障害者雇用で身元保証人は必要?親族限定の実態と対処法
「障害者雇用だと身元保証人が必要って本当?」
「しかも親族に限るって言われた」
「頼れる親族がいないから、応募をあきらめるしかないのかな」
——そんな不安を抱えている方へ。
先に結論をお伝えします。
障害者雇用だから身元保証人が必要になる、という法律や制度は存在しません。
この手続きガイドでは、なぜそう言えるのかという根拠と、実際に求められたときにどう動けばいいのかを、順を追って解説します。
1. 障害者雇用に「身元保証人が必要」という制度はない
まず、いちばん不安の元になっている点をはっきりさせておきます。
1-1. 障害者雇用促進法にも他の法令にも規定がない
障害者雇用のルールを定めているのは障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)です。
この法律には、法定雇用率や差別の禁止、合理的配慮の提供義務などが定められていますが、身元保証人や身元保証書に関する条文は1つもありません。
e-Gov法令検索で「身元保証」を含む法令を調べても、雇用の場面で身元保証人を義務づけている法令は見つかりません。
該当するのは、保証人の責任を制限するための法律(身元保証ニ関スル法律)や、公証人が納める身元保証金、外国人の在留資格に関する身元保証書などです。
いずれも、障害のある方の就職とは関係のないものばかりです。
1-2. 身元保証書は会社が任意に求める社内書類
では、なぜ身元保証書を求められることがあるのでしょうか。
答えはシンプルで、身元保証書は会社が自主的に用意している社内書類だからです。
法律で決まっているものではないため、次のように会社ごとにばらつきがあります。
- そもそも求めない会社
大企業でも身元保証書を取らないところは珍しくありません。 - 全社員に一律で求める会社
障害の有無にかかわらず、新卒・中途を問わず提出させる運用です。 - 職種や取扱業務によって求める会社
金銭や個人情報を扱う職種に限って求めるケースがあります。
障害者雇用枠だからという理由ではなく、その会社がそういう運用をしているだけというのが実態です。
1-3. 「親族等に限る」も会社が独自に決めた条件
求人や書式に書かれている「親族等に限る」という条件も、法律の要求ではありません。
会社が身元保証書の書式に自分で書き込んでいる社内ルールです。
実際にX(旧Twitter)では、障害者雇用で就職した当事者から次のような声が上がっています。
障がい者雇用で大企業の事務に採用された時ひとつ困ったのが身元保証人。
親族と一人と親族以外一人(何で?)必要だったけど母以外頼る人おらんから苦労した。
就職時の保証人制度辞めてほしい。
「親族限定」というより、「親族から1名+親族以外から1名」の2名指定という形で現れることが多く、これが難易度を一気に上げています。
提出書類は求人票や募集要項に書かれていることがあります。
ハローワーク経由で応募する場合は、担当者から企業に確認してもらうこともできます。
「内定が出てから知る」状態を避けられるので、気になる方は応募前に聞いておきましょう。
2. 障害者にだけ身元保証人を求めるのは差別にあたる可能性
ここまでは「制度として必要なわけではない」という話でした。
ここからは、求められること自体に問題がある場合の話に移ります。
「障害者雇用の応募者にだけ」身元保証人を求めているのだとしたら、それは法律上の問題になり得ます。
2-1. 障害者差別禁止指針が禁じている「不利な条件」
障害者雇用促進法は、募集・採用の場面での差別を禁止しています。
- 第34条
事業主は、労働者の募集及び採用について、障害者に対して、障害者でない者と均等な機会を与えなければならない。 - 第35条
事業主は、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、労働者が障害者であることを理由として、障害者でない者と不当な差別的取扱いをしてはならない。
さらに、この規定を具体化した障害者差別禁止指針(平成27年厚生労働省告示第116号)は、募集・採用について次のように定めています。
ロ 募集又は採用に当たって、障害者に対してのみ不利な条件を付すこと。
これが「障害者であることを理由とする差別に該当する」と明記されています。
