落とし物を拾ったら?届け出の手順・報労金(謝礼)・所有権を解説
道端やお店で誰かの落とし物を見つけたとき、「どうすればいいんだろう?」と迷った経験はありませんか?
この手続ガイドでは、落とし物を拾ったときの正しい届け出の手順から、拾った人に認められている
「報労金(謝礼)をもらう権利」や
「落とし物の所有権を得る権利」まで、
法律(遺失物法)にもとづいて、わかりやすく解説します。
1. はじめに:落とし物を拾ったらどうする?
財布、スマートフォン、アクセサリー、傘など、誰かがうっかり落としてしまったものを拾ったとき、善意で交番やお店の人に届け出ることは、とても素晴らしいことです。
しかし、正しい手続きを踏まないと、せっかくの善意が報われなかったり、思わぬトラブルに巻き込まれたりする可能性もあります。
落とし物を拾ったときの基本的な心構え
- 勝手に中身を見ない
財布などの中身を確認したくなる気持ちはわかりますが、トラブルを避けるためにも、そのままの状態で届け出るのが基本です。 - 速やかに届け出る
拾ったものを自分のものにしようとすると、犯罪(占有離脱物横領罪)に問われる可能性があります。
2. 落とし物を拾ったら?基本の流れ
落とし物を拾ったら、できるだけ早く、拾った場所に応じて適切な場所に届け出る必要があります。
2-1. まずは中身を確認せず保管
落とし物を拾ったら、まずは安全な場所で保管しましょう。
特に、財布やカバンなどは、プライバシーに関わるものや貴重品が入っている可能性が高いため、中身を勝手に確認するのは避けるべきです。
2-2. 拾った場所で届け先が違う
届け出る場所は、落とし物を拾った場所によって異なります。
- 路上で拾った場合:警察署や交番へ
- いつまでに?
拾った日から7日以内 - どこへ?
最寄りの警察署、交番、または駐在所
(拾った場所と違う管轄の警察でもOKです)
- いつまでに?
- 施設内で拾った場合:施設の管理者へ
- いつまでに?
拾ったときから24時間以内 - どこへ?
駅員、店員、施設の受付など、その施設の管理者 - 施設内で拾った場合、届け出を受けた施設側が、その後警察に届け出る義務があります。
- いつまでに?
2-3. 届け出にかかる時間の目安
警察署や交番に落とし物を届け出る場合、手続きには20〜30分程度かかることが一般的です。
混雑状況や拾得物の種類によっては、それ以上かかる場合もありますので、時間に余裕をもって届け出ましょう。
2-4. 電話での届け出はできる?
落とし物を「電話で届け出る」ことはできません。
落とし物は現物を警察や施設に持参して届け出る必要があります。
ただし、事前に電話で相談することは可能です。
3. 警察での届け出手続きの詳細
警察に落とし物を届け出る際の、具体的な手続きの流れを説明します。
3-1. 届け出に必要なもの
届け出の際に必要なものは以下の通りです。
- 拾った落とし物
そのままの状態で持参してください。 - 身分証明書
マイナンバーカード、運転免許証、保険証など
3-2. 届け出の流れ
ステップ1:窓口で落とし物を届け出る旨を伝える
警察署や交番の窓口で、「落とし物を届けに来ました」と伝えましょう。
ステップ2:警察官からの質問に答える
以下のような内容を聞かれます。
- あなたの情報
氏名、住所、連絡先 - 拾った物の情報
品名、色、形、メーカー、数量など、できるだけ詳しく - 拾った日時と場所
いつ、どこで拾ったか - 権利の確認
- 報労金(お礼)をもらう権利
- 持ち主が現れなかった場合の所有権を得る権利
- これらの権利を希望するか、放棄するかを伝えます。
ステップ3:書類を確認し、「拾得物件預り書」を受け取る
警察官が書類を作成し、内容を確認します。
手続きが終わると、「拾得物件預り書」という書類が渡されます。
これは、後であなたが権利を主張する際に必要となる非常に重要な書類です。
絶対に失くさないように大切に保管してください。
3-3. 届ける警察は拾った場所と別でもOK
「急いでいて、拾った場所の近くで届けられなかった…」という場合でも心配ありません。
落とし物は、どこの警察署・交番に届けても大丈夫です。
届け出を受けた警察が、拾得した場所を管轄する警察署に引き継いでくれます。
3-4. 最寄りの警察署・交番を探す
4. 落とし物を拾った人の3つの権利
落とし物を届け出た人(拾得者)には、法律でいくつかの権利が認められています。
しかし、これらの権利を主張するには、定められた期間内に手続きを行う必要があります。
4-1. 報労金(謝礼)をもらう権利
