手続きプランナー

離婚時の年金分割〜2026年改正と手続き完全ガイド

離婚時の年金分割〜2026年改正と手続き完全ガイド
最終更新:2026年6月15日

「離婚したら、夫(妻)の年金を半分もらえるって本当?」
「専業主婦だったけれど、老後の年金はどうなるの?」
「手続きの期限が2年から5年に延びたって聞いたけど…」

離婚を考えるとき、避けて通れないのが「年金分割」です。

これは婚姻期間中の厚生年金の記録を夫婦で分け合う制度で、老後の受け取り額に直結します。

しかし「半分もらえる」という理解は正確ではなく、対象になる年金や手続きにはいくつもの落とし穴があります。

この手続きガイドでは、3号分割と合意分割の違い、いくらもらえるか、必要書類や手続きの流れ、そして2026年4月の請求期限の改正までをまとめて解説します。

1. 年金分割とは?「半分もらえる」は誤解

年金分割とは、離婚したときに婚姻期間中の厚生年金の記録(標準報酬月額・標準賞与額)を当事者間で分け合う制度です。

専業主婦(主夫)や、配偶者より収入が低かった人が、離婚後の年金を確保できるようにする目的でつくられました。

ここで多くの人が誤解しているのが、「相手の年金額を半分もらえる」という点です。

実際に分け合うのは「年金額」そのものではなく、年金額を計算するもとになる「厚生年金の記録」です。

1-1. 分割の対象は厚生年金の報酬比例部分だけ

年金分割で増えるのは、厚生年金のうち収入に応じて決まる「報酬比例部分」だけです。

国民年金から支給される老齢基礎年金は分割の対象になりません。

制度の詳しい内容は、日本年金機構「離婚時の年金分割」でも確認できます。

つまり、自営業やフリーランスで国民年金にしか加入していなかった配偶者の場合、分割できる記録がないこともあります。

分割できるのは「厚生年金の記録」だけ

年金分割の対象は、婚姻期間中の厚生年金(報酬比例部分)の記録に限られます。
国民年金(老齢基礎年金)や、婚姻前・離婚後の記録は対象になりません。
「相手の年金の半分が自分のものになる」わけではない点に注意してください。

1-2. 自動では分割されない

年金分割は、離婚すれば自動的に行われるものではありません。

当事者が年金事務所に請求して初めて記録が分割されます。

請求しないまま期限を過ぎると、権利そのものが消えてしまいます。

実際、離婚件数に対して年金分割の手続きを行ったのは約2割にとどまるという調査結果もあり、「知らずに損をしている」人が少なくありません。

2. 3号分割と合意分割の違い

年金分割には「合意分割」と「3号分割」の2種類があります。

どちらを使えるかは、婚姻期間中の働き方によって決まります。

項目合意分割3号分割
対象期間婚姻期間中の厚生年金記録全体2008年(平成20年)4月以降の第3号被保険者期間
対象者婚姻期間中に厚生年金記録のある夫婦専業主婦(主夫)など第3号被保険者だった人
相手の合意必要(合意できなければ裁判手続き)不要(1人で請求可能)
分割の割合当事者で決定(上限は2分の1)自動的に2分の1
制度開始2007年(平成19年)4月2008年(平成20年)4月
メディアを読み込み中...

2-1. 合意分割

合意分割は、婚姻期間中の厚生年金記録を、夫婦の合意または裁判手続きで決めた割合で分ける方法です。

共働きで両方が厚生年金に加入していた場合や、2008年3月以前の婚姻期間がある場合は、こちらの合意分割を使います。

割合(按分割合)は当事者の話し合いで決めますが、上限は2分の1です。

話し合いでまとまらない場合は、家庭裁判所の調停や審判で決めることができます。

2-2. 3号分割

3号分割は、専業主婦(主夫)など国民年金の第3号被保険者だった人が、相手の合意なしに請求できる制度です。

2008年(平成20年)4月以降の第3号被保険者だった期間について、相手の厚生年金記録を自動的に2分の1ずつ分けられます。

相手と話し合う必要がなく、1人で手続きできるのが大きな特徴です。

なお、3号分割が利用できるのは2008年(平成20年)5月1日以降に離婚等をした場合です。

また、分割される側が障害厚生年金を受給していて、その期間を年金額の基礎としている場合など、3号分割が認められない例外もあります。

2つの制度は同時に使える

合意分割を請求したとき、婚姻期間中に3号分割の対象期間が含まれていれば、合意分割と同時に3号分割の請求もあったものとして扱われます。
どちらか一方を選ぶのではなく、対象期間に応じて両方が適用されるケースが一般的です。

