相続した空き家の売却・解体・管理の手続きガイド
「親から実家を相続したけれど、誰も住まないまま放置している」
「売るべきか、壊すべきか、それとも持ち続けるべきか決められない」
「税金や費用が心配で、何から手をつければいいか分からない」
——そんな空き家の悩みを抱えている方は少なくありません。
空き家は放置するほど固定資産税の負担が増え、建物も傷んで選択肢が狭まっていきます。
この手続きガイドでは、相続した空き家の「売却」「解体」「管理」という3つの選択肢ごとの手続きと費用、使える税制や補助金、さらに最近広がっている銀行の空き家ワンストップサービスまで、順を追って解説します。
1. 空き家を放置するとどうなる?4つのリスク
空き家を「とりあえずそのまま」にしておくと、時間の経過とともにリスクが膨らみます。
まずは放置によって何が起きるのかを押さえておきましょう。
1-1. 固定資産税が最大6倍になることがある
住宅が建っている土地は「住宅用地の特例」によって固定資産税が軽減されています。
具体的には、200平方メートル以下の部分(小規模住宅用地)で課税標準額が6分の1、200平方メートルを超える部分でも3分の1に軽減されます。
しかし、2023年12月施行の改正空家等対策特別措置法により、適切に管理されていない空き家が「管理不全空家」や「特定空家」に指定され、市区町村から勧告を受けると、この住宅用地特例が解除されます。
「管理不全空家」は、放置すれば「特定空家」になるおそれがある前段階の区分で、改正によって新たに設けられました。
その結果、軽減がなくなり、固定資産税が実質的に最大で約6倍になることがあります。
管理不全空家・特定空家に指定され勧告を受けると、住宅用地特例が外れて固定資産税が最大約6倍になります。
「住んでいないから安い」とは限りません。放置は税負担を増やす原因になります。
1-2. 建物の劣化と近隣トラブル
人が住まなくなった家は、換気や通水が止まることで急速に傷みます。
屋根や外壁の破損、雑草の繁茂、害虫・害獣の発生、不法投棄などが起こり、近隣に迷惑をかけることになります。
万が一、台風で屋根材が飛んだり、ブロック塀が倒れて通行人がケガをしたりすれば、所有者が損害賠償責任を問われる可能性もあります。
1-3. 特定空家に指定され行政代執行されることも
倒壊の危険や著しく衛生上有害な状態など、周囲に深刻な悪影響を及ぼす空き家は「特定空家」に指定されます。
指定後、助言・指導 → 勧告 → 命令と段階的に行政が関与し、それでも改善されない場合は、最終的に行政が所有者に代わって強制的に解体する「行政代執行」が行われます。
このとき、解体費用は所有者に請求されます。
1-4. 資産価値が下がり売りにくくなる
建物は古くなるほど価値が下がり、傷みが進めば「古家付き土地」としての評価も下がります。
後述する相続空き家の3,000万円特別控除には期限があるため、放置している間に節税のチャンスを逃すことにもなりかねません。
空き家は「早めに動くほど選択肢が多く、損が少ない」のが基本です。
2. 最初に確認すべき「相続登記」
空き家をどうするにしても、まず大前提となるのが名義の確認です。
売却も解体も、原則として名義人(または相続人全員の合意)でなければ進められません。
2-1. 相続登記が2024年4月から義務化
2024年4月1日から、相続登記が義務化されました。
不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請しなければならず、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります。
この義務化は、施行前に発生した過去の相続にもさかのぼって適用されます。
2024年4月1日より前に相続した不動産も義務化の対象です。
その場合は、2024年4月1日と「相続を知った日」のいずれか遅い日から3年以内に登記する必要があります。
2-2. 名義が祖父母のままになっているケース