落とし物が無事に持ち主の元に返された場合、拾った人は持ち主に対して「報労金」としてお礼を請求することができます。
- 報労金の相場
物件の価格の5%〜20% - 施設内で拾った場合
施設と拾った人で半分ずつになるため、物件の価格の2.5%〜10% - 請求できる期間
持ち主に返還されてから1か月以内
報労金はあくまで「権利」であり、義務ではありません。
また、金額の交渉などは当事者同士で行う必要があり、警察は介入しません。
「落とし物の謝礼は3割」という俗説がありますが、これは誤りです。
遺失物法第28条により、報労金は5%〜20%と定められています。
4-2. 落とし物の所有権を得る権利
警察に届け出てから3か月たっても持ち主が現れなかった場合、拾った人はその落とし物の所有権を得ることができます。
- 所有権取得の連絡
警察から所有権を取得できるようになった旨の連絡があります。 - 引き取り期間
連絡を受けてから2か月以内に引き取らないと、権利は失われ、落とし物は都道府県のものになります。
施設内で拾った場合の注意点
施設内で拾って施設管理者に届け出た場合は、少し扱いが異なります。
持ち主が現れなかった場合、報労金と同様に、拾った人と施設管理者の両方が所有権を取得する権利を持ちます。
もし、あなたが所有権を取得する権利を放棄した場合は、所有権はすべて施設管理者のものとなります。
所有権を得られない物に注意
以下のような個人情報が含まれる物については、持ち主が現れなくても所有権を得ることができません。
- 携帯電話・スマートフォン
- 運転免許証
- 健康保険証
- クレジットカード・キャッシュカード
- マイナンバーカード
- パスポート
- ポイントカード(個人情報が紐づいているもの)
- その他個人情報が記録された物
これらは遺失物法の規定により、拾得者が所有権を取得できない物件として定められています。
商品券・ギフト券は所有権を取得できる
一方、商品券・図書カード・電子ギフト券などは、個人情報が含まれていないため、持ち主が現れなければ所有権を得ることができます。
これらは金券としての価値があり、報労金の計算対象にもなります。
4-3. 届け出にかかった費用を請求する権利
落とし物を届け出るためにかかった交通費や、拾った動物のえさ代など、保管や届け出に費用が発生した場合、その費用を持ち主に請求する権利もあります。
4-4. 権利を失わないための注意点
これらの権利は、法律で定められた期間内に届け出を行わないと、すべて失ってしまいます。
- 届け出の期限
- 路上で拾った場合:7日以内に警察へ
- 施設内で拾った場合:24時間以内に施設へ
- 権利を放棄することも可能
- 警察に届け出る際に、報労金や所有権などの権利をすべて放棄する意思表示をすることもできます。
5. 報労金(謝礼)のやりとり方法
報労金をめぐるやりとりは、拾った側・落とし主側の双方にとって気になるポイントです。
ここでは、具体的なやりとりの流れを解説します。
5-1. 報労金を請求する場合(拾った側)
報労金を受け取りたい場合は、届け出の際に「報労金を希望する」と伝えましょう。
持ち主が見つかると、警察からあなたに連絡があり、持ち主との間で報労金のやりとりを行います。
請求のポイント
- 報労金の金額は物件の価格の5%〜20%の範囲で、落とし主と話し合って決めます。
- 現金の場合は、その現金額が基準になります。
- スマートフォンなどの物品は、中古価格などが基準になります(購入価格ではありません)。
- 商品券・図書カード・ギフト券などは、券面金額が基準になります。
- 個人情報が入ったカード類(クレジットカード等)は、カード自体の価値がほぼゼロなので、報労金もほぼ発生しません。
- ポイントカードは、個人情報が紐づいているため、カード自体に価値がなく報労金もほぼ発生しません。
5-2. 報労金を辞退する場合
拾った側が報労金を辞退する場合は、届け出の際に「報労金は希望しません」と伝えるだけでOKです。
落とし主側からお礼を申し出られた場合でも、辞退することは自由です。
5-3. トラブルを避けるために
報労金をめぐるトラブルを避けるために、以下の点に注意しましょう。
- 金額の交渉は冷静に
法律では5%〜20%の範囲と定められていますが、実際は10%程度で落ち着くことが多いようです。 - 警察は仲介しない
報労金のやりとりは当事者間で行います。警察は介入しません。 - 直接会うのが不安な場合
振込での支払いや、警察経由での手紙のやりとりなど、直接会わない方法も検討しましょう。
6. そもそも「遺失物法」とは?