一般雇用の応募者には求めていない身元保証書を、障害者雇用の応募者にだけ求めているのであれば、この「障害者に対してのみ不利な条件」にあたる疑いがあります。
2-2. 判断の分かれ目は「障害者だけに求めているか」
ただし、ここは慎重に見る必要があります。
障害の有無にかかわらず全員に身元保証書を求めている会社の場合、それは差別にはあたりません。
判断の分かれ目は、条件の内容そのものではなく、障害者だけに課しているかどうかです。
| 会社の運用 | 差別にあたるか |
|---|---|
| 全社員に身元保証書を求めている | あたらない |
| 障害者雇用の応募者にだけ求めている | 「障害者に対してのみ不利な条件」にあたる疑いがある |
| 全社員に求めているが、障害者だけ保証人の人数や条件を厳しくしている | 条件が障害者にのみ不利であれば、あたる疑いがある |
2-3. 会社に確認したい3つの質問
自分のケースがどちらなのかを判断するために、会社に次の3点を確認してみてください。
- 一般雇用で入社する社員にも、同じ書類を求めていますか
これが差別かどうかを分ける最大のポイントです。 - 「親族に限る」としているのは、どのような理由からですか
合理的な説明ができない場合、社内ルールを見直してもらえることがあります。 - この書類は何を保証するものですか
損害賠償を求める契約なのか、緊急時の連絡先なのかで、性質がまったく違います。
聞きにくいと感じるかもしれませんが、これは応募者として当然の確認です。
採用担当者にとっても、答えられない条件を放置するより、説明したうえで調整するほうが望ましい話です。
差別にあたるかどうかを自分だけで結論づける必要はありません。
都道府県労働局やハローワークには、障害者雇用に関する相談窓口があります。
詳しくは「8. 会社と話がつかないときの公的な相談先」を確認してください。
3. 会社が身元保証人を求める理由 - 助成金とは無関係
会社側の意図を知っておくと、交渉の材料が見つけやすくなります。
3-1. 損害賠償の担保としての機能
もっとも典型的なのは、社員が会社に損害を与えたときに、その賠償を保証してもらうという目的です。
金銭を扱う職種や、顧客の個人情報に触れる職種で求められやすい傾向があります。
3-2. 緊急連絡先・身元引受としての機能
もう1つは、金銭的な保証ではなく、連絡が取れなくなったときの窓口を確保するという目的です。
実際に、無断欠勤時などの連絡窓口になることだけを内容とし、賠償額の上限も印鑑証明書の提出も求めない書式を使っている会社もあります。
同じ「身元保証書」という名前でも、中身はまったく違います。
| 型 | 主な内容 | 見分け方 |
|---|---|---|
| 損害賠償型 | 社員が会社に与えた損害の賠償を保証する | 賠償額の上限(極度額)の記載がある。印鑑証明書の添付を求められることが多い |
| 緊急連絡先型 | 連絡が取れないときの窓口になる | 金額の記載がない。印鑑証明書も不要なことが多い |
会社に「この書類は何を保証するものですか」と聞くのは、この違いを確かめるためです。
緊急連絡先型であれば、保証人の負担はぐっと軽くなり、頼める相手の幅も広がります。
3-3. 障害者雇用の助成金と身元保証人は関係がない
「会社が助成金をもらうために身元保証人が必要なのでは」と考える方もいますが、両者に制度上の関係はありません。
障害者雇用に関する助成金は、企業(事業主)が受け取るものです。
たとえばトライアル雇用助成金(障害者トライアルコース)の主な受給要件は、次のとおりです。
- ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介により雇い入れること
- トライアル雇用等の期間について、雇用保険被保険者資格取得の届出を行うこと
支給額は、対象労働者が精神障害者の場合で月額最大8万円を3か月+月額最大4万円を3か月(最長6か月間)、それ以外の場合で月額最大4万円(最長3か月間)です。
週10時間以上20時間未満で試行雇用する障害者短時間トライアルコース(月額最大4万円・最長12か月間)も同様で、支給要件に身元保証人は含まれていません。
いずれの要件にも、身元保証人は出てきません。
会社から「助成金の関係で必要」と説明された場合は、根拠を確認してよい場面です。
4. 身元保証書を受け取ったら確認するポイント