実家の名義が祖父母など、すでに亡くなった世代のままになっていることもあります。
この場合は、世代をさかのぼって相続人を確定し、複数の相続人で遺産分割協議を行う必要があり、手続きが複雑になります。
放置するほど相続人が増えて合意が難しくなるため、早めの着手が肝心です。
相続全体の流れや相続税については、以下の手続きガイドもあわせて確認してください。
2-3. 相続後の手続き期限を確認する
空き家にかかわる手続きには、相続の開始(被相続人の死亡)を起点とした期限がいくつもあります。
下記のツールに相続の開始日を入力すると、主な期限の目安を確認できます。
3. 空き家の3つの選択肢を整理する
相続した空き家の使い道は、大きく次の3つに分けられます。
- 売却する
古家付き土地・更地・中古住宅として手放し、現金化する。 - 解体して土地として活用・売却する
建物を取り壊し、更地にして売却したり駐車場などに活用したりする。 - 保有して管理する(賃貸・活用を含む)
当面は手元に残し、定期的に管理する。賃貸に出す選択肢もある。
どれを選ぶかは、立地・建物の状態・費用・税制によって変わります。
下の表を目安に、自分のケースに近い方向性を考えてみましょう。
| 状況 | 向いている選択肢 |
|---|---|
| 立地が良く、建物もまだ使える | 中古住宅として売却、または賃貸 |
| 建物が古く価値がないが、土地に需要がある | 古家付き土地で売却、または解体して更地で売却 |
| すぐに手放せないが、将来活用の可能性がある | 管理しながら保有 |
| 売れず活用も難しく、手放したい | 解体+相続土地国庫帰属制度の検討 |
「売却」と「解体」は対立する選択肢ではありません。
古家付きのまま売る方法と、解体して更地で売る方法のどちらが有利かは、買主のニーズや解体費用・税制によって変わります。
不動産会社に両方のパターンで査定してもらうのがおすすめです。
4. 空き家を売却する手続き
空き家を手放す方法として、最も一般的なのが売却です。
4-1. 売却の流れ
空き家の売却は、おおむね次のステップで進みます。
- 相続登記を済ませ、名義を相続人に変更する
- 不動産会社に査定を依頼する(複数社に依頼するのが基本)
- 媒介契約(専任・専属専任・一般)を結ぶ
- 売り出し・内覧対応を行う
- 買主と売買契約を結ぶ
- 決済・引き渡し、所有権移転登記を行う
4-2. 必要な書類
売却時には、主に次のような書類が必要です。
- 登記識別情報(権利証)
- 本人確認書類・実印・印鑑証明書
- 固定資産税納税通知書
- 相続登記後の登記事項証明書
- 建築確認済証・検査済証(あれば)
4-3. 売却にかかる費用
売却では、次のような費用がかかります。
- 仲介手数料
売買価格が400万円超の場合、「売買価格×3%+6万円+消費税」が上限です。
なお、2024年7月の改正で、800万円以下の低廉な空き家等は売主からの仲介手数料の上限が最大33万円(税込)とされ、安い物件でも一定の手数料がかかる点に注意が必要です。 - 登記費用
相続登記の登録免許税(固定資産税評価額の0.4%)や、司法書士への報酬。 - 印紙税
売買契約書に貼る印紙代。 - 譲渡所得税・住民税
売却益が出た場合にかかる(詳しくは次章)。
4-4. 古家付き土地・更地・中古住宅の違い
空き家の売り方には、主に3つのパターンがあります。
- 中古住宅として売る
建物に住める価値が残っている場合。 - 古家付き土地として売る
建物の価値はほぼゼロとし、土地値で売る。買主が解体前提で購入することが多い。 - 更地にして売る
自分で解体してから売る。買主は見つかりやすいが、解体費用を先に負担する必要がある。
家の売却全般の流れ・費用・税金については、以下の手続きガイドで詳しく解説しています。
5. 売却時の税金と「3,000万円特別控除」
空き家を売って利益(譲渡所得)が出ると、所得税・住民税がかかります。
