海外留学中の子供の扶養控除 - 必要書類と年末調整の手続き
「子供が海外留学に行っているけど、扶養控除ってどうなるの?」
「送金の証明書が必要って聞いたけど、何を用意すればいい?」
「2023年に制度が変わったらしいけど、うちの子は対象になる?」
海外留学中の子供がいる場合でも、一定の条件を満たせば扶養控除を受けることができます。
ただし、2023年(令和5年)の税制改正で、国外に住む親族の扶養控除の要件が大きく見直されました。
この手続きガイドでは、留学中の子供を扶養に入れる条件や必要書類、年末調整・確定申告での具体的な手続き方法をわかりやすく解説します。
1. 海外留学中の子供を扶養に入れる条件
海外留学中の子供に扶養控除を適用できるかどうかは、留学期間と子供の年齢によって変わります。
まず前提として、「国外居住親族」に該当するかどうかの判定が必要です。
1-1. 「非居住者」とは?判定のポイント
税法上、日本国内に住所を持たず、かつ引き続き1年以上居所を有しない個人を「非居住者」といいます。
海外留学の場合、おおむね1年以上の留学であれば非居住者に該当し、「国外居住親族」として扱われます。
「住所」とは生活の本拠のことで、客観的事実で判定されます。
1年以上の予定で海外に渡航する場合は、出国時点で非居住者となるのが一般的です。
住民票を日本に残していても、生活の本拠が海外に移っていれば非居住者と判定されます。
1-2. 短期留学(1年未満)の場合
交換留学や短期プログラムなど、留学期間が1年未満の場合は、非居住者に該当しないケースがほとんどです。
この場合、子供は日本の「居住者」のままなので、通常の扶養控除の手続きで問題ありません。
国外居住親族としての特別な書類(親族関係書類・送金関係書類など)を用意する必要はなく、普段どおり年末調整で扶養控除を申告できます。
8か月程度の交換留学で住民票もそのままの場合、国外居住親族の手続きは不要です。
年末調整の扶養控除等申告書に、通常どおり子供の氏名と住所(日本の自宅)を記入してください。
1-3. 子供の年齢による分岐
1年以上の留学で非居住者となった子供の場合、12月31日時点の年齢によって扶養控除の対象になるかどうかが変わります。
| 年齢区分 | 扶養控除の対象 | 追加で必要な書類 |
|---|---|---|
| 16歳以上30歳未満 | 対象 | 親族関係書類 + 送金関係書類 |
| 30歳以上70歳未満(留学の場合) | 対象 | 親族関係書類 + 留学ビザ等書類 + 送金関係書類 |
| 30歳以上70歳未満(上記以外) | 原則対象外 | — |
| 70歳以上 | 対象 | 親族関係書類 + 送金関係書類 |
大学や大学院への留学であれば、子供の年齢は18歳〜20代前半が多いため、「16歳以上30歳未満」に該当するケースがほとんどです。
この場合、親族関係書類と送金関係書類の2つを準備すれば扶養控除を受けられます。
2. 2023年改正で変わったポイント
2023年(令和5年)1月から、国外居住親族に係る扶養控除の要件が大きく見直されました。
この改正は、もともと海外在住の親族を多数扶養に入れて税負担を軽減するケースが問題視されていたことが背景にあります。
2-1. 30歳以上70歳未満の国外居住親族が原則対象外に
改正により、30歳以上70歳未満の国外居住親族は、原則として扶養控除の対象から除外されました。
ただし、次の3つのいずれかに該当する場合は、引き続き扶養控除の適用を受けられます。
- ① 留学により非居住者となった者
「留学ビザ等書類」を追加で提出する必要があります。 - ② 障害者
追加書類は不要です。 - ③ 年間38万円以上の送金を受けている者
「38万円送金書類」を提出する必要があります。
2-2. 留学中の子供への影響
大学・大学院留学の場合、子供の年齢が30歳未満であれば改正前と同じ条件で扶養控除を受けられます。
30歳以上で留学している場合(社会人留学、MBA留学など)は、留学ビザ等書類の提出が追加で必要になりました。
2-3. 令和7年(2025年)の最新改正
令和7年分からは「特定親族特別控除」が新設されました。
これは19歳以上23歳未満の親族(いわゆる大学生世代)について、合計所得金額が58万円を超えても、85万円(給与収入で約150万円)以下であれば、所得に応じて段階的に最高63万円の控除が受けられる制度です。
国外居住親族であっても要件を満たせば適用されるため、留学先でアルバイト収入がある場合にも有利に働く可能性があります。
3. 扶養控除額はいくら?