これまで解説してきたルールは、すべて「遺失物法」という法律で定められています。
この法律は、落とし物をできるだけ早く持ち主に返すための仕組みと、拾ってくれた人の善意に報いるためのルールを定めています。
平成19年(2007年)12月10日に改正法が施行され、保管期間が6か月から3か月に短縮されるなど、現在の制度になりました。
7. 落とし物に関するQ&A
Q1. 届ける警察は拾った場所の近くでなくてもいい?
A1. はい、どこの警察署・交番でも届け出ることができます。
届け出を受けた警察が、拾得した場所を管轄する警察署に引き継いでくれます。
Q2. 届け出を忘れていた場合、今からでも届けられる?
A2. 届け出ることはできますが、7日を過ぎると報労金や所有権などの権利は失われます。
ただし、届け出ること自体は可能なので、気づいた時点で速やかに届けましょう。
届け出ないまま持ち続けていると、占有離脱物横領罪に問われる可能性があります。
Q3. 拾ったものを届けないとどうなる?
A3. 拾ったものを自分のものにしてしまうと、「占有離脱物横領罪」という犯罪になり、1年以下の懲役または10万円以下の罰金に処される可能性があります。
Q4. 報労金は必ずもらえる?
A4. 報労金は、持ち主が見つかり、かつあなたが請求して初めてもらえる可能性があるものです。
持ち主が支払いを拒否する場合や、金額で合意できない場合もあります。
法的には請求する権利がありますが、支払いを強制することは難しい場合もあります。
Q5. 「落とし物の謝礼は3割」と聞きましたが本当ですか?
A5. いいえ、それは間違いです。
遺失物法第28条により、報労金(謝礼)の金額は物件の価格の5%〜20%と定められています。
「1割〜3割」という俗説が広まっていますが、3割(30%)という数字に法的根拠はありません。
- 法律上の範囲:
5%〜20% - 実際の相場:
10%程度で落ち着くことが多い
なお、施設内(駅・店舗など)で拾った場合は、報労金を施設占有者と拾得者で半分ずつ分けるため、拾得者が受け取れるのは2.5%〜10%の範囲となります。
Q6. スマホや免許証は自分のものになる?
A6. いいえ、なりません。
運転免許証、健康保険証、携帯電話など、個人情報が含まれるものは、法律により、持ち主が現れなくても所有権を得ることはできません。
Q7. 届けた落とし物がどうなったか知りたい
A7. 警察庁のウェブサイトで、落とし物の情報を検索することができます。
届け出た際に受け取った「拾得物件預り書」に書かれている受理番号などで確認できます。
Q8. 商品券やギフト券を拾った場合、報労金や所有権はどうなる?
A8. 商品券・図書カード・電子ギフト券などは、個人情報が含まれていないため、以下の権利があります。
- 報労金:
券面金額の5%〜20%を請求できます - 所有権:
3か月後に持ち主が現れなければ、所有権を得ることができます
例えば、1万円分の商品券を拾って届けた場合、報労金は500円〜2,000円程度となります。
Q9. ポイントカードを拾った場合はどうなる?
A9. ポイントカードは、会員情報などの個人情報が紐づいているため、以下のように扱われます。
- 報労金:
カード自体には金銭的価値がほぼないため、報労金もほぼ発生しません - 所有権:
個人情報関連物件として、所有権を得ることはできません
8. 自分が落とし物をした場合は?
この手続ガイドでは「落とし物を拾った側」の手続きを解説しましたが、逆に「自分が落とし物をしてしまった場合」の対応については、 「 落とし物の探し方・警察への遺失届の出し方完全ガイド 」で詳しく解説しています。
9. まとめ
落とし物を拾ったときは、善意からであっても、正しい手続きを踏むことがとても大切です。
- 拾ったら速やかに届ける
路上なら7日以内、施設なら24時間以内 - 警察で「拾得物件預り書」をもらう
権利を主張するための大切な書類です - 報労金の相場は5%〜20%
持ち主が見つかれば、落とし物の価値に応じた報労金を請求できます - 報労金や所有権には期限がある
報労金の請求は返還から1か月以内、所有権の引き取りは3か月後から2か月以内 - 個人情報が入った物は所有権を得られない
スマートフォン、免許証、カード類などは対象外
この手続ガイドを参考に、適切な対応を心がけましょう。