ここで非常に重要になるのが、相続した空き家に使える特別控除です。
5-1. 譲渡所得税の仕組み
譲渡所得は、おおまかに「売却価格 −(取得費+譲渡費用)− 特別控除」で計算します。
取得費が不明な場合(古い実家などで購入時の資料がない場合)は、売却価格の5%を概算取得費とすることができます。
所有期間が5年を超える「長期譲渡所得」なら、税率は所得税15%・住民税5%です(これに復興特別所得税が所得税額の2.1%上乗せされ、所得税は実質15.315%になります)。
なお、相続した不動産の所有期間は、被相続人が取得した日から引き継いで計算します。
5-2. 相続空き家の3,000万円特別控除
相続した空き家を売却するとき、一定の要件を満たすと譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります。
正式名称は「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」です。
主な要件は次のとおりです。
- 適用期間
平成28年4月1日から令和9年(2027年)12月31日までの売却。 - 建物の要件
昭和56年5月31日以前に建築され、区分所有建物(マンション)ではなく、相続開始の直前に被相続人が一人で住んでいたこと。 - 売却の期限
相続開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。 - 売却代金
1億円以下であること。 - 利用状況
相続のときから売却まで、事業用・貸付用・居住用に使っていないこと。
控除額は最高3,000万円ですが、令和6年1月1日以後の売却で、その家屋・敷地を取得した相続人が3人以上いる場合は、1人あたり2,000万円までに縮小されます。
この特例を受けるには、次のいずれかの形で売る必要があります。
- 家屋を一定の耐震基準に適合させてから(または適合した状態で)売る
- 家屋を取り壊して、更地にした敷地を売る
- (令和6年以降)売却後、翌年2月15日までに買主が耐震改修または取り壊しを行う
5-3. 必要書類と確定申告
この特例の適用を受けるには、確定申告が必要です。
主な必要書類は次のとおりです。
- 譲渡所得の内訳書
- 売った資産の登記事項証明書
- 市区町村長が発行する「被相続人居住用家屋等確認書」
- 耐震基準適合証明書(耐震改修して売る場合)
- 売買契約書の写し(売却代金が1億円以下であることの確認)
「被相続人居住用家屋等確認書」は、空き家のある市区町村で交付を受ける必要があり、申請から交付まで時間がかかることもあるため、早めに準備しましょう。
3,000万円特別控除は「相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」に売却する必要があります。
解体や買主探しに時間がかかると間に合わないことがあるため、相続したら早めに動き始めることが大切です。
6. 空き家を解体する手続き
更地で売りたい場合や、老朽化が進んで危険な場合は、解体を選びます。
6-1. 解体の流れ
解体は、次のような流れで進みます。
- 複数の解体業者から見積もりを取る
- 業者と契約する
- 自治体への届出(建設リサイクル法の対象なら工事7日前までに届出)、近隣への挨拶
- ライフライン(電気・ガス・水道)の停止手続き
- 解体工事を行う
- 廃棄物の処理(マニフェストで確認)
- 建物滅失登記を申請する
6-2. 解体費用の相場
解体費用は、建物の構造と延床面積でおおよそ決まります。
構造別の坪単価の目安は次のとおりです。
- 木造: 1坪あたり約3万〜5万円
- 鉄骨造: 1坪あたり約4万〜7万円
- 鉄筋コンクリート造(RC造): 1坪あたり約6万〜9万円
これに加えて、残置物(家財道具)の処分費、ブロック塀や庭木の撤去費、整地費などが上乗せされます。
道路が狭く重機が入れない土地や、アスベストを含む建材がある場合は、さらに費用がかかります。