3. 自分は対象になる?対象になる年金・ならない年金

「自分は専業主婦だったから対象外?」「共働きだったけれど分割できる?」という疑問は多く聞かれます。

年金分割は、性別や立場ではなく、婚姻期間中の厚生年金記録の差で決まります。

3-1. 対象になるケース

  • 専業主婦(主夫)だった
    配偶者の厚生年金記録を分割で受け取れます。
    第3号被保険者期間は3号分割の対象です。
  • 共働きだった
    夫婦それぞれの厚生年金記録を比べ、記録の少ない側が多い側から分割を受けます。
  • 自分のほうが収入が高かった
    この場合は、自分の記録が相手に分割されます。
    女性が分割する側になることもあります。
  • 事実婚(内縁)だった期間がある
    相手の扶養に入り第3号被保険者だった期間があれば、対象になる場合があります。

3-2. 対象にならないもの

  • 婚姻前・離婚後の期間
    分割できるのは婚姻期間中の記録だけです。
  • 配偶者が国民年金のみだった期間
    自営業・フリーランスなどで厚生年金に加入していなければ、分割できる記録がありません。
  • 老齢基礎年金(国民年金部分)
    分割の効果は厚生年金の報酬比例部分に限られます。
共働きでも収入が近いと効果は小さい

共働きで夫婦の収入や厚生年金記録に大きな差がない場合、分割しても増える額はわずかです。
場合によっては、自分の記録のほうが多く、相手に分割することになるケースもあります。

4. 年金分割でいくらもらえる?増額の目安

メディアを読み込み中...

最も気になるのが「実際にいくら増えるのか」という点でしょう。

結論から言うと、婚姻期間の長さと相手の収入によって大きく変わります

4-1. 平均では月3.3万円増、20年で約800万円の差

厚生労働省の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、年金分割で記録を受け取った側の年金月額は、平均で約3.3万円増えています(月60,934円→月94,509円)。

年間では約40万円、20年間受け取り続けると約800万円もの差になります。

ただし、3号分割のみの場合は対象期間が限られるため、増額は月8,000円程度(月48,668円→月56,985円)にとどまります。

4-2. 増額が大きいケース・小さいケース

年金分割で増える額が大きくなるのは、次のようなケースです。

  • 婚姻期間が長い
  • 婚姻期間中の配偶者の厚生年金加入期間が長い
  • 配偶者の賃金水準が高い(標準報酬が多い)
  • 自分の第3号被保険者期間が長い
  • 合意分割で按分割合が2分の1になった

逆に、次のようなケースでは増額はわずかです。

  • 婚姻期間が短い
  • 配偶者が自営業・フリーランスで国民年金のみだった
  • 配偶者の賃金水準が低い
  • 3号分割のみ、または按分割合が小さい

4-3. 按分割合の上限は2分の1

合意分割で決める「按分割合」には、上限と下限があります。

  • 上限
    2分の1(50%)です。
    これを超えて受け取ることはできません。
  • 下限
    分割を受ける側が、現状ですでに持っている割合です。
    これより低くすることはできません。

実務上は、調停や審判になってもほとんどのケースで2分の1とされています。

正確な金額は「情報通知書」で確認できる

自分のケースでいくら増えるかを知るには、年金事務所で「年金分割のための情報通知書」を取り寄せるのが確実です。
分割の対象になる期間や標準報酬、決められる按分割合の範囲が記載されています。

5. 年金分割の手続きの流れ

年金分割の手続きは、大きく4つのステップで進みます。

3号分割のみの場合は、ステップ2(按分割合の決定)が不要になります。

メディアを読み込み中...

