日本版DBSとは?2026年12月施行 対象と確認手続き
「うちの教室も対象になるの?」
「いつまでに、何をすればいいの?」
「過去のことまで調べられるなんて、働く側は不安…」
2026年12月25日、子どもと接する仕事に就く人の性犯罪歴を確認する「こども性暴力防止法(日本版DBS)」が施行されます。
学校や認可保育所だけでなく、学習塾・スポーツクラブ・学童・習い事教室など幅広い事業が関わる制度です。
この手続きガイドでは、対象になる事業者・従事者の範囲、確認される犯罪、申請から確認書交付までの流れ、いつまでに何をすべきかを、わかりやすく整理します。
日本版DBS(こども性暴力防止法)とは
制度の概要
日本版DBSとは、学校や保育所、学習塾などで子どもと接する仕事に就く人について、過去の性犯罪歴を確認する仕組みです。
正式名称は「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」(令和6年法律第69号)で、通称「こども性暴力防止法」と呼ばれます。
「DBS」はイギリスの前歴開示・就業制限の仕組み「Disclosure and Barring Service」に由来し、これを参考にしたことから「日本版DBS」と呼ばれています。
所管はこども家庭庁です。
2024年6月19日に成立・同月26日に公布され、2026年(令和8年)12月25日に施行されます。
制度がスタートするのは2026年12月25日です。
すでに働いている人(施行時現職者)の確認は、2027年(令和9年)4月以降に順次行われる予定です。
なぜ導入されるのか
教育・保育の現場には、指導者と子どもの間に逆らいにくい力関係がある「支配性」、継続的に密接な関係を持つ「継続性」、第三者の目が届きにくい「閉鎖性」という3つの特徴があります。
こうした環境は性暴力が起きやすいと指摘されてきました。
これまでも教員免許の失効確認などの仕組みはありましたが、すべての性犯罪歴を確認できるわけではありませんでした。
採用の段階で性犯罪歴を確認し、子どもへの性暴力を未然に防ぐために設けられたのが、この犯罪事実確認の仕組みです。
イギリスのDBS制度との違い
日本版DBSはイギリスの制度を参考にしていますが、いくつか独自の設計があります。
- 対象の広げ方が異なる
イギリスは子どもに関わる職業で犯罪歴のある人を雇うこと自体を厳しく制限します。
日本版は、認可施設には義務として適用し、学習塾や習い事教室などは任意で国の認定を受ける形にしています。 - 犯歴があっても自動排除ではない
日本版では、性犯罪歴があっても自動的に就労を禁止するのではなく、事業者が内容を踏まえて総合的に判断する仕組みになっています。
対象になるのは誰?事業者の2つの区分
こども性暴力防止法では、対象となる事業者を「学校設置者等(義務対象)」と「民間教育保育等事業者(認定制)」の2種類に分けています。
どちらに当てはまるかで、犯罪事実確認が義務になるか、任意になるかが変わります。
義務対象事業者と認定事業者
| 区分 | 別の呼び方 | 主な対象例 | 犯罪事実確認 |
|---|---|---|---|
| 学校設置者等 | 義務対象事業者(法定事業者) | 学校、認可保育所、認定こども園、児童養護施設など | 義務 |
| 民間教育保育等事業者 | 認定事業者 | 学習塾、認可外保育施設、習い事教室、スポーツクラブ、学童保育など | 任意(認定を受けた場合は義務と同じ) |
学校や認可保育所など公的な性格の強い施設は、自動的に義務の対象です。
一方、学習塾やスポーツクラブなどの民間事業者は、国の「認定」を受けるかどうかを自分で選べます。
任意認定と「こまもろうマーク」
認定を受けると、子どもの安全に取り組む事業者であることを示す「認定事業者マーク」を広告などに表示できます。
このマークは、こども家庭庁が定める「こまもろうマーク」の一種です。
こまもろうマークには、認定事業者向けの「認定事業者マーク」と、学校や認可保育所など義務対象事業者向けの「法定事業者マーク」の2種類があります。
保護者に安心をアピールでき、他の教室との差別化にもつながります。
認定は任意ですが、一度認定を受けると、学校や認可保育所と同じレベルの確認義務・監督・罰則の対象になります。
マークの表示というメリットだけでなく、継続的な義務が生じる点を理解したうえで判断しましょう。
確認の対象になる従事者の範囲
犯罪事実確認の対象は、子どもと直接接する業務を行うすべての従事者です。
雇用形態は関係ありません。
- 正職員・契約社員
- パート・アルバイト
- 派遣・業務委託
- ボランティア
「週1日だけの非常勤だから」「パートだから」という理由で対象外になることはありません。
施設長や事業所の管理者自身も対象に含まれます。
