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育休明けの配置転換は違法?降格・業務変更の相談先

育休明けの配置転換は違法?降格・業務変更の相談先
最終更新:2026年7月14日

「これまで任されていた対外的な仕事から外され、データ入力だけになった」
「時短にしたら、望んでいない部署へ異動を命じられた」
「復帰したら役職を外され、給料まで下がった」

育児休業や介護休業、時短勤務から復帰した直後に、こうした配置転換や業務変更を命じられて戸惑う方は少なくありません。

「違法ではないと言われた」「よくある話だから我慢するしかない」とあきらめてしまう前に、知っておいてほしいことがあります。

育休・時短を理由とした不利益な取扱い(いわゆるマタハラ)は、法律で明確に禁止されているのです。

この手続きガイドでは、育休明けの配置転換や業務変更が「違法」になる判断の基準と、おかしいと感じたときの相談先・具体的な手続きをわかりやすく解説します。

育休明けの配置転換、まず知っておきたい前提

最初に押さえておきたいのは、「配置転換そのものが直ちに違法になるわけではない」という点です。

会社には人事権があり、業務上の必要性に基づいて社員の配置を決める権限があります。

そのため、育休明けに部署が変わること自体は、必ずしも違法とは言えません。

一方で、育児休業・介護休業や時短勤務を「理由(契機=きっかけ)」として不利益な取扱いをすることは、法律ではっきりと禁止されています。

つまり、問題になるのは「配置転換が行われたかどうか」ではなく、「それが育休・時短を理由とした不利益な扱いにあたるかどうか」です。

復帰後は「原職復帰」が原則

育児・介護休業法では、休業後の職場復帰がスムーズに行われるよう、事業主に対して労働者の配置その他の雇用管理に関して必要な措置を講じる努力義務を定めています(育児・介護休業法第22条)。

これを受けて、厚生労働省の指針では「原則として原職または原職相当職に復帰させるよう配慮すること」が求められています。

ただし、これは事業主の「努力義務」であり、原職復帰が100%保証されているわけではありません。

業務上やむを得ない事情があれば、別の部署への配置も認められる余地があります。

「違法かどうか」は個別に判断される

配置転換や業務変更が違法な不利益取扱いにあたるかは、変更前後の賃金・労働条件、業務内容の質の変化、キャリアへの影響、業務上の必要性などを総合的にみて、ケースごとに判断されます。
「配置転換された=即違法」でも「配置転換はよくあること=我慢すべき」でもありません。まずは判断の軸を知ることが大切です。

どんな配置転換・業務変更が「違法」になる?

育休・時短を理由とする不利益な取扱いは、次の法律で禁止されています。

  • 育児・介護休業法 第10条
    育児休業などの申出・取得を理由とする解雇その他不利益な取扱いを禁止しています(育児・介護休業法第10条)。
    男女を問わず適用されるため、男性の育休取得者も対象です。
  • 男女雇用機会均等法 第9条第3項
    妊娠・出産などを理由とする解雇その他不利益な取扱いを禁止しています(男女雇用機会均等法第9条)。
    こちらは妊娠・出産をした女性労働者が対象です。

「不利益な取扱い」の具体例

厚生労働省は、「不利益な取扱い」にあたりうる行為の例を示しています(厚生労働省 両立支援のひろば)。

種類具体例
降格役職を外す、等級を下げる
減給・不利益な算定賃金を下げる、賞与を不利に算定する
不利益な人事評価昇進・昇格の考課で不利に評価する
不利益な配置変更通常の人事異動ルールでは説明できない職務・勤務地の変更で、相当程度の経済的・精神的な不利益を生じさせる
就業環境を害する業務に従事させない、もっぱら雑務に従事させる
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つまり、「対外的な仕事から外され、データ入力や雑務だけになった」というケースは、就業環境を害する行為や不利益な配置変更として、違法な不利益取扱いにあたる可能性があるのです。

給料が下がらなくても違法になることがある

「給料は変わっていないから問題ないのでは」と思うかもしれませんが、そうとは限りません。

実際の裁判でも、経済的な不利益がすぐには生じない配置転換が「不利益な取扱い」と判断された例があります。

育児休業からの復帰後、37人の部下を統率していたチームリーダーを、部下のいない新設部門に配置し電話営業に従事させたことが争われた裁判(アメリカン・エキスプレス・インターナショナル事件・東京高裁令和5年4月27日判決)では、次のように判断されました。

  • 基本給や手当が直ちに減らなくても、業務の内容面で質が著しく低下し、将来のキャリア形成に影響を及ぼしかねないものは「不利益な取扱い」に当たる
  • 会社と十分な話合いもなく一方的に業務説明を受け、渋々受け入れたにとどまる
  • 新規販路の開拓や電話営業に従事させたことは、業務上の必要性が高かったとはいい難い