5-1. ステップ1:情報通知書を取り寄せる

まず、年金事務所に「年金分割のための情報提供請求書」を提出し、「年金分割のための情報通知書」を取得します。

ここで分割の対象期間や、決められる按分割合の範囲を確認できます。

離婚前でも請求でき、話し合いの材料になります。

情報通知書の発行には数週間程度かかることがあるため、請求期限が近い場合は早めに手続きを始めましょう。

5-2. ステップ2:按分割合を決める(合意分割の場合)

合意分割では、夫婦で按分割合(上限2分の1)を決めます。

話し合いでまとまれば、合意内容を書面に残します。

まとまらない場合は、家庭裁判所に調停や審判を申し立てて決めてもらいます。

5-3. ステップ3:標準報酬改定請求書を提出する

離婚が成立したら、「標準報酬改定請求書」に必要書類を添えて年金事務所に提出します。

これが年金分割の正式な請求です。

5-4. ステップ4:改定後の通知を受け取る

請求が認められると、分割後の記録に基づいた「標準報酬改定通知書」が届きます。

すでに年金を受給している場合は、請求した月の翌月分から年金額が変わります。

6. 必要書類と手続きの窓口

年金分割の請求は、お近くの年金事務所で行います。

ここでは、請求時に必要な書類と、よくある疑問を整理します。

6-1. 標準報酬改定請求書の提出に必要な書類

  • 標準報酬改定請求書
    年金事務所の窓口や日本年金機構「離婚時に年金分割をするとき」のページで入手できます。
  • 戸籍謄(抄)本など婚姻期間を確認できる書類
    当事者双方のもので、請求日前6か月以内に交付されたものが必要です。
  • マイナンバーまたは基礎年金番号を確認できる書類
    マイナンバーカードや年金手帳などです。
  • 按分割合を明らかにできる書類(合意分割の場合)
    合意書、公正証書の謄(抄)本、調停調書、審判書の謄(抄)本などです。
    3号分割のみの場合は不要です。

6-2. 「2人で年金事務所に行く」必要はある?

合意分割でよくあるのが、「元夫婦が一緒に窓口へ行かなければならないのか」という不安です。

仲が悪い相手と顔を合わせたくない、という声は少なくありません。

結論として、次のいずれかに当てはまれば、1人で手続きできます

  • 3号分割のみの場合
    相手の合意が不要なので、最初から1人で請求できます。
  • 公的な書類で按分割合が確認できる場合
    公正証書、公証人の認証を受けた私署証書、調停調書、審判書などがあれば、1人で請求できます。

逆に、当事者だけで作成した合意書を使う場合は、原則として2人(またはそれぞれの代理人)が揃って年金事務所に出向く必要があります。

調停で割合を決めておくと手続きがスムーズ

離婚調停で按分割合を決めておくと、調停調書を持参するだけで1人でも手続きが完了します。
相手と窓口で顔を合わせる必要がなくなるため、トラブルを避けたい人に向いています。

6-3. 戸籍謄本の取得に注意

必要書類のなかでつまずきやすいのが戸籍謄本です。

婚姻から離婚までの期間が確認できる必要があり、本籍を移している場合は、以前の本籍地の戸籍(除籍)が必要になることもあります。

また、請求日前6か月以内に交付されたものでなければなりません。

戸籍謄本の取得方法や、本人以外が取る場合の手順については、次の手続きガイドも参考にしてください。

6-4. 年金事務所を探す

手続きの窓口となる年金事務所は、お住まいの地域によって異なります。

以下から、お住まいの市区町村の年金事務所を検索できます。

データを読み込み中...

7. 請求期限〜2026年4月改正で2年から5年に

年金分割で最も注意したいのが請求期限です。

2026年4月の改正で、この期限が大きく変わりました。

メディアを読み込み中...

7-1. 原則は「離婚から5年以内」に延長

これまで年金分割の請求期限は「離婚した日の翌日から原則2年以内」でした。

しかし2026年4月の改正により、2026年4月1日以降に離婚した場合は「原則5年以内」に延長されました。

離婚直後は精神的にも経済的にも余裕がなく、手続きを後回しにしてしまう人が多いことから、期間が延ばされたものです。

改正の詳細は、日本年金機構「離婚時の年金分割の請求期限が改正されました」で確認できます。

離婚した時期請求期限
2026年3月31日まで離婚日の翌日から原則2年以内
2026年4月1日以降離婚日の翌日から原則5年以内
改正前に離婚した人は「2年」のまま

請求期限が5年になるのは、2026年4月1日以降に離婚した場合です。
2026年3月31日までに離婚した場合は、従来どおり離婚日の翌日から2年以内に請求しなければなりません。
期限を過ぎると、年金分割は一切請求できなくなります。

