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名義預金の贈与税リスクと解消方法 — 贈与契約書・申告手続きまで

名義預金の贈与税リスクと解消方法 — 贈与契約書・申告手続きまで
最終更新:2026年6月1日

「親が自分名義で貯めてくれていた預金、このままで大丈夫?」
「子供のために名義預金をしているけど、税務署に指摘されたらどうしよう」
——こうした不安を抱えている方は少なくありません。

名義預金は、税務調査で最も指摘されやすい項目の一つです。

放置すると相続税の追徴課税や加算税が課される可能性があり、「知らなかった」では済まされません。

この手続きガイドでは、名義預金の判定基準からペナルティ、解消方法、そして暦年贈与や相続時精算課税制度を活用した生前対策の具体的な手続きまでを網羅的に解説します。

名義預金とは?税務署に指摘されるリスクを解説

名義預金とは、口座の名義人と実質的なお金の持ち主が異なる預金のことです。

たとえば、親が子供の名義で開設した口座に自分のお金を預けている場合、口座名義は子供でも、実態として親の財産とみなされます。

名義預金の具体例

  • 親が子供名義の口座に毎月積み立てている(子供は口座の存在を知らない)
  • 夫の収入を妻名義の口座に移して「へそくり」として貯めている
  • 祖父母が孫名義で定期預金を作り、通帳と印鑑を自分で保管している

これらはすべて名義預金と判定される可能性があります。

なぜ名義預金が問題になるのか

名義預金は、口座の名義人の財産ではなく、お金を預けた人(被相続人)の財産として扱われます。

そのため、被相続人が亡くなった際の相続税の課税対象になります。

税務署は金融機関に対して強い調査権限を持っており、被相続人だけでなく相続人の口座の入出金履歴を5〜10年分さかのぼって確認します。

高額の入出金があると目を付けられやすく、名義預金が発見される可能性が高いと考えましょう。

名義預金と判定される5つの基準

税務調査では、以下の5つの基準で名義預金かどうかを判断します。

いずれか1つでも該当すれば、名義預金と判定されるリスクがあります。

  • 被相続人が他人名義で口座を開設した
    亡くなった方が、家族の名義を使って口座を作っていたケース
  • お金の出どころが被相続人である
    口座に入っているお金が、名義人自身の収入ではなく被相続人のお金であるケース
  • 名義人が口座の存在を知らない
    口座の名義人が、その口座があること自体を知らなかったケース
  • 名義人に贈与の認識がない
    お金をもらったという認識が名義人になく、双方の合意がないケース
  • 被相続人が口座を管理していた
    通帳・キャッシュカード・印鑑を被相続人が保管し、名義人が自由に使えなかったケース
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あなたの預金は大丈夫?セルフチェック

以下に1つでも当てはまる場合、名義預金と判定されるリスクがあります。

  • 口座を作ったのは自分ではなく、親や祖父母
  • 口座に入っているお金は自分で稼いだものではない
  • 口座の存在を最近まで知らなかった
  • 「もらった」という明確な認識がない
  • 通帳や印鑑を親が管理している

名義預金と判定された場合のペナルティ

名義預金が税務調査で発見されると、相続税の申告漏れとして追徴課税の対象になります。

追徴される相続税に加えて、以下の加算税・延滞税が課されます。

種類税率適用されるケース
過少申告加算税10〜15%申告はしたが金額が少なかった場合
無申告加算税15〜30%申告自体をしていなかった場合
重加算税35〜40%意図的に隠していたと判断された場合
延滞税年2.4〜8.7%(※)本来の納付期限の翌日から日割り計算

※延滞税率は年度により変動します。

名義預金に時効はありません

贈与税の時効は6年(悪質な場合は7年)ですが、名義預金はそもそも贈与が成立していないため、贈与税の時効は適用されません。
10年以上前に預けたお金でも、名義預金と判断されればその時点で相続税の課税対象になります。

名義預金の解消方法

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すでに名義預金がある場合でも、生前に解消することが可能です。

主に2つの方法があります。

方法1: お金を元の持ち主に戻す

名義預金の口座からお金を引き出し、元の持ち主(預けた人)の口座に戻します。

名義預金はそもそも贈与が成立していないため、お金を戻しても「名義人から預けた人への贈与」にはなりません。

自分の財産を預け替えたにすぎないため、贈与税は発生しません。

戻す際の注意点
  • 一括で全額を戻しても問題ない
  • 振込で行い、記録を残しておく
  • 口座そのものを解約する必要はないが、解約したほうが明確

方法2: 贈与契約書を作成して正式に贈与する

名義人に預金の存在を伝え、贈与契約書を締結して正式に贈与します。

この場合、贈与した金額に応じて贈与税が課税されます。

年間110万円の基礎控除を利用し、複数年に分けて贈与することで贈与税の負担を軽減できます。

生前対策1 — 暦年贈与の正しいやり方

暦年贈与とは、毎年の贈与税の基礎控除(年間110万円)を活用して、少しずつ財産を移転する方法です。

正しく行えば、名義預金と判定されるリスクを回避しながら節税効果も得られます。

暦年贈与を成功させる5つのポイント

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ポイント1: 贈与契約書を毎年作成する

贈与は「あげる」「もらう」の双方合意で成立します。

口約束でも法律上は有効ですが、贈与者が亡くなった後に合意を証明できないため、必ず贈与契約書を作成してください。

贈与契約書に記載する項目

  • 贈与者と受贈者の氏名・住所
  • 贈与する財産の内容(「現金○○万円」など)
  • 贈与の時期(「令和○年○月○日までに振り込む」)
  • 契約日
  • 双方の署名・捺印
贈与契約書のテンプレート例
贈与契約書  
 