身元保証書を提出することになった場合、そのまま署名をもらいに行く前に、書面の中身を確認してください。
法律は、身元保証人を守るためのルールをいくつも用意しています。
4-1. 極度額(上限額)の記載があるか
もっとも重要なチェックポイントです。
民法第465条の2は、個人が保証人になる根保証契約について、次のように定めています。
2 個人根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。
損害賠償を保証する内容の身元保証契約は、この「個人根保証契約」(将来どれだけ発生するかわからない債務を、個人が保証する契約)にあたります。
そのため、極度額(賠償額の上限)が書かれていない身元保証書は無効です。
このルールは、法務省の資料のとおり2020年(令和2年)4月1日から適用されています。
なお、3-2で挙げた「緊急連絡先型」のように、賠償を約束する内容が入っていない書面は、そもそも保証契約ではありません。
その場合は金額の記載がなくても無効にはなりません。
賠償についての記載があるのに金額が書かれていない場合が、いちばん注意すべきパターンです。
2020年4月1日以降に結ぶ身元保証契約では、極度額の記載がなければ契約自体の効力が生じません。
金額が書かれていない書式が回ってきた場合は、そのまま署名させず会社に確認しましょう。
逆に、給与何年分にもあたるような高額が設定されている場合も、保証人に説明が必要です。
4-2. 期間の定めがあるか
保証がいつまで続くのかも確認しておきましょう。
身元保証ニ関スル法律は、期間について上限を定めています。
- 期間の定めがない場合
第1条により、原則として契約が成立した日から3年間で効力を失います。
商工業見習者の場合のみ5年とされています。 - 期間を定める場合
第2条により、5年を超えることはできません。
5年より長い期間を定めても、5年に短縮されます。 - 更新する場合
更新はできますが、更新のときから5年を超えることはできません。
「一度書いたら一生続く」というものではない、という点は、保証人を頼むときの説明材料になります。
4-3. 何を保証する契約か(責任の範囲)
身元保証人は、書かれた金額を無条件に支払う立場ではありません。
同法第5条は、裁判所が責任と金額を定めるにあたって、次の事情を考慮すると定めています。
- 社員の監督に関する会社側の過失の有無
- 保証人が身元保証をするに至った事由と、その際に払った注意の程度
- 社員の任務や身上の変化
- その他一切の事情
さらに第6条では、この法律に反する特約で保証人に不利益なものはすべて無効とされています。
会社が独自に「どんな場合でも全額支払う」といった条項を入れていても、その部分は効力を持ちません。
東京都産業労働局の資料も、次のように整理しています。
身元保証人が労働者の行為全てに対して責任を負うというのでは、負担が重すぎるため、「身元保証ニ関スル法律」によって、身元保証人の責任は限定的なものとされています。
つまり、書面に書かれた極度額は「これ以上は請求できない」という天井であって、そのまま請求される金額ではありません。
会社は、社員に業務上の不適任や不誠実な行為があって保証人の責任が生じるおそれを知ったときなどに、遅滞なく身元保証人に通知しなければなりません(第3条)。
そして通知を受けた保証人は、将来に向かって契約を解除できます(第4条)。
親族に頼むときは、この点を伝えると納得を得やすくなります。
4-4. 身元保証書に書く項目
保証人に依頼する前に、何を書いてもらうことになるのかを把握しておくと、話がしやすくなります。
会社所定の書式なので自分で用意するものではありませんが、一般的には次のような欄が設けられています。
- 本人(採用される人)の欄
氏名、住所、生年月日など。
ここは自分で記入します。 - 身元保証人の欄
氏名、住所、職業、本人との関係、署名押印。
保証人が記入するのは基本的にこの部分だけです。 - 保証の内容に関する欄
保証の対象となる損害の範囲、極度額(賠償額の上限)、保証期間。
ここが4-1〜4-3で確認したポイントにあたります。 - 添付書類
会社によっては印鑑証明書の添付を求められます。
依頼するときは、次の3点をあわせて伝えてみてください。
賠償額には上限(極度額)があること、保証期間には法律上の上限があること、そして通知を受けたら将来に向かって解除できることの3つです。