「個人事業主だから」「小規模だから」という理由でも対象外にはなりません。
判断基準は、法律で定められた事業に当てはまるかどうかです。
個人で認可保育所を運営している場合や、認定を受けた個人経営の学習塾なども対象になります。
確認される「特定性犯罪」とは
犯罪事実確認で照会されるのは、すべての犯罪ではなく、法律で定められた「特定性犯罪」に限られます。
対象となる犯罪
特定性犯罪には、次のようなものが含まれます。
- 法律(刑法・特別法)による性犯罪
不同意わいせつ、不同意性交等、児童買春、児童ポルノの所持・製造、盗撮(性的姿態撮影)など。 - 各都道府県の条例による性的な違反行為
迷惑防止条例の痴漢・盗撮・卑わいな言動、青少年健全育成条例の未成年との淫行など。
被害者が子どもか大人かは問いません。
大人への性犯罪であっても、特定性犯罪に当たれば確認の対象になります。
対象にならないもの
一方で、次のものは確認の対象外です。
- 性犯罪以外の犯罪
窃盗(万引きなど)、暴行、詐欺、当て逃げなどは、重大な前科であっても照会されません。 - 前科にあたらない記録
不起訴処分、無罪判決、逮捕されただけで起訴に至らなかったケースなどは「前科」ではないため、対象外です。
照会されるのは、有罪が確定した「前科」のみです。
「前歴」(逮捕・書類送検されたが不起訴になった記録など)は含まれません。
痴漢を疑われたが不送致・不起訴になった、といったケースは確認の対象になりません。
確認できる期間
特定性犯罪は、刑法上の「刑の消滅」よりも長い期間、確認の対象として記録が残ります。
| 刑の種類 | 確認できる期間 |
|---|---|
| 拘禁刑(実刑) | 刑の執行を終えた日などから20年間 |
| 執行猶予つきの判決 | 裁判が確定した日から10年間 |
| 罰金 | 刑の執行を終えた日などから10年間 |
たとえば実刑の場合、刑期を終えてから20年間は確認対象として記録が残ります。
「10年以上前のことだから」と本人が説明していても、システム上は確認対象として残っているケースがあります。
採用面接での自己申告だけに頼らず、正式な確認が必要とされる理由がここにあります。
犯罪事実確認の手続き4ステップ
犯罪事実確認は、事業者の申請から始まり、本人の書類提出、国による照合を経て、確認書が交付されるという流れで進みます。
職員本人が自分で申請するのではなく、施設や事業所を運営する事業者が申請する点が大きな特徴です。
Step1 事業者が申請する
手続きの起点は事業者です。
こども家庭庁のシステム(こまもろうシステム)にアクセスし、確認したい職員の情報を申請します。
申請では、事業者情報(名称・所在地・代表者名など)に加え、職員の氏名・住所・生年月日・性別、勤務先や業務内容、従事予定日などを登録します。
派遣職員や業務委託の場合は、派遣元と派遣先(委託元と委託先)が共同で申請する必要があります。
「派遣会社に任せているから関係ない」という認識は誤りで、受け入れる側の施設も申請の当事者になります。
Step2 本人が戸籍などを提出する
事業者の申請と並行して、職員本人がこども家庭庁に本人確認のための書類を提出します。
- 日本国籍の場合:戸籍の謄本または抄本
- 外国籍の場合:国籍などが記載された住民票の写しなど
注意したいのは、過去に氏名や本籍を変えた履歴もすべて必要になる点です。
結婚による改姓、養子縁組による氏名変更、転籍による本籍変更などがある場合は、変更前の情報がわかる書類も準備します。
書類の取り寄せに時間がかかることもあるため、本人には早めに案内しておきましょう。
戸籍謄本の取り寄せ方法は、次の手続きガイドも参考にしてください。
Step3 こども家庭庁・法務省が照合する
本人から提出された書類をもとに、2段階で照合が行われます。
- こども家庭庁が戸籍・住民票などで本人を特定し、氏名・生年月日・本籍(国籍)の変更履歴を整理する
- 法務省が刑事確定訴訟記録のデータベースと照合し、特定性犯罪の前科がないかを確認する
この照合作業には数週間程度かかります。
Step4 犯罪事実確認書が交付される
照合が終わると、こども家庭庁から事業者に「犯罪事実確認書」が交付されます。
確認書には、次のいずれかが記載されます。
- 特定性犯罪事実該当者であると認められない(前科なし)
- 特定性犯罪事実該当者の区分や裁判が確定した日(前科あり)
ただし、前科ありの場合は、いきなり事業者に確認書が届くわけではありません。
前科ありの内容が事業者へ交付される前に、まず本人へ通知が行われます。
本人は通知から2週間以内であれば、内容の訂正を請求したり、内定辞退や退職を選んだりできます。
本人が辞退・退職を選んだ場合、事業者に確認書は交付されず、事業者は理由を知ることができない仕組みです。
全体でどのくらいかかる?