これらから、この配置転換は不利益な取扱いに当たると判断されました。

違法かどうかを分ける「2つの例外」

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妊娠・出産・育休などを「契機として」不利益な取扱いがなされた場合、原則として違法・無効になります。

これは、広島中央保健生協事件(最高裁平成26年10月23日判決)で示された考え方で、その後の裁判でも判断の枠組みとして使われています。

例外的に違法とされないのは、次のいずれかにあたる特別な事情がある場合だけです。

  • 本人が自由な意思で同意したと認められる合理的な理由が、客観的に存在する場合
    会社から十分な説明を受け、納得したうえで自ら同意したといえるケースです。
  • その配置をしなければ業務に支障があり、法律の趣旨・目的に実質的に反しないといえる特段の事情がある場合
    やむを得ない業務上の必要性があるケースです。
「契機として」の目安は1年以内

厚生労働省の通達では、妊娠・出産・育休などの事由が終了してから1年以内に不利益な取扱いがなされた場合は、原則としてそれを「契機として」いる(=理由としている)と判断するとされています。
復帰から間もない時期の降格や配置転換は、違法性が問われやすいといえます。

「時短勤務による賃金減」と「違法な降格・減給」は違う

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ここで混同しやすいのが、「時短勤務で給料が下がること」と「違法な減給・降格」の違いです。

時短勤務では、実際に働く時間が短くなります。

そのため、働かなかった時間の分だけ賃金が下がること自体は、原則として違法な不利益取扱いには当たりません。

厚生労働省も、育児休業や時短措置によって「現に働かなかった時間」について賃金を支払わないことは、不利益な算定に該当しないと示しています(厚生労働省 両立支援のひろば)。

一方で、次のようなケースは違法な不利益取扱いが疑われます。

  • 実際に働かなかった時間を「超えて」賃金を減らす
    時短で3割減らしたのに、賃金を5割カットするようなケース。
  • 時短を理由に役職や等級を下げる
    労働時間の短縮と直接関係のない降格。
  • 時短を申し出たら「パート扱いにする」と言われた
    正社員から非正規への一方的な契約変更の強要。
注意

「時短にするなら給料は半分」「時短はパート扱いになる」といった説明をされた場合は、正当な賃金減の範囲を超えている可能性があります。
言われた内容をそのままうのみにせず、後述の相談窓口で確認することをおすすめします。

なお、時短勤務で減った収入の一部を補う公的な給付制度もあります。

条件を満たせば、時短勤務中の賃金の一部が支給される「育児時短就業給付金」を受け取れる場合があります。

自分のケースは違法?セルフチェック

自分の状況が違法な不利益取扱いにあたる可能性があるか、次のポイントで確認してみましょう。

  • 育休・介護休業や時短勤務の申出・取得から1年以内に起きた変更である
  • 通常の人事異動のルールでは説明がつかない配置転換・業務変更である
  • 業務の内容や質が大きく下がった(対外業務から雑務のみになった等)
  • 役職を外された、等級・給料が下がった
  • 変更について会社から十分な説明がなく、納得して同意したわけではない
  • キャリア形成に影響しかねない内容だと感じる

当てはまる項目が多いほど、違法な不利益取扱いにあたる可能性が高まります。

ただし、最終的な判断は個別の事情によります。

チェックが付いたら、証拠を残しつつ、専門の窓口に相談してみてください。

違法かもと思ったらまずやること

「おかしい」と感じたら、感情的に会社と対立する前に、次の準備を進めましょう。

1. 証拠・記録を残す

後から相談・交渉する際に、事実を裏づける記録が力になります。

  • 辞令や通知書
    配置転換・降格・減給を伝える書面はすべて保管します。
  • 業務内容の変化がわかるもの
    変更前後の担当業務、役職、給与明細などを残しておきます。
  • やり取りの記録
    上司との面談内容はメモや録音で記録し、メール・チャットも保存します。

2. 会社に異議を伝える

まずは社内で解決を図るのが基本です。

  • 社内の相談窓口や人事へ相談する
    ハラスメント相談窓口が設けられている会社もあります。
  • 異議は口頭だけでなく文書やメールでも伝える
    「いつ・誰が・何を言ったか」が残る形にしておくと安心です。
同意の署名は慎重に

「配置転換に同意します」といった書面へのサインは、後から「本人が自由な意思で同意した」と扱われる材料になりかねません。
納得できないまま署名を求められた場合は、いったん持ち帰り、相談窓口や専門家に確認してから対応しましょう。

行政の相談先と手続き

社内で解決しない場合や、そもそも会社に言い出しにくい場合は、公的な相談窓口を利用できます。

無料で、秘密も守られます。

都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)

育休・時短を理由とする不利益取扱いやマタニティハラスメント(マタハラ)の相談は、各都道府県労働局の「雇用環境・均等部(室)」が中心的な窓口です(厚生労働省 両立支援のひろば)。