「際限なく責任を負わされる」という誤解が解けるだけで、引き受けてもらいやすくなります。
4-5. 添付書類と提出期限
身元保証書には、印鑑証明書の添付を求められることがあります。
印鑑証明書を取るには印鑑登録が必要で、登録していない場合は登録から始めることになります。
登録は本人が窓口へ行くのが原則です。
世田谷区の案内のように代理人が申請できる自治体もありますが、その場合は本人あてに照会書が郵送され、回答書を持って再度窓口へ行く必要があるため、かえって日数がかかります。
遠方の親族に頼む場合は、書類の往復も含めて日数を逆算しておきましょう。
入社時に必要な書類は身元保証書だけではないため、全体像を把握したうえで準備を進めると安心です。
5. 身元保証人がいない・親族に頼れないときの対処法
ここからが本題です。
頼れる親族がいない場合でも、取れる選択肢はあります。
5-1. 内定取り消しが不安なときに、まず知っておきたいこと
「出せなかったら内定を取り消されるのでは」という不安から、相談を切り出せずにいる方は少なくありません。
先に押さえておきたいのは、身元保証書の提出を義務づける法律はないということです。
東京都産業労働局の資料も、次のように明記しています。
身元保証契約は労働契約とは別個のものであって、労働契約にあたって必ず締結しなければならないものではありません。
また、採用内定の取り消しについて最高裁は、取り消せるのは「内定当時知ることができないか、知ることが期待できないような事実」であって、取り消すことが「客観的に合理的と認められ、社会通念上相当として是認できるもの」に限られるという枠組みを示しています(大日本印刷採用内定取消事件・昭和54年7月20日最高裁判決)。
判示の骨子は厚生労働省「確かめよう労働条件」で確認できます。
会社が自由に取り消せるわけではない、ということです。
一方で、就業規則で身元保証書の提出を正社員採用の条件として定めている会社もあり、その扱いが裁判で争われた例もあります(シティズ事件など)。
業種や経緯といった個別の事情に左右されるため、「絶対に取り消されない」と言い切ることもできません。
だからこそ、黙って期限を迎えるのがいちばん不利になります。
早い段階で相談すれば、会社側も代替案を検討する時間を持てます。
ここから先の進め方は、次の3ステップで整理できます。
5-2. まず会社に正直に相談する
もっとも効果が高く、そしてもっとも後回しにされがちなのが、会社への相談です。
保証会社を黙って使う、期限ぎりぎりまで抱え込む、といった対応より先に、人事担当者に事情を伝えてください。
伝え方の例は次のとおりです。
入社手続きの書類についてご相談があります。身元保証書の欄に「親族」とありますが、私には署名をお願いできる親族がおりません。
代わりに対応できる方法があればご教示いただけますでしょうか。
理由を細かく説明する必要はありません。
「親族に頼めない事情がある」と伝えるだけで十分です。
会社側も、書式どおりに集まらないケースには一定の経験があります。
黙っているほうが、かえって手続きが止まってしまいます。
5-3. 代替案を具体的に提示する
相談するときは、「困っています」だけで終わらせず、代わりの案を並べて出すと話が進みやすくなります。
- 緊急連絡先への変更をお願いする
会社の目的が連絡窓口の確保であれば、これで足りることがあります。 - 親族以外の知人・友人に依頼する
成人で、独立した生計を営んでいる(自分の収入で生活している)人であれば、認められる会社もあります。 - 支援機関の担当者を緊急連絡先の候補として相談する
支援機関の職員が身元保証人になることはできませんが、継続的に関わっていることを会社に伝えてもらえます。
会社が心配しているのが「連絡が取れなくなること」であれば、これで足りる場合があります。 - 保証会社(身元保証人の代行サービス)の利用可否を聞く
会社が法人による保証を認めるかどうかは、事前に確認が必要です。 - 2名のうち1名のみでの提出を相談する
1名は確保できている場合、残り1名について運用の緩和を相談できることがあります。
5-4. 保証人本人への連絡・面談を求められたとき
書類は用意できても、その先でつまずくことがあります。
会社によっては、書式の偽造を防ぐために、身元保証人本人へ電話で意思確認をしたり、面談を求めたりする運用をとっているためです。