海外留学中の子供を扶養に入れた場合、受けられる控除額は子供の年齢によって異なります。
| 区分 | 年齢の目安(12月31日時点) | 控除額(所得税) | 控除額(住民税) |
|---|---|---|---|
| 一般の控除対象扶養親族 | 16歳以上19歳未満 | 38万円 | 33万円 |
| 特定扶養親族 | 19歳以上23歳未満 | 63万円 | 45万円 |
| 一般の控除対象扶養親族 | 23歳以上30歳未満 | 38万円 | 33万円 |
留学中の子供が19歳以上23歳未満の場合は「特定扶養親族」に該当し、控除額が63万円と大きくなります。
たとえば、所得税率20%の方であれば、特定扶養控除63万円 × 20% = 約12.6万円の所得税が軽減されます。
住民税(税率10%)も合わせると、45万円 × 10% = 4.5万円。
合計で年間約17万円の節税効果が見込めます。
4. 必要書類と入手方法
国外居住親族として扶養控除を受けるには、通常の年末調整の書類に加えて、いくつかの確認書類が必要です。
4-1. 親族関係書類(全員共通)
子供が自分の親族であることを証明する書類です。
次のいずれかを用意します。
- パターンA: 日本の公的書類 + パスポートの写し
戸籍の附票の写し(または戸籍謄本)と、子供のパスポートの写しをセットで提出します。 - パターンB: 外国政府が発行した書類
留学先の国の出生証明書(Birth Certificate)や、氏名・生年月日・住所が記載された公的書類を提出します。
顔写真のあるページ(身分事項ページ)と、出入国スタンプが押されたページの写しが必要です。
自動化ゲートを利用してスタンプがない場合は、身分事項ページのみで構いません。
入手方法
- 戸籍の附票の写し
本籍地の市区町村役場で取得します。
郵送請求も可能です。
手数料は1通300円程度です。 - パスポートの写し
子供のパスポートをコピーします。
留学前にコピーしておくとスムーズです。
4-2. 留学ビザ等書類(30歳以上70歳未満の留学者のみ)
子供が30歳以上70歳未満で留学している場合に必要です。
29歳以下の場合はこの書類は不要です。
次のいずれかを用意します。
- 留学先の国が発行した査証(ビザ)の写し(学生ビザなど)
- 留学先の国が発行した在留カードに相当する書類の写し
4-3. 送金関係書類(年末調整時に提出)
扶養控除を申告する本人が、子供の生活費・教育費のために送金した事実を証明する書類です。
次のいずれかを用意します。
- 外国送金依頼書の控え
銀行の窓口やネットバンキングで海外送金した際の控え(明細書)です。 - クレジットカードの家族カード利用明細書
子供に家族カードを持たせている場合、その利用明細書が送金関係書類になります。 - 電子決済手段の国外移転依頼書の控え
ステーブルコインなどの電子決済手段で送金した場合の控えです。
- 扶養控除を申告する本人名義で送金する必要があります。
配偶者名義の送金では、本人の扶養控除には使えません。 - 知り合いに依頼して現金を手渡しした場合は、送金関係書類がないため扶養控除を受けられません。
- 外国語の書類には、日本語の翻訳文を添付する必要があります。
送金回数が多い場合の省略
年3回以上送金している場合は、すべての送金書類を提出する必要はありません。
最初と最後の送金書類に加えて、送金の明細を記載した一覧表を提出すれば、中間の書類は省略できます。
ただし、省略した書類は自宅で保管する必要があります。
4-4. 38万円送金書類(30歳以上70歳未満の一部)
子供が30歳以上70歳未満で、留学生でも障害者でもない場合に限り、年間38万円以上の送金を証明する書類が必要です。
これは通常の「送金関係書類」のうち、合計額が38万円以上であることが明らかになるものです。
大学留学中の子供(30歳未満)であれば、この書類は不要です。
4-5. 書類の翻訳について
外国政府が発行した書類(ビザ、出生証明書など)が外国語で書かれている場合は、日本語の翻訳文を添付する必要があります。
翻訳は自分で行っても構いません。
翻訳者の氏名と住所を翻訳文に記載してください。
5. 年末調整での手続き方法
会社員の場合、海外留学中の子供の扶養控除は年末調整で手続きします。
5-1. 扶養控除等申告書の書き方
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に、留学中の子供の情報を記入します。
記入のポイントは以下のとおりです。
- 「控除対象扶養親族」欄に子供の氏名・生年月日を記入
- 「非居住者である親族」の「○」欄にチェックを入れる
- 「生計を一にする事実」欄に、その年に送金した金額を記入(例: 「送金 120万円」)
- 30歳以上70歳未満で留学の場合は「留学」にもチェックを入れる
- 住所欄には留学先の住所を記入する
5-2. 書類の提出タイミング
書類の提出は2回に分かれます。
| タイミング | 提出する書類 |
|---|---|
| 扶養控除等申告書の提出時(年初または入社時) | 親族関係書類(+ 留学ビザ等書類) |
| 年末調整時(11月〜12月頃) | 送金関係書類(or 38万円送金書類) |
親族関係書類は、一度提出すれば翌年以降は異動がない限り再提出不要です。
ただし、パスポートの写しは記載内容に変更がなければ毎年の再提出は不要ですが、留学ビザ等書類は毎年提出が必要です。
年末調整の時期(11月〜12月)に慌てないよう、送金関係書類は日頃から保管しておきましょう。
銀行の送金明細やクレジットカードの家族カード明細を、年間分まとめて整理しておくとスムーズです。
年末調整の書き方全般については、こちらの手続きガイドもあわせてご確認ください。
6. 確定申告で扶養控除を申告する方法
以下のような場合は、年末調整ではなく確定申告で扶養控除を申告します。
6-1. 確定申告が必要なケース
- 年末調整で手続きし忘れた場合
年末調整の締め切りに間に合わなかった場合でも、確定申告(還付申告)で扶養控除を申告できます。 - 個人事業主・フリーランスの場合
年末調整がないため、毎年の確定申告で扶養控除を申告します。 - 年の途中で子供が留学に出発した場合
年末調整時に書類が間に合わないことがあります。
6-2. e-Taxでの申告手順
国税庁の確定申告書等作成コーナーまたはe-Taxソフトを使って申告できます。
- 確定申告書の「扶養控除」の入力画面で、子供の情報を入力
- 「非居住者である親族」にチェック
- 「国外居住親族に関する事項」を入力
- 親族関係書類・送金関係書類などをPDF化して添付、または書面で郵送
6-3. 還付申告の期限
年末調整で扶養控除を申告し忘れた場合、翌年1月1日から5年間は還付申告ができます。
たとえば2026年分の扶養控除を申告し忘れた場合、2031年12月31日までに確定申告(還付申告)をすれば税金が戻ってきます。
よくある質問(FAQ)
