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不動産の個人間売買〜手続き・リスク・税金を解説

不動産の個人間売買〜手続き・リスク・税金を解説
最終更新:2026年6月15日

「自宅を売ろうとしていたら、お隣さんが『うちで買いたい』と言ってくれた」
「親族や知り合いに直接売るなら、仲介手数料はいらないのでは?」
——買い手がすでに決まっているとき、不動産会社を通さない「個人間売買」が選択肢に浮かびます。

たしかに仲介手数料は数十万円〜100万円を超えることもあり、節約できる魅力は大きいものです。

一方で、契約書の不備や登記のミス、思わぬ税金など、当事者だけで進めるからこその落とし穴もあります。

この手続きガイドでは、隣人・親族・知人間での不動産の個人間売買について、メリットとリスク、買主が決まったあとの手続きの流れ、費用と税金までをわかりやすく解説します。

1. 不動産の個人間売買とは?仲介なしで売買できる?

不動産の個人間売買とは、不動産会社(仲介会社)を介さず、売主と買主が直接取引を行う売買方法のことです。

隣人どうし、親子・兄弟などの親族間、友人・知人間といった、すでに売る相手・買う相手が決まっているケースで選ばれます。

物件探しや買主探しの必要がないため、「それなら仲介手数料を節約できるのでは」と考えるのは自然なことです。

1-1. 当事者だけの売買に資格は必要?

結論から言うと、自分の不動産を自分で売買するだけなら、宅地建物取引士などの資格は必要ありません。

宅地建物取引業の免許が必要になるのは、不特定多数を相手に反復継続して「業として」売買・仲介を行う場合です。

隣人や親族との1回限りの売買は、これに当たりません。

ポイント

「資格がいらない=簡単」という意味ではありません。
仲介会社が担っていた契約書の作成・物件調査・登記の段取りなどを、すべて当事者自身で手配する必要があるという点に注意しましょう。

2. 仲介手数料はいくら節約できる?個人間売買のメリット

個人間売買の最大のメリットは、不動産会社に支払う仲介手数料が不要になることです。

2-1. 仲介手数料の上限はいくら?

仲介手数料は宅地建物取引業法で上限が定められており、売買代金が400万円を超える部分については「売買代金×3%+6万円+消費税」が上限です。

たとえば2,000万円の物件では、片方あたりの上限は次のようになります。

  • 計算式
    2,000万円×3%+6万円=66万円
    消費税10%を加えて72万6,000円
  • 売主・買主の合計
    売主・買主の双方が支払う場合、合計で約145万円(2,000万円ちょうどのケース)になります。
    売買代金が大きくなるほど、節約できる金額も増えます。

この費用がまるごと不要になるのが、個人間売買の魅力です。

2-2. 仲介手数料の節約額をシミュレーション

売買代金を入力すると、仲介ありの場合にかかる仲介手数料の上限(=個人間売買で節約できる目安)を計算できます。

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2-3. 仲介手数料以外のメリット

  • 消費税が原則かからない
    売主が個人(事業者でない)の場合、土地はもちろん建物にも消費税はかかりません。
  • 取引条件を柔軟に決めやすい
    引渡しの時期や支払い方法などを、当事者どうしの話し合いで比較的自由に設定できます。

3. 知らないと損する個人間売買の5つのリスク

メリットの裏側には、当事者だけで進めるからこそのリスクがあります。

取引を始める前に、次の5つを必ず理解しておきましょう。

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  1. 契約内容の不備によるトラブル
    インターネット上のひな形をそのまま使い、代金の支払い条件や物件の状態などの取り決めが曖昧になると、後から「言った・言わない」の争いに発展します。
  2. 物件の隠れた欠陥(契約不適合責任)
    引渡し後に雨漏りやシロアリ被害が見つかった場合、売主は修繕や代金減額などの責任を負う可能性があります。
    契約書で責任の範囲を決めておかないと、大きな紛争の原因になります。
  3. 住宅ローン審査の問題
    買主が住宅ローンを使う場合、金融機関は不動産会社が作る「重要事項説明書」の提出を求めるのが一般的です。
    個人間売買ではこれがないため、審査が進まなかったり、融資を断られたりすることがあります。
  4. 登記手続きのミス
    名義変更(所有権移転登記)は専門的で、書類に不備があると申請が受理されません。
    最悪の場合、代金を払ったのに名義が変えられないという事態も起こり得ます。
  5. 予期せぬ税金問題
    相場より著しく安い価格で売買すると、差額が「贈与」とみなされ贈与税がかかることがあります。
    売主には売却益に対する譲渡所得税もかかる場合があります。
注意