障害者雇用で就職する方にとっては、この段階の負担が特に重くなりがちです。
家族に障害や転職を伝えていない、家族との関係が良好ではない、といった事情があると、「書類は出せるが会わせたくない」という状況になります。
求められた場合は、次の順で相談してみてください。
- 確認方法を電話だけにできないか相談する
面談より心理的な負担が小さく、日程調整も不要です。 - 本人の同席なしで完結する方法を確認する
会社が確認したいのは保証の意思なので、書面や電話で代えられることがあります。 - 支援機関の担当者に間に入ってもらう
第三者から事情を説明してもらうほうが、会社の理解を得やすい場合があります。 - 緊急連絡先型に切り替えられないか改めて相談する
保証ではなく連絡窓口であれば、面談まで求められないことがほとんどです。
保証人に依頼するときに伝えるとよい内容は、「4-4. 身元保証書に書く項目」を確認してください。
5-5. 状況別の進め方
自分の状況に近いものを選んでください。
5-6. やり取りは記録に残しておく
会社との話し合いは、可能な範囲でメールなど文面が残る方法で行っておきましょう。
後から労働局などに相談することになった場合、経緯を口頭で説明するより、記録があるほうが話が早く進みます。
- 求人票・募集要項
提出書類についてどう書かれていたかを確認できます。 - 会社から受け取った書式
極度額・期間・保証人の条件が、書面のどこにどう書かれていたかが残ります。 - 会社からの説明の内容
口頭で説明を受けた場合は、内容をメールで確認する形にすると記録になります。 - 「一般雇用の社員にも同じ書類を求めているか」への回答
差別にあたるかどうかの判断で、もっとも重要になる事実です。
6. 身元保証人で困ったときに相談できる支援機関
一人で会社とやりとりする必要はありません。
障害のある方の就労を支える公的な機関が複数あります。
6-1. 障害者就業・生活支援センター
就業面と生活面の支援を一体的に行う機関で、厚生労働省によれば令和8年4月1日時点で全国に340箇所設置されています。
就職活動の相談だけでなく、就職後の職場定着や生活面の課題まで幅広く扱います。
会社とのやりとりで困っているときに、間に入ってもらえる可能性があります。
6-2. ハローワークの障害者専門窓口
ハローワークには、障害のある方の職業相談・職業紹介を担当する窓口があります。
求人票に書かれていない提出書類について、企業に確認してもらうこともできます。
応募前の段階から相談できるのが強みです。
6-3. 地域障害者職業センター
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)が各都道府県に設置している機関です。
ジョブコーチ(職場適応援助者)が職場に出向き、本人と事業主の双方に支援や助言を行う仕組みがあります。
会社に対して専門的な立場から働きかけてもらえるのが特徴です。
6-4. 就労移行支援事業所
一般就労等を希望する障害のある方が、標準期間24か月の範囲で利用できる就労移行支援という障害福祉サービスです。
対象は原則として65歳未満ですが、65歳に達する前5年間障害福祉サービスの支給決定を受け、65歳に達する前日に就労移行支援の支給決定を受けていた方は、引き続き利用できます。
標準期間の24か月も、市町村審査会の個別審査を経て必要性が認められた場合には、最大1年間の更新が可能です。
事業所内での作業や企業実習、職場探し、就職後の職場定着支援までを行います。
利用中に就職が決まれば、入社手続きの相談にも乗ってもらえます。
6-5. 支援機関は「身元保証人」にはなれない
期待をもって相談したときにがっかりしないよう、ここははっきり書いておきます。
支援機関の職員が、あなたの身元保証人になってくれるわけではありません。
できるのは、次のようなことです。
- 会社との話し合いに同席する
一人で交渉する負担を減らせます。 - 代替案を会社に説明する
緊急連絡先への切り替えなどを、第三者の立場から提案してもらえます。 - 支援機関が継続的に関わることを伝える
会社が不安に感じている「連絡が取れなくなるリスク」を和らげられます。
公的な機関があなたの身元保証人になる制度は、現在のところ用意されていません。
だからこそ、「保証人を用意する」方向ではなく、「保証人以外の方法で会社の不安を解消する」方向で相談するのが現実的です。