Q. 短期留学(1年未満)でも国外居住親族の手続きが必要ですか?
A. 原則として不要です。
留学期間が1年未満の場合、子供は税法上の「居住者」のままとなるケースがほとんどです。
この場合は通常の扶養控除と同じ手続きで問題なく、親族関係書類や送金関係書類を用意する必要はありません。
ただし、1年未満の予定で出国しても、その後に留学期間が延長されて1年以上になった場合は、出国時にさかのぼって非居住者と判定される可能性があります。
Q. 送金は誰の名義で行う必要がありますか?
A. 扶養控除を申告する本人の名義で送金してください。
たとえば、父親が子供の扶養控除を申告する場合、送金も父親名義で行う必要があります。
母親の名義で送金した場合、その送金関係書類は父親の扶養控除の証明には使えません。
Q. 子供が留学先でアルバイト収入がある場合は?
A. 子供の合計所得金額が58万円以下(令和7年分)であれば、扶養控除の対象です。
令和7年分から、扶養親族の所得要件が48万円から58万円に引き上げられました。
日本円に換算した年間のアルバイト収入が123万円以下(給与所得控除65万円を差し引くと所得58万円以下)であれば、扶養控除の対象です。
なお、19歳以上23歳未満の子供の場合、合計所得金額が58万円を超えても85万円以下(給与収入約150万円)であれば、「特定親族特別控除」(最高63万円)の対象になります。
Q. 住民票を抜いた場合と残した場合で手続きは変わりますか?
A. 税法上の非居住者の判定は住民票の有無だけで決まるわけではありません。
非居住者かどうかは「生活の本拠がどこにあるか」という客観的事実で判定されます。
住民票を日本に残していても、1年以上の留学で生活の本拠が海外に移っていれば非居住者となります。
逆に、住民票を抜いていても、短期留学で生活の本拠が日本にあれば居住者のままです。
ただし、住民票を抜いた場合は国民健康保険から外れるなど、税金以外の手続きにも影響があるため、総合的に判断してください。
Q. 家族カード(クレジットカード)は送金関係書類になりますか?
A. はい、家族カードの利用明細書は送金関係書類として認められます。
留学中の子供に家族カードを持たせている場合、その利用明細書を送金関係書類として提出できます。
この方法なら、毎回の海外送金手続きが不要で手間が少なく、明細書も自動的に発行されるためおすすめです。
カードの利用日が送金日として扱われます。
まとめ
海外留学中の子供の扶養控除を受けるためのポイントを整理します。
- 1年未満の短期留学
→ 通常の扶養控除の手続きでOK。特別な書類は不要。 - 1年以上の長期留学(30歳未満)
→ 国外居住親族として「親族関係書類」と「送金関係書類」を用意する。 - 1年以上の長期留学(30歳以上70歳未満)
→ 上記に加えて「留学ビザ等書類」も用意する。
手続きチェックリスト
- 留学期間が1年以上かどうか確認する
- 子供の12月31日時点の年齢を確認する
- 戸籍の附票の写しを本籍地の役場で取得する
- 子供のパスポートの写しを用意する
- 年間の送金書類(銀行の控え、家族カード明細など)をまとめる
- 30歳以上の場合は留学ビザの写しを用意する
- 外国語の書類は日本語翻訳文を用意する
- 扶養控除等申告書に必要事項を記入する
- 年末調整の時期に送金関係書類を会社に提出する
2023年の改正で書類の準備が少し複雑になりましたが、留学中の子供がいる場合の扶養控除の適用自体は引き続き認められています。
必要書類を計画的に準備して、節税メリットをしっかり活用しましょう。