相談すると、状況に応じて次のような手続きにつながります。

  • 紛争解決の援助(助言・指導・勧告)
    当事者から求めがあれば、都道府県労働局長が会社に対して助言・指導・勧告を行います(育児・介護休業法第52条の4)。
  • 調停(両立支援調停会議)
    当事者から申請があった場合、都道府県労働局長が紛争調整委員会に調停を行わせます(育児・介護休業法第52条の5)。
    中立の第三者が間に入って解決を図ります。

相談先の役割分担

どの窓口が何を扱うのか、整理しておきましょう。

相談先主に扱う内容
都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)育休・時短を理由とする不利益取扱い、マタハラ全般
労働基準監督署実際に働いた分の賃金未払いなど労働基準法違反
総合労働相談コーナー労働問題全般の初期相談・窓口案内
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まずどこに相談すればよいか迷う場合は、各労働局に設置されている「総合労働相談コーナー」で相談すると、適切な窓口を案内してもらえます。

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相談したことを理由とした報復も禁止

労働局に援助・調停を求めたことなどを理由に、会社が解雇その他の不利益な取扱いをすることも法律で禁止されています。
「相談したら会社にどう思われるか」と不安になりがちですが、報復的な扱いは違法です。安心して相談してください。

解決しない場合の救済(労働審判・訴訟)

行政の援助や調停でも解決しない場合は、司法手続きで争うことになります。

証拠が新しいうちに動くほうが有利なため、迷ったら早めに相談・準備を進めるとよいでしょう。

  • 労働審判
    原則3回以内の期日で審理され、比較的短期間で解決を目指せる手続きです。
    配置転換や降格の効力、損害賠償などを争えます。
  • 民事訴訟
    配置転換・降格の無効確認、元の地位の確認、損害賠償などを求めます。
    時間はかかりますが、法的にはっきりと決着させられます。

弁護士に依頼するのが一般的ですが、費用が心配な場合は、収入などの条件を満たせば法テラス(日本司法支援センター)の無料法律相談や費用の立替制度を利用できます。

よくある質問(FAQ)

Q. 育休明けの配置転換は必ず拒否できますか?

A. 必ず拒否できるわけではありません。

配置転換そのものは会社の人事権の範囲で行われるため、業務上の必要性があれば認められることもあります。

ただし、育休・時短を理由とした不利益な内容であれば、違法・無効を主張できます。

まずは違法にあたるかを見極め、記録を残したうえで相談窓口に相談しましょう。

Q. 「原職復帰」は必ずしてもらえますか?

A. 100%保証されているわけではありません。

育児・介護休業法では、原職または原職相当職に復帰させるよう配慮することが求められていますが、これは事業主の努力義務です。

業務上やむを得ない事情があれば別の配置も認められる余地があります。

一方で、通常の人事ルールで説明できない配置は、不利益取扱いを疑う根拠になります。

Q. 男性の育休明けでも不利益な扱いは禁止されますか?

A. 禁止されます。

育児・介護休業法の不利益取扱いの禁止は、性別を問わず適用されます。

男性が育児休業を取得したことを理由とする降格・配置転換なども違法な不利益取扱いにあたりえます。

Q. 時短勤務で給料が下がるのは違法ですか?

A. 働かなかった時間分の減額は、原則として違法ではありません。

時短で実際に短くなった労働時間の分だけ賃金が下がることは、正当な扱いです。

ただし、減った時間を超える減額や、時短を理由とする役職剥奪・降格は、違法な不利益取扱いが疑われます。

Q. 相談したら会社に不利益な扱いをされませんか?

A. 相談を理由とする不利益な取扱いは法律で禁止されています。

労働局への相談や、援助・調停の申請を理由に、会社が解雇や不利益な取扱いをすることは認められません。

報復的な扱いを受けた場合は、それ自体を新たな相談内容として労働局に伝えられます。

まとめ

育休明けの配置転換や業務変更について、押さえておきたいポイントを整理します。

  • 配置転換そのものは直ちに違法ではないが、育休・時短を「理由(契機)」とする不利益な取扱いは法律で禁止されている
  • 降格・減給だけでなく、業務の質が著しく下がる配置変更や、雑務のみに従事させることも「不利益な取扱い」にあたりうる
  • 給料が下がらなくても、キャリア形成に影響する変更は違法と判断された裁判例がある
  • 時短による正当な賃金減と、違法な減給・降格は区別して考える
  • おかしいと感じたら、まず証拠・記録を残し、社内で異議を伝える
  • 都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)が中心的な相談窓口。無料で利用でき、助言・指導・勧告や調停につながる
  • 解決しない場合は労働審判・訴訟という手段もある

「よくあること」と我慢する前に、まずは自分のケースが違法にあたらないかを確認し、公的な窓口に相談することが、状況を変える第一歩になります。

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