内定が出てから相談すると、期限に追われながら調整することになります。
応募を考えている段階で支援機関に登録しておくと、企業への確認から同行まで対応してもらいやすくなります。
7. 身元保証人の代行サービスを使う前に確認すること
民間の保証会社が、就職時の身元保証を代行するサービスを提供しています。
選択肢の1つではありますが、使う前に押さえておきたい点があります。
7-1. 会社が法人による保証を認めるかが先
もっとも大事なのはここです。
会社の書式が「親族」や「個人」を前提にしている場合、法人の保証は受け付けてもらえません。
契約してから使えないとわかっては、費用が無駄になります。
必ず先に人事担当者へ「保証会社の利用は可能ですか」と確認してください。
7-2. 契約前のチェックリスト
利用を決める前に、次の点を書面で確認しましょう。
- 料金の総額と支払い方法
初期費用のほかに年会費や更新料がかからないかを確かめます。 - 保証の範囲
就職時の身元保証だけなのか、他のサービスが含まれているのかを確認します。 - 契約期間と更新の条件
自動更新かどうか、更新料の有無を確かめます。 - 解約の条件と返金の有無
途中で不要になった場合の扱いを確認します。 - 会社が求める書式に対応できるか
会社指定の用紙に記入してもらえるかどうかは事前に伝えます。
7-3. トラブルになったら消費者ホットライン188
契約内容がわからないまま進めない、というのが基本です。
契約後にトラブルになった場合は、消費者ホットライン 188(いやや)に電話すると、お住まいの地域の消費生活センターにつながります。
保証人がいないことを会社に伏せたまま代行サービスを使うと、後で事情を説明しにくくなります。
あくまで「会社に相談したうえで示す選択肢の1つ」として位置づけてください。
8. 会社と話がつかないときの公的な相談先
話し合いで折り合わない場合、公的な機関に間に入ってもらう道があります。
8-1. 都道府県労働局長による助言・指導・勧告
障害者雇用促進法第74条の6は、次のように定めています。
都道府県労働局長は、前条に規定する紛争に関し、当該紛争の当事者の双方又は一方からその解決につき援助を求められた場合には、当該紛争の当事者に対し、必要な助言、指導又は勧告をすることができる。
ここでいう「前条に規定する紛争」には、募集・採用における差別(第34条)についてのトラブルも含まれます。
障害者であることを理由とする差別についてのトラブルであれば、労働局に援助を求めることができます。
募集・採用の段階についても、この助言・指導・勧告の対象になります。
8-2. 援助を求めたことによる不利益な取扱いは禁止されている
「相談したら不利に扱われるのでは」という心配は不要です。
同条第2項は次のとおりです。
事業主は、障害者である労働者が前項の援助を求めたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
8-3. 調停は「募集及び採用」の紛争が対象外
もう1つの解決手段として、紛争調整委員会による調停があります(同法第74条の7)。
ただし条文には「労働者の募集及び採用についての紛争を除く」と明記されています。
つまり、入社前の採用段階のトラブルは、調停の対象にはなりません。
| 相談先 | 採用段階(内定前・内定時) | 入社後 |
|---|---|---|
| 都道府県労働局長による助言・指導・勧告 | 対象 | 対象 |
| 紛争調整委員会による調停 | 対象外 | 対象 |
| ハローワーク(障害者担当) | 対象 | 対象 |
採用段階で困っている場合は、調停ではなく労働局への援助の申出とハローワークへの相談が実際の入口になります。
8-4. まずはハローワークと労働局の窓口へ
どこに連絡すればいいか迷ったときは、次の順で考えるとわかりやすくなります。
- 応募先を紹介してもらったハローワーク
経緯を把握しているため、企業への確認が早く進みます。 - お住まいの都道府県労働局(職業安定部)
障害者雇用促進法に基づく助言・指導・勧告の窓口です。 - 障害者就業・生活支援センター
就労と生活の両面から継続的に支えてもらえます。
連絡先は厚生労働省の都道府県労働局所在地一覧から確認できます。
同じページからハローワークの所在地も調べられます。
よくある質問(FAQ)