「仲介手数料がかからない」というメリットは、「取引の安全を守る役割を自分たちで引き受ける」ことの裏返しでもあります。
判断を誤ると、節約したはずの手数料をはるかに超える損失や、大切な人間関係の破綻につながりかねません。

隣人・親族間ならではの注意点(境界・適正価格)は「8. 隣地・親族間の売買で特に注意したいこと」でくわしく解説します。

4. 買主決定後の手続きの流れ7ステップ

買主が決まってから取引が完了するまでの流れは、大きく7ステップに分けられます。

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4-1. ステップ1: 物件の調査と価格の最終合意

契約の前に、対象の不動産について正確な情報を確認します。

法務局で次の書類を取得し、権利関係や境界を確認しましょう。

  • 登記事項証明書(登記簿謄本)
    所有者は誰か、抵当権などの担保が付いていないかを確認します。
  • 公図・地積測量図
    土地の形状や隣地との境界を確認します。

親しい間柄でも、売買価格は近隣の取引事例などを参考に、客観的に妥当な金額を設定することが大切です。

4-2. ステップ2: 必要書類の準備

手続きをスムーズに進めるため、早めに書類をそろえます。

  • 売主が準備するもの
    権利証(登記識別情報通知)、印鑑証明書(発行から3か月以内)、実印、固定資産評価証明書、本人確認書類など。
  • 買主が準備するもの
    住民票、印鑑(認印可の場合あり)、本人確認書類、購入資金の準備など。

4-3. ステップ3: 売買契約書の作成と締結

合意した内容を売買契約書にまとめ、署名・押印します。

くわしくは「5. 売買契約書の作成 - 個人間売買の心臓部」で解説します。

4-4. ステップ4: (買主)住宅ローンの申込み

買主がローンを使う場合は、契約締結後に金融機関へ本申込みを行うのが一般的です。

審査に通らなかったときに契約を白紙に戻せる「住宅ローン特約」を、契約書に盛り込んでおくと安心です。

4-5. ステップ5: 決済(残代金の支払)と物件の引渡し

決済日には、代金の支払いと登記に必要な書類の受け渡しを同時に行います。

  • 買主から売主へ残代金を支払う
  • 売主から買主へ鍵や関連書類を引き渡す
  • 登記に必要な書類一式を確認する
重要

「代金の支払い」と「登記書類の受け取り」は、必ず同時に行う(同時履行)のが鉄則です。
司法書士に立ち会ってもらうと、お金と書類の受け渡しが確実に行われ、取引の安全を確保できます。

4-6. ステップ6: 所有権移転登記の申請

決済後すみやかに、法務局へ名義変更(所有権移転登記)を申請します。

くわしくは「6. 所有権移転登記は自分でできる?司法書士に頼む?」で解説します。

4-7. ステップ7: (売主)売却後の確定申告

売却して利益(譲渡所得)が出た場合、売主は売却した翌年の確定申告で申告・納税します。

特例を使う場合は、利益が出ていなくても申告が必要です。

5. 売買契約書の作成 - 個人間売買の心臓部

売買契約書は、個人間売買でもっとも重要な書類です。

口約束ではなく、合意内容を法的に有効な形で書面に残すことで、将来のトラブルを防ぎます。

5-1. 契約書に必ず盛り込む項目

  • 売主・買主の情報
  • 物件の表示(登記事項証明書のとおり正確に)
  • 売買代金、手付金の額、支払日
  • 所有権の移転日と引渡し日
  • 契約不適合責任の範囲(隠れた欠陥への対応)
  • 手付解除や契約違反による解除の条件
  • 固定資産税などの分担(公租公課の精算)
  • 住宅ローン特約(買主がローンを使う場合)

5-2. ひな形の流用に注意

インターネット上のひな形をそのまま使うと、自分たちの取引の実態に合わず、かえってリスクが高まります。

契約書の作成は司法書士や行政書士に依頼することもできます。

個別の事情を反映した、不備のない契約書を用意することが、安全な取引への近道です。

6. 所有権移転登記は自分でできる?司法書士に頼む?

