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公営住宅で収入超過認定されたら?家賃と退去の対処法

公営住宅で収入超過認定されたら?家賃と退去の対処法
最終更新:2026年6月15日

公営住宅(市営・県営・都営住宅)に住んでいて、ある日「収入超過者認定通知書」が届き、驚いた方も多いのではないでしょうか。

「子どもが就職したら、いきなり家賃が倍になった」
「収入が増えただけで、本当に退去しないといけないの?」
「税金や社会保険料を引かれた手取りは少ないのに、なぜ収入だけで判断されるの?」

公営住宅で収入が一定の基準を超えると「収入超過者」や「高額所得者」に認定され、家賃が上がったり、住宅の明け渡しを求められたりすることがあります。

ただし、この2つは意味がまったく異なり、すぐに強制退去になるわけではありません。

この手続きガイドでは、収入超過認定の仕組みと家賃の変わり方、同居を続けるか独立してもらうかの選択、申告や意見申出の手続き、転居先の探し方までをわかりやすく解説します。

1. 公営住宅の「収入超過」認定とは?まず仕組みを理解する

公営住宅は、公営住宅法に基づき、住宅に困っている低額所得者へ低廉な家賃で住宅を提供する制度です。

そのため、入居後に世帯の収入が増えて一定の基準を超えると、より収入の少ない人に住宅を譲るよう、家賃の割増や住宅の明け渡しを促す仕組みが設けられています。

この「収入が基準を超えた状態」には、超過の度合いによって次の2つの段階があります。

認定区分主な条件家賃明け渡し
収入超過者3年以上入居+収入基準を超過段階的に割増努力義務(任意)
高額所得者5年以上入居+2年連続で高額基準を超過民間並み(近傍同種家賃)請求の対象(義務)
重要

「収入超過者」に認定されても、ただちに強制退去になるわけではありません。
強い退去義務が生じるのは、より収入が高い「高額所得者」に認定された場合です。まずは自分がどちらに該当するのかを正しく把握することが大切です。

2. 収入超過者と高額所得者の違い - あなたはどっち

通知書に書かれている認定区分によって、家賃や退去の扱いは大きく変わります。

それぞれの要件と効果を確認しましょう。

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2-1. 収入超過者(3年以上の入居+基準超過)

次の2つをどちらも満たすと「収入超過者」に認定されます。

  • 入居期間
    公営住宅に引き続き3年以上入居していること。
  • 収入基準
    政令月収(後述)が、本来の入居基準である15万8,000円を超えていること。
裁量階層は基準が高くなります

高齢者世帯(60歳以上等)、障害者世帯、小学校就学前の子どもがいる世帯などは「裁量階層」として、収入基準が引き上げられます。
国の標準では21万4,000円ですが、政令上限の25万9,000円以下の範囲で事業主体(自治体)が条例で定めるため、地域によって異なる場合があります。

収入超過者になると、次の2つの扱いを受けます。

  • 明け渡しの努力義務
    住宅を明け渡すよう努める義務が生じますが、あくまで「努力義務」であり、強制的に退去させられることはほとんどありません。
  • 割増家賃
    本来の家賃に割増分が加算されます。
    超過の度合いと収入超過者になってからの年数に応じて、家賃は段階的に上がっていきます。

2-2. 高額所得者(5年以上の入居+2年連続の超過)

次の条件をすべて満たすと、収入超過者よりも重い「高額所得者」に認定されます。

  • 入居期間
    公営住宅に引き続き5年以上入居していること。
  • 収入基準
    最近2年間連続して、高額認定月額が31万3,000円を超えていること。

高額所得者になると、次の扱いを受けます。

  • 明け渡し請求の対象
    事業主体(自治体)は、期限を定めて住宅の明け渡しを請求できます。
    収入超過者の「努力義務」と異なり、明け渡しの義務が生じます。
  • 近傍同種の住宅の家賃
    家賃は、周辺の民間賃貸住宅と同程度の水準(近傍同種の住宅の家賃)になります。
比較項目収入超過者高額所得者
入居年数3年以上5年以上
収入の超過基準を超過2年連続で高額基準(31万3,000円)超
家賃段階的に割増民間並み(近傍同種家賃)
退去努力義務(任意)明け渡し請求の対象(義務)
強制力ほぼなし期限後は損害金・提訴もあり得る