特に古い建物の解体では、事前にアスベスト(石綿)の調査が義務づけられており、含有が判明すると除去費用と工期が上乗せされます。
3,000万円特別控除の対象となる昭和56年以前の建物は、アスベストを含む可能性が高い点に留意しましょう。
下のシミュレーターで、おおよその解体費用を確認できます。
6-3. 自治体の解体補助金
多くの自治体では、老朽化した危険な空き家の解体に対して補助金(助成金)を用意しています。
「老朽危険空き家除却補助金」などの名称で、解体費用の一部(2分の1や上限数十万円など)を補助する制度が代表的です。
ただし、対象となる建物の条件(築年数・危険度の判定など)や補助額は自治体ごとに大きく異なり、予算の上限に達すると受付が終了します。
工事を始める前に申請が必要な場合がほとんどなので、解体を決めたらまず自治体に確認しましょう。
お住まいの地域の補助金は、以下から調べられます。
6-4. 建物滅失登記を忘れずに
建物を解体したら、解体後1ヶ月以内に「建物滅失登記」を申請する義務があります。
これを怠ると、存在しない建物に固定資産税が課され続けたり、土地の売却に支障が出たりします。
滅失登記は自分でも申請できますが、土地家屋調査士に依頼することもできます。
6-5. 解体後は固定資産税が上がる点に注意
建物を解体して更地にすると、住宅用地特例が外れ、土地の固定資産税が上がります。
最大で約6倍になることもあるため、「いつ解体するか」はタイミングが重要です。
固定資産税は1月1日時点の状況で課税されるため、売却の見込みが立ってから解体する、年明けすぐに解体するなど、タイミングを工夫すると負担を抑えられます。
解体費用・滅失登記・補助金・固定資産税への影響については、以下の手続きガイドで詳しく解説しています。
7. 空き家を保有して「管理」する方法
すぐに売却・解体しない場合でも、空き家は適切に管理する必要があります。
放置すれば、前述のリスク(固定資産税アップ・近隣トラブル・特定空家指定)につながります。
7-1. 最低限必要な管理
空き家を健全に保つには、月1回程度の管理が目安です。
- 換気・通水
窓を開けて湿気を逃がし、蛇口やトイレの水を流して配管の劣化・悪臭を防ぐ。 - 清掃・庭木の手入れ
室内のホコリ取りや、雑草・庭木の剪定で景観を保つ。 - 郵便物の確認
ポストにたまった郵便物は、空き家であることを知らせる目印になるため回収する。 - 建物の点検
雨漏り・外壁の破損・シロアリなどの異常がないか確認する。
7-2. 遠方の場合は管理代行サービス
遠方に住んでいて自分で通えない場合は、空き家管理代行サービスを利用する方法があります。
民間業者やNPO、シルバー人材センターなどが提供しており、費用は月額5,000円〜1万円程度が一つの目安です(頻度・内容により変動)。
換気・通水・通風・庭の手入れ・写真付き報告などを代行してくれます。
自治体やお住まいの地域の管理サービス・空き家バンクの情報は、以下から確認できます。
7-3. 賃貸・活用という選択肢
立地や建物の状態によっては、賃貸に出したり、リフォームして活用したりする選択肢もあります。
ただし、賃貸として貸し出すと、その後に売却しても相続空き家の3,000万円特別控除が使えなくなる点には注意が必要です(相続から売却まで貸付用に使っていないことが要件のため)。
活用と売却のどちらを優先するかは、税制への影響も含めて検討しましょう。
8. 相続放棄を考えている場合の注意点
「価値がなく、管理もできない空き家なら相続したくない」と考える方もいます。
その場合の相続放棄について、注意点を整理します。
8-1. 相続放棄は3ヶ月以内・全財産が対象
相続放棄は、相続の開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります。
また、相続放棄をすると、空き家だけでなく預貯金などのプラスの財産もすべて相続できなくなります。