所有権移転登記とは、不動産の名義を売主から買主へ変更する手続きです。

この登記を行って初めて、買主は「自分が新しい所有者だ」と第三者に対して主張できるようになります。

6-1. 自分で登記する場合

登記は自分で申請することも不可能ではありませんが、書類作成の専門性が高く、少しの間違いも許されません。

司法書士を入れずに本人申請する場合は、事前に法務局へ相談するのが基本で、平日に何度か足を運ぶ必要があります。

6-2. 司法書士に頼む場合

安全・確実に名義変更するため、司法書士に依頼するのが一般的です。

  • 司法書士報酬の目安
    所有権移転登記で5万〜10万円程度が一つの目安です(物件や地域により異なります)。
  • 依頼できる範囲
    権利関係の調査、売買契約書の作成、決済の立会い、登記申請までをまとめてサポートしてもらえます。

登記の申請は売主・買主の双方から委任を受けて行うのが通常ですが、価格や条件の交渉まで一人の専門家に任せると中立性に限界があります。

交渉ごとは当事者どうしで行い、書面化や登記を専門家に任せる、という役割分担を意識すると安心です。

ポイント

「契約書の作成だけ」「登記だけ」といった部分的な依頼ができる場合もあります。
どこまで自分で行い、どこを専門家に任せるかを、費用と手間のバランスで考えるとよいでしょう。

7. 個人間売買でかかる費用と税金

仲介手数料はかからなくても、次のような費用・税金は発生します。

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7-1. 売買時にかかる主な費用・税金

項目負担する人内容
印紙税売主・買主売買契約書に貼る収入印紙
登録免許税主に買主所有権移転登記にかかる税
司法書士報酬主に買主登記を依頼する場合
不動産取得税買主取得後に課される都道府県税
譲渡所得税売主売却益が出た場合

7-2. 印紙税

売買契約書には収入印紙を貼ります。

記載金額が10万円を超える契約書については、令和9年(2027年)3月31日までに作成されるものに軽減措置が適用されます。

くわしくは国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」を確認してください。

軽減後の主な税額は次のとおりです。

  • 500万円超〜1,000万円以下: 5,000円
  • 1,000万円超〜5,000万円以下: 1万円
  • 5,000万円超〜1億円以下: 3万円

7-3. 登録免許税

所有権移転登記には登録免許税がかかります。

税額は固定資産税評価額をもとに計算します。

  • 土地の売買
    本則は2.0%ですが、軽減措置により1.5%です(令和11年=2029年3月31日まで)。
  • 建物の売買
    本則の2.0%です(自己居住用の中古住宅などは一定の要件を満たすと軽減される場合があります)。

7-4. 不動産取得税(買主)

不動産を取得した買主には、取得後しばらくして不動産取得税の納税通知書が届きます。

住宅用の不動産には軽減措置があり、適用されれば税額がゼロになるケースもあります。

軽減を受けるには、取得後に都道府県の税事務所へ申告が必要な場合があるため、納税通知書が届いたら内容をよく確認しましょう。

7-5. 譲渡所得税(売主)

売却して利益が出た売主には、譲渡所得税(所得税・住民税)がかかります。

  • 譲渡所得=売却価格−(取得費+譲渡費用)
  • 取得費が不明な場合は、売却価格の5%で計算できます。
  • 所有期間が5年を超えると税率が下がります。
  • マイホームの売却なら、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例などがあります。

譲渡所得の計算方法は国税庁「No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」でも確認できます。

譲渡所得税や確定申告のくわしい流れは、次の手続きガイドもあわせて確認してください。

7-6. みなし贈与に注意(著しく低い価格での売買)

親族間や知人間で「身内だから安くしてあげよう」と相場より極端に安い価格で売買すると、思わぬ落とし穴があります。

個人から著しく低い価額で財産を譲り受けた場合、時価と実際の対価との差額が贈与とみなされ、買主に贈与税がかかることがあります(相続税法第7条)。

くわしくは国税庁「No.4423 個人から著しく低い価額で財産を譲り受けたとき」を参照してください。

「安く売る」が贈与税につながることも

「著しく低い価額」かどうかは個別に判断されます。
過去の裁判例では、時価のおおむね8割程度の価格であれば問題にならないと判断されたものがありますが、明確な線引きはありません。
親族間などで価格を安くしたい場合は、事前に税理士へ相談すると安心です。