公営住宅と民間賃貸・UR賃貸の収入基準や家賃の決まり方の違いは、次の手続きガイドでも比較しています。

3. 収入基準の判定方法 - 政令月収の計算

収入超過の判定で使われるのは、給与明細に書かれている「手取り額」ではありません。

「政令月収(収入認定月額)」という、所得をもとに計算した独自の金額です。

注意

政令月収は所得をもとに計算されるため、社会保険料や税金、住宅ローン、養育費などの支出は一切考慮されません。
「手取りは少ないのに収入超過と言われた」と感じるのは、この仕組みが理由です。

3-1. 政令月収の計算方法

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政令月収は、次の流れで計算します。

  1. 世帯員全員の前年(1月〜12月)の所得金額を合計する
  2. 合計額から、各種の控除額を差し引く
  3. 控除後の金額を12で割る(1か月あたりに換算する)

差し引ける主な控除は次のとおりです。

控除の種類控除額(1人あたり)対象
同居親族控除・扶養控除38万円控除対象配偶者・扶養親族
特定扶養控除(加算)25万円16歳以上23歳未満の扶養親族
老人扶養・老人配偶者控除(加算)10万円70歳以上の扶養親族・控除対象配偶者
障害者控除27万円(特別障害者40万円)障害のある世帯員
寡婦控除27万円寡婦に該当する人
ひとり親控除35万円ひとり親に該当する人
給与所得者・年金受給者控除10万円給与所得・公的年金等のある世帯員

計算した政令月収が次の金額を超えると、認定の対象になります。

  • 15万8,000円超(本来階層)
    3年以上の入居で「収入超過者」に該当。
  • 21万4,000円超(裁量階層)
    高齢者・障害者・就学前の子がいる世帯などの収入超過の基準。
  • 31万3,000円超(2年連続・5年以上入居)
    「高額所得者」に該当。

3-2. 政令月収をシミュレーションしてみる

世帯のおおよその政令月収は、以下のシミュレーターで確認できます。

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お住まいの自治体の収入基準や計算方法は、地域によって運用が異なる場合があります。

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4. 収入超過で家賃はいくら上がるのか

「家賃が昨年の倍以上になった」という声は、収入超過者になった世帯から実際によく聞かれます。

ここでは、家賃がどのように上がっていくのかを確認します。

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4-1. 収入超過者の割増家賃

収入超過者の家賃は、次の式で計算されます。

  • 収入超過者の家賃
    本来家賃+(近傍同種の住宅の家賃−本来家賃)×収入区分に応じた率

割増の率は、収入の超過度合いと、収入超過者になってからの年数に応じて段階的に大きくなります。

つまり、収入超過の状態が続くほど家賃は上がっていき、最終的には周辺の民間賃貸住宅と同程度(近傍同種の住宅の家賃)に近づいていきます。

4-2. 高額所得者の家賃

高額所得者に認定されると、割増の段階を経ずに、家賃は近傍同種の住宅の家賃(民間賃貸並み)になります。

公営住宅としての低廉な家賃ではなくなるため、負担は大きく増えることになります。

収入の申告を忘れると最も高い家賃になります

毎年の収入申告を提出しないと「収入未申告者」として扱われ、収入額にかかわらず近傍同種の住宅の家賃(民間並みの家賃)を課されることがあります。
申告書が届いたら、必ず期限内に提出してください。

5. 収入超過認定されたときの3つの選択肢

収入超過の通知が届いたとき、取れる対応は大きく3つに分かれます。

世帯の状況に合わせて検討しましょう。

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5-1. 割増家賃を払って住み続ける

収入超過者の段階であれば、明け渡しは努力義務にとどまるため、割増家賃を払って住み続けることもできます。

引っ越しの負担が大きい世帯や、高額所得者の基準には届かない世帯では、現実的な選択肢になります。

ただし、収入超過の状態が続くと家賃は段階的に上がり、5年以上の入居で2年連続して高額基準を超えると高額所得者となり、明け渡し請求の対象になる点には注意が必要です。