Q. 応募する前に、身元保証人が必要かどうかを知る方法はありますか?
A. 求人票の記載を確認するか、ハローワークの担当者から企業に確認してもらえます。
求人票や募集要項の「提出書類」欄に書かれている場合があります。
記載がない場合でも、ハローワーク経由で応募するなら、担当者から企業に問い合わせてもらうことができます。
内定後に知るより、応募前に把握しておくほうが選択肢を持てます。
Q. 身元保証人になれる人の条件は?親族以外でもなれますか?
A. 法律上の制限はなく、認めるかどうかは会社の判断です。
身元保証人の資格を定めた法律はないため、「親族に限る」は会社が独自に設けている条件です。
成人で独立した生計を営んでいる人であれば、知人や友人でも認める会社は少なくありません。
まずは会社に、親族以外でも可能かを確認してみてください。
Q. 親が年金生活で収入がありません。身元保証人になれますか?
A. 会社の基準次第ですが、収入だけで一律に判断されるとは限りません。
「安定した収入がある人」を条件にしている会社では、年金受給者が認められないことがあります。
一方で、資産がある場合や、書類の目的が緊急連絡先である場合には問題にならないこともあります。
会社の基準を確認したうえで、事情を伝えて相談するのが確実です。
Q. 身元保証書を出さないと内定を取り消されますか?
A. 提出を義務づける法律はありませんが、取り消しの可否は事案によって異なります。
判断の枠組みは「5-1. 内定取り消しが不安なときに、まず知っておきたいこと」で解説しています。
ここで強調しておきたいのは、動くタイミングです。
期限の直前になってから相談すると、会社側にも調整する時間が残っていません。
書式を受け取った時点で状況を伝えておけば、緊急連絡先への変更や人数の緩和といった代替案を検討してもらえる余地が生まれます。
Q. 身元保証人になった親族には、どこまで責任が及びますか?
A. 書かれた極度額をそのまま請求されるわけではありません。
極度額はあくまで「これ以上は請求できない」という天井です。
身元保証ニ関スル法律により、裁判所は会社側の監督に過失がなかったか、保証人が保証を引き受けた経緯、社員の任務や身上の変化など一切の事情を考慮して、責任と金額を決めることになっています。
東京都産業労働局の資料も、身元保証人が労働者の行為すべてに責任を負うのでは負担が重すぎるため、同法によって身元保証人の責任は限定的なものとされている、と説明しています。
保証人に依頼するときは、この点に加えて、期間の上限があることと、通知を受ければ将来に向かって解除できることを伝えると納得を得やすくなります。
Q. 在職中に身元保証書の書き直しを求められました。応じる義務はありますか?
A. 更新自体は法律上可能ですが、応じる義務があるかは会社との契約内容によります。
身元保証ニ関スル法律は更新を認めており、その場合も更新のときから5年が上限です。
一方で、更新に応じるかどうかは保証人の意思にかかっています。
保証人が更新を断ることも、通知を受けて将来に向かって契約を解除することもできます。
会社の説明に納得できない場合は、就業規則の定めを確認したうえで、労働局の相談窓口に問い合わせてみてください。
Q. 障害があることを理由に身元保証人を求められました。どこに相談すればいいですか?
A. 都道府県労働局とハローワークが窓口になります。
障害者雇用の応募者にだけ身元保証人を求めているのであれば、障害者差別禁止指針が禁じる「障害者に対してのみ不利な条件」にあたる疑いがあります。
都道府県労働局長は、募集・採用段階のトラブルについても助言・指導・勧告を行うことができます。
援助を求めたことを理由に不利益な取扱いを受けることは、法律で禁止されています。
まとめ
障害者雇用と身元保証人について、押さえておきたいポイントを整理します。
- 「障害者雇用だから身元保証人が必要」という制度はない
障害者雇用促進法にも他の法令にも規定はありません。
身元保証書は会社が任意に求める社内書類です。 - 障害者にだけ求めるなら差別の疑いがある
判断の分かれ目は、全員に求めているかどうかです。
一般雇用の社員にも同じ書類を求めているかを、会社に確認しましょう。 - 助成金と身元保証人は無関係
障害者雇用の助成金は企業が受け取るもので、支給要件に身元保証人は含まれません。 - 身元保証書は極度額と期間を必ず確認する
2020年4月1日以降、極度額の記載がない身元保証契約は無効です。
期間は定めがなければ3年、定めても5年が上限です。 - 頼れる親族がいなくても、まず会社に相談する
緊急連絡先への変更、親族以外への依頼、保証会社の利用など、代替案を並べて提示しましょう。 - 一人で抱えず支援機関と労働局を使う
障害者就業・生活支援センターやハローワークが間に入ってくれます。
折り合わない場合は、都道府県労働局に援助を求めることができます。
身元保証人が用意できないことは、あなたの能力や適性とは何の関係もありません。
会社が独自に設けた条件でつまずいているだけです。
早めに声を上げて、使える窓口を使ってください。