なお、個人どうしの売買では、法人へ譲渡したときのような「時価の2分の1未満かどうか」という基準は使いません。

8. 隣地・親族間の売買で特に注意したいこと

隣人や親族との売買では、一般的な取引にはない独特の注意点があります。

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8-1. 境界の確定と測量

土地、とくに隣地の一部を売買する場合は、境界が確定しているかが重要です。

境界があいまいなままだと、引渡し後に隣地との争いに発展しかねません。

  • 確定測量(民民立会いのみ)
    隣地の所有者だけが立ち会う場合で、30万〜50万円程度が目安です。
  • 確定測量(官民立会い)
    道路など行政が関わる場合で、60万〜80万円程度が目安です。

土地の一部だけを売買するときは、土地家屋調査士による測量と分筆登記が必要になります。

8-2. 越境物の取り決め

塀や樹木の枝、屋根などが境界を越えている(越境している)ケースもよくあります。

将来の建て替え時に解消する、といった取り決めを契約書に明記しておくと、後のトラブルを防げます。

8-3. 空き家を隣人・親族に売るケース

使わなくなった実家などの空き家を、隣に住む人や親族に売るケースも増えています。

固定資産税の負担や管理の手間から手放したいという動機が多く、買い手が決まっていれば個人間売買が選択肢になります。

空き家の売却全般については、次の手続きガイドも参考になります。

9. よくある質問(FAQ)

Q. 不動産会社をまったく通さずに売買できますか?

A. 当事者だけで売買すること自体は可能です。

自分の不動産を売買するのに資格は必要ありません。

ただし、契約書の作成や登記など専門的な手続きが多いため、契約書作成や登記だけでも司法書士などの専門家に依頼するのが安心です。

Q. 買主が住宅ローンを使いたい場合はどうなりますか?

A. 金融機関が「重要事項説明書」を求めることが多く、注意が必要です。

個人間売買では重要事項説明書が作成されないため、ローン審査が進まないことがあります。

その場合、買主側だけ不動産会社に重要事項説明書の作成を依頼するなど、一部だけ専門家を介する方法があります。

Q. 買主は住宅ローン控除を使えますか?

A. 一定の要件を満たせば、個人間売買でも利用できる場合があります。

住宅ローン控除は、床面積や耐震基準など住宅ごとの要件を満たせば、個人間売買だからといって一律に除外されるわけではありません。

ただし中古住宅では、耐震基準適合証明書などの書類が必要になることがあり、その取得が課題になる場合があります。

くわしい要件は国税庁「No.1213 住宅借入金等特別控除」を確認してください。

Q. 売買価格は自由に決めていいですか?

A. 基本的には当事者で自由に決められます。

ただし、相場より著しく安い価格にすると、差額が贈与とみなされ買主に贈与税がかかることがあります(くわしくは「7-6. みなし贈与に注意(著しく低い価格での売買)」を参照)。

固定資産税評価額や近隣の取引事例を参考に、妥当な金額を設定しましょう。

Q. 契約書は自分で作ってもいいですか?

A. 作ること自体は可能ですが、おすすめはしません。

ひな形をそのまま使うと、自分たちの取引に合わず、かえってトラブルの原因になります。

契約不適合責任や公租公課の精算など、抜けやすい項目も多いため、専門家のサポートを受けると安心です。

Q. 個人間売買に消費税はかかりますか?

A. 売主が個人(事業者でない)なら、土地・建物とも原則かかりません。

消費税は事業者が事業として行う取引にかかる税金です。

個人が自宅などを売る場合は、課税の対象外になります。

10. まとめ

不動産の個人間売買は、仲介手数料を節約できる大きなメリットがあります。

一方で、契約書の不備・登記のミス・住宅ローン・税金など、当事者自身で管理すべきリスクも多くあります。

  • メリット
    仲介手数料が不要(2,000万円の物件なら双方で約145万円の節約も)。
    消費税も原則かからない。
  • 手続きの流れ
    物件調査→書類準備→契約書作成→ローン→決済・引渡し→所有権移転登記→確定申告の7ステップ。
  • 特に注意したい点
    契約不適合責任、住宅ローンの重要事項説明書、みなし贈与、隣地の境界確定。

「仲介手数料が浮く分、安全を守る手間は自分たちで引き受ける」のが個人間売買です。

契約書の作成と登記だけでも司法書士などの専門家に依頼し、大切な財産と人間関係を守りながら、安全に取引を進めましょう。

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