5-2. 子どもが独立して世帯分離する

子どもの就職で世帯収入が増えて超過した場合、子どもが独立して別世帯になれば、世帯の収入が下がり認定を外れる可能性があります。

  • 同居をやめる(転出)
    所得のある子どもが転出して別の住まいに移れば、その子どもの所得は世帯収入から外れます。
  • 高額認定では子の所得を控除
    高額所得者の判定に使う「高額認定月額」では、本人・配偶者以外の同居者(子どもなど)の所得について、1人あたり124万8,000円までを差し引いて計算します。
    子どもの独立を前提とした特別な控除が設けられています。

5-3. 転居して住み替える

家賃が民間並みに上がるのであれば、UR賃貸や民間賃貸など、ほかの住まいへの住み替えを検討する方法もあります。

転居先の探し方は「7. 転居先を探す - 公的住宅と相談窓口」で詳しく解説します。

選択肢向いているケース主な注意点
住み続ける引っ越しが難しい/高額所得者でない家賃が段階的に上がる
子の世帯分離子の就職で超過した子の転出先・生活設計が必要
転居する家賃が民間並みになる/高額所得者転居費用・転居先の確保

6. 収入申告・意見申出の手続き

認定は毎年の収入申告をもとに行われます。

状況の変化があれば、意見申出によって認定を見直してもらえる場合があります。

6-1. 毎年の収入申告

公営住宅の入居者は、毎年決められた時期に収入を申告する義務があります。

この申告内容をもとに、翌年度の家賃と認定区分(本来入居者・収入超過者・高額所得者)が決まります。

申告には、主に次の書類が必要です。

  • 収入申告書(自治体・住宅供給公社から送付される様式)
  • 源泉徴収票、確定申告書の控えなど所得を証明する書類
  • 在職証明書、年金額がわかる書類(必要な場合)
ポイント

申告書の書き方がわからないときは、自分で抱え込まず、管理する自治体の窓口や住宅供給公社に問い合わせましょう。
記入方法を案内してもらえます。

6-2. 意見申出で認定を見直してもらう

収入が下がる見込みがある場合や、所得のある世帯員が抜ける予定がある場合は、「意見申出」の手続きで認定を見直してもらえる可能性があります。

意見申出が有効なケースの例は次のとおりです。

  • 退職・転職で収入が下がる予定がある
    近く退職する、収入が大きく減るなど、現在の収入が継続しない事情があるとき。
  • 所得のある世帯員が転出する予定がある
    同居する子どもなどが独立・転出し、世帯収入が下がる見込みがあるとき。

これらの事情があると、認定が高額所得者の基準を下回る可能性があります。

具体的な時期や見込みが決まったら、必要書類を用意して早めに相談しましょう。

6-3. 収入が下がったときは家賃の減免も

失業・病気・収入の大幅な減少などで家賃の支払いが苦しいときは、家賃の減免制度を利用できる場合があります。

減免の条件や申請方法は自治体ごとに異なるため、管理窓口に相談してください。

7. 転居先を探す - 公的住宅と相談窓口

転居を選ぶ場合でも、いきなり民間の高い賃貸を探す必要はありません。

公的な住宅にも、収入超過後の住み替え先として検討できる選択肢があります。

7-1. 公的な住宅の選択肢

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  • UR賃貸住宅
    収入基準が公営住宅と異なり、礼金・更新料・保証人が不要。
    収入が一定以上ある世帯でも申し込みやすい住宅です。
  • 特定優良賃貸住宅(特優賃)
    中堅所得者向けの賃貸住宅で、家賃補助が受けられる場合があります。
  • 住宅供給公社・自治体の賃貸住宅
    公社の一般賃貸住宅や、自治体の定住促進住宅など。
  • 住宅セーフティネット制度の登録住宅
    高齢者・障害者・子育て世帯などが入居しやすい民間賃貸住宅。

