に不安がある場合は、居住支援法人に相談してサポートを受けることができます。
居住サポート住宅とは?入居条件とサポート内容
居住サポート住宅と通常の登録住宅の違い
居住サポート住宅は、2025年10月の法改正で新たに創設された制度です。
通常のセーフティネット登録住宅が「入居を拒まない」ことを主な特徴とするのに対し、居住サポート住宅は入居後の生活サポートまで提供する点が大きく異なります。
| 比較項目 | セーフティネット登録住宅 | 居住サポート住宅 |
|---|---|---|
| 入居拒否の禁止 | ○ | ○ |
| 安否確認(ICT活用) | × | ○(1日1回以上) |
| 訪問見守り | × | ○(月1回以上) |
| 福祉サービスへのつなぎ | × | ○ |
| 認定家賃保証の利用 | △(任意) | ○(原則利用可) |
| 代理納付(生活保護) | △(任意) | ○(原則) |
受けられるサポート内容
居住サポート住宅に入居すると、居住支援法人などから以下のサポートを受けられます。
- 日常の安否確認
センサーやスマートメーター、IoT家電などを活用して、異常がないか毎日確認されます。 - 定期的な訪問見守り
月に1回以上、担当者が訪問して生活状況を確認します。 - 福祉サービスへのつなぎ
体調の変化や生活上の困りごとが生じた場合、自治体の窓口や福祉事務所などの相談先を紹介してもらえます。
居住サポート住宅の探し方
居住サポート住宅は、国土交通省「居住サポート住宅情報提供システム」で検索できます。
- 上記サイトにアクセスする
- 地域や条件を設定して検索する
- 物件の詳細とサポート内容を確認する
- 問い合わせ先に連絡する
居住サポート住宅の認定は市区町村長が行います。
制度が開始されて間もないため、お住まいの地域にまだ認定住宅がない場合もあります。
その場合は、居住支援法人や居住支援協議会に相談してください。
居住支援法人・居住支援協議会への相談方法
居住支援法人とは
居住支援法人は、住宅確保要配慮者への支援を行う法人として都道府県から指定された団体です。
NPO法人、一般社団法人、社会福祉法人、不動産会社などが指定を受けており、全国で1,000を超える法人が活動しています。
相談できること
居住支援法人では、以下のような相談に対応しています。
- 賃貸物件の紹介・入居あっせん
- 家賃債務保証の支援
- 入居後の見守り・生活相談
- 福祉サービスや行政窓口への橋渡し
- 残置物処理に関する事前契約
居住支援法人の探し方
お住まいの地域の居住支援法人は、以下の方法で探せます。
- 国土交通省「住宅確保要配慮者居住支援法人について」で居住支援法人一覧PDFを確認
- お住まいの市区町村の住宅課や福祉課に問い合わせる
- 居住支援協議会に相談する
居住支援協議会とは
居住支援協議会は、自治体の住宅部局・福祉部局、不動産関係団体、福祉関係団体、居住支援法人などで構成される会議体です。
地域の居住支援に関する課題について、関係機関が連携して支援する「つながりの場」として機能しています。
2025年の法改正により、市区町村レベルでの設置がさらに推進されています。
よくある質問(FAQ)
Q. 保証人がいなくても入居できますか?
A. はい、保証人なしでも入居できる仕組みがあります。
認定家賃債務保証業者を利用すれば、緊急連絡先に親族以外の法人(居住支援法人など)を設定できます。
個人の保証人を立てられない方でも、家賃債務保証業者との契約で入居が可能です。
Q. 生活保護を受給していても利用できますか?
A. はい、利用できます。
住宅確保要配慮者には低額所得者も含まれており、生活保護受給者ももちろん対象です。
居住サポート住宅に入居する場合は、家賃が自治体から大家さんに直接振り込まれる「代理納付」が原則となるため、大家さんにとっても安心です。
Q. 家賃補助や経済的支援はありますか?
A. セーフティネット専用住宅では家賃低廉化補助を受けられる場合があります。
国と地方公共団体が連携して、入居者の家賃負担を軽減する家賃低廉化補助(月額最大4万円)が設けられています。
ただし、すべての登録住宅が対象ではなく、専用住宅(要配慮者のみ入居可能な住宅)が対象です。
詳しくはお住まいの自治体の住宅課にお問い合わせください。
Q. 公営住宅(都営・市営・県営住宅)との違いは何ですか?
A. セーフティネット住宅は民間の賃貸物件で、公営住宅とは運営主体や申し込み方法が異なります。
公営住宅は自治体が運営し、抽選で入居者を決定します。
一方、セーフティネット住宅は民間の大家さんが提供する物件で、一般の賃貸契約と同じ手続きで申し込めます。
公営住宅は倍率が高く入居が難しい場合も多いため、セーフティネット住宅は選択肢を広げる有効な手段です。
Q. 障害者手帳がなくても利用できますか?
A. はい、住宅確保要配慮者に該当すれば利用できます。
高齢者(65歳以上)、低額所得者、子育て世帯、外国人なども対象です。
障害者手帳をお持ちでなくても、いずれかの要件に該当すれば利用可能です。
まとめ
高齢者が賃貸住宅への入居を断られる問題は、住宅セーフティネット法の改正によって解決の道が開かれています。
この手続きガイドのポイントを振り返ります。
- セーフティネット住宅
住宅確保要配慮者の入居を拒まない登録住宅で、情報提供システムから検索できる - 居住サポート住宅
2025年10月に新設された制度で、安否確認・見守り・福祉サービスへのつなぎまでサポートを受けられる - 認定家賃債務保証業者
保証人がいなくても入居可能な仕組みが整備された - 居住支援法人・居住支援協議会
全国1,000超の法人に相談すれば、物件探しから入居後の生活支援まで幅広くサポートを受けられる
住まい探しに困ったら、まずはお住まいの地域の居住支援法人や市区町村の住宅課に相談してみましょう。