申請から確認書の交付まで、全体で数週間から1か月程度かかります。
書類の取り寄せに時間がかかったり、本人への事前通知・訂正請求が発生したりすると、さらに長くなることがあります。
採用内定を出したら速やかに申請を始め、勤務開始日の1か月以上前には手続きを開始しておくと安心です。
やむを得ない事情で勤務開始前に確認が間に合わない場合は、勤務開始後に確認を完了する例外(いとま特例)があります。
急な欠員・人事異動などの場合は原則として従事開始から3か月以内、合併・新設や国による確認の遅れなど特別な事情がある場合は6か月以内に確認を完了します。
いずれの場合も、確認が済むまでは子どもと一対一にしないなどの安全措置を講じる必要があります。
いつまでに確認する?4つのタイミング
犯罪事実確認は一度行えば終わりではありません。
確認が必要なタイミングは、次の4つです。
| タイミング | 確認の期限 |
|---|---|
| 新規採用者 | 業務を開始させる前まで |
| 義務対象事業の現職者 | 施行(2026年12月25日)から3年以内 |
| 認定事業の現職者 | 認定を受けてから1年以内 |
| 一度確認した人の更新 | 5年ごとに再確認 |
新規採用者は、業務を始める前に確認を終えておく必要があります。
すでに働いている現職者は、義務対象事業なら施行から3年以内、認定事業なら認定から1年以内に確認します。
一度に全員分を申請する必要はなく、計画的に進めて構いません。
一度確認した職員も、5年が経過したら改めて確認し直します。
更新を忘れると、その職員を子どもと接する業務に従事させることができなくなるため、更新時期を管理する仕組みを作っておきましょう。
前科が確認された場合の対応と従事者の権利
事業者は総合的に判断する
確認書に前科ありと記載されていても、その職員を必ず解雇しなければならないわけではありません。
法律が求めているのは、「子どもへの性暴力が行われるおそれがあると認めるときに、必要な措置を講じること」です。
前科の内容や経過年数などを踏まえ、子どもと接しない業務への配置転換も含めて、事業者が総合的に判断します。
イギリスの制度のように、前科があれば自動的に排除する仕組みではない点が特徴です。
従事者(働く側)の権利
確認される側の従事者にも、プライバシーや権利を守るための仕組みが用意されています。
- 事前の通知を受ける権利
前科ありの確認書が事業者に渡る前に、本人へ先に通知されます。 - 内容の訂正を請求する権利
通知された内容が事実と異なる場合、こども家庭庁に訂正を請求できます。 - 辞退・退職を選ぶ余地
通知から2週間以内であれば、内定辞退や退職を選ぶこともできます。 - 情報を守られる権利
確認書の内容を扱う人には守秘義務があり、みだりに他人へ知らせたり、不当な目的に利用したりすることは禁じられています。
確認の対象になるのは特定性犯罪の前科だけです。
勤務先でのトラブルやハラスメントの記録、性犯罪以外の犯罪歴などが照会されることはありません。
事業者の義務と違反したときの罰則
犯罪事実確認のほかにも、対象事業者にはさまざまな措置が義務付けられます。
日ごろから講じるべき措置
- 従事者への研修の実施
- 子どもが性暴力被害を早期に相談・申告できる体制の整備
- 被害が疑われる場合の調査や、被害を受けた子どもの保護・支援
- 犯罪事実確認の記録を適正に管理し、目的外に利用・提供しないこと
- 確認の実施状況を記載した帳簿の備付け・保存と、定期的な報告
監督と罰則
国(こども家庭庁)や所轄庁は、報告徴収や立入検査を行う権限を持ちます。
不適切な運用が判明した場合は、段階的に次の措置が取られます。
- 指導・助言
- 是正命令(基準に適合するよう求める命令)
- 公表(義務違反をした事業者名などの公表)
- 認定の取消し(認定事業者の場合)
特に、犯罪事実確認を行っていないなどの義務違反で事業者名が公表されることは、教育・保育事業者にとって大きな信用の失墜につながります。
悪質なケースには、刑事罰も定められています。
| 違反の内容 | 罰則 |
|---|---|
| 立入検査の拒否、虚偽の報告など | 50万円以下の罰金 |
| 確認書の内容を不正な目的で提供・盗用 | 2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 |