贈与者 山田太郎(以下「甲」)と受贈者 山田一郎(以下「乙」)は、  
以下のとおり贈与契約を締結する。  
 
第1条 甲は乙に対し、現金100万円を贈与するものとし、  
   乙はこれを受諾した。  
第2条 甲は令和○年○月○日までに、前条の現金を  
   乙の指定する預金口座に振り込む方法により引き渡す。  
 
本契約の成立を証するため、本書2通を作成し、  
甲乙それぞれ署名捺印の上、各1通を保管する。  
 
令和○年○月○日  
甲: 住所______ 氏名______ 印  
乙: 住所______ 氏名______ 印  

ポイント2: 銀行振込で証拠を残す

ATMで現金を入金するのではなく、贈与者の口座から受贈者の口座へ振込を行いましょう。

振込であれば、通帳に贈与者の名前と金額が記録されるため、贈与の客観的な証拠になります。

ポイント3: 口座は名義人自身が管理する

贈与後は、その口座の通帳・キャッシュカード・印鑑を名義人自身が管理してください。

贈与者が引き続き管理していると、実質的に贈与が完了していないとみなされます。

もらったお金を少し使っておくことも、自分で管理している証拠になります。

ポイント4: 届出印は名義人自身の印鑑を使う

贈与者と受贈者が同じ印鑑を使っていると、贈与者が口座を管理していると疑われます。

名義人は自分専用の印鑑を届出印として登録しましょう。

ポイント5: 定期贈与とみなされない工夫

「毎年12月25日に100万円を振り込む」のように、同じ日に同じ金額を送金し続けると、「初めから○○万円を贈与する約束だった(定期贈与)」とみなされる可能性があります。

定期贈与と判断されると、贈与の合計額に対して贈与税がかかるリスクがあるため、以下の工夫をしましょう。

  • 贈与する金額を毎年変える(100万円、80万円、90万円など)
  • 贈与する時期を毎年ずらす
  • 贈与契約書は毎年個別に作成する(複数年分をまとめない)

110万円を超える場合の贈与税申告

年間の贈与額が110万円を超えた場合は、贈与税の申告が必要です。

基礎控除後の課税価格税率控除額
200万円以下10%
400万円以下15%10万円
600万円以下20%30万円
1,000万円以下30%90万円
1,500万円以下40%190万円
3,000万円以下45%265万円
4,500万円以下50%415万円
4,500万円超55%640万円

※上記は直系尊属(親・祖父母)から18歳以上の子・孫への贈与の場合(特例税率)。

表の見方

「基礎控除後の課税価格」とは、1年間に贈与を受けた合計額から基礎控除110万円を差し引いた金額です。
「控除額」は速算控除額と呼ばれ、税額を簡単に計算するための調整額です。
贈与税額は「基礎控除後の課税価格 × 税率 − 控除額」で求められます。
例: 年間310万円の贈与を受けた場合、基礎控除後の課税価格は200万円(310万円 − 110万円)。
贈与税額 = 200万円 × 10% − 0円 = 20万円となります。

生前対策2 — 相続時精算課税制度の活用

相続時精算課税制度は、60歳以上の親・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与に適用できる制度です。

令和6年(2024年)の改正で年110万円の基礎控除が新設され、使い勝手が大幅に向上しました。

制度の概要

  • 特別控除:
    累計2,500万円まで贈与税がかからない
  • 基礎控除(令和6年〜):
    年110万円まで贈与税も相続税もかからない
  • 超過分の税率:
    特別控除を超えた部分に一律20%

令和6年改正の3つのポイント

  1. 年110万円まで申告不要
    年間の贈与額が110万円以下なら贈与税の申告書を提出する必要がない
  2. 相続税への加算なし
    基礎控除(110万円)以内の贈与分は、相続発生時に相続財産に加算されない
  3. 特別控除2,500万円と別枠
    基礎控除110万円は特別控除2,500万円とは別に適用される

暦年贈与との比較

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項目暦年贈与相続時精算課税制度
基礎控除年110万円年110万円(令和6年〜)
非課税枠年110万円のみ年110万円+累計2,500万円
相続時の加算相続開始前7年以内の贈与を加算(※)基礎控除超過分を加算
贈与者の年齢制限なし60歳以上
受贈者の年齢制限なし18歳以上
撤回いつでも暦年贈与可能一度選択すると暦年課税に戻れない