7-2. 改正の背景

今回の延長は、民法における離婚時の財産分与を請求できる期間(除斥期間)が2年から5年に延びたことに合わせたものです。

令和7年の年金制度改正法(令和7年法律第74号)に基づいて行われました。

7-3. 期限の特例

原則の期限を過ぎても、例外的に請求できる場合があります。

  • 調停・審判が期限間際に確定した場合
    離婚から原則の期限が経過するまでに調停・審判を申し立て、期限の前後6か月以内に成立・確定したときは、その翌日から6か月以内に限り請求できます。
  • 相手が亡くなった場合
    按分割合を決めた後、分割の請求前に当事者の一方が亡くなったときは、死亡日から1か月以内に限り請求できます。

8. よくあるトラブルと対処法

年金分割では、相手の協力が得られないなどのトラブルが起こりがちです。

代表的なケースと対処法を整理します。

8-1. 相手が年金分割を拒否する

合意分割では、相手が分割に応じない、割合に合意しないというトラブルがよくあります。

この場合は、家庭裁判所に年金分割の調停や審判を申し立てることで、割合を決めてもらえます。

調停・審判で決まった割合は、相手の同意がなくても有効です。

なお、3号分割は相手の合意が不要なため、拒否されても1人で請求できます。

8-2. 相手が自営業で厚生年金がない

配偶者が自営業やフリーランスで、婚姻期間中ずっと国民年金のみだった場合、分割できる厚生年金記録がありません。

この場合は年金分割の対象になりません。

ただし、一時的に会社員だった期間があればその分は対象になるため、情報通知書で確認しましょう。

8-3. 離婚の手続きと並行して進める

年金分割は、離婚に伴う手続きの一部です。

財産分与や養育費などと合わせて、漏れなく取り決めておくことが大切です。

離婚全体の流れや必要書類については、次の手続きガイドも参考にしてください。

よくある質問(FAQ)

Q. 専業主婦でしたが、年金分割でいくらもらえますか?

A. 夫の収入と婚姻期間によって大きく変わります。

専業主婦期間が長く、配偶者の収入が高いほど、増える額は大きくなります。

ただし3号分割の対象は2008年4月以降の期間に限られるため、それ以前の期間は合意分割が必要です。

正確な金額は、年金事務所で情報通知書を取り寄せて確認してください。

Q. 共働きでも年金分割はできますか?

A. できます。

共働きの場合は合意分割となり、夫婦の厚生年金記録を比べて、記録の少ない側が多い側から分割を受けます。

ただし収入差が小さいと、増える額はわずかになります。

Q. 元配偶者に知られずに手続きできますか?

A. 3号分割であれば、相手の合意なしに1人で請求できます。

ただし、分割が行われると相手の年金記録も変わるため、結果として相手に通知が届きます。

完全に知られずに済ませることはできません。

Q. 分割した後に相手が亡くなったら、年金は元に戻りますか?

A. 戻りません。

年金分割で改定された記録は、その後に相手が亡くなっても影響を受けません。

分割を受けた側は、自分自身の記録として年金を受け取り続けられます。

Q. 離婚して2年(5年)を過ぎたら、本当にもう請求できませんか?

A. 原則として請求できません。

請求期限を過ぎると、年金分割の権利は消滅します。

ただし、調停・審判が期限間際に確定した場合などの特例に当てはまれば、例外的に請求できることがあります。

早めに年金事務所へ相談してください。

まとめ

離婚時の年金分割は、老後の生活を左右する大切な手続きです。

最後に重要なポイントを整理します。

  • 分割の対象は厚生年金の記録だけ
    「相手の年金の半分をもらえる」わけではなく、国民年金は対象外です。
  • 3号分割は1人で、合意分割は原則合意が必要
    専業主婦期間は3号分割、共働きや古い期間は合意分割を使います。
  • 平均では月3.3万円増、ただしケースで大きく異なる
    正確な額は情報通知書で確認しましょう。
  • 2026年4月以降の離婚は請求期限が5年に延長
    ただし2026年3月31日までの離婚は従来どおり2年以内です。
  • 自動では分割されない
    期限内に必ず自分で年金事務所へ請求する必要があります。

請求期限を過ぎると取り返しがつきません。

離婚を考え始めたら、まずは年金事務所で情報通知書を取り寄せ、自分のケースを確認することから始めましょう。

関連する手続きガイド

関連タグ