「空き家だけ放棄する」ということはできない点に注意してください。
相続財産を処分したり、解体を進めたりすると、「相続を承認した」とみなされて相続放棄ができなくなることがあります。
相続放棄を検討している場合は、財産に手をつける前に専門家へ相談してください。
8-2. 相続放棄後も管理義務が残ることがある
2023年4月施行の改正民法により、相続放棄をした人が負う管理義務(保存義務)の範囲が明確になりました。
保存義務を負うのは、相続放棄の時点でその財産を「現に占有している」者に限られます(民法940条)。
つまり、遠方に住んでいて空き家に住んでもいない・占有もしていない人は、相続放棄をすれば原則として保存義務を負いません。
一方、その空き家に住んでいた相続人などは、放棄後も他の相続人や相続財産清算人に引き渡すまで保存義務を負います。
相続放棄の期限・費用・手続きの流れは、以下の手続きガイドで詳しく解説しています。
8-3. 相続土地国庫帰属制度
「相続はするが、不要な土地を手放したい」という場合には、相続土地国庫帰属制度を利用できることがあります。
これは、相続・遺贈で取得した土地を、一定の要件のもとで国に引き取ってもらえる制度です(2023年4月開始)。
ただし、次の点に注意が必要です。
- 建物がある土地は対象外
建物を解体して更地にする必要がある。 - 費用がかかる
審査手数料は土地1筆あたり14,000円、さらに承認時に負担金(原則20万円〜、宅地は面積等で変動)が必要。
利用には法務局での審査があり、誰でも・どんな土地でも引き取ってもらえるわけではありません。
9. 銀行の「空き家ワンストップサービス」を活用する
「売却・解体・管理のどれがいいか分からない」「相談する相手がいない」という方の助けになるのが、銀行の空き家ワンストップサービスです。
9-1. どんなサービスか
これまで、金融機関の空き家対策といえば解体・リフォーム向けのローン提供が中心でした。
しかし近年は、銀行が窓口となって所有者の希望を聞き、管理・売却・賃貸・解体・遺品整理などの専門業者を紹介し、解決まで伴走するワンストップ型のサービスが登場しています。
代表例が、埼玉りそな銀行が2025年9月末に本格提供を始めた「空き家まるごと解決システム」です。
9-2. 相談無料・伴走型のサポート
埼玉りそな銀行の例では、次のような特徴があります。
- 相談は無料
銀行窓口への空き家相談自体には費用がかからない(紹介先の業者と契約すれば、その費用は発生)。 - 幅広い分野をカバー
空き家管理・遺品整理・売却・賃貸・空き家再生・解体・リフォームなどを、連携する地域の専門業者が担当。 - 銀行が伴走
銀行が進捗を確認し、相談者が希望する限りサポートを続ける。
9-3. 空き家専用ローン
解体費用や取得・改装費用に使える「空き家専用ローン」を用意している銀行もあります。
まとまった解体費用をすぐに用意できない場合の選択肢になります。
9-4. 利用時の注意点
銀行のワンストップサービスは便利ですが、次の点に注意しましょう。
- 地域が限定される
埼玉りそな銀行のサービスは、原則として所有者が埼玉県内に住んでいるか、空き家が県内にある場合が対象です。
サービスは地域に根ざして提供されています。 - 必ず解決するとは限らない
特に売却は、立地によっては査定額が低い・買い手がつかない場合もあります。
滋賀銀行・島根銀行・武蔵野銀行・北九州銀行など、各地の地方銀行でも空き家活用ローンや相談対応の動きが広がっています。
まずは取引のある金融機関に、空き家対策の窓口があるか確認してみるとよいでしょう。
9-5. 公的な相談窓口も活用する
銀行以外にも、無料で使える相談先があります。
- 市区町村の空き家相談窓口
- 空き家バンク(自治体が物件情報をマッチング)
- 自治体が開催する空き家相談会(弁護士・司法書士・宅建士など専門家が対応)
これらを組み合わせて、自分に合った進め方を見つけましょう。
10. よくある質問(FAQ)