UR賃貸と公営住宅の違いは、次の手続きガイドで詳しく比較しています。

高齢の世帯が住み替え先を探す場合は、住宅セーフティネット制度の活用も検討できます。

7-2. 相談窓口を活用する

転居先選びや手続きに迷ったら、自治体の住まいの相談窓口を利用しましょう。

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8. よくある質問(FAQ)

Q. 収入超過者と高額所得者は何が違いますか?

A. 入居年数・収入の水準・退去の強制力が異なります。

収入超過者は、3年以上入居して収入基準(政令月収15万8,000円、裁量階層21万4,000円)を超えた世帯で、明け渡しは努力義務にとどまります。

高額所得者は、5年以上入居して2年連続で高額基準(31万3,000円)を超えた世帯で、明け渡し請求の対象となり、家賃も民間並みになります。

Q. 子どもが就職して超過しました。子どもが独立すれば認定を外れますか?

A. 外れる可能性があります。

世帯収入が増えた原因が子どもの所得であれば、子どもが独立して別世帯になることで、世帯の収入が下がり認定の対象から外れることがあります。

高額所得者の判定では、同居する子どもの所得を1人あたり124万8,000円まで差し引いて計算します。

転出の予定が決まったら、意見申出の手続きを管理窓口に相談してください。

Q. 高額所得者になると、すぐに退去しなければなりませんか?

A. すぐに強制退去にはならず、法律上の手続きを経て進められます。

事業主体が期限を定めて明け渡しを請求し、その期限までに退去するのが原則です。

この明け渡しの期限は、請求の翌日から数えて6か月以上先に設定することと法律で定められているため、すぐに出ていく必要はありません。

さらに、病気にかかっているなど条例で定める特別の事情がある場合は、申し出によって明け渡しの期限を延長してもらえることがあります。

一方、期限を過ぎても住み続けた場合は、契約を解除されたうえで、近傍同種の住宅の家賃の2倍に相当する損害金を請求され、最終的に明け渡しを求める訴訟に進むこともあります。

Q. 収入超過者の1年目でも退去になりますか?

A. なりません。

収入超過者の段階では明け渡しは努力義務であり、強制的に退去させられることはほとんどありません。

ただし、超過の状態が続くと家賃は段階的に上がり、要件を満たすと高額所得者に認定される点には注意が必要です。

Q. 高齢者や障害者、小さな子どもがいても退去しないといけませんか?

A. 高額所得者の明け渡し請求を免れる直接の理由にはなりません。

法令では収入をもとに判断するため、高齢・障害・子育てなどの事情があっても、それだけで明け渡しを免れることはできません。

ただし、これらの世帯は「裁量階層」として収入超過の基準が高く設定されており、認定されにくくなっています。

転居が難しい事情がある場合は、早めに管理窓口へ相談しましょう。

Q. いったん上がった家賃は、収入が下がれば元に戻りますか?

A. 翌年度以降の収入申告に応じて見直されます。

家賃や認定区分は、毎年の収入申告をもとに毎年度決め直されます。

収入が下がれば、翌年度の家賃も下がる可能性があります。

退職や世帯員の転出など年度途中の変化は、意見申出で見直しを求められる場合があります。

まとめ

公営住宅で収入超過の認定を受けても、ただちに退去になるわけではありません。

ポイントを整理します。

  • 2段階の認定がある
    収入超過者(3年以上+基準超過)は明け渡し努力義務と割増家賃、高額所得者(5年以上+2年連続で31万3,000円超)は明け渡し請求の対象で家賃は民間並み。
  • 判定は所得ベースの「政令月収」
    手取りや支出ではなく、世帯の所得から控除を引いた金額で判断される。
  • 選択肢は3つ
    割増家賃を払って住み続ける、子どもが独立して世帯分離する、転居して住み替える。
  • 手続きで状況は変えられる
    毎年の収入申告を忘れず、退職や世帯員の転出予定があれば意見申出で認定の見直しを求められる。
  • 転居先には公的住宅も
    UR賃貸や特定優良賃貸住宅、住宅セーフティネット制度の住宅なども検討できる。

認定区分や収入基準の運用は自治体ごとに異なります。

通知書の内容に不安があるときは、まず管理する自治体や住宅供給公社の窓口に相談することから始めましょう。

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