※暦年贈与の「相続開始前7年以内の加算」は、令和6年(2024年)以降の贈与から段階的に適用されます。

完全に7年加算となるのは2031年以降の相続からで、それまでは経過措置により加算期間が順次延長されます。

また、延長された4年目〜7年目の贈与については、合計100万円の控除が認められます。

一度選択すると暦年課税には戻れません

相続時精算課税制度を選択すると、その贈与者からの贈与については、暦年課税に変更することができません。
選択前に、将来の相続まで見据えたシミュレーションを行うことをおすすめします。

相続時精算課税選択届出書の提出手続き

相続時精算課税制度を選択する場合、最初の贈与を受けた年の翌年2月1日〜3月15日に届出書を提出します。

必要書類

  • 相続時精算課税選択届出書
  • 受贈者の戸籍の謄本または抄本(受贈者の氏名・生年月日、贈与者の推定相続人または孫であることを証明するもの。贈与日以後に作成されたもの)
  • 贈与税の申告書(年間110万円超の場合)
  • マイナンバーカード等の本人確認書類

提出先

受贈者の住所地の所轄税務署

贈与税の申告手続き

年間110万円を超える贈与を受けた場合は、贈与税の申告が必要です。

申告の基本情報

項目内容
申告期間贈与を受けた年の翌年2月1日〜3月15日
申告先受贈者の住所地の所轄税務署
申告方法窓口提出 / 郵送 / e-Tax(電子申告)
主な必要書類贈与税の申告書第一表

申告書の入手方法

e-Taxで申告する場合

e-Tax(電子申告)を利用すれば、自宅から贈与税の申告が可能です。

  1. マイナンバーカードとICカードリーダー(またはスマートフォン)を準備
  2. 国税庁「確定申告書等作成コーナー」にアクセス
  3. 「贈与税の申告書作成」を選択
  4. 画面の案内に沿って贈与額等を入力
  5. 電子署名を付与して送信

よくある質問(FAQ)

Q. 子供名義の口座にお年玉や児童手当を貯めるのは名義預金になりますか?

A. 通常の金額であれば問題になる可能性は低いです。

お年玉や児童手当を子供名義の口座に貯めること自体は一般的です。

ただし、金額が数百万円を超えるなど通常の範囲を超える場合や、子供が口座の存在を知らず親が管理し続けている場合は、名義預金とみなされるリスクがあります。

子供が一定の年齢に達したら口座の存在を伝え、通帳を本人に渡すようにしましょう。

Q. 名義預金を解消せず使い切ればバレないのでは?

A. 税務署は過去の入出金履歴をさかのぼって調査するため、使い切ってもバレる可能性があります。

税務署は金融機関に照会し、亡くなった方と相続人の口座を5〜10年分さかのぼって調査します。

大きな入出金の記録は残るため、「使い切ったから大丈夫」とは言えません。

Q. 親のお金をNISA口座で運用する場合、贈与税はかかりますか?

A. 親から子への資金移動が年110万円以下であれば、贈与税はかかりません。

親が子のNISA口座に入金すること自体は、贈与として扱われます。

年間110万円以下であれば基礎控除の範囲内のため贈与税は発生しませんが、以下の条件を満たす必要があります。

  • 子供本人がNISA口座を管理・運用している
  • 贈与契約書を作成している(推奨)
  • 子供が贈与を受けた認識がある

口座の管理を親が行っている場合は名義預金とみなされるリスクがあるため注意してください。

Q. 名義預金に時効はありますか?

A. 名義預金には時効がありません。

贈与税の時効は6年(悪質な場合7年)ですが、名義預金はそもそも贈与が成立していないため、贈与税の時効は適用されません。

10年以上前に預けたお金であっても、相続発生時に名義預金と判断されればその時点で相続税の課税対象になります。

「古い預金だから時効で大丈夫」という考えは通用しないため、早めの対策が重要です。

Q. 年間110万円以下の贈与でも贈与契約書は作るべきですか?

A. 作成を強くおすすめします。

法律上は贈与契約書がなくても贈与は成立します。

しかし、贈与者が亡くなった後の税務調査で「本当に贈与があったのか」を証明する客観的な証拠として、贈与契約書は極めて重要です。

110万円以下であっても、名義預金と判定されないための対策として毎年作成しておきましょう。

まとめ

名義預金は税務調査で最も指摘されやすい項目であり、時効もないため放置は危険です。

早めに対策を取ることで、将来の相続税トラブルを防げます。

以下のチェックリストで、自分がとるべき対策を確認しましょう。

  • 名義預金に該当する口座がないか確認する
  • 該当する場合: 元の持ち主に戻すか、贈与契約書を作成して正式に贈与する
  • 今後の贈与: 贈与契約書を毎年作成し、振込で実行する
  • 口座の管理: 名義人自身が通帳・印鑑を管理する
  • 年間110万円超の贈与: 翌年2月1日〜3月15日に贈与税を申告する
  • まとまった金額の贈与: 相続時精算課税制度の活用を検討する

名義預金の問題は個人での判断が難しいケースも多いため、不安がある場合は相続税に強い税理士への相談をおすすめします。

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