| 業務上知った秘密の漏えい | 1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
事業者が施行までに準備すること
施行までに、対象になりうる事業者が確認・準備しておきたいポイントを整理します。
- 自社の区分を確認する
自社が義務対象事業者か、認定を受けられる事業者かを確認します。 - 認定を受けるか判断する
認定事業者にあたる場合は、認定を受けるかどうかを経営判断します。 - 対処規程や就業規則を整える
児童対象性暴力等への対処規程の整備や、就業規則への反映を進めます。 - システムの利用登録を行う
こまもろうシステムの利用登録など、申請の準備をします。 - 現職者の確認計画を立てる
現職者の確認を期限内に終えられるよう、優先順位をつけて計画します。
こども家庭庁は、準備に役立つ資料を公開しています。
・施行までに必要な対応をまとめた事業者向けチェックリスト
・対処規程・就業規則などの各種ひな型(参考例)
・よくある質問をまとめたQ&A
・従事者向けの研修教材
準備を進める際はこども家庭庁の特設ページもあわせて確認してください。
制度に関する問い合わせは、専用ダイヤル(03-5357-1146、平日9時〜17時)や公式サイトの問い合わせフォームで受け付けています。
よくある質問(FAQ)
Q. すでに働いている現職の先生や保育士も対象になりますか?
A. 対象になります。
新規採用者だけでなく、施行時点ですでに働いている現職者も確認の対象です。
義務対象事業の現職者は施行から3年以内、認定事業の現職者は認定から1年以内に確認を行います。
前科が確認された場合も自動的に解雇されるわけではなく、配置転換を含めて事業者が総合的に判断します。
Q. パートやボランティアでも確認は必要ですか?
A. 子どもと接する業務であれば必要です。
正職員・パート・アルバイト・派遣・業務委託・ボランティアなど、雇用形態は問いません。
週1日の勤務であっても、子どもと直接接する業務に携わる場合は確認の対象になります。
Q. 不起訴になった事件や逮捕歴も確認されますか?
A. 確認されません。
照会されるのは、有罪が確定した「前科」だけです。
不起訴処分、無罪判決、逮捕されただけで起訴に至らなかった記録などは「前科」にあたらないため、確認の対象外です。
また、確認されるのは特定性犯罪に限られ、窃盗や暴行などの性犯罪以外の犯罪は対象になりません。
Q. 確認の結果は、職場の同僚にも知られてしまいますか?
A. みだりに知らされることはありません。
確認書の内容を扱う人には守秘義務があり、内容を他人に知らせたり、不当な目的で利用したりすることは法律で禁じられています。
前科ありの場合はまず本人へ通知され、本人が辞退・退職を選べば、事業者に確認書自体が交付されない仕組みです。
Q. 保護者として、預け先が安全か確認する方法はありますか?
A. 「こまもろうマーク」が一つの目安になります。
国の認定を受けた事業者は「認定事業者マーク」を、学校や認可保育所などの義務対象事業者は「法定事業者マーク」を表示できます(どちらも「こまもろうマーク」の一種です)。
学習塾や習い事、学童などを選ぶ際の安心材料の一つになります。
まとめ
日本版DBS(こども性暴力防止法)は、子どもと接する仕事に就く人の性犯罪歴を確認し、子どもを性暴力から守るための制度です。
最後に要点を整理します。
- 2026年12月25日に施行される
- 対象事業者は「義務対象(学校・認可保育所など)」と「任意認定(学習塾・スポーツクラブ・学童など)」の2区分
- 確認の対象は、子どもと接するすべての従事者(パート・ボランティア・個人事業主も含む)
- 照会されるのは特定性犯罪の「前科」のみで、不起訴や性犯罪以外の犯罪は対象外
- 手続きは「事業者の申請 → 本人の書類提出 → こども家庭庁・法務省の照合 → 確認書の交付」の流れ
- 期限は、新規採用者は業務開始前、義務事業の現職者は施行から3年以内、認定事業の現職者は認定から1年以内、更新は5年ごと
- 前科ありでも自動排除ではなく、事業者が総合的に判断する
事業者は、自社の区分を確認し、規程やシステムの準備、現職者の確認計画を早めに進めておくことが大切です。
働く側も、確認されるのは前科のみで、プライバシーや訂正請求の権利が守られていることを知っておくと、過度な不安を避けられます。
最新の詳細はこども家庭庁のこども性暴力防止法ページで確認できます。