Q. 相続放棄すれば、空き家の管理義務から完全に逃れられますか?
A. 占有していなければ、原則として義務を負いません。
2023年4月施行の改正民法により、相続放棄後に保存義務を負うのは、放棄時点で空き家を「現に占有している」人に限られます。
遠方に住んでいて空き家を占有していない人は、相続放棄をすれば原則として管理義務を負いません。
ただし、その家に住んでいた人などは放棄後も引き渡しまで義務が残るため、自分のケースを専門家に確認すると安心です。
Q. 解体してから売るのと、古家付きで売るのはどちらが得ですか?
A. ケースによって異なるため、両方で比較するのがおすすめです。
解体すれば買い手は見つかりやすくなりますが、解体費用を先に負担し、更地にすると固定資産税も上がります。
一方、古家付き土地のまま売れば解体費用はかかりませんが、買い手が限られることがあります。
相続空き家の3,000万円特別控除は更地でも家屋付きでも一定の要件で使えるため、税制も含めて不動産会社に両パターンで試算してもらいましょう。
Q. 3,000万円特別控除は、兄弟で分けて相続した場合も使えますか?
A. 各相続人がそれぞれ要件を満たせば使えます。
ただし、令和6年1月1日以後の売却で、その家屋・敷地を取得した相続人が3人以上いる場合は、1人あたりの控除額が2,000万円までに縮小されます。
また、売却代金1億円以下の判定は、共有者全員の売却代金を合算して行う点にも注意が必要です。
Q. 遠方の空き家を自分で管理できないときはどうすればいいですか?
A. 空き家管理代行サービスの利用を検討しましょう。
民間業者やシルバー人材センターなどが、月額5,000円〜1万円程度から換気・通水・庭の手入れ・状況報告を代行してくれます。
自治体の空き家バンクや相談窓口でも、地域の管理サービスを紹介してもらえることがあります。
Q. 固定資産税が6倍になるのは、どんなときですか?
A. 「管理不全空家・特定空家」に指定され、勧告を受けたときです。
適切に管理されず周囲に悪影響を及ぼす空き家は、市区町村から管理不全空家・特定空家に指定されることがあります。
勧告を受けると住宅用地特例が解除され、土地の固定資産税の軽減がなくなり、結果として最大で約6倍になることがあります。
なお、自分で建物を解体して更地にした場合も、同様に住宅用地特例は外れます。
Q. 相続税を払った場合、売却時に使える特例はありますか?
A. 「取得費加算の特例」を検討できます。
相続税を納めた相続人が、相続税の申告期限の翌日から3年以内に相続財産を売却した場合、納めた相続税の一部を取得費に加算でき、譲渡所得を抑えられます。
ただし、同じ資産については相続空き家の3,000万円特別控除と取得費加算の特例を重ねて使うことは原則できず、どちらか有利な方を選ぶことになります。
どちらが得かは金額によって変わるため、税理士に試算してもらうと安心です。
11. まとめ
相続した空き家は、放置するほど固定資産税の負担が増え、建物も傷んで選択肢が狭まっていきます。
最後に、押さえておきたいポイントを整理します。
- まず相続登記を済ませる
2024年4月から義務化され、3年以内に登記しないと10万円以下の過料の対象。
過去の相続も対象。 - 「売却・解体・管理」の選択肢を整理する
立地・建物の状態・費用・税制をふまえ、不動産会社に複数パターンで査定してもらう。 - 税制と期限を意識する
相続空き家の3,000万円特別控除は2027年12月31日まで。
相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までの売却が条件。 - 解体は補助金とタイミングを確認
自治体の解体補助金は工事前の申請が原則。
更地化で固定資産税が上がる点にも注意。 - 一人で抱え込まない
銀行のワンストップサービスや自治体の相談窓口・空き家バンクを活用する。
空き家は「早めに動くほど損が少ない」のが基本です。
期限のある制度も多いため、相続したらできるだけ早く方向性を決め、必要な手続きを進めていきましょう。